双神の輪~紡がれる絆の物語~

Guidepost

文字の大きさ
39 / 120
2章 学生編  生きる覚悟

38話

しおりを挟む
 琉生から遠慮がちに魔法に関して避けないほうがいいと勧められたのもあり、流輝は今一度自分のしたいことも含めて考えてみることにした。
 ニューラウラ王国に限らず、この世界は魔法が当たり前のように存在していて誰しもが魔力を持っているわりに、魔術師となれるほどの魔力を持った者は少ないらしい。貴重な光の魔力を保持している琉生ですら魔力は高くないと聞いた。というかむしろ一般的な者より低いらしい。
 ちなみに光の救世主の話を聞いた当初は思わずテンションが上がった流輝だが、少し経つと疑問も生じた。王ノアの話によれば各国の王族たちは琉生だけでなく流輝も含めて救世主だと考えているようだ。だがいくら魔力が低いとはいえ光の魔力を持っているのは琉生だけ。それに剣士としての実力も琉生は相当高い。つい何かにつけて思い出し比較していた勇者の漫画でも、勇者は光の勇者で剣士でもあった。だからやはり救世主は琉生なのではないだろうかと流輝には思えた。
 その場合自分は何のためにここへ来たのだろうと考えてしまう。光の魔力を持っていなくともやはりノアが言うように流輝も救世主として呼ばれたのだろうか。それとも他に役割があるのだろうか。もしくは他に何らかの意味があるのだろうか。まさかたまたま一緒だったから?
 ただそれらは考えても答えがあるわけではないので、結局考えないようにした。とはいえそれでは自分の目標というか目的というか、したいことが定まりにくい。元の世界でなら周りもそんな感じだっただろうし今の時点でやりたいことが見つからなくとも何とも思わなかったかもしれない。だがこの世界にいると流輝の周りにいる人たちがあまりに皆、自分のやりたいことを見つけてそれに向かって進んでいる気がして、これでは駄目だと流輝に思わせてきた。

 魔術、か……。

 今のところ、屋敷ではキャスやフランから剣や馬術といった騎士に関することを教えてもらっていた。魔法に関することを勉強するなら、もしかしたら誰か魔術師を紹介してもらって教えてもらうのが手っ取り早いかもしれない。一応学園でも今のところ基礎知識程度は習っている。ただこの間絡んできたディルアン派の生徒のように、選択科目をまだ受けていなくともすでに魔法を弱くとも普通に使える者がいることを思えば、おそらく貴族などは家庭教師や魔術師によって入学する前から学んでいるのかもしれない。

 モリスに誰かいないか聞いて、いそうなら紹介してもらえないか頼んでみようかな……。

 それを琉生に言ってみると嬉しそうに「うん、いいと思う」と頷いてくれた。早速その日の夕食後に皆で寛いでいる時、流輝はモリスに「俺に魔術の勉強を教えてくれる誰か、紹介してもらうことってできる?」と聞いてみた。

「もちろんだよ。そうだね、リキがその気になったのなら私としてもかなり力のある魔術師を連れてこなくてはね」

 モリスはむしろ乗り気で、次の休日に早速魔術師を連れてきてくれた。

「って、俺、あなたを知ってるけど!」
「ふふ。お久しぶりですねえ、リキ様」

 ニッコリと微笑んでくるのは以前、通信魔法を使ったことにより重体となった琉生を助けてくれたソリアという人だった。
 あの時は流輝も切羽詰まっていたのもありちゃんとソリアを見ていなかったが、改めて見てもやはり綺麗な人だなと思う。それにどこか儚げで、知らなければ優秀な魔術師だとは思わない。あの時はフランと似た髪型だなと何となく思っていたが、ちゃんと見ていなかったからか髪が伸びたからか、今見ると別に似ていなかった。

「あ、あの……よろしくお願いします」

 というか女性に教えてもらうのは緊張しそうだ。などと人には言えないけれども、緊張しそうだ。

「あの、さ。せっかくソリアさん来てくれたのにあれだけど……教えてもらうなら気兼ねなく模擬戦闘とかできるような人のほうがいいんじゃ……?」

 ソリアに頭を下げてから、流輝はおずおずとモリスを見た。するとモリスは何故か楽しそうに笑ってくる。

「大丈夫。ソリアはニューラウラ王国一、強い魔術師だよ。安心して教えてもらい、魔法を仕掛けるといい」
「で、でも」
「もしやリキ様は私が気に食わないとか信用できない、とかなのでしょうか。そうだとしたら悲しいですねえ」

 儚げな美人が悲しそうに手で目元を覆っている。

「ち、違うよ! 違う、けどでも」
「でも? ではもしかして私が儚げで華奢な美人だから弱いと思われてます?」

 自分で言っちゃうんだそれ!

「そ、そうじゃなく、て……」
「あらあら、弱いと思われるのだけは心外ですねえ。よろしいでしょう。では中庭へ行きましょう。そして今あなたが使える魔法を私に向かって仕掛けてください」
「だ、駄目だよ。だって俺、ちゃんと習ってないから暴走するかも、だし、そもそもちゃんと習いたいから魔術師に……」
「ええ、ですので私が来ました。私を弱いと思ってないというのなら、遠慮なく仕掛けてください」

 ニコニコと言い放つと、ソリアは流輝の腕をつかんで歩かせてくる。実際華奢そうな体からは想像もつかなかったが案外力もある。

「ほ、本当に大丈夫?」
「ええ、もちろん。私はニューラウラで一番の実力者ですからね。安心して仕掛けてください」

 また自分で言っちゃうんだ。

 少しおかしく思いつつ、流輝はモリスに手を振ってから部屋を出てソリアと中庭へ向かった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...