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2章 学生編 生きる覚悟
34話
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いつもアリアンのそばにいたのは護衛騎士だったようだ。
「失礼をしてしまい申し訳ありませんでした」
中庭の少し丘になっているところへやって来た双子にティム・ラーコムと名乗った護衛騎士は改めて素直に頭を下げてきた。キャスたちよりも年上に見える大人にそんな風に頭を下げられ、流輝は焦ったように「い、いいよそんなの。頭下げないで」と手を振る。
案の定人見知りが半端なさすぎるアリアンを心配し過ぎるあまり、何かあったのではとティムは焦ったようだ。
俺のとこのキャスより過保護かもしんないな。
内心思いつつ、流輝はアリアンを見た。
「で、いつもは兄ちゃんのとこ行ってたんか」
アリアンはコクリと頷いた。いつもどこへ行っていたのだろうと思っていたが、どうやらアステリクラスにいる二番目の兄、ルバスの元へ行っていたらしい。
そういやルバスって確かローザリアと同じ年だっけか。内気過ぎる妹がいつ来ても拒否しない辺り、アリアンのことかわいがってるってことだよな。じゃあルバスもディルアンだけどいいやつなんかな?
クラスが違うのもあって今のところまだ次男と接触はなかった。食堂で買ってテイクアウトしたソモロやラデスなどを挟んだポフを頬張りながら、流輝はほんのり首を傾げた。ちなみにソモロはオレンジ色っぽい魚で、見た目や味からして元の世界での鮭に似ているし、ラデスはサラダ菜やレタスっぽいと流輝は思っている。
いつもはあまりポフを食べない琉生も外で食べるからか食べやすいポフを選んでいた。クリューのポフだ。クリューは多分鯛のような白身魚で、辛い味付けのソモロのポフと違ってクリーム煮のような味付けがされているようだ。それはそれで美味しそうだと流輝は思う。少々理解できないのがアリアンだ。ペルのアマラだけしか頼んでいない。ペルはジャガイモっぽい芋で、アマラは多分スープ全般を指して言うのだろうと流輝としては把握している。元の世界のようにポタージュだのコンソメだのクラムチャウダーだのといったもしかしたら細かい呼び名はあるのかもしれないが料理をしないのでその辺はあまり知らない。食堂のメニューにも単純にペルのアマラと書かれていた。見た感じはジャガイモのポタージュだ。そしてそれだけのようだ。実際本人にも「え、それだけ?」と唖然としながら聞いて頷かれたので間違いない。
ともすれば昼食にさえ甘いパラクレタや元の世界で言うケーキを指すドルクといったデザートとしか思えないものをよく食べているローザリアもたいがいだが、少なくともアマラだけよりはお腹に溜まりそうだ。
「もっとちゃんと食べないと体壊しちゃうぞ」
余計なお世話かもしれないがと思いつつ言えばさらに俯かれてしまった。怖がられたのだろうかと思ったが、その後も一応今のように「兄ちゃんのとこ行ってたんか」などと聞けばかろうじて頷いたり首を振ったりはしてくれるようだ。かろうじて。
「まあ、いいや。アリアン。とりあえず友だちになろうよ」
「……兄さん、脈絡がなさすぎなんだけど」
琉生が呆れたようにため息をついている。そんな琉生の反応に対してアリアンは一瞬びくりと体を震わせている。もしかして琉生のほうが怖がられているのかなと思ったがたまにアリアンが琉生を盗み見するようにこっそりではあるがチラリと窺っている時の顔色が真っ赤なので、もしかしたら元の世界での「佐藤さん」みたいなアレか、と流輝はそっと思った。あと、アリアンは双子の区別がついているのだろうかと思ったあとで、今や髪型がほんのり違うから区別もつきやすくなっているかもしれないとも思った。琉生は短いままだが、流輝はサイドだけ伸ばしそれを後ろで三つ編みにして琉生からもらった石を髪飾りにして留めている。
「回りくどいのは苦手なんだよ。ねえ、駄目?」
俯いているアリアンを覗き込むようにして聞けば、さすがに焦ったのか流輝に対しても少し赤くなっている。
「駄目?」
もう一度聞くとかすかに「だ、めでは……ござい、ません……」と蚊の鳴くような声が聞こえた。
「よし! じゃあ今から俺ら友だちな。ルイもだぞ」
「……兄さん、強引だよ。ごめんなさい、アリアン嬢。ご迷惑でなければいいんですが」
「め、迷惑だなんて……」
「そう? よかったです。じゃあ俺もタメ口で話させてもらっていいですか?」
「は、はい」
「ではアリアンも」
「……わ、わかりま……、えっと、うん」
わかりましたと言いかけたアリアンは慌てて言い直した後にようやく双子を見てきた。そしておずおずとだが嬉しそうに微笑む。
「ほら、笑ったらやっぱかわいい」
「っえ」
「兄さんのさ、その無自覚に人をたらすとこ、困ったものだよね」
「たらしてねえよ失礼な!」
苦笑してくる琉生をじろりと見ながら、第一アリアンがたらされたのは多分お前にだぞルイ、と思ったがさすがに黙っておいた。
琉生が気を使ってかアリアンに話しかけている間に流輝はティムを何気に見た。ルバスや自分以外の誰かと話しているアリアンを嬉しそうに見ているように見えるが、何となく目が寂しげにも見える気がした。
って、これじゃあルイに文句言えないな。俺こそ恋愛脳かよ。だいたいティムはキャスよりも大人に見えるんだぞ。俺やアリアンといくつ離れてるんだよ。気のせいだな。
琉生やアリアンに視線を戻しつつ、流輝はアリアンの二番目の兄ルバスのことを考えた。おとなしいアリアンが慕うのなら悪いやつではない気がする。あと、別にアリアンと友だちになろうと思った気持ちに下心はなかったが、ルバスとも接する機会はできそうだなと今気づいた。
「失礼をしてしまい申し訳ありませんでした」
中庭の少し丘になっているところへやって来た双子にティム・ラーコムと名乗った護衛騎士は改めて素直に頭を下げてきた。キャスたちよりも年上に見える大人にそんな風に頭を下げられ、流輝は焦ったように「い、いいよそんなの。頭下げないで」と手を振る。
案の定人見知りが半端なさすぎるアリアンを心配し過ぎるあまり、何かあったのではとティムは焦ったようだ。
俺のとこのキャスより過保護かもしんないな。
内心思いつつ、流輝はアリアンを見た。
「で、いつもは兄ちゃんのとこ行ってたんか」
アリアンはコクリと頷いた。いつもどこへ行っていたのだろうと思っていたが、どうやらアステリクラスにいる二番目の兄、ルバスの元へ行っていたらしい。
そういやルバスって確かローザリアと同じ年だっけか。内気過ぎる妹がいつ来ても拒否しない辺り、アリアンのことかわいがってるってことだよな。じゃあルバスもディルアンだけどいいやつなんかな?
クラスが違うのもあって今のところまだ次男と接触はなかった。食堂で買ってテイクアウトしたソモロやラデスなどを挟んだポフを頬張りながら、流輝はほんのり首を傾げた。ちなみにソモロはオレンジ色っぽい魚で、見た目や味からして元の世界での鮭に似ているし、ラデスはサラダ菜やレタスっぽいと流輝は思っている。
いつもはあまりポフを食べない琉生も外で食べるからか食べやすいポフを選んでいた。クリューのポフだ。クリューは多分鯛のような白身魚で、辛い味付けのソモロのポフと違ってクリーム煮のような味付けがされているようだ。それはそれで美味しそうだと流輝は思う。少々理解できないのがアリアンだ。ペルのアマラだけしか頼んでいない。ペルはジャガイモっぽい芋で、アマラは多分スープ全般を指して言うのだろうと流輝としては把握している。元の世界のようにポタージュだのコンソメだのクラムチャウダーだのといったもしかしたら細かい呼び名はあるのかもしれないが料理をしないのでその辺はあまり知らない。食堂のメニューにも単純にペルのアマラと書かれていた。見た感じはジャガイモのポタージュだ。そしてそれだけのようだ。実際本人にも「え、それだけ?」と唖然としながら聞いて頷かれたので間違いない。
ともすれば昼食にさえ甘いパラクレタや元の世界で言うケーキを指すドルクといったデザートとしか思えないものをよく食べているローザリアもたいがいだが、少なくともアマラだけよりはお腹に溜まりそうだ。
「もっとちゃんと食べないと体壊しちゃうぞ」
余計なお世話かもしれないがと思いつつ言えばさらに俯かれてしまった。怖がられたのだろうかと思ったが、その後も一応今のように「兄ちゃんのとこ行ってたんか」などと聞けばかろうじて頷いたり首を振ったりはしてくれるようだ。かろうじて。
「まあ、いいや。アリアン。とりあえず友だちになろうよ」
「……兄さん、脈絡がなさすぎなんだけど」
琉生が呆れたようにため息をついている。そんな琉生の反応に対してアリアンは一瞬びくりと体を震わせている。もしかして琉生のほうが怖がられているのかなと思ったがたまにアリアンが琉生を盗み見するようにこっそりではあるがチラリと窺っている時の顔色が真っ赤なので、もしかしたら元の世界での「佐藤さん」みたいなアレか、と流輝はそっと思った。あと、アリアンは双子の区別がついているのだろうかと思ったあとで、今や髪型がほんのり違うから区別もつきやすくなっているかもしれないとも思った。琉生は短いままだが、流輝はサイドだけ伸ばしそれを後ろで三つ編みにして琉生からもらった石を髪飾りにして留めている。
「回りくどいのは苦手なんだよ。ねえ、駄目?」
俯いているアリアンを覗き込むようにして聞けば、さすがに焦ったのか流輝に対しても少し赤くなっている。
「駄目?」
もう一度聞くとかすかに「だ、めでは……ござい、ません……」と蚊の鳴くような声が聞こえた。
「よし! じゃあ今から俺ら友だちな。ルイもだぞ」
「……兄さん、強引だよ。ごめんなさい、アリアン嬢。ご迷惑でなければいいんですが」
「め、迷惑だなんて……」
「そう? よかったです。じゃあ俺もタメ口で話させてもらっていいですか?」
「は、はい」
「ではアリアンも」
「……わ、わかりま……、えっと、うん」
わかりましたと言いかけたアリアンは慌てて言い直した後にようやく双子を見てきた。そしておずおずとだが嬉しそうに微笑む。
「ほら、笑ったらやっぱかわいい」
「っえ」
「兄さんのさ、その無自覚に人をたらすとこ、困ったものだよね」
「たらしてねえよ失礼な!」
苦笑してくる琉生をじろりと見ながら、第一アリアンがたらされたのは多分お前にだぞルイ、と思ったがさすがに黙っておいた。
琉生が気を使ってかアリアンに話しかけている間に流輝はティムを何気に見た。ルバスや自分以外の誰かと話しているアリアンを嬉しそうに見ているように見えるが、何となく目が寂しげにも見える気がした。
って、これじゃあルイに文句言えないな。俺こそ恋愛脳かよ。だいたいティムはキャスよりも大人に見えるんだぞ。俺やアリアンといくつ離れてるんだよ。気のせいだな。
琉生やアリアンに視線を戻しつつ、流輝はアリアンの二番目の兄ルバスのことを考えた。おとなしいアリアンが慕うのなら悪いやつではない気がする。あと、別にアリアンと友だちになろうと思った気持ちに下心はなかったが、ルバスとも接する機会はできそうだなと今気づいた。
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