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16話
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休みに入ってからしばらくは、お互いしなければならない課題やアルバイトなどに従事した。実家へ帰る頃には課題も終えていて、これで心置きなく帰られそうだと顕太は満面の笑みを新二へ向ける。すると新二は微妙な顔を返してきた。
「お前のとこって課題、多いよな……」
「え、そう?」
「俺らのとこは別に宿題って程課題ねーし。ちょっとしたレポートくらいだから、休み明け少ししたら来る試験用の勉強してたわ」
「マジか。俺んとこ、演習問題とか実験レポートとかプレゼン作成とかちょいちょいあったのに」
「俺、文系に入って良かったって改めて思うわ」
嬉しそうにニヤッと笑ってくる新二が可愛くて顕太はつい押し倒そうとした。すると軽くデコピンを食らう。
「って」
「何で? お前はいつも一体何でスイッチ入んの? つか今からとか馬鹿か。もう何時ごろに帰るとかも伝えてんだぞ。だいたいそんなことする暇あったらいい加減荷物まとめろよ」
とてつもなく呆れたように言われ、顕太はシュンとなる。シュンとなるのは別にわざとではないのだが、こうなることでちょくちょく新二が絆されたり流されてくれることがあるのは知っている。だから今も少しだけ期待はしていたのだが「流されねーからな」と腕を組みながら言い切られた。
「えー」
「えーじゃねーし。つかお前って何でもサラッとこなしてそうなくせに、何でいつも荷物まとめんの遅いの?」
今までにも新二と何度か旅行へ行ったことがある。その度に言われている気がする。
「だって準備とかって面倒臭いから苦手なんだよな」
「準備するのも楽しくないか?」
「俺よりも普段面倒臭がりな新二の口から出てるとは思えない」
「今だけはお前に貶されるいわれはないからな。とっとと準備終えろよ。行く寸前までまとめてないとか意味分からねーから」
「うぇーぃ……」
実際荷物と言っても実家へ帰るだけだし、いざとなれば実家にあるものかスーパーにでも行けばどうとでもなる。結局終わってみればほぼ持っていくものなどなかった。
「……お前、それだけ?」
「だって俺、男の子だしな」
「俺も男の子だわ! 別にいーけど、たったそんだけの荷物用意すんのに今までだらだらしてたのか……」
ため息を吐いてくる新二に、顕太は「ほら、新二ー」とニコニコ呼びかける。
「なんだ……よって、お前、またいきなり撮ったな!」
「旅行なう、っと」
「なうじゃねーんだよ……!」
とりあえずは先に顕太の実家へ行くことになっている。二人は電車に乗ると、お互い好きに過ごした。新二はアルバイト先から借りてきた本を読んでいるし、顕太は携帯電話を先ほどから弄っている。新二は高校まで本を読んでいるイメージがなかったのだが大学に入ってから陸上を止めたからか本に興味を持つようになっている気がする。
ところで顕太はいつも新二にべったりなイメージを友だちにも持たれているが、さすがに普段は公共の場ではわきまえるし、いつもいつもそんな風よりはこうしてメリハリのある距離感が嫌いではない。かといって全く話さない訳ではなく「新二、これこれ。前言ってたブーツ。なんかよくね?」と検索していたものを見せながら話しかけたり、「そういえばお前、俺んちに土産用意してねーだろ」などと話しかけられたりもする。
「……って、土産っ?」
「土産」
「お前、俺んちに買ってんの……?」
「まーな」
「マジかよ、駅着いたらなんか買う」
「いや、それならどうせ先にお前んちに行くんだし、その後で出かけた先で買えばいーんじゃないか。駅前、あんまなかった気がする」
「わかった」
きちんと挨拶はしたいとずっと思っていたが、土産のことは完全に失念していた。
「将来の旦那失格だな……」
「そもそも旦那も嫁もねーからな」
地元へ着くと、二人はまっすぐ顕太の実家へ向かった。
「ただいまー」
「お邪魔します……」
顕太の実家へ来るのを、新二は「まあいいか」と一旦は言っていたものの、その後「やっぱり落ち着かねーんだけど」と渋っていた。関係がバレバレなのだと知ってから初めて顔を合わすとあって恥ずかしい上に緊張するからというのが理由だった。
だが全く会わない訳にもいかないしと結局覚悟を決めてくれたようでこうして来てくれているのだか、案の定あからさまに緊張している。土産を渡すときも何度か噛んでた。
「しんちゃんったら昔から知ってるんだから、そんなかしこまらんで」
顕太の母親が軽快に笑いながら新二の背中を軽くではあるがバンバン叩いている。
「ちょ、母ちゃん、やめろよ。新二、緊張してんだよ」
「そうなの? 可愛いわねぇ。寛いでよ、しんちゃん。本当なら私がかしこまらないとだわ」
「なんで」
顕太がポカンとして母親に聞くと「こんなバカみたいな子と付き合ってくれてるなんて、お土産貰うどころか私がお礼渡さないとでしょ」などと言ってくる。
「酷過ぎんだろ!」
夜になると他の家族も帰ってきた。友だちと遊びに行っていたらしい彩愛は新二には「久しぶり」と笑いかけていたのに顕太にはとてつもなく微妙な顔を向けてくるだけだった。
「ニーナ、お兄ちゃんに対して酷くねっ?」
「……だってバカにぃ、相変わらずバカなんだもん。SNSも、もっと自重すれば? いつも絶対新二くんに言わずに勝手に載せてんでしょ」
「でも新二可愛いだろ?」
「ほんとバカ」
仕事から帰ってきた父親も、新二には優しかった。
「久しぶりだなぁ、しんちゃん。このバカの面倒見てくれてありがとうな」
「父ちゃんまで!」
挙げ句、同じく仕事から帰ってきた一史も顕太を見るなり「バカ太、帰ってきたのか……」と呟いてくる。
「お前、相変わらず家族総出で馬鹿扱いだな。勉強はキモいくらいできんのにな」
ガチガチに緊張していた新二もようやく普通に戻ってきたようだと、今の一言で顕太は把握した。
「追い討ち……!」
わざと泣きそうな顔を作って言うと、新二はただ笑っていた。
その後夕食の時に、新二は改まって家族に呼びかけた。皆が新二を見ると、新二はまた少し緊張したように顔が強張っていたが、頭を一度下げると笑いかけてきた。
「……知ってると思うけど、顕太と……付き合ってます……その、可愛い女の子じゃなくて……すみません。でも、顕太のこと、好きです。俺みたいなのでほんとごめんだけど、その、よろしくお願いします」
家族の皆が歓声を上げて歓迎する中、顕太はマジ泣きをしてしまった。
「お前のとこって課題、多いよな……」
「え、そう?」
「俺らのとこは別に宿題って程課題ねーし。ちょっとしたレポートくらいだから、休み明け少ししたら来る試験用の勉強してたわ」
「マジか。俺んとこ、演習問題とか実験レポートとかプレゼン作成とかちょいちょいあったのに」
「俺、文系に入って良かったって改めて思うわ」
嬉しそうにニヤッと笑ってくる新二が可愛くて顕太はつい押し倒そうとした。すると軽くデコピンを食らう。
「って」
「何で? お前はいつも一体何でスイッチ入んの? つか今からとか馬鹿か。もう何時ごろに帰るとかも伝えてんだぞ。だいたいそんなことする暇あったらいい加減荷物まとめろよ」
とてつもなく呆れたように言われ、顕太はシュンとなる。シュンとなるのは別にわざとではないのだが、こうなることでちょくちょく新二が絆されたり流されてくれることがあるのは知っている。だから今も少しだけ期待はしていたのだが「流されねーからな」と腕を組みながら言い切られた。
「えー」
「えーじゃねーし。つかお前って何でもサラッとこなしてそうなくせに、何でいつも荷物まとめんの遅いの?」
今までにも新二と何度か旅行へ行ったことがある。その度に言われている気がする。
「だって準備とかって面倒臭いから苦手なんだよな」
「準備するのも楽しくないか?」
「俺よりも普段面倒臭がりな新二の口から出てるとは思えない」
「今だけはお前に貶されるいわれはないからな。とっとと準備終えろよ。行く寸前までまとめてないとか意味分からねーから」
「うぇーぃ……」
実際荷物と言っても実家へ帰るだけだし、いざとなれば実家にあるものかスーパーにでも行けばどうとでもなる。結局終わってみればほぼ持っていくものなどなかった。
「……お前、それだけ?」
「だって俺、男の子だしな」
「俺も男の子だわ! 別にいーけど、たったそんだけの荷物用意すんのに今までだらだらしてたのか……」
ため息を吐いてくる新二に、顕太は「ほら、新二ー」とニコニコ呼びかける。
「なんだ……よって、お前、またいきなり撮ったな!」
「旅行なう、っと」
「なうじゃねーんだよ……!」
とりあえずは先に顕太の実家へ行くことになっている。二人は電車に乗ると、お互い好きに過ごした。新二はアルバイト先から借りてきた本を読んでいるし、顕太は携帯電話を先ほどから弄っている。新二は高校まで本を読んでいるイメージがなかったのだが大学に入ってから陸上を止めたからか本に興味を持つようになっている気がする。
ところで顕太はいつも新二にべったりなイメージを友だちにも持たれているが、さすがに普段は公共の場ではわきまえるし、いつもいつもそんな風よりはこうしてメリハリのある距離感が嫌いではない。かといって全く話さない訳ではなく「新二、これこれ。前言ってたブーツ。なんかよくね?」と検索していたものを見せながら話しかけたり、「そういえばお前、俺んちに土産用意してねーだろ」などと話しかけられたりもする。
「……って、土産っ?」
「土産」
「お前、俺んちに買ってんの……?」
「まーな」
「マジかよ、駅着いたらなんか買う」
「いや、それならどうせ先にお前んちに行くんだし、その後で出かけた先で買えばいーんじゃないか。駅前、あんまなかった気がする」
「わかった」
きちんと挨拶はしたいとずっと思っていたが、土産のことは完全に失念していた。
「将来の旦那失格だな……」
「そもそも旦那も嫁もねーからな」
地元へ着くと、二人はまっすぐ顕太の実家へ向かった。
「ただいまー」
「お邪魔します……」
顕太の実家へ来るのを、新二は「まあいいか」と一旦は言っていたものの、その後「やっぱり落ち着かねーんだけど」と渋っていた。関係がバレバレなのだと知ってから初めて顔を合わすとあって恥ずかしい上に緊張するからというのが理由だった。
だが全く会わない訳にもいかないしと結局覚悟を決めてくれたようでこうして来てくれているのだか、案の定あからさまに緊張している。土産を渡すときも何度か噛んでた。
「しんちゃんったら昔から知ってるんだから、そんなかしこまらんで」
顕太の母親が軽快に笑いながら新二の背中を軽くではあるがバンバン叩いている。
「ちょ、母ちゃん、やめろよ。新二、緊張してんだよ」
「そうなの? 可愛いわねぇ。寛いでよ、しんちゃん。本当なら私がかしこまらないとだわ」
「なんで」
顕太がポカンとして母親に聞くと「こんなバカみたいな子と付き合ってくれてるなんて、お土産貰うどころか私がお礼渡さないとでしょ」などと言ってくる。
「酷過ぎんだろ!」
夜になると他の家族も帰ってきた。友だちと遊びに行っていたらしい彩愛は新二には「久しぶり」と笑いかけていたのに顕太にはとてつもなく微妙な顔を向けてくるだけだった。
「ニーナ、お兄ちゃんに対して酷くねっ?」
「……だってバカにぃ、相変わらずバカなんだもん。SNSも、もっと自重すれば? いつも絶対新二くんに言わずに勝手に載せてんでしょ」
「でも新二可愛いだろ?」
「ほんとバカ」
仕事から帰ってきた父親も、新二には優しかった。
「久しぶりだなぁ、しんちゃん。このバカの面倒見てくれてありがとうな」
「父ちゃんまで!」
挙げ句、同じく仕事から帰ってきた一史も顕太を見るなり「バカ太、帰ってきたのか……」と呟いてくる。
「お前、相変わらず家族総出で馬鹿扱いだな。勉強はキモいくらいできんのにな」
ガチガチに緊張していた新二もようやく普通に戻ってきたようだと、今の一言で顕太は把握した。
「追い討ち……!」
わざと泣きそうな顔を作って言うと、新二はただ笑っていた。
その後夕食の時に、新二は改まって家族に呼びかけた。皆が新二を見ると、新二はまた少し緊張したように顔が強張っていたが、頭を一度下げると笑いかけてきた。
「……知ってると思うけど、顕太と……付き合ってます……その、可愛い女の子じゃなくて……すみません。でも、顕太のこと、好きです。俺みたいなのでほんとごめんだけど、その、よろしくお願いします」
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