双神の輪~紡がれる絆の物語~

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3章 騎士編 光の救世主

110話

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 光の神殿での戦いにより、魔族や魔獣の力はかなり削ぐことができたようだ。おかげで神殿への道中もさほど危険はなくなったとノアやソリアなどが言っていた。暴走したとはいえ琉生が魔族のリーダーらしき者を倒したことが影響しているようだと会議の時も言っていた。
 神殿周辺はあの戦い以降、魔族どころか魔獣の姿も見られなくなった。どうやら琉生と流輝による光魔法のおかげで、一旦かなり弱まっていた神殿の力がそれなりに増し、浄化能力が辺りを満たしているらしい。しばらくして落ち着いてから何名かの魔術師により調査したところ、光の神殿周辺ではかなりの光魔法が満ちていることもわかった。
 光の神殿での儀式を行うに十分だと周りの意見は一致した。そう、気づけば双子は二十歳になっていた。

「ちょっとリキ。それ私の」
「あ? だってずっと残してただろ。いらないからじゃねえの」
「違う。好きだから最後に取っておいたの!」
「えー。でも、もう食べちゃった」
「リキの馬鹿」
「何だよ。じゃあまだ口に残ってるし、口移しであげようか?」
「ほんっと馬鹿!」

 火が付いたかのように真っ赤になり、馬車の座席のすみに丸まるようにしてローザリアは膝にかけていた毛布を顔にまで覆ってしまった。おかげで座席の上に丸い毛布が転がっているかのようだ。
 対して流輝は楽しげに笑っている。

「……俺がいる配慮してくれない?」
「してるぞ? ルイがいなけりゃほんとに口移ししてた」
「まったくもう」

 呆れてため息をつくが、琉生の口元はつい綻んでしまう。
 流輝がローザリアへの気持ちを知ったとは聞いていたが、気づけば流輝とローザリアは恋人となっていた。ローザリアがそれはもう小さな頃から流輝にずっと片思いしていたのを知っているし、途中からは無自覚ながらに流輝もローザリアのことを好きだったと知っている琉生としては、目の前でイチャつかれようが微笑ましささえあるし嬉しく思う。

 にしても兄さんは自覚すると困惑するくらいサラリとやらかしてくるな。

 むしろ無自覚だった頃のほうが戸惑いなどのせいもあり赤くなったりおどおどしたりしてかわいらしさがあったように琉生は思う。
 三人は今、光の神殿へ向かう馬車の中だった。琉生たちを心配くれているモリスとカルナも別の馬車に乗っている。ローザリアもそうだが、両親も光の救世主についての文献で「儀式の後救世主は姿を消した」と書かれていたことを知っており、心配だけでなく不安でもあるようだ。
 ローザリアに関しては、出発する前に流輝が不安そうにしていたローザリアを励ましていたのを知っている。気休めでしかないとしてもローザリアも一旦は立ち直ったようだ。馬車の中でも楽しそうに流輝や琉生と話したり、今のようにイチャついて……いや、菓子を流輝と取り合ったりしている。

「……なあ、ルイ」
「何?」

 今まで楽しそうに笑っていた流輝が、真面目な顔をして琉生を見てきた。

「あの、さ。お前、この世界の創造主っていうの? この世界の神様のことやアリータ神にまつわる神話とか、色々、知ってる?」
「そりゃまあ人並みには」

 真面目な顔をして一体何の話かと思っていた琉生は気が抜けたように頷いた。

「兄さんも知ってるでしょ」
「いや……あー、まあ、一応アリータ神の存在とか、くらいはな。正魔術師になる儀式の時とか政治の儀とかでも教会行ったりで多少関りもあったし。でもお前はなんで知ってんの?」
「普通に学校でも習ったでしょ……」
「え? 習ったっけ?」

 冗談を言っているのかと思ったが、流輝は本気でぽかんとした顔をしている。琉生は呆れた目を流輝へ向けた。

「ほんっと兄さんは興味のないことに関しては見事なくらいスルーするよね」
「そ、れほどでもないぞ」
「じゃあ習ったの何で覚えてないの」
「た、たまたま?」
「……はぁ。っていうか何で?」
「何が」
「何で急にアリータ神のこと、気になったの?」

 今も琉生自身が言ったように、流輝は興味のないことに関しては本当に心から、興味を示さない。とてつもなく頭はいいくせに、一見そう見られにくいのもこういう性格のせいだろうなと琉生は前から思っている。

 ……そもそも頭、よくないと魔法をあれほど使いこなすのも難しいよね。

 魔力が重要ではあるが、魔法を使いこなすには頭も使う。流輝は魔力が相当強いおかげで基本詠唱を省いているようだが、これも単に省いているだけで理解していなければそもそも使いこなすこともできないはずだ。魔力量が少なすぎてほぼ魔法が使えない琉生だからこそ、魔法の難しさはよくわかっている。
 一見食えない性格をしているソリアは誰が見ても頭もよさそうに見えるが、流輝が魔術師だと知って地味に驚く人も少なくない。学生だった頃も最初の頃流輝があまり魔法を使わなかったせいもあって魔術科を選択したことに驚いている生徒は結構いた。

 普通なら、双子として魔力量にそこまで違いがあることに劣等感を持ったり、やっかんだりとかするのかな。

 少なくとも琉生は羨ましがったりやっかんだり劣等感を抱いたことはない。剣術に関して秀でているおかげだろうか。それとも流輝が大好きすぎてそんな感情すら湧かないのだろうか。
 ただ、光の神殿に関しては少しだけ、以前からもう少しだけでも魔力があればなと思っていたし、流輝が光魔法を使えるようになったおかげで魔法石に溜めなくても儀式が行えることに少々劣等感を抱いたかもしれない。

 でも……それでもそれは自分に対する劣等感だし、リキを羨んだり疎ましく思ったりしたことはないな。

 それもきっと流輝の真っすぐでわかりやすい性格のおかげじゃないかと思っている。こちらまでまっすぐに流輝が好きだと思えるし、流輝を頼りたいと思えるし、流輝では足りないところは純粋に補いたいと思える。

 そういう性格の兄さんでほんとよかったとは思ってるけど……、でもだから興味全くなさそうだったアリータ神を気にしてるの、こっちまで気になるんだけど。
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