双神の輪~紡がれる絆の物語~

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1章 幼少編 異世界召喚

20話

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 琉生がまだ眠っている間に、流輝はそばについていてくれたカルナに「この世界のこと、もっと知りたいんだ。教えて欲しい」と頼んだ。カルナは微笑み「ではモリスが帰ってきてから改めてそのことについて話しましょう」と言ってくれた。流輝は頷く。
 元の世界でも流輝が母親だけで済ませられないような何か悪いことをやらかした時は夜、父親が帰ってきてから改めて報告され、叱られた。何となくそれを思い出した。もしかしたらモリスもさすがに怒るかもしれない。知らなかったとはいえ、勝手に魔法を覚え、勝手に使い、挙句大事な琉生をある意味殺しかけたようなものだ。
 昔、本当の父親に流輝が叱られていた時、「だって知らなかったし」と口を尖らせながら言えば「無知は罪なり、知は空虚なり、英知持つもの英雄なり」という言葉を教えられたことがある。その時は一体父親が何語を喋っているのかさえわからなかった。どこかの偉人が言った言葉なのらしい。父親いわく「知らないってことは自慢できることじゃない。むしろ罪だってことだ。でも知識だけあっても行動しなければ意味がない。知識がある上で行動する人こそが優れた人だって意味だ」らしいが、それを聞いても全然ピンとこなかった。何の話をしているのかさえわからなかった。
 今でも難しい言葉は元の世界の言葉だろうがこちらの世界の言葉だろうがわからない。だが、父親が言っていたことは何となくわかる気がした。きっとこの世界では特に必要な言葉かもしれない。
 王の補佐として王宮に勤めているモリスが帰ってきて話を聞いても叱りはしなかったが、「何故知りたいと思ったんだい」と穏やかに聞かれた。

「俺、俺……ルイを守りたいんだ。お兄ちゃんだから。でも俺、こっちの世界来てからルイを危険な目に遭わせてばかりな気がするんだ。きっと俺が無知で無謀だからだと思った。だから勉強したい。知らないで済ませてちゃ駄目なんだ。だから、教えてください」

 二人は流輝の真剣な様子を見て「わかった」と頷いてきた。

「私も悪かった」
「そうね、私も」
「モリスとカルナが? 何で」
「君たちはつらい思いをしているからと、私たちはどこか腫れ物を扱うように接してきたかもしれない。君たちがこの世界のことをよく知らないなんて考えなくてもわかることなのに、無理強いして勉強させ嫌われたくないさえ思っていた。情けないことにね。保護者失格だな」
「でも、それじゃあ本当の親子になんてなれないものね。これからは厳しくするところは厳しくします」

 笑みを浮かべながら言ってくる二人に、流輝は少しくすぐったいような気持ちを覚えつつ笑った。

「厳しくは、なくてもいいかなあ」
「残念だね。びしばし行かせてもらうよ。毎日遊んでばかりはもうできないぞ。これからはしっかり勉強していこう」
「はは。うん。お願いします」

 その日以来、流輝は真面目に教えを受けるようになった。もちろん琉生も同じように教えてもらいたがった。
 どのみち本来なら十三歳になると王都にある学園で学ぶようになる。双子の一つ年上であるローザリアはすでに学生としてがんばっているようだ。ただ十三となる年ではあっても二人はとりあえず一年はモリスとカルナの元で常識を身につけたいと願った。
 元の世界でも両親は双子への躾は結構厳しかったように思う。それでも世界自体が双子にとって気楽でのどかでしかなかったため、たくさんのことを知識として吸収しなければ下手をすると生きていけないなどと思う必要がなかった。そのため最初はただでさえ異世界の常識に関してたくさんのことを教えてもらうのにも戸惑いや疲労もあったが、諦める気持ちだけは湧かなかった。



 一方、双子についての報告で琉生が倒れた話を聞き、王宮では王のノアが頭を抱える勢いでため息をついていた。
 双子を召喚してからもう何年も経つ。今も着々と年月が過ぎている。だが双子を元の世界へ戻す方法はいまだに見つかっていなかった。
 文献の中には、光の神殿へ入った光の救世主は役目を果たすとそのまま消えたといった記述もある。だからもしかしたら光の神殿に何か手がかりや秘密がある可能性も否めない。だが光の魔力がない者は光の神殿には爪の先すら入ることが不可能なため、調べようがなかった。世界最強の属性と言われている光の魔力は光の救世主しか基本持ち得ず、神殿に入ることが許されているのは救世主だけだった。その資格のない者が扉に触れようとするだけで包まれている強力な魔力に耐え切れず消滅してしまうだろう。
 およそ七年もすれば双子は二十歳になる。正しい計算によればその頃に本来召喚の儀が行われるはずだった。二十歳であれば心身ともに成長した大人であるが、今の二人には、正確に言うと微量ながらに光魔法を保持している琉生には、まだ荷が重いことだ。例え今でも神殿に入られたとしても、ノアは琉生に「神殿に入ってみてくれ」などと到底言えるはずもなかった。光の魔力に守られている神殿なので魔獣や魔族はまず存在しないとは思われる。だが誰も神殿の中に何があるかわからないのだ。そんな場所へまだ子どもである琉生に入ってくれなどと言えるわけがない。
 結局このままでは二人の成長を待って、光の神殿にて聖杯に光の魔力を送り込む儀式をしてもらうことになるだろう。他国もそれを望んでいる。ただやはりノアとしては元の世界へ帰してやりたいと思うし、その手がかりを何としてでも見つけてあげたいと思う。

 で、私はこうしてただため息をつくだけなのか。何と役立たずで情けない王なのか。

 ノアは手で顔を覆った。
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