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211話
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森を抜けても山道へと入っていくしかなかった。このまま右方向へ進めばプラデェ王国へたどり着く。左側方向なら王国領である村、クーニグがあるようだ。
「プラデェ王国領は大きいけど、俺らが把握できてる大陸の一番東にあるからか、周りにほぼ町村、ないみたいだな」
山道途中の分かれ道にかろうじてあった案内板ではなく、カルフォン王国で仕入れた情報だった。ファインがギルドで聞いたところによると、村とも言えないような集落は多少あるものの、基本的に人々は王国に集結しているらしい。ボルフォルドに襲われる前にいたラサックは離れてはいるが一応プラデェ王国領らしいので、明確に村と呼べるのはラサックとクーニグだけのようだ。
四人で話し合った結果、まずはプラデェ王国へ向かうことにしていた。人が集結している上に情報を得やすいのも王国だろう。
「一番東かあ。俺らの住んでたトーレンス王国は一番西じゃないけど、わりと西だったよね。ほんと遠くまで来たよなあ」
アルスが首を傾げながら言っている。とりあえずかわいい、とファインは頷く。
「一番西ならガルシア王国かクルス王国だろうね。未知の大陸にはもっと東西に国、あるんだろうけどこの辺では把握されてないもんね。あとアルス見てこっそりニヤニヤすんのやめてねファイン」
「カースこそニヤニヤしながら変な言いがかりつけんな」
「そ、そうだよ」
アルスが少し赤くなっている。ますますかわいいと思いながらファインはカースを真顔で見た。
「こっそりじゃねえ。思い切り見て、かわいいって思ったからほころんでたんだよ」
「言いがかり、そこ?」
赤くなっていたアルスが呆れたような顔で即突っ込んだ後、カースが「ほんとにな」と笑っている。
「当たり前だろ。気持ちばれただけじゃなくて、両思いなんだぞ。こそこそなんてしねえ。正々堂々アルスへの気持ちひけらかすわ」
基本男らしく気持ちを伝えてくれたり行動してくれる様子のアルスだが、ファインの言動に対しては赤くなったり困惑したり、ひいては白けたように遠巻きに見てくることもある。今も赤くなったままではあるが「フォルア、行こう」とファインの言葉を無視してフォルアの手を引いて先に歩き始めた。
「……オレ、引かれた?」
「照れてるのと半々くらいかな。あと正々堂々するならもっと攻めていけばいいのに」
「どういう意味だよ?」
「ちなみにファインは主導権握りたいほう? 握られたいほう?」
「は? 何の話だよ。会話か?」
「そんなわけないよね。えっとさ、俺は勝手に主導権握りたいほうかなって思ってたけど、たまにふと、もしかして逆なのかって思うこともあってさ」
「いや、だから何の話」
「だから、抱きたいのか抱かれた……」
「ああくそ、だからほんとあんた最悪なんだよ!」
プラデェ王国までは結構日数がかかった。他の国なら途中にいくつか町や村があるのだが、山中は集落すらなく四人はひたすらテント生活だった。途中で大きな湖へと続く川があるし、魔物は少ないながらに食料となってくれる獣はそれなりにいて生活するには問題なかったものの、ずっとテントが続くと宿屋のベッドがとても恋しくなる。ようやく王国に到着したファインたちは、何はともあれ宿屋を見つけて即部屋を取った。
取る時、ふと以前カースが嫌な気の利かせ方して二部屋取ったのを思い出し、ファインは思わず内心そわそわした。だが今回はむしろ一部屋だけだった。
「あれ? どうしたのファイン。拍子抜けたような顔して」
カースが思い切りニコニコしながら聞いてくる。絶対わかって言っているのだろうとファインは「そんな顔してねえ」とだけ答えておいた。
とりあえず熱い風呂に入りたいと皆で向かい、出て少しだけ部屋で寛いでから、時間がまだ早いのもあり四人は一旦王国にあるギルドへ向かった。ちなみにアルスとも一緒なせいで風呂では少々緊張したが、肝心のアルスがつき合う前と全く変わらない様子だった。そのせいかファインも何だか冷静になれた気がする。
もしやアルスだけに、つき合ってもそういう性的なことに関心がないというか知らないのではと一瞬心臓に冷たいものが走ったが、すぐにそれはないなと真顔になった。片思いだった時に、思い切りずれているアルスからそういう提案されたことを思い出したからだ。改めてその時に何もしなくてよかったとそして思う。
だって今は両思いでつき合ってんだぞ。アルスと初めてそういうことするのは絶対両思いのほうがいい。マジよかった。
そんな風に思うところが多分アルスからしたら「わりとロマンチスト」なのかもしれない。ファインは自分がロマンチストだとは一度たりとも思ったことないが、そういう部分を大事にすることがロマンチストだと言うなら別にそれでもいい。
とにかく、アルスは別に知らないわけじゃねえんだよな。でも、もしかしたら改まって両思いになったオレとそういうことする、って発想にまだなってねえのかもな。だから風呂でも普通だったのかも。
まあいい、とファインは自己解決した。元々気持ちを伝えるつもりさえなかった。両思いになれるなんて思いもよらなかった。この先もアルスの大事な幼なじみとしてつき合っていくつもりだったし、何年もそのつもりでそばにいた。今さら焦ることなど何一つない。
……そりゃしたいけど。
焦ることないと一人頷いた後でつい心の底でそっと思っている本音も出たが、そのまま流し到着したギルドでまず様子を窺った。
カルフォン王国でかなりの報酬を得たため、とりあえず仕事を受けなければということはない。それよりここでプラデェ王国の状況を窺いつつモナについて何か確認できればと考えていた。
「プラデェ王国領は大きいけど、俺らが把握できてる大陸の一番東にあるからか、周りにほぼ町村、ないみたいだな」
山道途中の分かれ道にかろうじてあった案内板ではなく、カルフォン王国で仕入れた情報だった。ファインがギルドで聞いたところによると、村とも言えないような集落は多少あるものの、基本的に人々は王国に集結しているらしい。ボルフォルドに襲われる前にいたラサックは離れてはいるが一応プラデェ王国領らしいので、明確に村と呼べるのはラサックとクーニグだけのようだ。
四人で話し合った結果、まずはプラデェ王国へ向かうことにしていた。人が集結している上に情報を得やすいのも王国だろう。
「一番東かあ。俺らの住んでたトーレンス王国は一番西じゃないけど、わりと西だったよね。ほんと遠くまで来たよなあ」
アルスが首を傾げながら言っている。とりあえずかわいい、とファインは頷く。
「一番西ならガルシア王国かクルス王国だろうね。未知の大陸にはもっと東西に国、あるんだろうけどこの辺では把握されてないもんね。あとアルス見てこっそりニヤニヤすんのやめてねファイン」
「カースこそニヤニヤしながら変な言いがかりつけんな」
「そ、そうだよ」
アルスが少し赤くなっている。ますますかわいいと思いながらファインはカースを真顔で見た。
「こっそりじゃねえ。思い切り見て、かわいいって思ったからほころんでたんだよ」
「言いがかり、そこ?」
赤くなっていたアルスが呆れたような顔で即突っ込んだ後、カースが「ほんとにな」と笑っている。
「当たり前だろ。気持ちばれただけじゃなくて、両思いなんだぞ。こそこそなんてしねえ。正々堂々アルスへの気持ちひけらかすわ」
基本男らしく気持ちを伝えてくれたり行動してくれる様子のアルスだが、ファインの言動に対しては赤くなったり困惑したり、ひいては白けたように遠巻きに見てくることもある。今も赤くなったままではあるが「フォルア、行こう」とファインの言葉を無視してフォルアの手を引いて先に歩き始めた。
「……オレ、引かれた?」
「照れてるのと半々くらいかな。あと正々堂々するならもっと攻めていけばいいのに」
「どういう意味だよ?」
「ちなみにファインは主導権握りたいほう? 握られたいほう?」
「は? 何の話だよ。会話か?」
「そんなわけないよね。えっとさ、俺は勝手に主導権握りたいほうかなって思ってたけど、たまにふと、もしかして逆なのかって思うこともあってさ」
「いや、だから何の話」
「だから、抱きたいのか抱かれた……」
「ああくそ、だからほんとあんた最悪なんだよ!」
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取る時、ふと以前カースが嫌な気の利かせ方して二部屋取ったのを思い出し、ファインは思わず内心そわそわした。だが今回はむしろ一部屋だけだった。
「あれ? どうしたのファイン。拍子抜けたような顔して」
カースが思い切りニコニコしながら聞いてくる。絶対わかって言っているのだろうとファインは「そんな顔してねえ」とだけ答えておいた。
とりあえず熱い風呂に入りたいと皆で向かい、出て少しだけ部屋で寛いでから、時間がまだ早いのもあり四人は一旦王国にあるギルドへ向かった。ちなみにアルスとも一緒なせいで風呂では少々緊張したが、肝心のアルスがつき合う前と全く変わらない様子だった。そのせいかファインも何だか冷静になれた気がする。
もしやアルスだけに、つき合ってもそういう性的なことに関心がないというか知らないのではと一瞬心臓に冷たいものが走ったが、すぐにそれはないなと真顔になった。片思いだった時に、思い切りずれているアルスからそういう提案されたことを思い出したからだ。改めてその時に何もしなくてよかったとそして思う。
だって今は両思いでつき合ってんだぞ。アルスと初めてそういうことするのは絶対両思いのほうがいい。マジよかった。
そんな風に思うところが多分アルスからしたら「わりとロマンチスト」なのかもしれない。ファインは自分がロマンチストだとは一度たりとも思ったことないが、そういう部分を大事にすることがロマンチストだと言うなら別にそれでもいい。
とにかく、アルスは別に知らないわけじゃねえんだよな。でも、もしかしたら改まって両思いになったオレとそういうことする、って発想にまだなってねえのかもな。だから風呂でも普通だったのかも。
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