双神の輪~紡がれる絆の物語~

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3章 騎士編 光の救世主

98話

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 警戒しながらも流輝たちはそっと地下牢へ近づいた。目くらましの魔法はまだ有効だろうが、こういった狭い場所に留まっている相手なら気配に気づかれる可能性はある。
 見れば牢は開いていた。そしてそこから出たのであろう第二王子ロニーが数名の騎士と何か話をしている。
 どういう状況か判断がつきにくいが、そこにいる騎士たちの中に魔族の特徴のような耳の形をした者がいた。薄暗いせいで髪や肌、目の色などはよくわからないが、とりあえずあの耳は人間のものであるはずがない。もはや魔族としての警戒も不要な状況だから油断でもしているのだろうか。
 どう攻めようかと流輝が思っている中、セオが飛び出してしまった。弟の危険だと思ったのだろうし、それも仕方ない。それにどのみち、この三人ならここにいる騎士くらいは余裕で倒せるだろう。他国だけに慎重な行動を心掛けようと思っていた流輝は苦笑しながら自分たちの魔法を解いた。

「っ兄上?」
「ロニー! 助けに来た!」

 突然何もないところから現れたセオに目をむく勢いで驚いているロニーの前に、セオは立ちはだかった。そして騎士たちに剣を向ける。流輝とキャスも同時に剣を抜いたが、ロニーが慌てたように「兄上、この者たちは味方です……!」と止めに入ってきた。

「え?」

 見れば騎士たちは剣を抜くことなく、セオに気づくと跪いている。
 ロニーも最初は騎士たちがやって来た時、もう自分は終わりなのかと思ったらしい。魔族が自分を殺しに来たのだ、と。ただでは殺させないとばかりに牢を開けられた時、武器も何もない状況でロニーは自ら騎士たちにぶつかっていき、隙をついて逃げようとした。だが「我々は殿下をお救いにきたのです」と言われ、戸惑っていると剣を抜いていない者たちの中、一人がそれを鞘ごと抜いてロニーに掲げてきた。

「信用できないのであれば今ここで自分をお切りください」
「い、いや……それは……」

 そして一旦落ち着いて考えることにし、騎士たちからも話を聞こうとしていたところで流輝やセオが突然何もないところから現れ、戸惑いを通り越して目をむいていたのだという。

「それは……悪かったよロニー。リキ殿の魔法だったんだ」
「そうだったんですね。そんな魔法を使えるなんて、すごいですね。さすが光の救世主様」

 ロニーが思わず口にした「光の救世主」という言葉に、そこにいた騎士たちは相当驚いた上で一斉に流輝に対して傅いてきて、流輝を照れさせるどころかドン引きさせてきた。
 騎士たちは一人どころか皆魔族だった。だがこの状況に納得していない者たちだった。

「自分たちはハーフブラットです。それでも魔族には違いない。ですが普通に生活がしたいと願っているただのモールザ王国民です」

 ゆっくり寛いで話をしている余裕はもちろんない。だがこの騎士たちの話は聞いておいたほうがいいように思い、流輝たちは地下牢近くにある監視用だろうか、小部屋に入った。

「同じように考えている仲間は他にもいます」

 確かに人間は魔族を忌み嫌い、昔から討伐対象にされてきたし、殺されてきた。だが元はと言えば魔族が人間を殺してきたからだと騎士たちは語った。
 光の救世主が現れる前には人間を魔族たちは数えきれないほど虐殺してきた。人間を屈服させることを快楽とし、殺すことを楽しんできた。
 その後、光の救世主が出現することにより魔族の力は相当弱まってしまった。数もあからさまに減った。そのせいもあるのか、中には人間と共に生きることを選ぶ者や人間の血をひく者も現れてきた。

「そうして生まれた我々ハーフブラットは人間の血もひいている魔族だからか、大抵の者は人間に対して悪意などありません。ただ家族や恋人、仲間と静かに暮らせたらそれでいいと思っています」

 それでも魔族の血を持つハーフブラットだと人間に気づかれると迫害を受けることもあった。そのせいで定住することも難しかった。転々と逃れるように移住するハーフブラットは多い。

「自分たちもその内この王国へ流れつきました。来た時にはすでに魔族が支配しつつある状態だったこの国は、確かに我々も過ごしやすかったです」

 これまで目の当たりにしてきた、人間の魔族への嫌悪感や迫害を疎ましいと思わないわけではない。それでもそれは自業自得とも言える。もちろん、だからといって必要以上に迫害しようとする人間が悪くないとも言えない。

「それでも自分はこの国の騎士です。この国の国民です。近所の人たちはとても暖かい人だったし、自分がハーフブラットだと知っても優しくしてくれた人もいた。親切にしてくれた人間の騎士もいた。過去にも迫害から守ってくれ、かばってくれる人間もいた。そして今、自分をハーフブラットだとわかっていて愛してくれる人間の妻もいます。大切なんです」

 だが純魔族たちは分け隔てなく、全ての人間を追いやろう、殺そうと神殿を壊し、人間への戦争をしかけようとしている。そんなこと、少しも望んでいないのだと騎士たちは語った。
 また、第一王子と第二王子が城の主だった者たちを全く信用せず、色々調べていたことも知っていたと言う。知っていて、せめて純魔族に告げず黙っていたと。

「本来ならば我々から打ち明けるべきでした。ですが魔族の支配力もあり、できませんでした。今はその支配力がそれて弱まったことにより、支配を外すことができました。こうして自分の意志のまま自由に動くこともできます。殿下……どうか我々を信じてください。命に代えてもお守りします。どうか助けさせてください」

 跪き、傅き騎士たちは願った。その真摯な様子からも、騎士たちが嘘をついていないと伝わってきた。流輝もセオたちもその言葉を重く受け止めた。
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