双神の輪~紡がれる絆の物語~

Guidepost

文字の大きさ
30 / 120
2章 学生編  生きる覚悟

29話

しおりを挟む
 何人かの生徒とやりあったという話を聞いたフランとキャスにも叱られるかと思ったが、学校の帰りも屋敷についてからも何も言われなかった。キャスに至っては「さすが俺の主」と言わんばかりに絶賛してくる。

「褒めすぎだけど……」
「とんでもない。先に因縁つけてきたのはラントの太鼓持ちみたいなやつらばっかだと聞きましたよ。むしろやり足りない勢いだ」
「ラントって何」
「キャス……お前はどうしてそう、いまだに余計なことばかり口にするんだ」

 キャスの言葉に流輝が首を傾げているとフランが呆れたようにため息をついている。キャスも確かに余計なことを言ったと今さらながらに自覚したのだろうか。珍しくフランにも言い返さず「変なことを言ってしまって申し訳ありません」と流輝に笑いかけてきた。

「謝らなくていいよ。それに余計なことじゃない。誰の太鼓持ちって? あいつらは俺の学校に所属してる生徒だ。これからも出会うことだってあるだろうし、何かあるなら聞いておきたい。ラントって誰」

 キャスがフランを見る。頷いてからフランのほうが口を開いた。

「確かに今後、ラント様にもどこかで出会うことがあるかもしれませんしね。ラントというのはディルアン家のご長男の名前です。頭もよく誠実そうな見た目の方ですが、あまり油断なさらないほうがいいお方だと申し上げておきます」

 フランがそう言うのならそうなのだろう。だが何故かは気になる。あとディルアンという名前には覚えがある。確か同じクラスにそんな名前の令嬢がいたような気がする。

「なんで?」

 すると今度はキャスが話してきた。

「お二人のお義父様であられますモリス様とラントの父親、ドルフは従兄弟なんです。ただターナー家とディルアン家は親戚ではありますけど身分は大公爵であられるモリス様の方が当然上です。あちらは公爵ですね。従兄であるドルフも一見誠実そうで真面目なタイプではありますがね、モリス様の地位に目をつけ、ターナーご夫婦に子どもがいないことをいいことに自分の息子を養子に迎えるよう話を持ちかけていたんですよ。まあ利用するためでしょうね」

 そういえば以前、フランからそんな話を聞いた気がすると流輝は思い出した。

「ディルアンの次男がちょうど年齢的にもいいから、と。だが結局あなた方お二人が養子となった。王からの提案とあってはドルフも何も言えず引き下がるしかなかったんでしょう。自分の利益があることには貪欲ですが、損失になるようなことは避けるヤツだ。とはいえそれもあってあなた方のことはよく思っていない可能性は高いです。もちろん、表立って出してきませんがね」

 そして長男であるラントがそんなドルフに性格がそっくりなのだとキャスはいう。

「欲深くて、あと人を身分で見るようなヤツです。で、お二人が倒されたご子息たちはそんなラントやディルアン家を支持するようなやつらだってことです」
「なるほど。わかった。つってもだからといってわざわざこっちから何もする気はないけど」
「それでいいんですよ」

 フランが珍しくほんのりではあるが口元を緩め、頷いてきた。思わず流輝がじっと見ると困惑したように顔をほんのりそらしてくる。

「ねえ、そのディルアン家って何人兄弟いるのかな。俺と兄さんのクラスにもアリアン・ディルアンって名前のご令嬢がいるんだけど」
「そう! それだ。俺も確かいたよなあって何となく思ってた」

 琉生の言葉に、雲が晴れたような気持ちになってコクコク頷いていると「まだクラスの子の名前覚えてないの?」と琉生に笑われた。

「名前覚えんの苦手なんだよ」

 唇を尖らせながら言えばキャスが「わかります、俺も苦手なんですよね」と嬉しそうに同意してきてフランにまたため息をつかれている。
 とりあえず自室に着いたが、話が気になるのでフランとキャスにはそのまま部屋に入ってもらった。双子が着替えようとしてもそのまま並んで立っているので流輝が「座って待っててよ」と呆れつつ言えば「そういうわけにはいきません」と返ってきた。

「俺とルイが落ち着かないから座ってて。わかった?」
「……かしこまりました」

 命令みたいですっきりはしないが、ようやく渋々ながら二人がソファーに座るのを見たのでよしとする。
 側近であり護衛騎士である立場があるのかもしれないが、元々この世界の人間ではない双子からすれば主人と使用人の関係というものはいまだにあまり慣れない。元の世界でも大富豪の息子とかだったら違っていたかもしれないが、ただの庶民なので落ち着かない。
 服の着替えも最初は他の使用人が何から何までしてこようとしたのを「頼むから」と懇願する勢いでやめさせたくらいだ。王宮に滞在していた頃はこちらの世界の衣装があまりわからないのもあって手伝ってもらうことにあまり抵抗はなかったが、さすがにもう小さな子どもでもないのもあり、やめていただきたさしかなかった。もちろん「何故誰もお召し物を代える仕事をしないんだ」と憤慨しながら手伝おうとしてきたフランにも「本当にいらないから」とやめてもらった。それでも困惑するフランに、当時はまだ今のキャスではなかったキャスが「いいってんだからいいじゃねえか。むしろ言うこと聞かねえほうが不敬だろ」と気安いことを言ってくれて何とか誰にも手出しされずに着替えられるようになった。あの頃に今のキャスだったらむしろ率先して下着まで丁寧に着替えさせられていたかもしれないと思うとぞっとしない。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...