31 / 45
31話
しおりを挟む
とりあえず、今持っているゲームシナリオの記憶とその記録がほぼ役に立たなくなっているということは把握した。フィンリーは夜、ベラムを取り出してそれらを改めて読み直しながらため息を吐く。これではせっかく前世の記憶が残っていてもメモに残していても役に立たない。
「……いや、今まではきっと役に立ってた、って思いたい……」
過去を思い返してもなるほど、確かにゲームのシナリオ通りではなかったことなど多々あったなと思う。だがそれでも大きく見ると最近の出来事を除いてはほぼシナリオ通りの展開だったはずだ。そしてきっと記憶があったからこそ、何とか乗り切ってきた──はずだと思いたい。
何も知らないままだったらもう既に誰かのルートに行っていたか、最悪バッドエンドに向けてまっしぐらだった可能性だってある。
「……よな?」
フィンリーは誰に言うともなく呟いた。
誰かのルート、と考えた時にカリッドの顔が浮かんだのは多分デイリーのせいだ。あんなことがなければきっと浮かばなかったはずだ。
「あんな、こと……」
今度はカリッドの顔だけでなく、あの日の出来事が浮かんでしまい、フィンリーは思い切り枕に顔を打ち付けた。前世と違って高い鼻をそしてぶつける。
誰のせいでもなく自分が羞恥やらなにやらで勝手に居たたまれなくなり枕に顔を打ち付けたせいで痛むだけに、腹立たしくとも怒りを何かにぶつけるわけにもいかない。目を瞑って無言で鼻に手を当て痛みが去るのを待ちながら、フィンリーは「あれは仕方のないこと、あれは忘れるべきこと、あれはどうしようもないこと」と呪文のようにぶつぶつと繰り返した。
その後ベラムをまた引き出しに戻すとゴロリとベッドに体を投げ出す。
誰かと男同士で恋愛するのが嫌すぎて今までずっと自分なりに警戒し続けてきた今回の人生だが、実際のところ攻略対象である彼らのことは嫌いではない。本当にとてつもなく癖のある性格の持ち主だらけな気はするが、誰のことも嫌いにはなれなかった。デイリーに関しては最初からどこか怖かったし、話を聞いてますます「ヤバいヤツ」という認識が深まったが。
きっと今後も嫌いになんてなれないだろう。だがそれでも恋愛対象になれるかと言えば、NOだ。
「普通に友だちとか身内とか、何かそういうさ、普通のさぁ……」
デイリーがシナリオを弄ってはいてもゲームにあるようなノーマルエンドもちゃんと存在しているはずだ。いくらなんでも誰かとの強制エンドはないはずだ。
「……媚薬は飲ませてきたけどな……」
バッドエンドなんてものを作ったりと好きに弄ってはいるだろうが、「あなたの人生を台無しになどしてませんよね」と言っていたこともあるし一応、フィンリーを地獄に叩きつけたいわけではないだろう。単にデイリーが楽しみたいため誰ともくっつかないノーマルエンドを好まないというだけで、フィンリーが「誰ともくっつかない平和で楽しいノーマルエンドを俺は目指す」と宣言した時も「お好きに」と言っていた。
「……今の状況だと誰かとの将来を選択するより難しいなんて言われたけど」
ただ、フィンリーが皆を避けまくっているせいでこのままだと誰ともくっつかないままになりかねないとも言っていた。矛盾している。多分、本当にこれはフィンリーの人生であり、デイリーにもどう転ぶのか把握できないに違いない。
ある意味、やはりデイリーの言うようにこの世界でどう生きるかはフィンリー次第なのだろう。デイリーのせいで結構特殊な世界ではあるが、運命はある程度決まっていても変えられないものではなく、この世界でフィンリーがどう考え、どう行動し、どう生きていくかでどうとでも変わっていけるのだろう。
「……ほんっとに特殊な世界だけどな……クソ、せめて攻略キャラは女の子にして欲しかった……だとしたら俺、むしろ喜んで運命を受け入れるのに……」
変えられるとはいえあらかじめ設定されている運命のせいでか、フィンリーは現世でも相変わらず女性に縁がない。前世と違ってせっかく顔がよくて身分も高いというのにだ。多分これも前世と同じく、フィンリーの努力次第というか、言動しだいで一応変えられはするのだろう。「ヒロイン効果」も「目が二重」的なあらかじめ備えつけられた自分の素質になってしまっているかもしれないが、二重は手術や何かで作ることができるのと同じようにどうとでもできなくはないのではないだろうか。
──多分。
「……やっぱり結局は自分で自分の人生をがんばるしかないってことか」
あーあ、と伸びをしながら、フィンリーはそのまま眠りに陥った。
「う、わぁ……!」
翌朝、フィンリーはまるで前世の漫画で見かけたような「悪夢を見て叫びながら起き上がる」というベタな目覚め方をしてしまった。
「すげーヤな夢だった……」
今フィンリーが過ごしているこの世界観に関わる内容とは全く関係のない夢ではあった。だが、前世でたまにプレイ動画を見て楽しんでいたホラーゲームの世界に入り込んだような夢だった。周りがゾンビに侵され、その中を何とか逃げる内容だ。剣は持っているもののあまり効果もなく、基本ステルスをしながら逃げないと生き延びられそうにないという、見て楽しむことはできてもフィンリー自身は絶対プレイできなさそうなタイプの内容で、はっきり言ってとてつもなく怖かった。こんな世界観に送り込まれるくらいなら今のボーイズラブ展開のほうがはるかにましかもしれない。
「……でもこんな夢見たのも絶対デイリーのせいだ」
昨日デイリーと交わした話の中で「性的なものはむしろ十七歳以上対象のDへと引き下げられるのでしたら、十八歳以上対象というのは過度に残虐な悪印象を与える殺傷、暴力、犯罪、出血などの表現を含む内容が主に規制の対象となるわけだ。命の保証がない感じでわくわくしますね。私にもあなたのシナリオがどうなるかはわかりません。お疲れ様ですね」と言われたことを思い出す。多分それが心に残っていて夢に出てきたのだろう。
「……いや、ないよな……暴力的なシーンなんて、この世界観にないよな?」
フィンリーは少しクラクラするくらい思い切り頭を振った。
「……いや、今まではきっと役に立ってた、って思いたい……」
過去を思い返してもなるほど、確かにゲームのシナリオ通りではなかったことなど多々あったなと思う。だがそれでも大きく見ると最近の出来事を除いてはほぼシナリオ通りの展開だったはずだ。そしてきっと記憶があったからこそ、何とか乗り切ってきた──はずだと思いたい。
何も知らないままだったらもう既に誰かのルートに行っていたか、最悪バッドエンドに向けてまっしぐらだった可能性だってある。
「……よな?」
フィンリーは誰に言うともなく呟いた。
誰かのルート、と考えた時にカリッドの顔が浮かんだのは多分デイリーのせいだ。あんなことがなければきっと浮かばなかったはずだ。
「あんな、こと……」
今度はカリッドの顔だけでなく、あの日の出来事が浮かんでしまい、フィンリーは思い切り枕に顔を打ち付けた。前世と違って高い鼻をそしてぶつける。
誰のせいでもなく自分が羞恥やらなにやらで勝手に居たたまれなくなり枕に顔を打ち付けたせいで痛むだけに、腹立たしくとも怒りを何かにぶつけるわけにもいかない。目を瞑って無言で鼻に手を当て痛みが去るのを待ちながら、フィンリーは「あれは仕方のないこと、あれは忘れるべきこと、あれはどうしようもないこと」と呪文のようにぶつぶつと繰り返した。
その後ベラムをまた引き出しに戻すとゴロリとベッドに体を投げ出す。
誰かと男同士で恋愛するのが嫌すぎて今までずっと自分なりに警戒し続けてきた今回の人生だが、実際のところ攻略対象である彼らのことは嫌いではない。本当にとてつもなく癖のある性格の持ち主だらけな気はするが、誰のことも嫌いにはなれなかった。デイリーに関しては最初からどこか怖かったし、話を聞いてますます「ヤバいヤツ」という認識が深まったが。
きっと今後も嫌いになんてなれないだろう。だがそれでも恋愛対象になれるかと言えば、NOだ。
「普通に友だちとか身内とか、何かそういうさ、普通のさぁ……」
デイリーがシナリオを弄ってはいてもゲームにあるようなノーマルエンドもちゃんと存在しているはずだ。いくらなんでも誰かとの強制エンドはないはずだ。
「……媚薬は飲ませてきたけどな……」
バッドエンドなんてものを作ったりと好きに弄ってはいるだろうが、「あなたの人生を台無しになどしてませんよね」と言っていたこともあるし一応、フィンリーを地獄に叩きつけたいわけではないだろう。単にデイリーが楽しみたいため誰ともくっつかないノーマルエンドを好まないというだけで、フィンリーが「誰ともくっつかない平和で楽しいノーマルエンドを俺は目指す」と宣言した時も「お好きに」と言っていた。
「……今の状況だと誰かとの将来を選択するより難しいなんて言われたけど」
ただ、フィンリーが皆を避けまくっているせいでこのままだと誰ともくっつかないままになりかねないとも言っていた。矛盾している。多分、本当にこれはフィンリーの人生であり、デイリーにもどう転ぶのか把握できないに違いない。
ある意味、やはりデイリーの言うようにこの世界でどう生きるかはフィンリー次第なのだろう。デイリーのせいで結構特殊な世界ではあるが、運命はある程度決まっていても変えられないものではなく、この世界でフィンリーがどう考え、どう行動し、どう生きていくかでどうとでも変わっていけるのだろう。
「……ほんっとに特殊な世界だけどな……クソ、せめて攻略キャラは女の子にして欲しかった……だとしたら俺、むしろ喜んで運命を受け入れるのに……」
変えられるとはいえあらかじめ設定されている運命のせいでか、フィンリーは現世でも相変わらず女性に縁がない。前世と違ってせっかく顔がよくて身分も高いというのにだ。多分これも前世と同じく、フィンリーの努力次第というか、言動しだいで一応変えられはするのだろう。「ヒロイン効果」も「目が二重」的なあらかじめ備えつけられた自分の素質になってしまっているかもしれないが、二重は手術や何かで作ることができるのと同じようにどうとでもできなくはないのではないだろうか。
──多分。
「……やっぱり結局は自分で自分の人生をがんばるしかないってことか」
あーあ、と伸びをしながら、フィンリーはそのまま眠りに陥った。
「う、わぁ……!」
翌朝、フィンリーはまるで前世の漫画で見かけたような「悪夢を見て叫びながら起き上がる」というベタな目覚め方をしてしまった。
「すげーヤな夢だった……」
今フィンリーが過ごしているこの世界観に関わる内容とは全く関係のない夢ではあった。だが、前世でたまにプレイ動画を見て楽しんでいたホラーゲームの世界に入り込んだような夢だった。周りがゾンビに侵され、その中を何とか逃げる内容だ。剣は持っているもののあまり効果もなく、基本ステルスをしながら逃げないと生き延びられそうにないという、見て楽しむことはできてもフィンリー自身は絶対プレイできなさそうなタイプの内容で、はっきり言ってとてつもなく怖かった。こんな世界観に送り込まれるくらいなら今のボーイズラブ展開のほうがはるかにましかもしれない。
「……でもこんな夢見たのも絶対デイリーのせいだ」
昨日デイリーと交わした話の中で「性的なものはむしろ十七歳以上対象のDへと引き下げられるのでしたら、十八歳以上対象というのは過度に残虐な悪印象を与える殺傷、暴力、犯罪、出血などの表現を含む内容が主に規制の対象となるわけだ。命の保証がない感じでわくわくしますね。私にもあなたのシナリオがどうなるかはわかりません。お疲れ様ですね」と言われたことを思い出す。多分それが心に残っていて夢に出てきたのだろう。
「……いや、ないよな……暴力的なシーンなんて、この世界観にないよな?」
フィンリーは少しクラクラするくらい思い切り頭を振った。
2
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
憎くて恋しい君にだけは、絶対会いたくなかったのに。
Q矢(Q.➽)
BL
愛する人達を守る為に、俺は戦いに出たのに。
満身創痍ながらも生き残り、帰還してみれば、とっくの昔に彼は俺を諦めていたらしい。
よし、じゃあ、もう死のうかな…から始まる転生物語。
愛しすぎて愛が枯渇してしまった俺は、もう誰も愛する気力は無い。
だから生まれ変わっても君には会いたく無いって願ったんだ。
それなのに転生先にはまんまと彼が。
でも、どっち?
判別のつかないままの二人の彼の愛と執着に溺死寸前の主人公君。
今世は幸せになりに来ました。
猫になった俺、王子様の飼い猫になる
あまみ
BL
車に轢かれそうになった猫を助けて死んでしまった少年、天音(あまね)は転生したら猫になっていた!?
猫の自分を受け入れるしかないと腹を括ったはいいが、人間とキスをすると人間に戻ってしまう特異体質になってしまった。
転生した先は平和なファンタジーの世界。人間の姿に戻るため方法を模索していくと決めたはいいがこの国の王子に捕まってしまい猫として可愛がられる日々。しかも王子は人間嫌いで──!?
*性描写は※ついています。
*いつも読んでくださりありがとうございます。お気に入り、しおり登録大変励みになっております。
これからも応援していただけると幸いです。
11/6完結しました。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
処刑されたくない悪役宰相、破滅フラグ回避のため孤独なラスボス竜を懐柔したら番として溺愛される
水凪しおん
BL
激務で過労死した俺が転生したのは、前世でやり込んだBLゲームの悪役宰相クリストフ。
しかも、断頭台で処刑される破滅ルート確定済み!
生き残る唯一の方法は、物語のラスボスである最強の”魔竜公”ダリウスを懐柔すること。
ゲーム知識を頼りに、孤独で冷徹な彼に接触を試みるが、待っていたのは絶対零度の拒絶だった。
しかし、彼の好物や弱みを突き、少しずつ心の壁を溶かしていくうちに、彼の態度に変化が訪れる。
「――俺の番に、何か用か」
これは破滅を回避するためのただの計画。
のはずが、孤独な竜が見せる不器用な優しさと独占欲に、いつしか俺の心も揺さぶられていく…。
悪役宰相と最強ラスボスが運命に抗う、異世界転生ラブファンタジー!
婚約解消されたネコミミ悪役令息はなぜか王子に溺愛される
日色
BL
大好きな王子に婚約解消されてしまった悪役令息ルジア=アンセルは、ネコミミの呪いをかけられると同時に前世の記憶を思い出した。最後の情けにと両親に与えられた猫カフェで、これからは猫とまったり生きていくことに決めた……はずなのに! なぜか婚約解消したはずの王子レオンが押しかけてきて!?
『悪役令息溺愛アンソロジー』に寄稿したお話です。全11話になる予定です。
*ムーンライトノベルズにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる