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3章 騎士編 光の救世主
92話
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モールザ王国の元第一王女ルビーの話は衝撃的だった。
ルビーの兄であり第二王子のロニーが臣下の者たちにより拘束され身動きが取れない状態にある。その上、第三王子ジェスと第二王女シエナという幼子たちが危険だという。ルビーが無事であるのははすでにクラーク家を出た身であり、城にいなかったからのようだ。
「私の兄であり第一王子のセオが幼いジェスとシエナを守っているようですが、いくら腕の立つ兄でも長く持つとは思えません……どうか、どうか私の兄弟たちを、いえ、モールザ王国を助けてもらえないでしょうか。どうか援軍を……!」
何とか少々落ち着かせ、さらに詳しく話を聞くと、臣下の多くが魔族によって支配されているのだという。
ローガン王も言っていたが、モールザ王国では現在、やはり兵を準備し争いを起こそうとしているらしい。あまりに突然のことに、第二王子のロニーが止めに入ったところで拘束されたようだ。第一王子のセオや正妃たちがそれに対し抗議したが、臣下たちは大々的に謀反を起こしてきたのが一連の流れだった。ルビーはそれをセオからの連絡鳥による手紙で早々に知ると、こうしてなりふり構わず駆け込んできたらしい。
「兄、セオは言いなりのお飾り王子だと言われていますが、そうではありません。警戒を怠らず様子を窺いながらずっと国のことを調べておりました。今回のことが発覚する前よりすでにモールザ王国が魔族の手により支配されつつあることも、調べた結果わかっておりました」
ルビーはセオの直筆である手紙を出しながら話し続けてきた。ニューラウラ王ノアにそれが渡される。
セオが自国について調べ始めた当初は奴隷制度に憂えて、それらについて水面下で調査を行っていたようだ。その結果「言いなりのお飾り王子」などと周りから言われるようになっても、これ幸いと密かに調べ続けたらしい。そして奴隷絡みで魔族の存在に気づいた。そこからはモールザ王国に絡む魔族についてひたすら調査を進めたらしい。
セオが気づいた時にはすでにモールザ王国は魔族によって支配されていたようだ。おそらくは三代前の王が魔族にたぶらかされ自分の父親である前王を殺害した時から魔族はじわじわと介入していき、今では完全に支配するに至ったとセオは調べた結果考えているようだ。
魔族たちの拠点はモールザ王国だったということになる。ヴァルドレストの森は単なる目くらましに過ぎなかった。
ちなみにヴァルドレストの森でかなり魔獣が増え、人間界での魔族の拠点だと疑われつつも完全に森の中を調べきれなかったのは、おそらく闇魔法によって迷わされていた上にどこかで魔獣召喚の魔法円が施されていたからだろうと手紙にはあった。
それを耳にして、流輝は「そういえば俺もヴァルドレストの森付近に討伐として出向いたけど、森へ入ったことはなかったな」と内心思った。魔族に直接関わる可能性があるのを極力避けるため、流輝と琉生は森の調査が終わるまでは介入しないよう言われていた。
「おそらく魔族はモールザ王国を介し、各国に諜報員を送っているだろうともある」
ノアの言葉に先ほどから度々ざわついていた周りがまたざわつき出す。謀反が起こっているモールザ王国と、まず最初に戦争を仕向けられているらしいニューラウラ王国だけでなく、どの国もどの場所も少したりとも安心はできないということになる。
これらの情報は少し前にはもうわかっており、三国へこの情報を何とか届けよう再三企てたものの、魔族の監視により成功することはなかったと手紙に謝罪とともに書かれているようだった。
今回ルビーがそういった監視の目をすり抜けてやって来れたのは、皮肉な話だが争いの準備とともに自国での大々的な謀反のおかげで、そちらに気を取られているからというのもあるのだろう。
セオとロニーは魔族に操られていた父親ローガン王の目が届かないところで何とかそれらを探り、対策を講じようとしていたらしい。
「……それに、何ということだ。ローガン王はこのニューラウラ王国に対し戦争を行うものだとばかり思い込んでいるようだが……違う。実際は光の神殿へさらなる兵を送り、魔族たちは救世主の儀式の前に力の弱まった神殿を壊そうと目論んでいる……!」
確かに以前から光の神殿付近でモールザ王国の兵の姿が目撃されていた。だがことは思っていた以上に深刻のようだった。すでに神殿付近には多くの魔族や魔獣が控えているらしい。しかもモールザ王国の騎士たちの大半は魔族の手に堕ちている。その騎士たちもすでにずいぶん控えている上に、今回さらに投入準備されている状態だ。争いの準備は各国への宣戦布告ではなく、神殿の破壊の準備だった。
光の神殿が破壊されてしまうと、中にあるという聖杯に力を注ぐこともできなくなり、人間たちは終わってしまうかもしれない。光の救世主を直接倒せなくとも神殿さえ破壊されればそういう結果となってしまう。
最近あらゆる場所で強い魔獣が増えたのも、神殿の力が弱まっただけでなく、神殿に対し闇の魔力で力を抑えつけていたからかもしれない。
手紙の最後には兄弟や王国を助けて欲しいというルビーの願いとは異なり「モールザ王国はもう駄目でしょう。私たちは自分たちで脱出を試みます。ですので皆さま方はどうか優先すべきことをなしてください、お願いいたします」とあった。
ルビーの兄であり第二王子のロニーが臣下の者たちにより拘束され身動きが取れない状態にある。その上、第三王子ジェスと第二王女シエナという幼子たちが危険だという。ルビーが無事であるのははすでにクラーク家を出た身であり、城にいなかったからのようだ。
「私の兄であり第一王子のセオが幼いジェスとシエナを守っているようですが、いくら腕の立つ兄でも長く持つとは思えません……どうか、どうか私の兄弟たちを、いえ、モールザ王国を助けてもらえないでしょうか。どうか援軍を……!」
何とか少々落ち着かせ、さらに詳しく話を聞くと、臣下の多くが魔族によって支配されているのだという。
ローガン王も言っていたが、モールザ王国では現在、やはり兵を準備し争いを起こそうとしているらしい。あまりに突然のことに、第二王子のロニーが止めに入ったところで拘束されたようだ。第一王子のセオや正妃たちがそれに対し抗議したが、臣下たちは大々的に謀反を起こしてきたのが一連の流れだった。ルビーはそれをセオからの連絡鳥による手紙で早々に知ると、こうしてなりふり構わず駆け込んできたらしい。
「兄、セオは言いなりのお飾り王子だと言われていますが、そうではありません。警戒を怠らず様子を窺いながらずっと国のことを調べておりました。今回のことが発覚する前よりすでにモールザ王国が魔族の手により支配されつつあることも、調べた結果わかっておりました」
ルビーはセオの直筆である手紙を出しながら話し続けてきた。ニューラウラ王ノアにそれが渡される。
セオが自国について調べ始めた当初は奴隷制度に憂えて、それらについて水面下で調査を行っていたようだ。その結果「言いなりのお飾り王子」などと周りから言われるようになっても、これ幸いと密かに調べ続けたらしい。そして奴隷絡みで魔族の存在に気づいた。そこからはモールザ王国に絡む魔族についてひたすら調査を進めたらしい。
セオが気づいた時にはすでにモールザ王国は魔族によって支配されていたようだ。おそらくは三代前の王が魔族にたぶらかされ自分の父親である前王を殺害した時から魔族はじわじわと介入していき、今では完全に支配するに至ったとセオは調べた結果考えているようだ。
魔族たちの拠点はモールザ王国だったということになる。ヴァルドレストの森は単なる目くらましに過ぎなかった。
ちなみにヴァルドレストの森でかなり魔獣が増え、人間界での魔族の拠点だと疑われつつも完全に森の中を調べきれなかったのは、おそらく闇魔法によって迷わされていた上にどこかで魔獣召喚の魔法円が施されていたからだろうと手紙にはあった。
それを耳にして、流輝は「そういえば俺もヴァルドレストの森付近に討伐として出向いたけど、森へ入ったことはなかったな」と内心思った。魔族に直接関わる可能性があるのを極力避けるため、流輝と琉生は森の調査が終わるまでは介入しないよう言われていた。
「おそらく魔族はモールザ王国を介し、各国に諜報員を送っているだろうともある」
ノアの言葉に先ほどから度々ざわついていた周りがまたざわつき出す。謀反が起こっているモールザ王国と、まず最初に戦争を仕向けられているらしいニューラウラ王国だけでなく、どの国もどの場所も少したりとも安心はできないということになる。
これらの情報は少し前にはもうわかっており、三国へこの情報を何とか届けよう再三企てたものの、魔族の監視により成功することはなかったと手紙に謝罪とともに書かれているようだった。
今回ルビーがそういった監視の目をすり抜けてやって来れたのは、皮肉な話だが争いの準備とともに自国での大々的な謀反のおかげで、そちらに気を取られているからというのもあるのだろう。
セオとロニーは魔族に操られていた父親ローガン王の目が届かないところで何とかそれらを探り、対策を講じようとしていたらしい。
「……それに、何ということだ。ローガン王はこのニューラウラ王国に対し戦争を行うものだとばかり思い込んでいるようだが……違う。実際は光の神殿へさらなる兵を送り、魔族たちは救世主の儀式の前に力の弱まった神殿を壊そうと目論んでいる……!」
確かに以前から光の神殿付近でモールザ王国の兵の姿が目撃されていた。だがことは思っていた以上に深刻のようだった。すでに神殿付近には多くの魔族や魔獣が控えているらしい。しかもモールザ王国の騎士たちの大半は魔族の手に堕ちている。その騎士たちもすでにずいぶん控えている上に、今回さらに投入準備されている状態だ。争いの準備は各国への宣戦布告ではなく、神殿の破壊の準備だった。
光の神殿が破壊されてしまうと、中にあるという聖杯に力を注ぐこともできなくなり、人間たちは終わってしまうかもしれない。光の救世主を直接倒せなくとも神殿さえ破壊されればそういう結果となってしまう。
最近あらゆる場所で強い魔獣が増えたのも、神殿の力が弱まっただけでなく、神殿に対し闇の魔力で力を抑えつけていたからかもしれない。
手紙の最後には兄弟や王国を助けて欲しいというルビーの願いとは異なり「モールザ王国はもう駄目でしょう。私たちは自分たちで脱出を試みます。ですので皆さま方はどうか優先すべきことをなしてください、お願いいたします」とあった。
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