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2章 学生編 生きる覚悟
25話
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学園の制服は薄いグレーのズボンに白のカッターシャツ、そして黄色のネクタイにベスト、そしてまるで燕尾服のようなジャケットだった。前はベストよりも短い丈に背中の裾は二つに分かれていてロングコートのように長い。丈はひざ下まである。ベストとジャケットの襟や袖口、そしてウエストあたりのベルトのようなデザインの部分は赤色をしている。ジャケットの全体的な色味は白と濃いグレー、そして前身ごろの辺りがそれより少し薄いグレーといった色合いだった。ベストの裾や所々に金色の刺繍がアクセントのように飾られていて、流輝が元の世界で見かけていた中学生や高校生の制服とは全く異なるデザインだった。
「むしろ王族っぽいよな」
「でも庶民も王族も皆基本同じデザインみたいだよ。ああ、ただ王族の人らはこれにさらにマントもあるみたいだけど」
「前にローザリアが見せてくれたやつか」
ペリースのような、片方の肩にだけかけるデザインのマントだった。だがマントがあるだけでただでさえ豪勢そうな制服はさらに威厳があるように見えたなと流輝は思い出す。
「二人とも着てみた?」
カルナが嬉しそうに顔をのぞかせてきたので、双子は制服を着た姿を見てくれと言わんばかりに手を広げるようなポーズをとってカルナの前に立つ。
「まあ、とてもよく似合ってるじゃないの。きっとあなたたちが一番ね」
「……親バカみたいなこと言ってる」
照れくさくて流輝が呟くのを聞くと、カルナはさらに嬉しそうな顔をしてきた。
「馬鹿にもなります。本当にとても似合ってるわ。きっと令嬢たちが放っておかないわよ」
「なに言ってんだよ」
「あはは、兄さん、さっきから照れてるんだよ」
「うるさいルイ、照れてねえ」
流輝たちは一年遅れで入学したものの、クラスは年齢、学年別ではなくごちゃ混ぜのようなので年齢で浮くということはないようだった。だが学園の敷地内に入った時から何故かやたら色んな人に見られる気がする。
「……もしかして着方とか間違ってんのか?」
「うーん、違うと思う。多分俺たちの髪色や目の色が珍しいんじゃない? 黒っぽい色の人はいても、俺らみたいに純粋に黒い色をそれも髪と目の色両方って人はいなさそうだし」
「ああ、なるほど」
確かに琉生の言う通りだと流輝も納得した。流輝からすれば赤や黄色の髪だったり黄色や青の目のほうがよっぽど当初は珍しかった。さすがに見慣れたが、流輝たちを知らない人たちからすれば双子の色は見慣れない色だろうし気にもなるのだろう。
これ、皆遠巻きになったりして友だちできないやつかな。さすがに小さい子どもじゃねえし髪や目の色で差別してくるとかはない、とは思いたいけど……。
流輝の考えはだが杞憂に過ぎなかった。自分たちのクラスに入ると、とりあえず女子たちが何人もニコニコと近寄って話しかけてきた。
「あなたたちがベレスフォード大公爵のところの双子? 私、クリスティア侯爵令嬢のレインピアと申します。お二人のお名前はなんとおっしゃるんですの?」
「はじめまして。私、セレスティア伯爵の長女、イデナと申しますの」
基本的に学園では身分での扱いの違いはないと聞いた。王族も貴族も平民も同じ学校だからだろう。身分差を考慮しない学園らしく気軽に向こうから話しかけてくれるのはありがたいが、先ほどから公爵だの侯爵だの伯爵だのなんだの名乗られたりして流輝としてはすでに頭が混乱している。ただでさえ貴族に対しての呼び方など身近ではなさすぎて教えてもらっても首を傾げたくなっていたというのに、一気に言われると困る。
だが琉生はニコニコとしながら「はじめましてレディ・アナスタシア」だの「よろしくお願いしますミス・グレース」だの、さらりと対応している。
「お前、貴族向いてんじゃね?」
ようやく予鈴が鳴り、案外皆真面目に席につきだすと流輝は頬杖をつきながら琉生を見た。
「貴族が向いてるって何」
「何となく」
「変な兄さん」
「昔はちょっと、佐藤がルイ好きらしいぞとか言ったくらいですげー動揺してたのに。かわいいルイはどこへ行ったの」
「ここにいるよ」
苦笑しながら流輝を見てくる琉生に、流輝も笑いかけた。
流輝たちのクラスはヘーリオスという名前のクラスだった。この世界では双子でもクラスは特に分けられないようだ。ちなみにヘーリオスには太陽という意味がある。1組とかA組といった呼び方でなくそれぞれ名前がついているようだ。他に月という意味のセレーネと星という意味のアステリというクラスが王族、貴族のクラスになる。空という意味のウラノスと海という意味のサラサの二組が平民のクラスのようだ。
貴族と平民が分かれているのは身分差といったことではなく、そもそも覚えなければならない優先知識が違うからだ。平民は生活に直接かかわるような一般教養を中心に学ぶが、ノブレス・オブリージュを重要視する貴族たちは財産や権力、社会的地位の保持だけでなく、それこそ平民を守らなければならない義務もあり、一般教養も平民のそれとは全然異なる。
一応一般的な勉強も学ぶし、おそらくそれらは貴族も平民も共通しているとは思うが、そういう理由でクラスは分かれていた。
ただ十六歳から増える選択科目に関しては貴族も平民も分かれていないらしい。
選択科目は薬学、論理学、魔法学などを学ぶ魔術科、神学などを学ぶ聖職科、戦術学や騎士道などを学ぶ騎士科、商学や経営学を学ぶ商人科、そして法学や政治学を学ぶ経済学科の五つから選択すると聞いた。入学したばかりの流輝は今のところどの科を選択したいといった希望はないが、通っている内にやりたいこともできるだろうと何となく思っている。
以前キャスの子ども時代の話を聞いた時に「そんなに早くから将来のことを考えているのか」と思ったが、流輝は十四歳の年になってもまだ特になにもない。もしかしたら今でも元の世界へ帰る希望を捨てていないからやりたいことも見つけられないでいるのかもしれない。
「むしろ王族っぽいよな」
「でも庶民も王族も皆基本同じデザインみたいだよ。ああ、ただ王族の人らはこれにさらにマントもあるみたいだけど」
「前にローザリアが見せてくれたやつか」
ペリースのような、片方の肩にだけかけるデザインのマントだった。だがマントがあるだけでただでさえ豪勢そうな制服はさらに威厳があるように見えたなと流輝は思い出す。
「二人とも着てみた?」
カルナが嬉しそうに顔をのぞかせてきたので、双子は制服を着た姿を見てくれと言わんばかりに手を広げるようなポーズをとってカルナの前に立つ。
「まあ、とてもよく似合ってるじゃないの。きっとあなたたちが一番ね」
「……親バカみたいなこと言ってる」
照れくさくて流輝が呟くのを聞くと、カルナはさらに嬉しそうな顔をしてきた。
「馬鹿にもなります。本当にとても似合ってるわ。きっと令嬢たちが放っておかないわよ」
「なに言ってんだよ」
「あはは、兄さん、さっきから照れてるんだよ」
「うるさいルイ、照れてねえ」
流輝たちは一年遅れで入学したものの、クラスは年齢、学年別ではなくごちゃ混ぜのようなので年齢で浮くということはないようだった。だが学園の敷地内に入った時から何故かやたら色んな人に見られる気がする。
「……もしかして着方とか間違ってんのか?」
「うーん、違うと思う。多分俺たちの髪色や目の色が珍しいんじゃない? 黒っぽい色の人はいても、俺らみたいに純粋に黒い色をそれも髪と目の色両方って人はいなさそうだし」
「ああ、なるほど」
確かに琉生の言う通りだと流輝も納得した。流輝からすれば赤や黄色の髪だったり黄色や青の目のほうがよっぽど当初は珍しかった。さすがに見慣れたが、流輝たちを知らない人たちからすれば双子の色は見慣れない色だろうし気にもなるのだろう。
これ、皆遠巻きになったりして友だちできないやつかな。さすがに小さい子どもじゃねえし髪や目の色で差別してくるとかはない、とは思いたいけど……。
流輝の考えはだが杞憂に過ぎなかった。自分たちのクラスに入ると、とりあえず女子たちが何人もニコニコと近寄って話しかけてきた。
「あなたたちがベレスフォード大公爵のところの双子? 私、クリスティア侯爵令嬢のレインピアと申します。お二人のお名前はなんとおっしゃるんですの?」
「はじめまして。私、セレスティア伯爵の長女、イデナと申しますの」
基本的に学園では身分での扱いの違いはないと聞いた。王族も貴族も平民も同じ学校だからだろう。身分差を考慮しない学園らしく気軽に向こうから話しかけてくれるのはありがたいが、先ほどから公爵だの侯爵だの伯爵だのなんだの名乗られたりして流輝としてはすでに頭が混乱している。ただでさえ貴族に対しての呼び方など身近ではなさすぎて教えてもらっても首を傾げたくなっていたというのに、一気に言われると困る。
だが琉生はニコニコとしながら「はじめましてレディ・アナスタシア」だの「よろしくお願いしますミス・グレース」だの、さらりと対応している。
「お前、貴族向いてんじゃね?」
ようやく予鈴が鳴り、案外皆真面目に席につきだすと流輝は頬杖をつきながら琉生を見た。
「貴族が向いてるって何」
「何となく」
「変な兄さん」
「昔はちょっと、佐藤がルイ好きらしいぞとか言ったくらいですげー動揺してたのに。かわいいルイはどこへ行ったの」
「ここにいるよ」
苦笑しながら流輝を見てくる琉生に、流輝も笑いかけた。
流輝たちのクラスはヘーリオスという名前のクラスだった。この世界では双子でもクラスは特に分けられないようだ。ちなみにヘーリオスには太陽という意味がある。1組とかA組といった呼び方でなくそれぞれ名前がついているようだ。他に月という意味のセレーネと星という意味のアステリというクラスが王族、貴族のクラスになる。空という意味のウラノスと海という意味のサラサの二組が平民のクラスのようだ。
貴族と平民が分かれているのは身分差といったことではなく、そもそも覚えなければならない優先知識が違うからだ。平民は生活に直接かかわるような一般教養を中心に学ぶが、ノブレス・オブリージュを重要視する貴族たちは財産や権力、社会的地位の保持だけでなく、それこそ平民を守らなければならない義務もあり、一般教養も平民のそれとは全然異なる。
一応一般的な勉強も学ぶし、おそらくそれらは貴族も平民も共通しているとは思うが、そういう理由でクラスは分かれていた。
ただ十六歳から増える選択科目に関しては貴族も平民も分かれていないらしい。
選択科目は薬学、論理学、魔法学などを学ぶ魔術科、神学などを学ぶ聖職科、戦術学や騎士道などを学ぶ騎士科、商学や経営学を学ぶ商人科、そして法学や政治学を学ぶ経済学科の五つから選択すると聞いた。入学したばかりの流輝は今のところどの科を選択したいといった希望はないが、通っている内にやりたいこともできるだろうと何となく思っている。
以前キャスの子ども時代の話を聞いた時に「そんなに早くから将来のことを考えているのか」と思ったが、流輝は十四歳の年になってもまだ特になにもない。もしかしたら今でも元の世界へ帰る希望を捨てていないからやりたいことも見つけられないでいるのかもしれない。
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