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1章 幼少編 異世界召喚
19話
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「そういえば初めてお会いしますね。ルイ様が倒れられているってことはあなたのほうがリキ様? どちらにしても同じ顔をされてるので私には区別がつきそうにありませんが」
「そんなのはいいから早くしろ……!」
流輝が目に涙を溜めたまま戸惑っているとキャスがせっついた。
「せっかちですねえ。そういうのはお相手に嫌われますよ。まああなたにそういったお相手がいるとは思いませんが」
「うるせぇ……! いいからさっさと」
「はいはい。とりあえずリキ様。私はソリア・モーランと申します。お見知りおきを。そしてご安心くださいね。すぐにルイ様はよくなられますから」
「……ほんと?」
「ええ。ふふ。なんてかわいらしいんでしょうね。ああもう、はいはい。そんなに睨まないでくださいよキャス」
ニコニコとしながらソリアはベッドに近づいた。そして横たわっているルイの手を持つと、人差し指の腹をすっとさすった。するとまるで小さな針で刺したかのように琉生の指にほんのわずかの血が盛り上がる。それを見ても流輝は動かなかった。何をし出すのかさっぱりわからないし琉生の手からほんのわずかでも血が出たことで一瞬大きな不安が湧き上がりそうだったが、すぐに気持ちは落ち着いてくる。ひたすら飄々とした様子だというのにソリアの「ご安心くださいね。すぐにルイ様はよくなられます」という言葉は何故か妙に説得力があり、不安と悲しみの塊だった流輝の心をずいぶん落ち着かせてくれていた。
ソリアは自分の指には魔法か何かではなく自ら噛みつくことでわずかな出血を促した。そしてそのままお互いの血をすり合わせるかのようにして琉生の手を握る。何やら呪文を唱えると二人の手の周りにまるで土から生えてきたかのように緑に光る透明な葉をつけた蔓が広がり、それらは琉生の腕へ巻きつくとスッと消えていった。
その様子を流輝はほんのり口をポカンと開けたまま食い入るように眺めていた。おそらく今のも魔法なのだろう。なんて綺麗なのだろうと思った。そしてなんて不思議で興味深いのだろうと。
少しすると青いというより真っ白だった琉生の顔色に赤みが差した。
「もう大丈夫ですよ。ですが念のため、このまま眠らせてあげましょうね」
少し疲れたようなため息をついてから琉生から手を離し、流輝に微笑んできたソリアの言葉に、流輝はホッとして足元から崩れそうになった。慌ててキャスが支えようとしてくれたが、流輝は首を振って自分で何とか堪え、ベッドにそっと近づいた。
「……ごめん……ルイ、本当にごめんなさい……無事で……よかった……」
そっと琉生を起こさないよう端のほうに覆いかぶさると流輝は細く深い息を吐いた。
部屋を出てからソリアに礼を言うと微笑まれ、その後でどういうことだったのか改めて話を聞いた。
ゲームの世界では魔力が0になろうが死なないし、専用の薬を飲むか宿屋などで休めば回復する。だがこの世界は現実だった。魔力がなくなる、イコール「死」なのだとそして知った。本来なら小さな子どもでも知っている常識のようだ。流輝たちの元の世界で車に思い切りはねられたり、かなり高いところから落ちたりしたらほぼ死ぬと誰もがわかっているのと同じように常識的な知識らしい。
だから皆はあえて通信魔法を使わない。そんなことをしなくとも魔術具である通信機を使うのだという。そういうものがあるのも流輝は初めて知った。
「スマホみたいなもの?」
「すまほ、というものが残念ながら私にはわかりかねますが、リキ様たちが元の世界でお使いになられていた通信機だというなら多分そういうものだと認識してください。魔石が使われていてその力で通信します」
「通信魔法はそんなに魔力使うの?」
「そうですね。かなり効率が悪いです。緊急で使うこともありますが、術者以外はまず発動するのも大変でしょうね。普通はそこまで人に魔力量がないんですよー。ですので普通の人が使ってもすぐに魔力が枯渇してしまいます」
そんな危険を冒してまで通信魔法を使おうと思う者はまずいないだろうとソリアはニコニコ言ってきた。魔力が減っても休んだり眠れば回復するが、さすがに0になれば死んでしまう。元の世界でそもそも魔力がなかったのでいまいちピンとこないが、体力を示すHPがなくなれば戦闘不能どころか死んだりするゲームもある。要は精神を示すMPもなくなれば死ぬというハードモードということだろうか。
「……こえぇ……」
「ふふ。普通の人はそもそもそんなに魔力ありませんから0になるまで使うことすら難しいですよ」
「そうなの?」
「ええ。あなたの魔力が半端ないんです。私もかなり強いと自負していましたが、私も敵わないほどの量を保持されていると思います。底なしなくらい」
「俺が?」
そして琉生は流輝と違って元々魔力量が普通の人よりも少ないようだとソリアは言った。通信の際は魔力の強い流輝がほぼ力を使っていたようだが、受ける側の琉生もどうしたって多少なりとも使用することになる。そのため琉生は元々少ない魔力が0に近いほど消費しきって危険な状態だったのだと。
流輝はまた涙がこぼれた。完全に流輝のせいだ。流輝が魔法の本を読んで通信魔法を見つけ、これをやろうと琉生を誘った。そして使う必要がない状態であろうが面白がって使っていた。
今までだってそうだ。琉生も同意してはいるが、大抵流輝が言い出したことに同意してくれているだけで、流輝が振り回している。
情けない。恥ずかしい。そんなで俺はよくルイを守るなんてえらそうに思ってたな。……俺は……もっとしっかりしなきゃ。それに周りを知らなきゃだめだ。
まだ子どもながらに流輝は無知で無謀な行動や知識がないことが恐ろしい結果を招くと思い知った。そしてこの世界のことももっとたくさん知らなければと身をもって感じた。
「そんなのはいいから早くしろ……!」
流輝が目に涙を溜めたまま戸惑っているとキャスがせっついた。
「せっかちですねえ。そういうのはお相手に嫌われますよ。まああなたにそういったお相手がいるとは思いませんが」
「うるせぇ……! いいからさっさと」
「はいはい。とりあえずリキ様。私はソリア・モーランと申します。お見知りおきを。そしてご安心くださいね。すぐにルイ様はよくなられますから」
「……ほんと?」
「ええ。ふふ。なんてかわいらしいんでしょうね。ああもう、はいはい。そんなに睨まないでくださいよキャス」
ニコニコとしながらソリアはベッドに近づいた。そして横たわっているルイの手を持つと、人差し指の腹をすっとさすった。するとまるで小さな針で刺したかのように琉生の指にほんのわずかの血が盛り上がる。それを見ても流輝は動かなかった。何をし出すのかさっぱりわからないし琉生の手からほんのわずかでも血が出たことで一瞬大きな不安が湧き上がりそうだったが、すぐに気持ちは落ち着いてくる。ひたすら飄々とした様子だというのにソリアの「ご安心くださいね。すぐにルイ様はよくなられます」という言葉は何故か妙に説得力があり、不安と悲しみの塊だった流輝の心をずいぶん落ち着かせてくれていた。
ソリアは自分の指には魔法か何かではなく自ら噛みつくことでわずかな出血を促した。そしてそのままお互いの血をすり合わせるかのようにして琉生の手を握る。何やら呪文を唱えると二人の手の周りにまるで土から生えてきたかのように緑に光る透明な葉をつけた蔓が広がり、それらは琉生の腕へ巻きつくとスッと消えていった。
その様子を流輝はほんのり口をポカンと開けたまま食い入るように眺めていた。おそらく今のも魔法なのだろう。なんて綺麗なのだろうと思った。そしてなんて不思議で興味深いのだろうと。
少しすると青いというより真っ白だった琉生の顔色に赤みが差した。
「もう大丈夫ですよ。ですが念のため、このまま眠らせてあげましょうね」
少し疲れたようなため息をついてから琉生から手を離し、流輝に微笑んできたソリアの言葉に、流輝はホッとして足元から崩れそうになった。慌ててキャスが支えようとしてくれたが、流輝は首を振って自分で何とか堪え、ベッドにそっと近づいた。
「……ごめん……ルイ、本当にごめんなさい……無事で……よかった……」
そっと琉生を起こさないよう端のほうに覆いかぶさると流輝は細く深い息を吐いた。
部屋を出てからソリアに礼を言うと微笑まれ、その後でどういうことだったのか改めて話を聞いた。
ゲームの世界では魔力が0になろうが死なないし、専用の薬を飲むか宿屋などで休めば回復する。だがこの世界は現実だった。魔力がなくなる、イコール「死」なのだとそして知った。本来なら小さな子どもでも知っている常識のようだ。流輝たちの元の世界で車に思い切りはねられたり、かなり高いところから落ちたりしたらほぼ死ぬと誰もがわかっているのと同じように常識的な知識らしい。
だから皆はあえて通信魔法を使わない。そんなことをしなくとも魔術具である通信機を使うのだという。そういうものがあるのも流輝は初めて知った。
「スマホみたいなもの?」
「すまほ、というものが残念ながら私にはわかりかねますが、リキ様たちが元の世界でお使いになられていた通信機だというなら多分そういうものだと認識してください。魔石が使われていてその力で通信します」
「通信魔法はそんなに魔力使うの?」
「そうですね。かなり効率が悪いです。緊急で使うこともありますが、術者以外はまず発動するのも大変でしょうね。普通はそこまで人に魔力量がないんですよー。ですので普通の人が使ってもすぐに魔力が枯渇してしまいます」
そんな危険を冒してまで通信魔法を使おうと思う者はまずいないだろうとソリアはニコニコ言ってきた。魔力が減っても休んだり眠れば回復するが、さすがに0になれば死んでしまう。元の世界でそもそも魔力がなかったのでいまいちピンとこないが、体力を示すHPがなくなれば戦闘不能どころか死んだりするゲームもある。要は精神を示すMPもなくなれば死ぬというハードモードということだろうか。
「……こえぇ……」
「ふふ。普通の人はそもそもそんなに魔力ありませんから0になるまで使うことすら難しいですよ」
「そうなの?」
「ええ。あなたの魔力が半端ないんです。私もかなり強いと自負していましたが、私も敵わないほどの量を保持されていると思います。底なしなくらい」
「俺が?」
そして琉生は流輝と違って元々魔力量が普通の人よりも少ないようだとソリアは言った。通信の際は魔力の強い流輝がほぼ力を使っていたようだが、受ける側の琉生もどうしたって多少なりとも使用することになる。そのため琉生は元々少ない魔力が0に近いほど消費しきって危険な状態だったのだと。
流輝はまた涙がこぼれた。完全に流輝のせいだ。流輝が魔法の本を読んで通信魔法を見つけ、これをやろうと琉生を誘った。そして使う必要がない状態であろうが面白がって使っていた。
今までだってそうだ。琉生も同意してはいるが、大抵流輝が言い出したことに同意してくれているだけで、流輝が振り回している。
情けない。恥ずかしい。そんなで俺はよくルイを守るなんてえらそうに思ってたな。……俺は……もっとしっかりしなきゃ。それに周りを知らなきゃだめだ。
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