双神の輪~紡がれる絆の物語~

Guidepost

文字の大きさ
2 / 120
1章 幼少編 異世界召喚

1話

しおりを挟む
 九年前のクリスマス当日は朝から雪の降る寒い日だった。学校は冬休みに入っていたが塾があったので、二人とも母親の趣味でもある手作りマフラーに顔を埋めながら出かけていた。
 その日はクリスマスでありながら二人の誕生日でもあった。前からそれに関して流輝は大いに不満だった。

「何が不満なの。キリストさんと同じ誕生日じゃない。すごいすごい」
「お母さん! 絶対気持ちこもってないだろ!」

 流輝が唇を尖らせながら言うも、母親は笑いながら「ちゃんとケーキ多めに用意してるから塾が終わったら約束通り真っすぐ帰ってきなさい」と頭をぽんぽんと撫でてくる。
 ちなみにいつもは母親か父親が塾まで迎えに来ていた。特に最近は「ぶっそう」らしいからと必ずどちらかが迎えに来ていた。他の塾生も親に迎えに来てもらっている子は少なくない。だが今日で九歳になるのもあり、流輝は散々言い合った挙句「寄り道せず真っすぐ明るい道通って帰ってくる」という約束をすることで迎えなしという願いを聞いてもらえた。そもそも家から塾はそれほど離れていないし人通りも多い。

「子ども扱いすんな。俺もう今日で九歳なんだぞ」
「あら、ならお母さんは三十四歳なんだけど? しかもあんた子どもなんだから仕方ないでしょ。ほら、ちゃんと琉生の面倒見てあげてね」
「わかってるよ。ルイ、行くぞ」
「うん」

 面倒を見てと母親は言ってきたが、別に流輝のほうが年上なのではない。ただおとなしくてすぐ泣く琉生を母親はつい心配してしまうようだし、流輝も双子とはいえ自分のほうが兄なのもあり、そんな琉生を守る役目を担っていることにわりと誇りを抱いている。
 藤澤 流輝(ふじさわ りき)と琉生(るい)は一卵性双生児だ。二人をよく知らない人からすればどちらがどちらか見分けがつかないだろう。だが性格が全然違うのもあり、親しい身内や友だちは二人を間違えることはなかった。
 性格が全然違っても二人は仲がよく、いつも一緒にいた。今も塾が終わってから流輝は友だちと少しだけ話はしたものの、おとなしく待っていた琉生と一緒に帰っている。

「中村が言ってたけどさ」
「うん」
「女子のさ、佐藤っているだろ」
「わかんないけど」
「ええ、何で。塾だけじゃなくて学校でも同じクラスなのに? お前もうちょっとみんなとも仲よくすればいいのに」
「してるよ、田島くんとか」
「あーうん。ま、いいや。でさ、その佐藤がルイのこと、好きらしいぞ」
「え? そ、そんなこと言われても……俺こまる」
「何で。佐藤可愛いのに」
「い、いいよ。俺、そういうのこまる」
「ふーん? でもさーお前も俺もおんなじ顔なのに俺じゃなくてお前のが好きってさあ」
「……」
「佐藤って見る目あんな」
「えっ? 何で」
「だってお前、おとなしいけどやさしいし」
「……俺は俺よりリキみたいなのがいい」

 そんな話をしていると書店が目についた。真っすぐ帰ると約束していたが、今日は前から二人が楽しみにしていた漫画本の最終巻が発売される日でもあった。二人でコクリと頷き合い、書店に入る。二人で小遣いを出し合って目的の本を買った。
 書店を出ると流輝はさっそく本を開こうとする。

「ここで読むの?」
「だってこれで勇者が勝つのかってことと、お姫様とどうなるかってのと、元の世界に帰れんのかってわかるんだぞ。ずっと気になってたのにがまんできないだろ」

 だがその時、母親に持たされていた携帯電話にメッセージが届く音がした。子ども用携帯電話なのでかなり利用制限はあるものの、塾へ行くときなどに必ず持たされる。
 流輝は「あーもう」と唇を尖らせながら鞄から取り出し、『いま帰ってるとちゅう』と返信してそのまま携帯電話を鞄ではなく服のポケットにしまった。

「お母さんから?」
「そう。仕方ない、帰るか」
「うん。でもお腹空いたね」
「そっか。じゃあさ、もうちょい行ったらコンビニあるだろ。そこで肉まん買お?」
「でも早く帰らないとだよ」
「そうだけどルイ、腹減ったんだろ?」
「うん」
「だからちょっとだけ。一個買って半分こして、それ食べながら帰ったら多分時間かからないよ」
「そうだね、そうしたい!」

 二人は顔を合わせて微笑んだ。
 後でふと考えたりはした。

 俺たちはお母さんの言う通りに寄り道せず、真っすぐ帰ってたら運命は変わってたのかな。

 そのまま真っすぐ帰っていたら、美味しい夕食の後にケーキを食べて、そしてきっと準備してくれていたクリスマス兼誕生日プレゼントをもらって、二人でお互いのプレゼントを自慢したり交換したりして満足し、いつものように眠っていたのだろうか。翌日目を覚ましたら母親がいつものように「早くしなさい」などと言いながら朝食の準備をしていただろうか。
 今となっては考えてもわからない。だがふと考えてしまう。
 コンビニエンスストアに入ったところで、後ろから強引に入ってきた男と流輝はぶつかった。わりと強くぶつかったため、肩に下げていた鞄を落としてしまう。流輝はムッとしながら男を睨もうとした。目の端では、琉生が落とした鞄を拾おうとしてくれたのだろうか、前のめりになって屈もうとしているように見えた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...