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2章 学生編 生きる覚悟
50話
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最近、自分の主の成長がめまぐるしい、とキャスはニヤニヤしながらいつものように学園の付き添い用控室にてカードをシャッフルしていた。カードゲームが好きだし得意なのだが、こうしてカードをシャッフルするのも得意だ。我ながら手先が器用なのだと思っている。
カードゲームが得意だと知っているソリアに「普段馬鹿みたいに顔に出るのに何故ゲームとなると上手くカードを切れるのかとても謎」などと言われたことが何度もある。基本的にソリアはキャスに対して失礼なやつだと思う。幼なじみだからといって遠慮がなさすぎなのでは、と直接本人に言ってもまたあのろくでもない笑顔でスパッとぶった切るようなことを言い返してくるだけだろうしと、あえてフランに以前言えば真顔のまま「別にソリアは間違ってないと思うが」と返された。
「は? どういう意味だよ」
「お前ほど剣とついでにカードゲームの時だけ別人になるようなやつを他に知らん」
「だからどういう意味だよ」
ムッとして再度聞き返せばため息を返された。幼なじみではないがフランもたいがい失礼かもしれない。
一応上司とまではいかないが立場で言えばフランは今の職場での先輩ではある。そして剣の腕は自分のほうが上だとキャスは自負しているものの、総合的に見ればフランのほうが実力は上だということくらいキャスもわかっている。それでもまるで幼なじみであるソリアに対するように馴れ馴れしい口を利くのはキャスの性格でもある。他の者に対してもそうだ。知らない者や好ましくない者に対しては素っ気ないが、慣れた相手や自分の認めた相手、好ましい相手だとどうしても馴れ馴れしくなってしまう。
そんなキャスの性格をわかってか、もしくはどうでもいいのか、フランから「タメ口を利くな」とか「馴れ馴れしくするな」と言われたことはないのでキャスとしては普通ではあるが、今のようなある意味親しみを込めた態度でいさせてもらっている。
ただしキャスが認めた主である流輝に対してはさすがに馴れ馴れしい態度はとっていない。それくらいの判断はキャスにもできる。
「何をそんなにニヤニヤしているんだ」
よほど不審だったのか、珍しく無口なフランが話しかけてきた。見れば無表情ながらに不審そうな顔でキャスを見ている。
「そんな顔で見んな。仕方ないだろ、俺のリキ様の成長が最近ますます目まぐるしいんだからな。それ思うとニヤニヤもするだろうが」
「……剣馬鹿だけでなく主馬鹿だな」
「おい、聞こえてんぞ。お前もソリアほどじゃねーけど結構失礼なんだよ! 馬鹿とはなんだ。あとリキ様は俺の主なんだから成長を思ってニヤつくくらい普通だろうが」
じろりと睨むが、フランが自分の主である琉生に対してニヤついているところを見たことがないのを思い出す。
「むしろお前はなんでニヤつかねえの。ルイ様の剣さばき、屋敷以外でも見たことあるだろ。あれはかなりヤベーぞ。それに今じゃあ合同授業でやりあえる相手が見つからねえらしい。すげーじゃねえか。俺なら狂喜乱舞するね」
「……ルイ様は確かに素晴らしいが、狂喜乱舞するのはおかしいだろ……」
「引いたような顔で俺を見るな。なんでだよ、俺だったらするぞ。リキ様だってほんとは相当ヤベー魔力持ってんのにそれ発揮できねえの、すげえつらいわ。自分のことのようにつらい」
「リキ様はお前のように力を見せびらかしたいタイプじゃない」
「そう! そうなんだよな、ほんとそれ。まだ十五歳なのに俺のリキ様はほんとできた子だよな。普通だとすげー力持ってたら見せびらかしたいじゃないか。それなのにほんとしっかりしてるわ。さすがだよ、さすが俺のリキ様だと思わねーか」
「……」
「聞いてる?」
「煩い」
「ああ? なんだよ、お前から振ってきたんだろうが!」
「今死ぬほど後悔してる」
言い捨てるとフランはため息をつき、持っていた本に目を落とした。もう話しかけるなという圧力しか感じない。キャスは舌打ちすると他に控室にいる何人かの騎士や側近たちに「おい、誰か俺とカードゲームしないか」と声をかけた。
ようやく放課後になり、キャスはいそいそと流輝を出迎えるため馬車を停める場所まで一応フランと共に移動する。流輝を認めていない頃のキャスだったならば見回りや討伐にも出ずに控室でおとなしくゲームに興じるだけの時間など耐え難かっただろう。だが今のキャスは違う。控えている時間すら流輝を守るためだと思うと悪くない。
行きと同じく馬車の近くをフランと共に馬で辺りに注意を払いつつゆっくり走らせ、屋敷へ戻ると流輝たちと共に部屋までついて行く。ちなみに護衛騎士であればこれくらい皆していることだが、キャスやフランは心構えが違う。双子が救世主であることは王族クラス以外はキャスたち一部の者しか知らないとはいえ、いつどこで魔族に正体が漏れるかわからないと王は判断しているし、キャスやフランもそう思っている。油断は一切するつもりなかった。だからこそ、普段は学園の控室でおとなしく控えていても不満などあるはずもない。
部屋に着くとキャスたちは部屋の前で一旦待機する。できれば着替えを手伝いたくて仕方がないが、どうやらそういったことをされるのが流輝たちは苦手なようだ。救世主である上に大公爵子息でもあるというのに全くおごらず気さくなところもキャスは好ましく思う。
その後は日によって違う。流輝に付き添って町へ出ることもあれば、訓練に付き合うこともある。ローザリアと会う場合でもとりあえず部屋から出るなら少し離れつつ付き添うが、そのまま部屋で勉強したりする時はフランと交代で待機したり自分の訓練にいそしんだりする。
ちなみに朝に強いフランは早朝から起きて鍛えているようだ。キャスもそうしようと試みたことはあるが、どうにも夜型のようで朝はつらいため、断念した。それでも流輝たちよりは早くに起きて待機できるようには心掛けている。ついでに流輝は朝に強いわけではないが弱くもなさそうで、逆に最近は相当しっかりしてきた琉生のほうが朝は弱いらしい。流輝がよく起こすために琉生の部屋へ行ったりしているのをキャスも何度か見かけている。
最近はルイ様のしっかり具合が半端ねえけど、なんだかんだ言ってやっぱりリキ様はお兄ちゃんなんだよなあ。
キャスはまたニヤニヤしながら思った。
カードゲームが得意だと知っているソリアに「普段馬鹿みたいに顔に出るのに何故ゲームとなると上手くカードを切れるのかとても謎」などと言われたことが何度もある。基本的にソリアはキャスに対して失礼なやつだと思う。幼なじみだからといって遠慮がなさすぎなのでは、と直接本人に言ってもまたあのろくでもない笑顔でスパッとぶった切るようなことを言い返してくるだけだろうしと、あえてフランに以前言えば真顔のまま「別にソリアは間違ってないと思うが」と返された。
「は? どういう意味だよ」
「お前ほど剣とついでにカードゲームの時だけ別人になるようなやつを他に知らん」
「だからどういう意味だよ」
ムッとして再度聞き返せばため息を返された。幼なじみではないがフランもたいがい失礼かもしれない。
一応上司とまではいかないが立場で言えばフランは今の職場での先輩ではある。そして剣の腕は自分のほうが上だとキャスは自負しているものの、総合的に見ればフランのほうが実力は上だということくらいキャスもわかっている。それでもまるで幼なじみであるソリアに対するように馴れ馴れしい口を利くのはキャスの性格でもある。他の者に対してもそうだ。知らない者や好ましくない者に対しては素っ気ないが、慣れた相手や自分の認めた相手、好ましい相手だとどうしても馴れ馴れしくなってしまう。
そんなキャスの性格をわかってか、もしくはどうでもいいのか、フランから「タメ口を利くな」とか「馴れ馴れしくするな」と言われたことはないのでキャスとしては普通ではあるが、今のようなある意味親しみを込めた態度でいさせてもらっている。
ただしキャスが認めた主である流輝に対してはさすがに馴れ馴れしい態度はとっていない。それくらいの判断はキャスにもできる。
「何をそんなにニヤニヤしているんだ」
よほど不審だったのか、珍しく無口なフランが話しかけてきた。見れば無表情ながらに不審そうな顔でキャスを見ている。
「そんな顔で見んな。仕方ないだろ、俺のリキ様の成長が最近ますます目まぐるしいんだからな。それ思うとニヤニヤもするだろうが」
「……剣馬鹿だけでなく主馬鹿だな」
「おい、聞こえてんぞ。お前もソリアほどじゃねーけど結構失礼なんだよ! 馬鹿とはなんだ。あとリキ様は俺の主なんだから成長を思ってニヤつくくらい普通だろうが」
じろりと睨むが、フランが自分の主である琉生に対してニヤついているところを見たことがないのを思い出す。
「むしろお前はなんでニヤつかねえの。ルイ様の剣さばき、屋敷以外でも見たことあるだろ。あれはかなりヤベーぞ。それに今じゃあ合同授業でやりあえる相手が見つからねえらしい。すげーじゃねえか。俺なら狂喜乱舞するね」
「……ルイ様は確かに素晴らしいが、狂喜乱舞するのはおかしいだろ……」
「引いたような顔で俺を見るな。なんでだよ、俺だったらするぞ。リキ様だってほんとは相当ヤベー魔力持ってんのにそれ発揮できねえの、すげえつらいわ。自分のことのようにつらい」
「リキ様はお前のように力を見せびらかしたいタイプじゃない」
「そう! そうなんだよな、ほんとそれ。まだ十五歳なのに俺のリキ様はほんとできた子だよな。普通だとすげー力持ってたら見せびらかしたいじゃないか。それなのにほんとしっかりしてるわ。さすがだよ、さすが俺のリキ様だと思わねーか」
「……」
「聞いてる?」
「煩い」
「ああ? なんだよ、お前から振ってきたんだろうが!」
「今死ぬほど後悔してる」
言い捨てるとフランはため息をつき、持っていた本に目を落とした。もう話しかけるなという圧力しか感じない。キャスは舌打ちすると他に控室にいる何人かの騎士や側近たちに「おい、誰か俺とカードゲームしないか」と声をかけた。
ようやく放課後になり、キャスはいそいそと流輝を出迎えるため馬車を停める場所まで一応フランと共に移動する。流輝を認めていない頃のキャスだったならば見回りや討伐にも出ずに控室でおとなしくゲームに興じるだけの時間など耐え難かっただろう。だが今のキャスは違う。控えている時間すら流輝を守るためだと思うと悪くない。
行きと同じく馬車の近くをフランと共に馬で辺りに注意を払いつつゆっくり走らせ、屋敷へ戻ると流輝たちと共に部屋までついて行く。ちなみに護衛騎士であればこれくらい皆していることだが、キャスやフランは心構えが違う。双子が救世主であることは王族クラス以外はキャスたち一部の者しか知らないとはいえ、いつどこで魔族に正体が漏れるかわからないと王は判断しているし、キャスやフランもそう思っている。油断は一切するつもりなかった。だからこそ、普段は学園の控室でおとなしく控えていても不満などあるはずもない。
部屋に着くとキャスたちは部屋の前で一旦待機する。できれば着替えを手伝いたくて仕方がないが、どうやらそういったことをされるのが流輝たちは苦手なようだ。救世主である上に大公爵子息でもあるというのに全くおごらず気さくなところもキャスは好ましく思う。
その後は日によって違う。流輝に付き添って町へ出ることもあれば、訓練に付き合うこともある。ローザリアと会う場合でもとりあえず部屋から出るなら少し離れつつ付き添うが、そのまま部屋で勉強したりする時はフランと交代で待機したり自分の訓練にいそしんだりする。
ちなみに朝に強いフランは早朝から起きて鍛えているようだ。キャスもそうしようと試みたことはあるが、どうにも夜型のようで朝はつらいため、断念した。それでも流輝たちよりは早くに起きて待機できるようには心掛けている。ついでに流輝は朝に強いわけではないが弱くもなさそうで、逆に最近は相当しっかりしてきた琉生のほうが朝は弱いらしい。流輝がよく起こすために琉生の部屋へ行ったりしているのをキャスも何度か見かけている。
最近はルイ様のしっかり具合が半端ねえけど、なんだかんだ言ってやっぱりリキ様はお兄ちゃんなんだよなあ。
キャスはまたニヤニヤしながら思った。
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