38 / 120
2章 学生編 生きる覚悟
37話
しおりを挟む
琉生としては、正直なところローザリアに言われなければ大人になっても流輝と一緒に眠っていたかもしれない。さすがに昔のように一人が怖くて泣いてしまう、ということはないがあえて言われなければ意識することもないほど当たり前のように一緒のベッドで眠っていた。流輝はどう思っていたのかわからないが、もし違和感があったとしても琉生がそうしたいならすればいい、くらいは思いそうだ。
元の世界の家は大公爵邸のような意味がわからないほど広い屋敷ではなかったのもあり同じ部屋とはいえベッドは二段ベッドで、一緒に眠ってはいなかった。しかしこの世界へ来てから最初は怯えなどもあったものの、そこそこ成長した二人が一緒に眠ってもまだ余りある大きさのベッドだったため今でも琉生は違和感すらなかった。
「え、まだ一緒に寝てるの?」
「うん、まあ」
昼食時、たまたま目が合ってしまったらしい流輝はその教師に頼まれ機材を運ぶのを手伝わされている。二人で運べば十分な量だったのもあり、琉生はローザリアを誘って先に昼食をとることにしていた。そしてたまには外で食べようかと食堂でテイクアウトを頼み、二人で食べながら話しているところだった。
「私はまだ兄弟いないからよくわからないけど……確かに数ヵ月後に生まれてくる弟か妹と出会ったら、一緒にいたくなるかも。でも周りの話を聞いてたら何となく、小さい頃から一人で眠るものらしいよ?」
「そう? ああ、ところで陛下のお体は? 元気でいらっしゃるの?」
「お母さまならええ、元気。多分無事に出産を迎えられるだろうって主治医もおっしゃってくださってるの。ありがとう」
「いえいえ。でもほんとさあ、そもそもベッド大きいし。それにずっと二人で寝てたから俺、一人で眠れるかどうかわからないんだよね」
「そっか……。別に二人がそれでいいなら私が言うことじゃないけど、でも今後のことも考えてルイ一人でも眠れるようにしたほうがいいんじゃないのかな」
ローザリアは心配そうに言ってくる。まさか第三者からすればそんなに心配そうな顔になる事柄だとは思ってもみなかったため、琉生は内心「まずいことなのか……」と少々困惑しつつ微笑んだ。
「そうだね。じゃあ一人で眠ってみるよ。それに確かにずっと俺がリキと眠ってたら、将来もしかしたらローザリアのお邪魔になるかもしれないもんね」
「……な、何でそうなるのっ? な、何言って、やだ、違、そういうつもりで……っ違っ」
一瞬ぽかんとした後にローザリアが真っ赤になってきた。昔はひたすら無邪気だったローザリアも今じゃ何を言っているのかわかるようになったのかと、琉生は一つ年上の少女に対して妙な感慨深さを感じる。
「だ、だいたい私、そんなんじゃ……」
「あなたがリキのこと好きなの、バレバレなんだから隠しても無駄だってば」
「う、嘘。え、やだ……どうしよう……じゃあリキにも……?」
「まさか。俺の兄さんが気づくと思う? むしろもう少し気づいてもよさそうなのにって呆れるレベルでしょ」
「……だよね」
動揺し少し青ざめたくらいだというのに、琉生の言葉に今度は微妙な顔をしてくる。
「でもさ、俺もローザリアがいつから兄さんのこと好きなのかはっきりは知らないんだよね。あとどういうとこ、好きになったの?」
「……え、言わなきゃ駄目?」
「わかってると思うけど、俺は相当なブラコンだよ? 兄さんには並大抵の相手では許さないくらいにね。でもローザリアのことは俺も大好きだから認めてあげたいなあとは思ってる。ねえ、俺っていう味方、欲しくない?」
ニッコリと微笑むとローザリアはまた微妙な顔をしてきた。
「昔は泣き虫だったのに、いつからそんな怖い子になったの、ルイは」
「兄さんを守ろうと思った時からかな」
またニッコリ笑って言うとため息をつかれた。
「いつからっての、私もはっきりわからないの。気づけば好きだったから。どういうとこっていうのは……どうだろ……多分最初はね、はっきりものを言うリキに自分を重ねて共感してたような気がする。私、基本的に自分を隠してるとこあるけど、でも元々は間違ったこととかは正さないと気が済まないし思ったこと、はっきり言いたい性格だから」
ああ、と琉生は思った。
母親の再婚によってきっと嫌なことが今までたくさんあったのだろう。だが王女という立場もあり、仮面を被るしかなかったローザリアが浮かぶ。
「それがいつからその……そういう思いになったのかが私も口で説明しにくいんだけど……でもその、リキの強いけど人の痛みもわかるとことか、口は悪いけど優しいとことか、その……ああもう! 私を苦しめないでルイ。いい子だから。どういうとこ好きだなんて、もう言えない」
ローザリアは真っ赤になりながら両手で顔を隠している。そんなローザリアを琉生は微笑ましく思いながら「わかったわかった。ごめんって。安心して。俺はいつだってローザリアの味方だから」と頭を撫でた。
「んん? どうしたんだ? ローザリア、何かあったのか?」
そこへタイミングよくというのか、悪くというのか、おそらく絆の輪でなんとなくこの場所を把握したのであろう、流輝がやってきてローザリアを覗き込んでいる。
「な、なんもないわよ!」
顔を覆っていたもののローザリアが赤くなっていることに気づいたようだ。少しホッとしたように流輝は息を吐いてから首を傾げる。
「あーわかった」
「な、何」
ローザリアがぎくりと肩を震わせた。流輝はニヤリと笑う。
「そのソコラータのパラクレタが美味すぎてついがっついたんだろ。それを見たルイに苦笑されたんだな。甘いの好きなのはわかってるけど落ち着いて食えよな」
「っ知らない! リキの馬鹿」
まだ赤い顔のまま、ローザリアが思いきり呆れたように流輝を見上げ、言い放った。
「は? 何で俺が馬鹿なんだよ。なあ、ルイ……」
「うん、馬鹿だよね兄さんって」
「何でだよ!」
ちなみに一人で眠ってみたが、最初はやはり中々寝つけなかった。眠ることすらかなり流輝に依存していたのだと気づく。だが少しすると琉生はようやく慣れてきた。それでもたまに夢見が悪くてうなされ、少し泣きながら起きることもあった。そういう時は一旦少し落ち着いてから流輝の部屋へ行ってベッドに潜り込み、一緒に眠らせてもらった。
元の世界の家は大公爵邸のような意味がわからないほど広い屋敷ではなかったのもあり同じ部屋とはいえベッドは二段ベッドで、一緒に眠ってはいなかった。しかしこの世界へ来てから最初は怯えなどもあったものの、そこそこ成長した二人が一緒に眠ってもまだ余りある大きさのベッドだったため今でも琉生は違和感すらなかった。
「え、まだ一緒に寝てるの?」
「うん、まあ」
昼食時、たまたま目が合ってしまったらしい流輝はその教師に頼まれ機材を運ぶのを手伝わされている。二人で運べば十分な量だったのもあり、琉生はローザリアを誘って先に昼食をとることにしていた。そしてたまには外で食べようかと食堂でテイクアウトを頼み、二人で食べながら話しているところだった。
「私はまだ兄弟いないからよくわからないけど……確かに数ヵ月後に生まれてくる弟か妹と出会ったら、一緒にいたくなるかも。でも周りの話を聞いてたら何となく、小さい頃から一人で眠るものらしいよ?」
「そう? ああ、ところで陛下のお体は? 元気でいらっしゃるの?」
「お母さまならええ、元気。多分無事に出産を迎えられるだろうって主治医もおっしゃってくださってるの。ありがとう」
「いえいえ。でもほんとさあ、そもそもベッド大きいし。それにずっと二人で寝てたから俺、一人で眠れるかどうかわからないんだよね」
「そっか……。別に二人がそれでいいなら私が言うことじゃないけど、でも今後のことも考えてルイ一人でも眠れるようにしたほうがいいんじゃないのかな」
ローザリアは心配そうに言ってくる。まさか第三者からすればそんなに心配そうな顔になる事柄だとは思ってもみなかったため、琉生は内心「まずいことなのか……」と少々困惑しつつ微笑んだ。
「そうだね。じゃあ一人で眠ってみるよ。それに確かにずっと俺がリキと眠ってたら、将来もしかしたらローザリアのお邪魔になるかもしれないもんね」
「……な、何でそうなるのっ? な、何言って、やだ、違、そういうつもりで……っ違っ」
一瞬ぽかんとした後にローザリアが真っ赤になってきた。昔はひたすら無邪気だったローザリアも今じゃ何を言っているのかわかるようになったのかと、琉生は一つ年上の少女に対して妙な感慨深さを感じる。
「だ、だいたい私、そんなんじゃ……」
「あなたがリキのこと好きなの、バレバレなんだから隠しても無駄だってば」
「う、嘘。え、やだ……どうしよう……じゃあリキにも……?」
「まさか。俺の兄さんが気づくと思う? むしろもう少し気づいてもよさそうなのにって呆れるレベルでしょ」
「……だよね」
動揺し少し青ざめたくらいだというのに、琉生の言葉に今度は微妙な顔をしてくる。
「でもさ、俺もローザリアがいつから兄さんのこと好きなのかはっきりは知らないんだよね。あとどういうとこ、好きになったの?」
「……え、言わなきゃ駄目?」
「わかってると思うけど、俺は相当なブラコンだよ? 兄さんには並大抵の相手では許さないくらいにね。でもローザリアのことは俺も大好きだから認めてあげたいなあとは思ってる。ねえ、俺っていう味方、欲しくない?」
ニッコリと微笑むとローザリアはまた微妙な顔をしてきた。
「昔は泣き虫だったのに、いつからそんな怖い子になったの、ルイは」
「兄さんを守ろうと思った時からかな」
またニッコリ笑って言うとため息をつかれた。
「いつからっての、私もはっきりわからないの。気づけば好きだったから。どういうとこっていうのは……どうだろ……多分最初はね、はっきりものを言うリキに自分を重ねて共感してたような気がする。私、基本的に自分を隠してるとこあるけど、でも元々は間違ったこととかは正さないと気が済まないし思ったこと、はっきり言いたい性格だから」
ああ、と琉生は思った。
母親の再婚によってきっと嫌なことが今までたくさんあったのだろう。だが王女という立場もあり、仮面を被るしかなかったローザリアが浮かぶ。
「それがいつからその……そういう思いになったのかが私も口で説明しにくいんだけど……でもその、リキの強いけど人の痛みもわかるとことか、口は悪いけど優しいとことか、その……ああもう! 私を苦しめないでルイ。いい子だから。どういうとこ好きだなんて、もう言えない」
ローザリアは真っ赤になりながら両手で顔を隠している。そんなローザリアを琉生は微笑ましく思いながら「わかったわかった。ごめんって。安心して。俺はいつだってローザリアの味方だから」と頭を撫でた。
「んん? どうしたんだ? ローザリア、何かあったのか?」
そこへタイミングよくというのか、悪くというのか、おそらく絆の輪でなんとなくこの場所を把握したのであろう、流輝がやってきてローザリアを覗き込んでいる。
「な、なんもないわよ!」
顔を覆っていたもののローザリアが赤くなっていることに気づいたようだ。少しホッとしたように流輝は息を吐いてから首を傾げる。
「あーわかった」
「な、何」
ローザリアがぎくりと肩を震わせた。流輝はニヤリと笑う。
「そのソコラータのパラクレタが美味すぎてついがっついたんだろ。それを見たルイに苦笑されたんだな。甘いの好きなのはわかってるけど落ち着いて食えよな」
「っ知らない! リキの馬鹿」
まだ赤い顔のまま、ローザリアが思いきり呆れたように流輝を見上げ、言い放った。
「は? 何で俺が馬鹿なんだよ。なあ、ルイ……」
「うん、馬鹿だよね兄さんって」
「何でだよ!」
ちなみに一人で眠ってみたが、最初はやはり中々寝つけなかった。眠ることすらかなり流輝に依存していたのだと気づく。だが少しすると琉生はようやく慣れてきた。それでもたまに夢見が悪くてうなされ、少し泣きながら起きることもあった。そういう時は一旦少し落ち着いてから流輝の部屋へ行ってベッドに潜り込み、一緒に眠らせてもらった。
0
あなたにおすすめの小説
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる