双神の輪~紡がれる絆の物語~

Guidepost

文字の大きさ
92 / 120
3章 騎士編 光の救世主

91話

しおりを挟む
 拘束されたモールザ王ローガンは腐っても王らしく、無様な抵抗は一切しなかった。威厳を留めつつおとなしく案内された部屋へ連れられた。
 ただし話を聞きだす際に「わしを問いただすというのにこのような身分の低い者を寄こすとは」と静かに怒りをあらわにしたらしい。
 訪れた者は決して身分の低い貴族たちではなかった。会議にも出席していた各国の重鎮たちだ。

「ローガン王は君たちを寄こせと言っているらしい」

 ノアに困惑した様子で言われた流輝と琉生は「皆がそれでいいのであれば」と同意した。

「すまない。もし何か危険を感じたらすぐに部屋を離れてくれ。情報も大切だが何より君たちの安全が第一だ。一応部屋の外には精鋭メンバーを数名配置させる」
「ありがとうございます」

 二人が出向くとローガンは破顔し、自分の座っているテーブルへ招いて椅子に座るよう命じてきた。

「何故俺らを?」
「わしはモールザ王国の王だ。例え拘束され自白の魔法を使われたとはいえその辺の貴族と同じ扱いを受けるつもりはない。そなたたちは王と同等クラスである上とても希少価値のある存在だ。わしから話を聞きだすのにふさわしい」

 俺らは宝石かよ。っていうかそんな威厳ある国の王ならそもそも悪事に手をつけるべきじゃねえだろ。

 そう思ったが流輝はなるべく顔にも出さないようにしながら話を聞いた。
 ローガンはただ、光の魔法石が欲しかったのだという。

「あなたと密談していた騎士はどういう経緯であなたの護衛騎士となったんですか」
「あやつは先王から仕えている護衛騎士だ。先王の頃から王に忠実だった男だ。信頼しないはずがなかろう」

 当然といったローガンに嘘を言っている様子はない。そもそも自白の魔法により、嘘を言うことは不可能なはずだ。ということは正体が魔族であった護衛騎士はそれほど以前からモールザ王国に潜んでいたということになる。これはかなり問題視すべき情報だった。
 その上話を聞いているとローガンの思考にところどころ違和感というか不明瞭というか、本人の意思というわりに明確さや一貫性がないように思えた。
 もしあの護衛騎士だけでなくローガンの周りには他にも魔族がいるのだとしたら、もしかしたらローガンの思考はすでに干渉され一部操られているのかもしれない。
 第一、ローガンが光の魔法石を狙ったのは単に価値があるからだ。自白の魔法を使われた上で本人が言い切るのだから間違いはない。

「陛下。あなたは魔族のことをどう思われますか」
「どう、と言われてもな。魔族は魔族ではないか。忌むべき存在でしかない。消えてしまえばよいと思っておる。だからこそ希少価値があるだけでなく、魔族や魔獣の力を弱らせる力を持つそなたらを歓迎しておる。来年が楽しみではないか」

 やはりおかしい、と二人は思った。少なくとも光の救世主を疎んじていないローガンが自国内で兵を集め、光の神殿へ兵を送るといった行動をとるのは矛盾している。
 その後もいくつか話を聞いたが、ローガンの口からは一切魔族に関する情報が出ることはなかった。聞かされたのはひたすら財政難についてだ。本人や貴族たちによる散財のせいでしかない財政難を補うために奴隷制度をいまだに実施していることまで聞かされてしまった。とんだ悪政だが、魔族に関する話はほんの少しも出てこなかった。
 捕らえた護衛騎士にも話が聞けたらよかったのだが、魔族だと正体がばれたところでその騎士は消滅してしまった。流輝たちの屋敷に忍び込んだ者たちと同じだ。本人が自害したのか、はたまた他の魔族によってそういった魔法をかけられていたのかは不明だが、何か情報を引き出すことはこれで不可能となった。
 だが落胆している暇はなかった。ローガンは最後にとんでもないことを言ってきた。

「わしを拘束したことは伝書鳥などで我がモールザ王国へ伝わっておるはずだ。今頃は三国へ戦争を仕向けるための準備がなされているであろう」
「は……? 拘束されたのは光の神殿での儀式を妨害する行為が一番の原因だとわかっておられるのでは? あなたも先ほど来年が楽しみだと……」
「まずは代表する国、ニューラウラ王国だ。だいたいわしが命じたわけではない。このモールザ王を慕う兵たちが自ら行動しているだけにすぎん。それにこの国を手に入れると同時に光の魔法石も手に入るかと思うと楽しみでしかない。そなたたちもわがモールザ王国へ来るとよい。歓迎するぞ」

 駄目だ、と二人は思った。思考にとりとめがない。一見落ち着いた様子でまともに話している風だが、内容に一貫性がない。もしかしたらかなり深いところまでローガンは魔族に思考を弄られているのではないだろうか。
 とはいえ同情はできない。元々は身勝手で欲深い考えしかなかったがため、魔族につけいられたはずだ。ローガンも、ひょっとしたらそれ以前の王も。
 流輝と琉生は部屋を出ると急いでノアに連絡を取り、中断していた会議を再開させた。そして報告し、モールザ王国からの攻撃に備える準備をとりあえず始めようと各自が動きだした時に別途報告が入った。
 モールザ王国第一王女だったルビーが駆けつけるようにして訪れてきたのだという。竜馬で急いでやってきたのか、髪は乱れ身なりは崩れ、身分を証明するものがなければ一見元第一王女だったと誰も思えないほどだ。
 三年前の十九歳の時にモールザ王国の貴族の元に嫁ぎ、基本的に王宮と接することもなかったルビーだが、父親を心配し駆けつけてきたのかと最初誰もがそう思った。だがそうではなかった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...