双神の輪~紡がれる絆の物語~

Guidepost

文字の大きさ
3 / 120
1章 幼少編 異世界召喚

2話

しおりを挟む
 そこからの記憶が妙に曖昧というか、気づけば二人して落とし穴に落ちたような、急激に重力の赴くまま下へ引きずられるような、そして腹の奥がひゅっと縮こまるかのような気持ちの悪い感覚に包まれていた。

 俺らは今……どこにいるんだ……コンビニじゃない、の?

 気持ちの悪い感覚に顔を歪めつつ、流輝はハッとなり琉生を見た。とてつもなく思いきり落ちている感覚しかないというのに、琉生を見るとゆっくり漂っているかのように見える。だが琉生の顔色はとてつもなく悪かった。

「る……い」
「リキ……お腹、と背中……焼けるみたい、に痛……」

 すでに泣きそうな顔になりながら琉生が流輝へと手を伸ばそうとしてきた。
 腹と背中、と聞いて流輝の脳内でフラッシュバックのように何かに刺され血まみれの琉生が過った。だが目の前の琉生は顔色こそ悪いものの、どこにも血の色などない。

「る……」

 流輝も何とか手を伸ばそうとした。その時に男とも女とも、そもそも人間かどうかもわからない誰かがいつのまにか琉生のそばにいて触れていたことに気づく。むしろ何故気づかなかったのだろうと思っているとそれは流輝を見てきた。

 だ、誰……っ?

 だが幻だったのかと思えるくらい一瞬で消えた。
その後、その記憶すら消えた。



 目が覚めると群青色に浮かぶたくさんの星の海が見えた。ぼんやりとそれらを眺めていると大きな満月も見える。

 ……空……えっと、夜……。

 コンビニエンスストアにいたはずだというのに、いつの間に眠っていたのだろうかと思った後で、違和感に気づく。明らかに広がっているのは空のため、自宅の部屋からの景色ではない。それに耳慣れない何かが聞こえてくる。
 流輝はゆっくりと起き上がった。ほんのり頭が痛いが、他に支障はなさそうだ。隣を見ると琉生が眠っている。ハッとなり視線を琉生の体に巡らせるが何の変哲もない状態だ。出血などない。

 ……えっと、いや、俺何を心配してんだよ? 何で血?

 とりあえず琉生がそばで眠っていることにホッとして辺りを見る。どうやら自分たちは床の上に直接横たわって眠っていたようだ。今気づいたが、その床には何やら模様のようなものが一面に書かれている。何だろうと視線を動かしていき、どうやらファンタジーの世界でありそうな魔法円のようなものが書かれているのだと気づいた。
 少し離れた周りでは、見知らぬ大人たちがその魔法円を囲うようにして双子を見ながら立っている。所々に焚かれた松明に照らされた彼らは何やら双子を見て喋っているようなのだが、全く何を言っているのかわからない。流輝は英語も得意ではないが、それでもまだ学校で今の学年になって習ったばかりの英語のほうが全然マシだと思えた。
 流輝がびくり、と体を震わせていると琉生が目を覚ました。同じように戸惑いながら体を起こし、やはり周りの大人を見てびくりとしている。流輝と違うのは今もうすでに泣きそうになっているところだろうか。

「リキ……」
「ルイ」

 思わずお互い体を寄せ合ってぎゅっと抱きしめあう。それを見て、一番威厳のありそうな大人が何やら驚いたような困惑したような顔をして叫んだ。周りの大人たちも同じく困ったようにざわついている。わけがわからなくて怖くて、二人はさらに抱き合った。
 威厳の一番ありそうな大人が近くにいたフードを深く被った大人に何かを言っている。するとフードは頷き、あろうことか二人に近づいてきた。そして一瞬躊躇してから琉生に手をかざそうとした。それに対し琉生が真っ青になりながらびくりと怯える。流輝は弟が危ないと焦り、一旦琉生から離れると無我夢中でフードに体当たりした。思いもよらないことだったのだろう、フードは簡単にバランスを崩してよろけた。それをいいことに流輝はさらにフードにつかみかかろうとした。
 暴れる流輝を、他の大人たちが駆け寄ってきて慌てて止めようと、捕まえようとする。琉生はもはや思いきり怯えて泣いていた。
 その時、威厳ある大人が何かを言い放った。とたんに他の大人たちの動きが止まる。流輝はハッとなり、琉生に手を伸ばし立ち上がらせようとした。逃げられるかわからないが、やってみなくてはこれまたわからない。
 だがその前に先ほどのフードから何か唱えるかのような声が聞こえてきた。次の瞬間には流輝も琉生も意識を手放していた。



 流輝が「一番威厳がありそうな大人」と見ていたのはこの国の王だった。
 先ほど流輝たちが目を覚まし怯えたように抱きしめあう様子を見て叫んだのは、実際驚いたからだった。
 確かに勇者を召喚した。それに間違いはない。だが青年一人が召喚されるものとばかり思っていたというのに目の前にはあまりに幼い子ども二人がいたのだ。驚かないほうがおかしい。
 ただでさえ実際子どもな上に、この世界の者からすれば流輝たち日本人は幼く見えた。おまけに二人ともがとても小柄で、王たちからすれば九歳どころか六歳くらいにしか見えなかった。
 それでもとりあえず王はフードを被った術者に二人の適正を調べるよう命令した。何らかの問題が発生でもして間違って呼び寄せたとしたら取り返しがつかない過ちを犯してしまったことになる。せめてこの二人の内どちらかに「光の救世主」としての適性がありますようにと願わずにはいられない。
 だが命じられた術者が二人のうち片方に手をかざそうとすると、もう片方の子どもが暴れ始めた。驚いた周りは慌ててその子どもを止めようと皆近づいていく。すると暴れていない子どもが相当怯えているのだろう、泣き始める。

「皆、落ち着きなさい! 子どもたちが怖がっている。丁重に扱いなさい!」

 王は急いで叫ぶと、また術者に命じた。

「とりあえずあの二人を眠らせてやってくれないか。今のままでは怯える一方だ」
「承知しました」

 術者は呪文を唱え、二人を魔法で眠らせた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...