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3章 騎士編 光の救世主
83話
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もちろん今まで一度も気づかなかったわけではない。こうなることは薄々わかってはいた。
年数を重ねるごとに元の世界のことを考える時間、減ってたもんな……。
当初は元の世界のことしかむしろ考えられなかった勢いだったが、気づけばふと思い出すといった風に変わっていた。
きっと、多分、俺たちはもっと早く帰らないといけなかったんだ。
二人は元の世界の両親が写った画像を、目に焼きつけるかのように眺めた。だがやはり声は脳の片隅に何となく浮かぶような気がするだけで思い出せない。
今。もし今、帰られるとなった場合、迷うことなく即座に「よし帰ろう」と言えるだろうか。
モリスとカルナ、ローザリア。それにキャスやフランやソリアたち。この世界で出会った友だち。そしてずっと見てきたこの国、この世界。
簡単に別れを告げられるわけなんてない。今や自分たちの世界にもなっているここを痛感する。
それにモリスとカルナに本当の息子として抱きしめ、抱きしめられたい。
二人は心の中でごめんなさい、と呟き静かに携帯電話を置いた。
正魔術師、正騎士となって数日後、二人は王宮に呼ばれた。
そろそろ呼ばれるだろうなという予感はしていた。まだ十八歳ではあるが、今年は十九歳となる年だ。来年には二十歳になる。文献の通りなら、その年に「光の救世主」召喚の儀を行うはずだった。そして光の神殿で聖杯に光の魔力を送り込んで光の力を高める。そうすることでかつて魔王が生んだ魔族や魔獣から世界が守られると言われている。
魔族の邪魔が入ったせいで、流輝たちは予定よりも相当早く召喚されてしまった。そしてどうやらちょくちょく二人は殺されようとしていたようだ。普段はキャスたちが守ってくれている上に、魔獣討伐へ出かけても今や向かうところ敵なしと小声でなら言っても過言ではないくらい流輝も琉生も力をつけているため気づかなかった。ディルアン事件で実感した。
もしかしたら魔族としては、間違えて召喚された子どもと判断され放置されるなり、一応どこかの国が預かったとしてもニューラウラ国王ノアがしてくれたように手厚い保護はされないだろうと踏んで早い召喚を仕向けたのかもしれない。
しかし二人はしっかり守られ、そしてお互いも力をつけた。来年、おそらく予定通り光の救世主として光の神殿へ行くことになる。正確には光の魔力を唯一持つ琉生が、だが。
王宮に呼ばれたのはその話だろうと思っていたが、実際間違いなかった。来年とはいえそろそろ計画を立て行動しなければならないということで会議が行われた。二人もそれに参加する。
光の神殿は四国連合に囲まれた無主地の中心部にある。ニューラウラ王国からだと竜馬で五日ほどの距離だ。遠いことは遠いが竜馬ならすぐに着くし普通なら問題なかったかもしれない。
だが最近魔獣の数がますます増えているだけでなく、通常の魔術師や騎士では太刀打ちできないほど強い魔獣も増えてきているらしい。多分光の神殿の効力が弱まっている上に魔族が双子の存在に脅威を覚え策略を練っているからかもしれない。
話し合いの結果、流輝や琉生とともに向かうメンバーは大人数ではむしろ動きがとりにくいことも考慮して、四国連合国からの王族代表と、魔道騎士団や剣聖騎士団の精鋭を厳選し、数名で赴くこととなった。キャス、フランとソリアはもちろんのこと、あと精鋭メンバーとして十名ほどが選ばれた。
このメンバーで当日まで準備を進める。飲食料や諸々の備品などもしっかり用意し、ルートを考えてあらゆる可能性を考慮しつつ作戦を決める。
そこまで話が進んだところで、流輝が提議した。
「文献では光の魔力を聖杯に注ぐんですよね」
「ああ、そうだ」
「光の魔力を持ってるのはルイだけだ。でもルイは魔力量が多くない。そんなルイがいきなりそこへ赴いて一度に注ぐのは危険だし無理があるのではないでしょうか」
「確かに……」
各国の王族代表がざわついている。子どもの頃あまりに魔力量が少なかった琉生だが、大人になるにつれて変化がみられるかもしれないとも考えられていたらしい。だがこの世界基準で成人した琉生は相変わらず一般的な人よりも魔力量は少ない。
「で、俺からの提案なんですけど」
ざわつく中、流輝が手を挙げた。ちなみに琉生はこういった場では自分のことを「私」と言っているが流輝は「僕」とさえ言っていない。ただせめて敬語を使えているだけで偉いと自分では思っている。
発言の許可を得て、流輝は続けた。
「魔法石で代用できないかと思って。今から当日まで、少しずつルイが魔法石に光を溜め込んでいくんです。そして当日それを利用する」
流輝が言うとまた周りはざわついた。ところどころで「魔法石だって?」「力を溜め込む? そんなことが?」という声が聞こえてくる。
「リキ様の話は試してみる価値があると思います」
だがソリアが同意してくれた。
魔法石に自分の魔力を入れる自体は多少の力なら今までも普通に行われてはいる。実際ローザリアやここの両親からもらった流輝と琉生の装飾品にも彼らの魔力が込められている。だが光の魔力はあまりに希少で特殊な上に強い力だ。おまけに魔力を魔法石にどんどん溜め蓄えていき利用すること自体、誰も今まで聞いたこともない上に少々無理があるように思えたようだ。
だがディルアン事件の際に魔族は魔法石に強い闇魔法を注ぎ、それをラントに渡したのを流輝は知っている。何故か流輝にはあまり強くかからなかったが、琉生は中々目を覚まさなかった。それらを思うと理論的には不可能ではないはずだ。
ノアの指示によって琉生の前にかなり高級そうな魔法石が運ばれてきた。琉生はそこに恐る恐るといった風にわずかな力とはいえ光の魔力を流してみた。するとわずかな力にも関わらず、その魔法石は反応して薄くではあるが白く光った。
強力である光魔法も少なくとも力を魔法石に入れられる。
周りから驚きの声が漏れた。
年数を重ねるごとに元の世界のことを考える時間、減ってたもんな……。
当初は元の世界のことしかむしろ考えられなかった勢いだったが、気づけばふと思い出すといった風に変わっていた。
きっと、多分、俺たちはもっと早く帰らないといけなかったんだ。
二人は元の世界の両親が写った画像を、目に焼きつけるかのように眺めた。だがやはり声は脳の片隅に何となく浮かぶような気がするだけで思い出せない。
今。もし今、帰られるとなった場合、迷うことなく即座に「よし帰ろう」と言えるだろうか。
モリスとカルナ、ローザリア。それにキャスやフランやソリアたち。この世界で出会った友だち。そしてずっと見てきたこの国、この世界。
簡単に別れを告げられるわけなんてない。今や自分たちの世界にもなっているここを痛感する。
それにモリスとカルナに本当の息子として抱きしめ、抱きしめられたい。
二人は心の中でごめんなさい、と呟き静かに携帯電話を置いた。
正魔術師、正騎士となって数日後、二人は王宮に呼ばれた。
そろそろ呼ばれるだろうなという予感はしていた。まだ十八歳ではあるが、今年は十九歳となる年だ。来年には二十歳になる。文献の通りなら、その年に「光の救世主」召喚の儀を行うはずだった。そして光の神殿で聖杯に光の魔力を送り込んで光の力を高める。そうすることでかつて魔王が生んだ魔族や魔獣から世界が守られると言われている。
魔族の邪魔が入ったせいで、流輝たちは予定よりも相当早く召喚されてしまった。そしてどうやらちょくちょく二人は殺されようとしていたようだ。普段はキャスたちが守ってくれている上に、魔獣討伐へ出かけても今や向かうところ敵なしと小声でなら言っても過言ではないくらい流輝も琉生も力をつけているため気づかなかった。ディルアン事件で実感した。
もしかしたら魔族としては、間違えて召喚された子どもと判断され放置されるなり、一応どこかの国が預かったとしてもニューラウラ国王ノアがしてくれたように手厚い保護はされないだろうと踏んで早い召喚を仕向けたのかもしれない。
しかし二人はしっかり守られ、そしてお互いも力をつけた。来年、おそらく予定通り光の救世主として光の神殿へ行くことになる。正確には光の魔力を唯一持つ琉生が、だが。
王宮に呼ばれたのはその話だろうと思っていたが、実際間違いなかった。来年とはいえそろそろ計画を立て行動しなければならないということで会議が行われた。二人もそれに参加する。
光の神殿は四国連合に囲まれた無主地の中心部にある。ニューラウラ王国からだと竜馬で五日ほどの距離だ。遠いことは遠いが竜馬ならすぐに着くし普通なら問題なかったかもしれない。
だが最近魔獣の数がますます増えているだけでなく、通常の魔術師や騎士では太刀打ちできないほど強い魔獣も増えてきているらしい。多分光の神殿の効力が弱まっている上に魔族が双子の存在に脅威を覚え策略を練っているからかもしれない。
話し合いの結果、流輝や琉生とともに向かうメンバーは大人数ではむしろ動きがとりにくいことも考慮して、四国連合国からの王族代表と、魔道騎士団や剣聖騎士団の精鋭を厳選し、数名で赴くこととなった。キャス、フランとソリアはもちろんのこと、あと精鋭メンバーとして十名ほどが選ばれた。
このメンバーで当日まで準備を進める。飲食料や諸々の備品などもしっかり用意し、ルートを考えてあらゆる可能性を考慮しつつ作戦を決める。
そこまで話が進んだところで、流輝が提議した。
「文献では光の魔力を聖杯に注ぐんですよね」
「ああ、そうだ」
「光の魔力を持ってるのはルイだけだ。でもルイは魔力量が多くない。そんなルイがいきなりそこへ赴いて一度に注ぐのは危険だし無理があるのではないでしょうか」
「確かに……」
各国の王族代表がざわついている。子どもの頃あまりに魔力量が少なかった琉生だが、大人になるにつれて変化がみられるかもしれないとも考えられていたらしい。だがこの世界基準で成人した琉生は相変わらず一般的な人よりも魔力量は少ない。
「で、俺からの提案なんですけど」
ざわつく中、流輝が手を挙げた。ちなみに琉生はこういった場では自分のことを「私」と言っているが流輝は「僕」とさえ言っていない。ただせめて敬語を使えているだけで偉いと自分では思っている。
発言の許可を得て、流輝は続けた。
「魔法石で代用できないかと思って。今から当日まで、少しずつルイが魔法石に光を溜め込んでいくんです。そして当日それを利用する」
流輝が言うとまた周りはざわついた。ところどころで「魔法石だって?」「力を溜め込む? そんなことが?」という声が聞こえてくる。
「リキ様の話は試してみる価値があると思います」
だがソリアが同意してくれた。
魔法石に自分の魔力を入れる自体は多少の力なら今までも普通に行われてはいる。実際ローザリアやここの両親からもらった流輝と琉生の装飾品にも彼らの魔力が込められている。だが光の魔力はあまりに希少で特殊な上に強い力だ。おまけに魔力を魔法石にどんどん溜め蓄えていき利用すること自体、誰も今まで聞いたこともない上に少々無理があるように思えたようだ。
だがディルアン事件の際に魔族は魔法石に強い闇魔法を注ぎ、それをラントに渡したのを流輝は知っている。何故か流輝にはあまり強くかからなかったが、琉生は中々目を覚まさなかった。それらを思うと理論的には不可能ではないはずだ。
ノアの指示によって琉生の前にかなり高級そうな魔法石が運ばれてきた。琉生はそこに恐る恐るといった風にわずかな力とはいえ光の魔力を流してみた。するとわずかな力にも関わらず、その魔法石は反応して薄くではあるが白く光った。
強力である光魔法も少なくとも力を魔法石に入れられる。
周りから驚きの声が漏れた。
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