双神の輪~紡がれる絆の物語~

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序章

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 大きくそびえ建つ王宮の脇にある木陰から、流輝と琉生は空を見上げていた。晴れ渡った空から反射する光が木漏れ日となり二人に注ぐ。
 あれから何年経っただろうか。もう、九年になるのだろうか。
 二年前、十六歳の時に行った成人の儀を経て、今日は叙任式だ。お互い、従魔術師、従騎士から正式な魔術師、騎士として認められる。よって実際の戦闘にも正式に出ることとなるだろう。
 この世界に来て九年が経つということは、元の世界と同じくらい、この異世界にいたことになる。
 今でも思う。
 自分たちの家族はどうしているだろうか。二人がいなくなってどうなったのだろうか。
 それに本当だったら二人は今では高校を卒業する年齢にさえなった。この異世界に飛ばされたばかりの頃は、まだ九歳で声変わりさえしていない小学生だった。あのまま日本にいたら自分たちも中学生、高校生となって制服を着たり友だちと遊びまわったり、彼女ができたりしていたのだろうか。
 こうして見上げている空は元の世界の空と何ら変わらない。今も青くて雲が流れており、時折鳥の鳴き声が聞こえてくる。

「もう九年も経ったんだよなあ」
「うん」
「元の世界にいた頃は子どもだったのもあるけど、何も考えなくても生きていけたよな」
「そうだね。魔獣なんて当然いなかったし、国を出たらもちろんのこと、町中に迷い込むだけで命の危険にされされたりするなんて、基本的にあり得なかったもんね」

 身分や力といったものも、もしかしたら元の世界でも大人になれば違っていたかもしれないが、ここほどは必要なものではなかっただろう。
 当たり前のように生きていた世界と全く異なる世界に飛ばされた二人は右も左も何もわからなかった。言葉すらわからなかった。よくある漫画なら普通に通じていたり何か魔法のようなものですぐに理解できるようになっていたというのに、実際は元の世界の学校で習っていた英語よりもわからない言語でしかなかった。
 国の在り方や皆の考えすらわからない二人は、多分すぐに死んでしまっても仕方がない赤ん坊同然だっただろう。
 言葉だけでなく当然ながら文字もわからなかった。何もわからない異世界に意思の疎通すらできないまま放り出された状態で、人がたくさんいてもまるで世界にたった二人きりとなってしまったかのようで、怖くて辛くて苦しかった。
 今なら当たり前のようにわかることだが、剣や魔法や冒険の知識のないまま軽率に一歩外へ足を踏み入れればすぐに死んでもおかしくない。元の世界でも事件や事故はあった。死なない保証なんてなかっただろう。だがそれとは事情が違う。そんなことすら、いきなりこの世界に飛ばされた二人には全くわかるはずもなかった。
 この世界で二人は何度か死にかけたことがある。状況を把握していたら、なんと無謀な行動だと思えたであろう行動すら、良し悪しの判断ができなかったからだ。
 もちろん子どもだった二人は怖いながらも、初めの頃はほんのり高揚する気持ちもあった。
 剣や魔法が当たり前のようにある世界。漫画やゲームでしかあり得なかった魔獣が出る世界。そんなファンタジーな世界に自分たちがいるということにワクワクもした。
 元の世界ではまっていたゲームのように魔獣を倒すとレベルが上がったりするのだろうかなんて、ゲーム感覚で呑気にとらえていた。
 また、二人が楽しみに読んでいたとある漫画の世界にとても似ているように思えて、それもどこかテンションの上がる理由でもあった。
 ヒロインが王女様で、召喚された主人公は光の魔力を持つ勇者だった。
 似ているというか、よくある異世界もののためどんな内容でも似ている気はしたかもしれないが、とにかくその漫画の内容は、最終巻までまだ読んでいなかったので途中までしか把握していなかった。
 世界で力をつけ始めた魔族たちに国を攻められるかもしれないと、その国は警戒を年々強めていた。そんなある時に王様の弟である貴族の、幼い息子が屋敷の外へ出た際に魔族に襲われ殺されてしまう。それをきっかけに、王様は勇者召喚を決意する。
 召喚された青年は戸惑いしかなかったものの、初めから強い魔力と優れた剣の才能を持っていた。勇者として様々な試練を乗り越え、才能だけでなく力を着々とつけていった。
 そして一年後、とうとう魔族が動き出した。それを迎え撃つため、勇者は立ち向かう。
 二人が把握しているのはここまでだ。勇者がその後勝利したのか、それならどのように勝ったのか、またヒロインとどうなるのかなど、わからない。何より、勇者がその後元の世界へ戻れたのか留まることになったのかわからない。それでも最終巻までは読んでいた二人にとって、飛ばされた世界が何となく似ているなと感じていた。
 ゲームや漫画のような世界。それはとても楽しいことではないのだろうかと思えた。
 子どもだった二人はこの世界に転生させられることがどういうことなのか、何を意味するのかなどまったくわかっていなかった。
 二人は空から目を離し、お互いを見た。お互い、今日のために支給されたばかりの正装を身に着けている。流輝は術者の正装、琉生は剣士の正装で、手に取った時はお互いようやく一人前として認められるのだと純粋に喜んだ。そして腰にはこちらの世界で親となってくれた人たちから贈られた武器がぶら下がっている。

「ようやくここまで来たな」
「うん、ここまでたどり着いた」

 二人は微笑み、そして目を閉じた。
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