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2章 学生編 生きる覚悟
33話
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その後も主に流輝はしばらく様子を見ていたが、アリアンはどうやら人見知りが激しい以外には特に何か双子に対して悪意があるとか身分がどうこうとか考えているようには到底思えないと結論を出すことにした。そうなるといつも一人でいるか護衛といるか、どこかへいなくなるのかなど、その辺がどうしても気になってくる。
「何でそんなに気にするの? やっぱり好きになったとか」
「だから違うっつってんだろ。だいたいなんでルイは俺が誰かを好きになるのそんなに気にしてくんだよ。どうでもいいことだろ」
「よくないよ」
「は? 何で。小姑みたいな感覚とか言うんじゃないだろな」
「むしろよくそんな言葉知ってたね。違うから。兄さんが好きになった相手をいびる趣味は俺にはないよ。でもほら、身近にすごくお似合いだろう相手がいるのに他に目が行くなら何故だろうって不思議に思っちゃうでしょ」
「身近? 俺の? 身近……っつったらシーツとか替えてくれるメイドのニナとか?」
「何でだよ。……だいたいニナは三歳になる子どもがいる人妻でしょ。何考えてんの」
「なっ、何も考えてねえよ! だから俺はそういうの今別に興味ないの。女子とどうこうとかよりまだ勉強のが楽しい」
「ふーん? まあわからなくもないけど。俺も剣が楽しいし。でもじゃあ何が気になるの?」
学園へ向かう馬車の中は双子以外乗っていない。護衛騎士であるフランとキャスは毎日馬に乗ってついてくる。一緒に乗ればいいじゃないかと流輝は最初の頃に何度か言ったがフランからは「護衛はあくまでも護衛をするのが仕事です」とその度に断られてしまい、諦めた。ただ、屋敷の自室以外に双子だけで好きに話せるこの空間は悪くはない。
「だって学生なんて友だちと楽しく過ごすのが仕事みたいなもんだろ?」
「勉強するのが仕事だよ……」
「そりゃ勉強もするけどさ! じゃなくて学ぶのはほら、何もそういう勉強からだけじゃねーだろ。人との付き合いとか生き方とかさ」
「いきなり壮大になったね」
「茶化すなよ。とにかく、あいつみたいにいつも一人でとか護衛とだけとかじゃ駄目だ。第一そんなのもったいないだろ」
「じゃあどうすんの?」
「俺らが友だちになればいい」
「ディルアンだよ?」
「そうだけど……キャスの話だとドルフとかラントだろ、気をつけないといけないのは。ディルアンだから全員駄目ってわけじゃねーだろ」
「とても警戒してアリアン嬢を見張っていたのは兄さんだけど」
「それはあれだ、俺なりにちゃんと自分で見極めて判断したかったっつーか」
ウっとなりながら言い返すと琉生が笑いかけてきた。
「うん、わかってる。兄さんらしいと思うし、友だち、いいと思うよ」
「……何だよ。ルイ、お前最近なんかちょっと意地悪だぞ」
「俺が? まさか。いつだってこんなに兄さんのこと心配したり大事に思ったりしてるのに?」
琉生は笑みを浮かべながら流輝を見てくる。流輝は微妙な顔を向けた。
「寒いこと言うのやめろ。あと今すげー嘘くさかったぞ」
学園に着いて馬車の駐車スペースで馬車から下りると、いつもフランとキャスは途中までついてくる。その後、完全に学園の敷地内に入ると二人は「ではまた帰りにお迎えに上がります」と側近や護衛専用の控室へ向かって行く。最初の時はキャスが「心配だから教室まで送る」と言って聞かなかったがフランはそんなキャスを軽く羽交い絞めすると淡々とした様子で「いってらっしゃいませ、お二方」と見送ってくれた。別に教室まで付き添いが来ても問題ないようだが、フランが止めてくれて流輝はホッとした。保護者が教室まで付き添ってくるようで気恥ずかしいと言うのだろうか。
とにかく流輝としては朝一でアリアンに声をかけようと意気込んでいたが、残念ながら授業が始まる少し前にアリアンはようやく教室に入ってきたようでそれは諦めた。席も毎回自由に座る形式なので最後にやってきたアリアンは一番後ろのほうに座ったようだ。
仕方ねーから次の休み時間にするか。
そう思ったものの、次の休み時間になり振り返ればもうアリアンは見当たらなかった。その次もそうだ。結局昼になってしまった。
「おい、アリアン!」
「……嬢」
「嬢」
こっそり後ろから琉生に付け足され、流輝も微妙な顔をしながら同じように続けた。
今度こそ逃がさない、いや別に双子から逃げたわけではないが、逃がさない勢いでアリアンの元へ向かっていき名前を呼ぶと、俯き加減のアリアンが恐る恐るといった様子で座った状態から見上げてきた。そして双子を見るなり顔から出血でもしたのだろうかと思う勢いで真っ赤になる。そして実際逃げようと身構えられた。
……どこまで人見知り半端ないんだよ。
呆れつつも流輝は「待って。ちょっといい?」とさらに声をかけた。
「え……あの、え、ちょ、ちょ、っと、と、は……」
そしてとてつもなく動揺しているのが流輝にもわかった。人見知りが過ぎてもしかしたら怖がられているのかもしれない、と一旦小さく深呼吸してから言い直そうとする。
「ごめん、いきなり怖かったかな。俺……」
「申し訳ありません。アリアン様に何か御用でしょうか」
その途中に、さっとアリアンと双子の間に入るかのように誰かがやってきた。見ればいつもアリアンに付いている側近だか護衛騎士だかだった。
「何でそんなに気にするの? やっぱり好きになったとか」
「だから違うっつってんだろ。だいたいなんでルイは俺が誰かを好きになるのそんなに気にしてくんだよ。どうでもいいことだろ」
「よくないよ」
「は? 何で。小姑みたいな感覚とか言うんじゃないだろな」
「むしろよくそんな言葉知ってたね。違うから。兄さんが好きになった相手をいびる趣味は俺にはないよ。でもほら、身近にすごくお似合いだろう相手がいるのに他に目が行くなら何故だろうって不思議に思っちゃうでしょ」
「身近? 俺の? 身近……っつったらシーツとか替えてくれるメイドのニナとか?」
「何でだよ。……だいたいニナは三歳になる子どもがいる人妻でしょ。何考えてんの」
「なっ、何も考えてねえよ! だから俺はそういうの今別に興味ないの。女子とどうこうとかよりまだ勉強のが楽しい」
「ふーん? まあわからなくもないけど。俺も剣が楽しいし。でもじゃあ何が気になるの?」
学園へ向かう馬車の中は双子以外乗っていない。護衛騎士であるフランとキャスは毎日馬に乗ってついてくる。一緒に乗ればいいじゃないかと流輝は最初の頃に何度か言ったがフランからは「護衛はあくまでも護衛をするのが仕事です」とその度に断られてしまい、諦めた。ただ、屋敷の自室以外に双子だけで好きに話せるこの空間は悪くはない。
「だって学生なんて友だちと楽しく過ごすのが仕事みたいなもんだろ?」
「勉強するのが仕事だよ……」
「そりゃ勉強もするけどさ! じゃなくて学ぶのはほら、何もそういう勉強からだけじゃねーだろ。人との付き合いとか生き方とかさ」
「いきなり壮大になったね」
「茶化すなよ。とにかく、あいつみたいにいつも一人でとか護衛とだけとかじゃ駄目だ。第一そんなのもったいないだろ」
「じゃあどうすんの?」
「俺らが友だちになればいい」
「ディルアンだよ?」
「そうだけど……キャスの話だとドルフとかラントだろ、気をつけないといけないのは。ディルアンだから全員駄目ってわけじゃねーだろ」
「とても警戒してアリアン嬢を見張っていたのは兄さんだけど」
「それはあれだ、俺なりにちゃんと自分で見極めて判断したかったっつーか」
ウっとなりながら言い返すと琉生が笑いかけてきた。
「うん、わかってる。兄さんらしいと思うし、友だち、いいと思うよ」
「……何だよ。ルイ、お前最近なんかちょっと意地悪だぞ」
「俺が? まさか。いつだってこんなに兄さんのこと心配したり大事に思ったりしてるのに?」
琉生は笑みを浮かべながら流輝を見てくる。流輝は微妙な顔を向けた。
「寒いこと言うのやめろ。あと今すげー嘘くさかったぞ」
学園に着いて馬車の駐車スペースで馬車から下りると、いつもフランとキャスは途中までついてくる。その後、完全に学園の敷地内に入ると二人は「ではまた帰りにお迎えに上がります」と側近や護衛専用の控室へ向かって行く。最初の時はキャスが「心配だから教室まで送る」と言って聞かなかったがフランはそんなキャスを軽く羽交い絞めすると淡々とした様子で「いってらっしゃいませ、お二方」と見送ってくれた。別に教室まで付き添いが来ても問題ないようだが、フランが止めてくれて流輝はホッとした。保護者が教室まで付き添ってくるようで気恥ずかしいと言うのだろうか。
とにかく流輝としては朝一でアリアンに声をかけようと意気込んでいたが、残念ながら授業が始まる少し前にアリアンはようやく教室に入ってきたようでそれは諦めた。席も毎回自由に座る形式なので最後にやってきたアリアンは一番後ろのほうに座ったようだ。
仕方ねーから次の休み時間にするか。
そう思ったものの、次の休み時間になり振り返ればもうアリアンは見当たらなかった。その次もそうだ。結局昼になってしまった。
「おい、アリアン!」
「……嬢」
「嬢」
こっそり後ろから琉生に付け足され、流輝も微妙な顔をしながら同じように続けた。
今度こそ逃がさない、いや別に双子から逃げたわけではないが、逃がさない勢いでアリアンの元へ向かっていき名前を呼ぶと、俯き加減のアリアンが恐る恐るといった様子で座った状態から見上げてきた。そして双子を見るなり顔から出血でもしたのだろうかと思う勢いで真っ赤になる。そして実際逃げようと身構えられた。
……どこまで人見知り半端ないんだよ。
呆れつつも流輝は「待って。ちょっといい?」とさらに声をかけた。
「え……あの、え、ちょ、ちょ、っと、と、は……」
そしてとてつもなく動揺しているのが流輝にもわかった。人見知りが過ぎてもしかしたら怖がられているのかもしれない、と一旦小さく深呼吸してから言い直そうとする。
「ごめん、いきなり怖かったかな。俺……」
「申し訳ありません。アリアン様に何か御用でしょうか」
その途中に、さっとアリアンと双子の間に入るかのように誰かがやってきた。見ればいつもアリアンに付いている側近だか護衛騎士だかだった。
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