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しかし皇族と公爵家の正式な婚約であるため、正当な理由がなくてはアイリスとの婚約破棄などできない。そのため、カリッドはデイリーなどの協力を得て婚約破棄をするにあたっての決定的な嫌がらせの証拠を探る。ずっとヒロインのことを心配していたジェイクやメアリの協力もあり、とうとうアイリスの酷い嫌がらせが明るみに出て、王子の婚約者として相応しくない言動だということで婚約破棄となった。公の場であったため、ヒロインの父親も継母や義妹のやらかした悪行を知り修復不可能な関係となる。結局継母とアイリスは家を出ることとなった。ヒロインはその後元々婚約者だったリースの後押しもあり無事カリッドと婚約し、数年後結婚してめでたしというエンドだ。皇帝派、貴族派云々はよかったのだろうかと今さら少し気になったがリースが養子としてシューリス家に入ることで解決するのだろう。
改めてカリッドルートは前世で桃から聞かされていた転生ものの話でよく聞くハッピーエンドだなとフィンリーは自分が昔書いたメモを読みながらしみじみ思った。公開処刑のようなものじゃないかとその断罪イベント話を桃から聞いた時は引いたものだ。何故わざわざ皇族や貴族が多くいるパーティーで行うのか。いじめ返しなのか。プレイヤーの溜飲が下がるのだろうか。何にせよ多分攻略対象五人の中では一番王道ルートなのかもしれない。
ところでカリッドを叱咤する側近デイリーはデイリー・マクナリーといって年齢は二十二歳。この世界では珍しい黒髪をしているが瞳は琥珀色だ。目つきは鋭く冷たい。攻略キャラなので当然美形だがその外見も落ち着いている上で冷たい雰囲気に包まれている。だがモノクルをつけていた。弘斗だった頃は何とも思わなかったが、実際この世界に来てモノクルは上流階級の男性に流行っているお洒落アイテムだと把握したため、案外流行りもの好きなのではと実物のデイリーをまだ見ていないというのにフィンリーは少しおかしく思っていたりする。外見からも分かるがインテリで性格は油断ならないタイプというのだろうか。公式サイトでは「計算高いインテリ。馬鹿は躾をしたくなるタイプ」と少々怖いことが書かれていた。自分のことは馬鹿だとは思っていないが、極力近づきたくはない。
とはいえカリッドルートではヒロインとカリッドの仲を取り持つことに命をかけてくれる。ただ理由は王子への忠義というよりは王子の婚約者だったアイリスの性格が気に食わなかったためヒロインを推していただけだったように思う。
ちなみにデイリールートはカリッドルートへ入ってから選択肢が発生する。王子との関係に嫉妬したアイリスからの嫌がらせに悲しむヒロインにデイリーが声をかけるのだ。ここで「デイリーを頼る」を選ぶとデイリールート、「妹をそれでも信じる」を頼るとカリッドルートに分かれる。デイリーを選ぶと、王子よりも自分を頼ってくれているヒロインに心を動かされ、デイリーは好意を寄せるようになるのだ。それを聞いた時は、計算高いインテリとは……と弘斗の頃少し思ったりした。とにかくヒロインを気にしながらもさっさと行動に移さない王子カリッドにいら立ちを覚えたデイリーはカリッドへさりげなく宣戦布告し、ヒロインが自分へ振り向くよう上手く仕向ける。この辺りは確かに計算高いかもしれない。ヒロインは辛い時に自分を引っ張ってくれたデイリーに好意を寄せるようになり、ヒロインの婚約者でありながらも兄のような存在であるリースに打ち明ける。リースはヒロインが幸せになるのならとこのルートでも婚約解消を後押ししてくれる。その後ヒロインは家を出てデイリーと無事結ばれ、リースは養子としてシューリス家に入ることとなる。転生時すでにはっきり覚えていなかったがおそらくデイリールートでも継母とアイリスの悪事は公となるパターンだったかと思われる。
昔書いたゲームの内容メモを読み、フィンリーはやはり社交界デビューを躊躇する。カリッドと社交界で出会うことでほぼ全ての攻略キャラとのルートが発生すると言っていい。逆に考えるとそれを避ければ何も発生しなくて済むのではないかと思えるのだ。現にジェイクやリースとは未だに恋愛のもつれに発展する方向ではないはずだ。少なくともフィンリーからすればそう思える。
「……やっぱり社交界デビューしたくない」
はぁ、とため息を吐きながらフィンリーはまたベラムを引き出しに戻して鍵をかけた。そしてベッドに横たわる。
あり得ないことに乙女ゲームの中に自分は転生した。しかも男だった前世の記憶をそのままに、現世も乙女ではなく男として生まれた。その上子どもの頃には知り得なかったが、この世界は乙女ゲームでは当然何も特記されていなかったものの、異性愛者のほうが多いとはいえどうやら同性での恋愛も前世のように少数派だとは思われない、ある意味平等な感覚を持つ世界観のようだ。おまけに乙女ゲームの世界な上に自分はそのヒロイン(俺)である。今のところゲームで起きるフラグは発生していないし可能性も全て折ってきているつもりだが今後も油断ならない。
何とか今日まで無事過ごしてきて成人した。だがゲームのストーリーが始まるのは来年、フィンリーが十七歳になってからである。ゲームシナリオがそのまま発生するための出来事などは今のところ発生していないものの、まだまだ気を引き締めておかなくてはならない。
フィンリーはあくまでも異性愛者だ。相手は男性でなく女性がいい。前世では悲しいことに童貞のままだったのでできれば現世では童貞ともおさらばしたい。可愛い女の子と恋がしたい。せっかく美形でいてこの世界ではわりと重要な高い身分に生まれたというのに、全然、全く、少しも、さっぱり、完膚なきまでに女の子とのフラグが立っていない。ここまでなさ過ぎると、実は周りの誰かがわざと邪魔をしているのではと思いたくもなるが、さすがにそんなことはないはずだ。やはり自分に問題があるのだ。とても親しいと言える友人もできないし、やはり性格だろうか。前世と特に変わっていないし前世では恋愛は抜きにしてではあるが、わりと人から好かれるタイプだったのだがとまたフィンリーはため息を吐いた。もしくは自分で気づけていないが、美形ながらにどこか変な部分があるとか、嫌らしい癖があるとか、体臭がひどいとか。どれにしても悲しすぎる。
……明日ジェイクに聞いてみよう。
フィンリーはぎゅっと枕を抱きしめながら眠りに陥った。
改めてカリッドルートは前世で桃から聞かされていた転生ものの話でよく聞くハッピーエンドだなとフィンリーは自分が昔書いたメモを読みながらしみじみ思った。公開処刑のようなものじゃないかとその断罪イベント話を桃から聞いた時は引いたものだ。何故わざわざ皇族や貴族が多くいるパーティーで行うのか。いじめ返しなのか。プレイヤーの溜飲が下がるのだろうか。何にせよ多分攻略対象五人の中では一番王道ルートなのかもしれない。
ところでカリッドを叱咤する側近デイリーはデイリー・マクナリーといって年齢は二十二歳。この世界では珍しい黒髪をしているが瞳は琥珀色だ。目つきは鋭く冷たい。攻略キャラなので当然美形だがその外見も落ち着いている上で冷たい雰囲気に包まれている。だがモノクルをつけていた。弘斗だった頃は何とも思わなかったが、実際この世界に来てモノクルは上流階級の男性に流行っているお洒落アイテムだと把握したため、案外流行りもの好きなのではと実物のデイリーをまだ見ていないというのにフィンリーは少しおかしく思っていたりする。外見からも分かるがインテリで性格は油断ならないタイプというのだろうか。公式サイトでは「計算高いインテリ。馬鹿は躾をしたくなるタイプ」と少々怖いことが書かれていた。自分のことは馬鹿だとは思っていないが、極力近づきたくはない。
とはいえカリッドルートではヒロインとカリッドの仲を取り持つことに命をかけてくれる。ただ理由は王子への忠義というよりは王子の婚約者だったアイリスの性格が気に食わなかったためヒロインを推していただけだったように思う。
ちなみにデイリールートはカリッドルートへ入ってから選択肢が発生する。王子との関係に嫉妬したアイリスからの嫌がらせに悲しむヒロインにデイリーが声をかけるのだ。ここで「デイリーを頼る」を選ぶとデイリールート、「妹をそれでも信じる」を頼るとカリッドルートに分かれる。デイリーを選ぶと、王子よりも自分を頼ってくれているヒロインに心を動かされ、デイリーは好意を寄せるようになるのだ。それを聞いた時は、計算高いインテリとは……と弘斗の頃少し思ったりした。とにかくヒロインを気にしながらもさっさと行動に移さない王子カリッドにいら立ちを覚えたデイリーはカリッドへさりげなく宣戦布告し、ヒロインが自分へ振り向くよう上手く仕向ける。この辺りは確かに計算高いかもしれない。ヒロインは辛い時に自分を引っ張ってくれたデイリーに好意を寄せるようになり、ヒロインの婚約者でありながらも兄のような存在であるリースに打ち明ける。リースはヒロインが幸せになるのならとこのルートでも婚約解消を後押ししてくれる。その後ヒロインは家を出てデイリーと無事結ばれ、リースは養子としてシューリス家に入ることとなる。転生時すでにはっきり覚えていなかったがおそらくデイリールートでも継母とアイリスの悪事は公となるパターンだったかと思われる。
昔書いたゲームの内容メモを読み、フィンリーはやはり社交界デビューを躊躇する。カリッドと社交界で出会うことでほぼ全ての攻略キャラとのルートが発生すると言っていい。逆に考えるとそれを避ければ何も発生しなくて済むのではないかと思えるのだ。現にジェイクやリースとは未だに恋愛のもつれに発展する方向ではないはずだ。少なくともフィンリーからすればそう思える。
「……やっぱり社交界デビューしたくない」
はぁ、とため息を吐きながらフィンリーはまたベラムを引き出しに戻して鍵をかけた。そしてベッドに横たわる。
あり得ないことに乙女ゲームの中に自分は転生した。しかも男だった前世の記憶をそのままに、現世も乙女ではなく男として生まれた。その上子どもの頃には知り得なかったが、この世界は乙女ゲームでは当然何も特記されていなかったものの、異性愛者のほうが多いとはいえどうやら同性での恋愛も前世のように少数派だとは思われない、ある意味平等な感覚を持つ世界観のようだ。おまけに乙女ゲームの世界な上に自分はそのヒロイン(俺)である。今のところゲームで起きるフラグは発生していないし可能性も全て折ってきているつもりだが今後も油断ならない。
何とか今日まで無事過ごしてきて成人した。だがゲームのストーリーが始まるのは来年、フィンリーが十七歳になってからである。ゲームシナリオがそのまま発生するための出来事などは今のところ発生していないものの、まだまだ気を引き締めておかなくてはならない。
フィンリーはあくまでも異性愛者だ。相手は男性でなく女性がいい。前世では悲しいことに童貞のままだったのでできれば現世では童貞ともおさらばしたい。可愛い女の子と恋がしたい。せっかく美形でいてこの世界ではわりと重要な高い身分に生まれたというのに、全然、全く、少しも、さっぱり、完膚なきまでに女の子とのフラグが立っていない。ここまでなさ過ぎると、実は周りの誰かがわざと邪魔をしているのではと思いたくもなるが、さすがにそんなことはないはずだ。やはり自分に問題があるのだ。とても親しいと言える友人もできないし、やはり性格だろうか。前世と特に変わっていないし前世では恋愛は抜きにしてではあるが、わりと人から好かれるタイプだったのだがとまたフィンリーはため息を吐いた。もしくは自分で気づけていないが、美形ながらにどこか変な部分があるとか、嫌らしい癖があるとか、体臭がひどいとか。どれにしても悲しすぎる。
……明日ジェイクに聞いてみよう。
フィンリーはぎゅっと枕を抱きしめながら眠りに陥った。
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