双神の輪~紡がれる絆の物語~

Guidepost

文字の大きさ
90 / 120
3章 騎士編 光の救世主

89話

しおりを挟む
 流輝と琉生が十九歳となり、年も明けてしばらく経った頃、どこから漏れたのか光の魔法石に関する情報が魔族の耳に入っているかもしれないと王ノアから二人は聞かされた。

「ですが、あの時誓約書に全員がサインしています。その上で漏らしたとなると漏らした本人は……」
「それを承知の上で自発的に漏らしたか、命令されて漏らしたか、もしくは操られて漏らしたか。いくつかの可能性があるだろうが、魔族の動きを思うとおそらく漏れていると考えて間違いないだろう」

 ノアは重苦しいため息をついていた。それも仕方がないのかもしれない。ここのところベレスフォード邸への侵入者が後を絶たない。ニューラウラ王国でベレスフォード大公爵であるモリスの屋敷へ忍び込もうなどと考える者はごろつきすらいないだろう。それほど身分が高いというのもあるが、モリスを筆頭に剣や魔法に秀でた者しかいない屋敷へ忍び込むのは自殺行為でしかないと誰もがわかっていた。
 ただ侵入者を捕まえてもその者たちは自害しているのか魔法をかけられているのか、すぐに毒が回ってこと切れてしまうだけでなく、消滅してしまう。そのため問いただすこともできないどころか、人間か魔族かを調べることすらできずにいた。
 とはいえそういった行為の上に高度な魔法をかけられる者といえば間違いなく背後にいるのは魔族だろうと思われる。また流輝や琉生の部屋を目指そうとしているのは明らかで、金目当てというよりはやはり魔法石目当てだと考えられる。
 ノアが重苦しいため息をつくのは実の弟の屋敷が狙われていることに心を痛めているのもあるが、流輝と琉生の命を少しでも脅かそうとする行為が以前よりもあからさまになってきているからかもしれない。
 ただでさえ幼少であった双子を召喚してしまったことに対し昔から相当自責の念に駆られているだけに、少しでも二人が危険にさらされることをノアは厭う。幼子だった時と違い、今では国で一二を争う勢いの魔法や剣の実力を持つようになり、その上何度も討伐へ出ていてもそれは変わらないようだ。流輝たちが「魔族のせいで俺らは早まって召喚されたし陛下のせいではない」といくら言ってもそればかりはどうしようもないらしい。

「光の魔法石の話はあの時の会議でしか行っていません。それと個人的感情を差し置いたとしても私たちの両親やローザリア殿下が漏らすとは思えない。陛下を除き当時参加していた四国連合国の代表者数名と剣聖騎士団、魔道騎士団の精鋭メンバー、そして私たちの中の誰かの仕業ということになります」

 琉生はモリスたちやローザリアを抜いたというのに、丁寧にも流輝たちまで含めてきた。

「そういえば誓約書の効力があるのですから、当時の参加者の中で今現在命を落としているか重傷を負っている者を探し出せば明らかでは?」
「いや、ルイ。そうかもだけど、魔族って確か姿を変えられるんじゃなかったか? だとしたらそいつのふりをしてのうのうと生活している可能性もあるだろ」
「リキの言う通りだ。少なくとも会議に参加していた者の一人がということは、もはやそこの国が漏らしたと判断して間違いない。国の重鎮しか出席していないのだからな。ということは誓約書による魔力負荷を受けた者を国そのものが隠していてもおかしくない」

 流輝と琉生は、ノアもローザリアなどからの報告によりもしかしたら同じく思っているかもしれないが、自分たちがモールザ王国を怪しく思っていることをこの時告げた。

「あと……神殿でモールザ王国の兵がよく見かけられるってのも、光の魔法石が狙われてんのと何らかの関係があるかもしれません」

 通常見張りさえ置かない場所をうろつく理由がわからない。流輝としては「もしかして神殿を壊そうとか目論んでねえだろな」くらいは思ってもみたが、いくらモールザ王国が怪しくても神殿を壊して得られる利点が浮かばない。万が一魔族と通じていたとしても、神殿がなくなれば魔族や魔獣の力を抑えるものがなくなりモールザ王国にとっても困ることにしかならないはずだ。
 二人からモールザ王国が怪しいと言われても、ノアは王だけに決めつけることはしなかった。とはいえ普段からレイクオーツ王国とは他の二国よりも親交が深いのもあり、まずは可能性の低いレイクオーツ王国に対して諜報員を送った。そしてレイクオーツ王国の王ガルアと数名の信頼できる者たちと連絡を取り、密かに話し合いが始まった。
 話し合いとはいえ、四国連合会議のような定例の大きな会議ではないため王たちは自国を簡単に離れることもできない。そのため魔法石を使った通信機を利用した。通常の通信機でも接続させるとお互いの姿が映し出され会話ができるが、ここで使用されたのはかなり大きな通信機だった。もちろん秘密裏に会議は行われた。
 モールザ王国は魔法石や一般の宝石、炭鉱などがとれる鉱山がある関係で、それらを加工し装飾品や美術品などを作るフェザリア王国とは昔から一番取引をしているのもあり、親交が深い。まだ何も明確な証拠は出ていないのもあり、話し合いの結果とりあえずこの二国ともに警戒し、探ることとなった。
 それを聞いて頭を抱えたのはレイクオーツ王国の第一王子ルーベンだった。とはいえ王ガルアたちもフェザリア王国を疑うことには多少困惑はあった。
 何故ならいまだにまだ結婚に至っていないらしいとはいえ、フェザリア王国の第一王女エリンはルーベンの思い人だからだ。最近ようやく婚約が成立したと流輝たちはレイクオーツ王国第二王子であり同級生だったフィンから聞いていた。ずっと思い続けてようやくだけに、今回のことは確かに頭を抱えたくなるだろう。
 挙句、ルーベンは愛しいエリンの国が疑われている状態に黙っていることができず、婚約者としてではなく仕事の話という表向きの理由を作り、フェザリア王国へ向かったと流輝たちは聞いた。

「愛ってすげーな」
「まあ、うん、そうだね」

 とはいえ、悪い話ではない。ルーベンなら実際エリンの婚約者でもある上に仕事の話ならば例えフェザリア王国が黒だったとしても偵察だと疑われる可能性は低いだろうと思われた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...