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2章 学生編 生きる覚悟
72話
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双子と表面上は親しく話すようになり、改めてラントは決意していた。
多少頭は働くのかもしれないが、どう見ても何かにとてつもなく秀でているようには見えない。ルバスが言うには成績はいつもトップクラスだし剣の扱いに関しても琉生は誰よりも秀でており、流輝も剣にかなり自信のあるルバスといつも引き分ける程度には相当上手いらしい。だが確かに整った顔をしてはいるが聞いていた年齢より幼く見える上に小柄だ。トーブ色をした髪と瞳は希少価値さえありそうなほど珍しいが、それが貴族としての格を上げるわけでもない。
だが現状ではあの双子は他の貴族からも相当好意的に見られており、学園でも優秀な生徒として名高い。確か今年十七歳になるということはあと一年すれば学園を卒業し、貴族社会に出てくることになる。本人たちは一般的な貴族ではなく騎士や魔術師を目指しているらしく、その職業でも優秀な人材になるだろうともっぱらの噂だ。ラントと仕事が被ることはないが、それでも相当目障りだった。
しかし父親のドルフは相変わらず手出しを一切しようとはしない。むしろ腫れ物に触るかのような扱いというか態度に見える。
ドルフが欲深く腹に一物を抱えるタイプであることは仕事を教えてもらっている関係もあり、ラントは十分に把握している。ルバスやアリアンはまだ未熟だからか父親に対してそんな風には一切見ていないようだ。ルバスのほうは「世渡りが上手い」くらいは思っているかもしれないがそれくらいだろう。
もちろんラントとてドルフの性格を把握していても、父親としても公爵としても尊敬している。だからこそなおさら納得がいかないしもどかしいし腹立たしい。
こうなったら俺が決行して差し上げるしかない。父上もきっと俺に感謝するだろう。
最近うすうす気づくようになったのだが、多分アーリマンは魔族だ。決定的証拠があったわけではないし、髪や目の色や肌色も違うが、力のある魔族は自分の見た目をある程度変えられると聞く。それに身元も定かではないというのに毎回結構な金額であろう酒場の代金をさらりと支払っているところも気になる。ラントが知らない男であるため名のある貴族ではないということは、少なくとも裏稼業に手を付けでもしない限り難しいだろう。
魔族と付き合いがあるとバレるのはいただけないが、利用できるものはすべきだ。それに何故かはわからないがアーリマンも双子をどうにかしたがっている。だがおそらくは近寄る算段が取れないため、たまたま酒場にいたラントに目をつけてきたのだろう。公爵子息であるラントならば双子に近寄ることも可能であるし、実際一見親しく話す仲にもなっている。
ラントが双子をおびき寄せ、アーリマンもしくは他の魔族か何かが双子を手にかける。これならばお互いウィンウィンだ。ラントが一方的にアーリマンに対して弱みを握られるわけでもない。
よし。ならば次に酒場へ行った時に……。
屋敷の広い書斎でラントが算段を練っていると、ドルフが近づいてきた。
「ラント」
「はい」
「お前……まさかよからぬことをあの双子に対して考えているのではないだろうな?」
今までも何度か聞かれてはいる。最初の頃は実際まだ考えていなかったのもあり「考えてはいませんが、何故父上はあの双子を避けるのです」などと突っかかっていた。だが決意した今では無事成功するまではドルフも邪魔になるため対応には気をつけなければならない。
「まさか。以前から考えておりませんと申し上げているとおりです」
「ならばよいが、手出しは不要だぞ」
「……承知しております、が、本当に何故なのですか」
「お前は知らなくてよいことだ」
「……わかりました」
いくら父親を尊敬していても、そんなことで納得などいくはずもない。
いずれ、あなたも俺に感謝するようになる。よくやってくれた、と。
少々仕事が忙しかったのもあり、次に酒場へ向かうまでに二か月ほど経っていた。暦の上ではもう夏もずいぶん前に終わっている。しかし今年は夏の精霊が根強いのかまだまだ気温は高く、あまり外出に向いていないためか馬車から眺めるも歩いている庶民も少ない。だが酒場はむしろ酒を求める者で溢れかえっているようだった。混み合っている様子にラントが出直そうかと考えていると店の者から「お連れ様がお待ちです」と声をかけられる。
「……俺は貴様に名乗ってもいないが」
「公爵ご子息であられるあなたを知らないわけもございません」
「ふん。そうか」
あまり目立ちたくはないが、我が身の身分だけに仕方がないようだ。とはいえアーリマンのことは把握していない様子ではあるし、別にここで双子をどうにかするわけでもないためラントはよしとした。
「お久しぶりですね」
「ああ。仕事が忙しくてな」
「それはお疲れ様でございました。では冷たい酒でまずは喉を潤しましょう」
アーリマンはにこやかに酒とつまみを勧めてきた。そして取るに足らないような世間話をゆるゆると話してくる。ラントは一気に飲み干しおかわりしてからもう一口飲むと、そんなアーリマンを制した。
「どうかされましたか?」
「俺は決めた」
「……それはそれは」
何を決めたかさえ口にしなかったが、アーリマンは理解したようだ。胡散臭い笑みをますます浮かべながらラントを見てきた。
多少頭は働くのかもしれないが、どう見ても何かにとてつもなく秀でているようには見えない。ルバスが言うには成績はいつもトップクラスだし剣の扱いに関しても琉生は誰よりも秀でており、流輝も剣にかなり自信のあるルバスといつも引き分ける程度には相当上手いらしい。だが確かに整った顔をしてはいるが聞いていた年齢より幼く見える上に小柄だ。トーブ色をした髪と瞳は希少価値さえありそうなほど珍しいが、それが貴族としての格を上げるわけでもない。
だが現状ではあの双子は他の貴族からも相当好意的に見られており、学園でも優秀な生徒として名高い。確か今年十七歳になるということはあと一年すれば学園を卒業し、貴族社会に出てくることになる。本人たちは一般的な貴族ではなく騎士や魔術師を目指しているらしく、その職業でも優秀な人材になるだろうともっぱらの噂だ。ラントと仕事が被ることはないが、それでも相当目障りだった。
しかし父親のドルフは相変わらず手出しを一切しようとはしない。むしろ腫れ物に触るかのような扱いというか態度に見える。
ドルフが欲深く腹に一物を抱えるタイプであることは仕事を教えてもらっている関係もあり、ラントは十分に把握している。ルバスやアリアンはまだ未熟だからか父親に対してそんな風には一切見ていないようだ。ルバスのほうは「世渡りが上手い」くらいは思っているかもしれないがそれくらいだろう。
もちろんラントとてドルフの性格を把握していても、父親としても公爵としても尊敬している。だからこそなおさら納得がいかないしもどかしいし腹立たしい。
こうなったら俺が決行して差し上げるしかない。父上もきっと俺に感謝するだろう。
最近うすうす気づくようになったのだが、多分アーリマンは魔族だ。決定的証拠があったわけではないし、髪や目の色や肌色も違うが、力のある魔族は自分の見た目をある程度変えられると聞く。それに身元も定かではないというのに毎回結構な金額であろう酒場の代金をさらりと支払っているところも気になる。ラントが知らない男であるため名のある貴族ではないということは、少なくとも裏稼業に手を付けでもしない限り難しいだろう。
魔族と付き合いがあるとバレるのはいただけないが、利用できるものはすべきだ。それに何故かはわからないがアーリマンも双子をどうにかしたがっている。だがおそらくは近寄る算段が取れないため、たまたま酒場にいたラントに目をつけてきたのだろう。公爵子息であるラントならば双子に近寄ることも可能であるし、実際一見親しく話す仲にもなっている。
ラントが双子をおびき寄せ、アーリマンもしくは他の魔族か何かが双子を手にかける。これならばお互いウィンウィンだ。ラントが一方的にアーリマンに対して弱みを握られるわけでもない。
よし。ならば次に酒場へ行った時に……。
屋敷の広い書斎でラントが算段を練っていると、ドルフが近づいてきた。
「ラント」
「はい」
「お前……まさかよからぬことをあの双子に対して考えているのではないだろうな?」
今までも何度か聞かれてはいる。最初の頃は実際まだ考えていなかったのもあり「考えてはいませんが、何故父上はあの双子を避けるのです」などと突っかかっていた。だが決意した今では無事成功するまではドルフも邪魔になるため対応には気をつけなければならない。
「まさか。以前から考えておりませんと申し上げているとおりです」
「ならばよいが、手出しは不要だぞ」
「……承知しております、が、本当に何故なのですか」
「お前は知らなくてよいことだ」
「……わかりました」
いくら父親を尊敬していても、そんなことで納得などいくはずもない。
いずれ、あなたも俺に感謝するようになる。よくやってくれた、と。
少々仕事が忙しかったのもあり、次に酒場へ向かうまでに二か月ほど経っていた。暦の上ではもう夏もずいぶん前に終わっている。しかし今年は夏の精霊が根強いのかまだまだ気温は高く、あまり外出に向いていないためか馬車から眺めるも歩いている庶民も少ない。だが酒場はむしろ酒を求める者で溢れかえっているようだった。混み合っている様子にラントが出直そうかと考えていると店の者から「お連れ様がお待ちです」と声をかけられる。
「……俺は貴様に名乗ってもいないが」
「公爵ご子息であられるあなたを知らないわけもございません」
「ふん。そうか」
あまり目立ちたくはないが、我が身の身分だけに仕方がないようだ。とはいえアーリマンのことは把握していない様子ではあるし、別にここで双子をどうにかするわけでもないためラントはよしとした。
「お久しぶりですね」
「ああ。仕事が忙しくてな」
「それはお疲れ様でございました。では冷たい酒でまずは喉を潤しましょう」
アーリマンはにこやかに酒とつまみを勧めてきた。そして取るに足らないような世間話をゆるゆると話してくる。ラントは一気に飲み干しおかわりしてからもう一口飲むと、そんなアーリマンを制した。
「どうかされましたか?」
「俺は決めた」
「……それはそれは」
何を決めたかさえ口にしなかったが、アーリマンは理解したようだ。胡散臭い笑みをますます浮かべながらラントを見てきた。
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