7 / 120
1章 幼少編 異世界召喚
6話
しおりを挟む
何が起こったのかわからなくて、流輝は口を開けてぽかんとしていた。だがハッとなり隣を見ると琉生もぽかんとしている。涙は枯れているようだ。
倒れた恐ろしい生き物のそばで、漫画に出てくる騎士のような恰好をした人が同じく漫画で見るような剣をぶんっと振るうと鞘にしまう。そして二人に駆け寄ってきた。気づけば恐ろしい生き物たちは皆他の同じような格好をした人たちによって倒されていた。
駆け寄ってきた人は相変わらず何を言っているのかわからないが、少なくとも人さらいのような下卑た笑みなど浮かべておらず、おそらく心配そうに二人を見ている。その人の目の色はやはり元の世界では見ることのない赤っぽいオレンジ色に似た色をしていたが、双子と少しだけ似たような髪の色をしているからだろうか、何となく流輝はホッとした。
似た色っていうか、ねずみ色っぽい、けど……。
『お怪我はありませんか』
『おい、フラン。魔獣も倒したことだし、とりあえずさっさとこいつら連れて戻ろうぜ』
『口を慎むんだ、キャス。この人たちは特別な存在だぞ』
『どうせ俺らが何言ってんのかわからないんだろ? なら気にすることないじゃないか』
『……はぁ。本当にお前は剣の腕だけだな』
『はぁ? 何……』
『いいから馬車をこちらへ回すよう手配してこい』
『何で俺が……』
もう一人、同じ色ではないもののやはり赤っぽいオレンジ色をした目の色に、髪の色も綺麗な赤っぽいオレンジ色をした人が近づいてきて何やら二人で話しているようだった。その後何やらぶつぶつ言いながらため息をつくとオレンジ色の髪の人はこの場を離れていった。
ねずみ色の髪の人は他の人たちにも何やら指示しているようだ。その内馬車がやってきて、双子は促されるままおとなしくそれに乗った。相変わらず言葉は全くわからないしこのまま二人がどうなるのかもわからないが、少なくとも騎士のような恰好をした人たちは二人を助けてくれた。ということは多分危害をくわえられることはないだろうし、もしかしたら昨日の人たちも自分たちに危害はくわえるつもりはないのかもしれないとさえ思えた。
むしろ外のほうが危険だった。この上なく危険だった。何もわかっていない二人なら一日どころか数時間もせずに死ぬだろうし、現に死にかけた。それを思い出し、流輝は今さらながらに震えが来た。
「リキ、大丈夫……? ごめん。俺が頼りなくて。ごめん……ごめん」
「ばっ、ばか。ルイが謝ることじゃねーだろ。それ言うなら俺だって頼りない。泣くな。大丈夫だから。つってもさすがにちょっと怖かったよな。それ思い出して今頃びびってきてさ」
「……うん。うん……」
「……もし。もし、な、ルイ」
「うん」
「もし、俺らがしばらくここから抜け出せないなら、さ」
「……うん」
「助けてくれたし、この人らの元にいたほうが安全な気がする」
「うん……俺もそう思う」
「きっと、さ。きっと元に戻れるよ。それまではとりあえず抜け出したお城みたいなとこでおとなしくしてよう」
「うん。そうだね」
そんな話をしながら、まるで暖を取るかのように二人は寄り添っていた。もちろん実際は寒くない。元の世界では雪も降っていたが、もし季節があるとしてだが、ここはまるで春のような気温に感じられる。それでも心細さからお互いの体温を感じることでかろうじて安心できた。
城のようなところへ戻ると、昨日見た威厳のありそうな大人の元へ連れていかれた。とても広い部屋の階段のようなところの上にある豪華な椅子に座っていたのでもしかしたら物語に出てくるような王さまなのかもしれないと流輝は思う。そんな人ですら心配そうな顔で二人に駆け寄ってきた。やはりここにいるのが一番安全なのかもしれない。何を言っているのかわからなくてもどかしいが、それは外へ出ても同じことだ。なら追いかけられたり殺されそうになったりする外より断然、ここがいいに決まっている。
二人がしばらくここでおとなしくしていようと決めたこの日から、どんな話があったのかわからないが助けてくれたねずみ色の髪の人とオレンジ色の髪の人が二人のそばに絶えずいるようになった。おそらくだが、流輝と琉生、それぞれについているように感じられる。ねずみ色のほうが琉生、オレンジ色のほうが流輝の担当であるようだ。
ねずみの人は全然顔の表情変わらないけど、すごく丁寧そうだし何より強そうだよな。オレンジの人は表情すごく変わるけど、何だろう、俺のこと? それとも俺らのことかな、あまり好きじゃなさそう。何となく俺もねずみの人のがよかったな。……ううん、でもやっぱルイでよかったかも。ねずみの人強そうだし、それにオレンジの人だったらルイ、怖がるかもしんねーしな。
言葉が通じないのは仕方がないとして、名前もわからないのはなんとなく落ち着かなかった。それぞれについているとはいえ、基本的に琉生とずっと一緒の流輝はねずみ色の人とオレンジ色の人二人そろっている状態でじっと見上げ、注意を引
いた。
『何か?』
『おい、話しても通じねえだろ』
『お前は黙ってろ』
『何だよクソ』
「あの! えっと、さ。俺、リキ。こいつ、ルイ」
通じるかわからないが、とりあえず何かお互い喋っている騎士二人にもう一度注意を促してから、流輝は再度自分を指差して「リキ」、琉生を指差して「ルイ」とゆっくり喋った。騎士二人は黙ったまま流輝を見ている。
もう一度だけ自分と琉生をそれぞれ指差しながら名前を名乗り、最初にねずみ色の人を指差して首を傾げた。
『……ああなるほど。リキ……様とルイ? 様です、ね? 俺はフラン・ブライスと申します』
わかってくれたのか、何やら言ってくれているがどの部分が名前かわからない。困惑して首をまた傾げるとオレンジ色の人が何やら言っている。
『長文はわかんねえだろ』
『そう、だな。しかし無礼な口を利くのは……』
『おい。キャス・ヒューズ。キャスだ。キャス』
オレンジ色の人が自分を指差し間違いなく何度か「きゃす」と発音した。
「キャ、キャス……?」
恐る恐る繰り返すと頷いてくれた。そして隣のねずみ色の人を差し『フラン』と言ってくれた。
倒れた恐ろしい生き物のそばで、漫画に出てくる騎士のような恰好をした人が同じく漫画で見るような剣をぶんっと振るうと鞘にしまう。そして二人に駆け寄ってきた。気づけば恐ろしい生き物たちは皆他の同じような格好をした人たちによって倒されていた。
駆け寄ってきた人は相変わらず何を言っているのかわからないが、少なくとも人さらいのような下卑た笑みなど浮かべておらず、おそらく心配そうに二人を見ている。その人の目の色はやはり元の世界では見ることのない赤っぽいオレンジ色に似た色をしていたが、双子と少しだけ似たような髪の色をしているからだろうか、何となく流輝はホッとした。
似た色っていうか、ねずみ色っぽい、けど……。
『お怪我はありませんか』
『おい、フラン。魔獣も倒したことだし、とりあえずさっさとこいつら連れて戻ろうぜ』
『口を慎むんだ、キャス。この人たちは特別な存在だぞ』
『どうせ俺らが何言ってんのかわからないんだろ? なら気にすることないじゃないか』
『……はぁ。本当にお前は剣の腕だけだな』
『はぁ? 何……』
『いいから馬車をこちらへ回すよう手配してこい』
『何で俺が……』
もう一人、同じ色ではないもののやはり赤っぽいオレンジ色をした目の色に、髪の色も綺麗な赤っぽいオレンジ色をした人が近づいてきて何やら二人で話しているようだった。その後何やらぶつぶつ言いながらため息をつくとオレンジ色の髪の人はこの場を離れていった。
ねずみ色の髪の人は他の人たちにも何やら指示しているようだ。その内馬車がやってきて、双子は促されるままおとなしくそれに乗った。相変わらず言葉は全くわからないしこのまま二人がどうなるのかもわからないが、少なくとも騎士のような恰好をした人たちは二人を助けてくれた。ということは多分危害をくわえられることはないだろうし、もしかしたら昨日の人たちも自分たちに危害はくわえるつもりはないのかもしれないとさえ思えた。
むしろ外のほうが危険だった。この上なく危険だった。何もわかっていない二人なら一日どころか数時間もせずに死ぬだろうし、現に死にかけた。それを思い出し、流輝は今さらながらに震えが来た。
「リキ、大丈夫……? ごめん。俺が頼りなくて。ごめん……ごめん」
「ばっ、ばか。ルイが謝ることじゃねーだろ。それ言うなら俺だって頼りない。泣くな。大丈夫だから。つってもさすがにちょっと怖かったよな。それ思い出して今頃びびってきてさ」
「……うん。うん……」
「……もし。もし、な、ルイ」
「うん」
「もし、俺らがしばらくここから抜け出せないなら、さ」
「……うん」
「助けてくれたし、この人らの元にいたほうが安全な気がする」
「うん……俺もそう思う」
「きっと、さ。きっと元に戻れるよ。それまではとりあえず抜け出したお城みたいなとこでおとなしくしてよう」
「うん。そうだね」
そんな話をしながら、まるで暖を取るかのように二人は寄り添っていた。もちろん実際は寒くない。元の世界では雪も降っていたが、もし季節があるとしてだが、ここはまるで春のような気温に感じられる。それでも心細さからお互いの体温を感じることでかろうじて安心できた。
城のようなところへ戻ると、昨日見た威厳のありそうな大人の元へ連れていかれた。とても広い部屋の階段のようなところの上にある豪華な椅子に座っていたのでもしかしたら物語に出てくるような王さまなのかもしれないと流輝は思う。そんな人ですら心配そうな顔で二人に駆け寄ってきた。やはりここにいるのが一番安全なのかもしれない。何を言っているのかわからなくてもどかしいが、それは外へ出ても同じことだ。なら追いかけられたり殺されそうになったりする外より断然、ここがいいに決まっている。
二人がしばらくここでおとなしくしていようと決めたこの日から、どんな話があったのかわからないが助けてくれたねずみ色の髪の人とオレンジ色の髪の人が二人のそばに絶えずいるようになった。おそらくだが、流輝と琉生、それぞれについているように感じられる。ねずみ色のほうが琉生、オレンジ色のほうが流輝の担当であるようだ。
ねずみの人は全然顔の表情変わらないけど、すごく丁寧そうだし何より強そうだよな。オレンジの人は表情すごく変わるけど、何だろう、俺のこと? それとも俺らのことかな、あまり好きじゃなさそう。何となく俺もねずみの人のがよかったな。……ううん、でもやっぱルイでよかったかも。ねずみの人強そうだし、それにオレンジの人だったらルイ、怖がるかもしんねーしな。
言葉が通じないのは仕方がないとして、名前もわからないのはなんとなく落ち着かなかった。それぞれについているとはいえ、基本的に琉生とずっと一緒の流輝はねずみ色の人とオレンジ色の人二人そろっている状態でじっと見上げ、注意を引
いた。
『何か?』
『おい、話しても通じねえだろ』
『お前は黙ってろ』
『何だよクソ』
「あの! えっと、さ。俺、リキ。こいつ、ルイ」
通じるかわからないが、とりあえず何かお互い喋っている騎士二人にもう一度注意を促してから、流輝は再度自分を指差して「リキ」、琉生を指差して「ルイ」とゆっくり喋った。騎士二人は黙ったまま流輝を見ている。
もう一度だけ自分と琉生をそれぞれ指差しながら名前を名乗り、最初にねずみ色の人を指差して首を傾げた。
『……ああなるほど。リキ……様とルイ? 様です、ね? 俺はフラン・ブライスと申します』
わかってくれたのか、何やら言ってくれているがどの部分が名前かわからない。困惑して首をまた傾げるとオレンジ色の人が何やら言っている。
『長文はわかんねえだろ』
『そう、だな。しかし無礼な口を利くのは……』
『おい。キャス・ヒューズ。キャスだ。キャス』
オレンジ色の人が自分を指差し間違いなく何度か「きゃす」と発音した。
「キャ、キャス……?」
恐る恐る繰り返すと頷いてくれた。そして隣のねずみ色の人を差し『フラン』と言ってくれた。
0
あなたにおすすめの小説
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる