双神の輪~紡がれる絆の物語~

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2章 学生編  生きる覚悟

39話

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「おや、もうおしまいですか」

 息が上がるどころかソリアはモリスが紹介してくれた時と変わらず、どこか飄々とした様子でニコニコとしている。一方流輝はといえば相当息をきらしながら直接地面に座り込んでいた。

「……うん、もう降参」

 確かに使える魔法などたかがしれている。ちゃんと習ったことはないし昔魔術の本を少し読んで何となく把握しているものを使ってみたくらいだ。いい加減な知識で使いたくはなかったが、ソリアが「もしミスをしても暴走しても私が抑えますから問題ありません」と余裕綽々で言ってきたので、ならやってやるとばかりにできそうなものは次々放ってみた。女性相手にやりにくい上だけでなく魔法のことをよくわかっていないわりに思っていたよりまともに使えたものの、ソリアはいとも簡単にそれらの魔法をはねのけたり消し去ったりしてくる。

「はぁ、はぁ……。ねえ、俺、魔力の量すごいんじゃないの?」
「ええ、ちゃんと鍛えれば間違いなく私よりすごいと思いますよ」

 限界がきて流輝はそのまま地面に横たわった。ソリアは近づいてきてそんな流輝を覗き込むようにして笑いかけてくる。とても綺麗な大人の女性に免疫などないため、流輝は落ち着かない気持ちを隠すように顔をそむけた。カルナもとても綺麗でその上どこかかわいらしいところもあるが、さすがに自分の実の親と同じような年齢の人にドキドキはしない。ましてやカルナはこの世界での母親だ。
 流輝としては女の子っぽい子が好みのはずだしソリアはそれに当てはまらないし、そもそも恋愛感情を持つには年上すぎる。とはいえ「綺麗な大人の女性」という存在に慣れなさすぎて、そんな相手に攻撃するのは全く歯が立たないことはさておき、落ち着かない。

「おや、どうされました?」
「な、何でもない。つか、それよりそんなに魔力強いなら、俺はなんでこんなに消耗してんの?」
「ちゃんと鍛えたらと申しましたでしょ。今のリキ様は力の使い方がわかっておられないため、非効率な使い方をされてるんでしょうねえ。あと慣れないことをして単に疲れておられるんだと思いますよ」
「でもさ、魔法使うのに体力とか使わねえでしょ?」
「体力、とはまた違いますけどね。何でしょうねえ、あえて言うなら気力、でしょうか。使いますよ。慣れない人や弱い人ほど燃費は悪いです。リキ様も慣れたら無限かなってくらい使えますよ」
「……ほんと?」
「ええ。このソリアが保証いたします。で、私のこと、信用できますか?」

 ニッコリと微笑まれ、流輝はまだ落ち着かなさを感じつつ体を起こした。

「うん……。その、ごめん、ソリア。別にソリアが信用できないとか魔力が弱いとかほんと俺、思ってないんだよ? ルイを助けてくれたしさ。ただ、その、女性相手に攻撃する、ってのが、ほら、何か、さ……」

 言いづらいがソリアが向き合ってくれているというのに思っていることを伝えないのもと、流輝がおずおず言えばソリアは楽しそうに笑ってきた。

「な、何」
「いつもなら私、絶対自分から教えないんですよ? 楽しみが半減しますからね。でもリキ様は特別ですから」

 特別、と言われて流輝はまた少し落ち着かなくなる。緊張にも似たこの感じは恋愛感情ではないことは流輝でもわかるが、女性に対して免疫なさすぎだろと微妙にはなる。

「っていうか教えるって……」

 座ったまま何を、と言いかける流輝の手首をソリアはそっとつかんできた。そして笑顔のまま自分の足の間へといざなってくる。ぎょっとして顔が熱くなるのを感じつつ流輝が抵抗する前に流輝はそれに触れた。
 中庭どころか屋敷内にも流輝の悲鳴が響き渡り、モリスたちやキャスだけでなく大勢の使用人たちが慌てて駆けつけるといった出来事の後、魂が口から出そうになっているかのような流輝にソリアは相変わらずニコニコとしたまま「ではこれからよろしくお願いしますね、リキ様」と楽しそうに手を差し出してきた。
 それ以来、流輝はソリアに魔術に関しての知識や実践を教えてもらっている。昔本で少々かじっただけの流輝にはたくさんのことが新鮮だった。呪文だの方式だのと難しいこともあるが、流輝にとっては剣術よりも面白かった。普段飄々として何を考えているかいまいち謎なソリアも、魔術の勉強に関しては真摯な様子でしっかり教えてくれる。

「ですので遺伝性により、子どもは親の属性を受け継ぎます。例えば火の属性を持つ親からは火属性の子どもが生まれるといった風に」
「あ、そこはこの間学園でも習ったよ。両親が異なる属性なら、魔力が強い方の親の属性を受け継ぐんだろ? よくわからない各属性の理論と一緒に習った」
「ええ、そうです。ですが稀に複数属性を持って生まれる者もいます」
「かなり希少なんだよね? 相当珍しくて貴重な存在だって聞いたけど」
「はい。で、ここからが本題です。リキ様。あなたはその珍しい存在の中でもさらに珍しい」
「俺? そういえば俺の属性って今まで気にしたことなかった。もしかして二つ以上あるの? ルイは光属性なんだよな? そういえばソリアは何? キャスたちも属性、やっぱあるの?」
「ええ。ルイ様は光ですね。これまた希少な存在です。キャスは火、フランは水ですね。殿下も水でいらっしゃいます」
「ローザリア、水なんだ」
「ええ。ついでに殿下の側近であり護衛騎士であるエリスは風です。そして私は土と火ですね」
「さすがソリアだな。希少な存在なんだ? 俺も二つあるの?」
「ふふ。二つどころか。リキ様、あなたは全属性を使えます。気づいておられませんでした? 初めて中庭で私に魔法を放った時、いろんな魔法を放たれたでしょう?」
「そう、いえばそうだった、かもだけど。あの時はわけもわからず出せそうな魔法を使ったから……えっと、普通は自分の属性以外の魔法は使えないものなの? その力が弱くなるとかじゃなくて?」
「使えません。魔法石の力を借りてなら弱くとも使えますが、自分の力では属性である力しか使えません。リキ様は特に風属性の力が相当強そうですが、光以外のどの属性もお使いになられる考えられないくらい強い力をお持ちなんですよ」
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