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49話
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キラキラした目を向ければ、ブルーノは少し戸惑いつつもニヤリと笑ってきた。
「よし、だったらここの二階で部屋借り──」
「ブルーノ。そこは俺の席だ」
いつの間にか戻ってきていたルーカスが穏やかな声で、だがきっぱりと言ってくる。サファルが「戻ってきた」と笑みをルーカスに向けている横でブルーノは何故か複雑そうな顔になった。
「な、なんだよルーカス……いたのか」
「ああ。悪いな」
「いや……、……じゃーな、サファル」
「え? ああ、うん……?」
ブルーノが慌てふためいた様子で去っていくのをサファルはポカンと見送った。
「何だ、あいつ。教えてくれるんじゃないのかよ。つか別にいればいいのに。あとルーカスも席くらい。こっちに座ればいいんじゃ……?」
首を小さく振り、ため息を吐きながら座ったルーカスはサファルをじっと見てきた。
「お前なぁ……」
「何?」
「ブルーノにはもっと警戒しろよ」
「警戒? 何で。くだらない冗談言うからか?」
「冗談?」
「この間なんか、俺に対して女にしてやろうかとか言ってきてさ。あいつ馬鹿だろ」
ちなみに同じような発言なのにアルゴの台詞はかなり怖かった。意味が違うのもあるしアルゴ自体が畏怖の塊だったのもあるが、あれは本気で性別を変えられると感じたからだ。ブルーノからはくだらないセクハラめいた冗談といった感じで、真に迫った様子はなかった。
「馬鹿はお前だよ……」
お前だと言いながら、ルーカスは本当に馬鹿を見ているかのように呆れた顔を見せてきた。
「何でそんな顔して馬鹿って言われなきゃなんだよ。つか、道具は頼めたのか?」
「だから……っ、……全く……ああ、明日持っていく。ついでにお前のも何か頼もうか?」
「俺はいい。ありがとう。カジャックがさぁ、刃物研ぐくらいなら出来るんだよ。だから俺の矢じりもたまに研いでもらってるんだ。凄くない? あの人何でも出来るんだよ。凄くない?」
「……ああ、凄いな。そういえば俺、あの人に手合わせしようって言ったんだけど、よく考えなくてもどうやって連絡取ればいいか分からなくてな。お前、聞いておいてもらえるか? リゼいなくて俺だけなら森の中でも大丈夫だし」
「うん、分かった。俺も参加していい?」
「昼寝の友にでもするのか?」
「何でだよ! 剣は駄目でも体術ならわりと出来るの知ってるだろ」
「わりと、な。というよりお前、話逸らしてくるなよ」
「何のことだよ」
「ブルーノ」
「え、別に逸らしてないけど。もう終わった話じゃないの。だいたいルーカスだって話広げてきただろ」
「つい、な。とにかく、ブルーノには気をつけろ」
「前も他のやつがそんなこと言ってたな」
「で、お前は前も言われてたのに相変わらず警戒心なしってことか。馬鹿って言われても仕方がないだろ」
「何で今日はそんな辛辣なんだよルーカス」
「お前にあまりにも警戒心が無さすぎてな……」
警戒心? とサファルは首を傾げた。
アルゴにはもしかしたら警戒心も漏れていたかもしれないが、ブルーノは友だちだ。何をそんなに警戒しろと言うのか。結局よく分からないままだった。
後日、カジャックの了解を得てサファルとルーカスは森の中でカジャックと待ち合わせをすることになった。リゼは羨ましがっていたが、森の中ということで素直について行かないことを了承していた。サファルとリゼの両親も魔物に襲われて亡くなっている。そのため普段からサファルのこともやたらと心配する分、自分も無茶なことはしない。
「リゼはサファルと違って偉いよな。賢い」
森へ向かう途中、ルーカスがそんなことを言ってくる。
「そりゃ間違ってないけど……」
「普段もしっかりしてるからなぁ、リゼは」
色々と耳が痛い、上にとても含みも感じる。ただあえて気にせず、リゼを優先させることにした。
「だよな。リゼ、俺に似て可愛いし、俺に似ずしっかりしてるしでいい奥さんになると思わないか?」
「そうだな」
「……それだけ?」
「え?」
「……ううん。いい奥さんになるよな。でもだからこそ余計、その辺のやつらにリゼはやれない」
「だな」
「……。なぁ」
「何だ?」
「例えば、な。ルーカスはリゼ、どう思う?」
「しっかりしてて可愛い俺の」
「うんうん!」
「妹みたいな感じかなぁ」
「……っく」
「? お前のこともな」
「え?」
「お前のことも俺は幼馴染の親友ってだけじゃなく可愛い弟みたいに思ってるよ」
「うん……それは俺も」
改めて言われ、サファルは嬉しく思う。笑みを浮かべルーカスを見上げた。
「だからほんとにお前はどうしようもないなって思ったりする」
「……。ルーカスまだ何か根に持ってんの」
「俺が? お前の何に根を持つんだよ」
「言い方間違えた」
「何とだよ」
「警戒心云々っての、言ってんだろ」
「へえ、偉いじゃないか、サファル。覚えてるなんて」
ははは、と笑ってくるルーカスをサファルはじろりと見上げる。
「また馬鹿にしてるだろ……こんなに商売上手な俺つかまえて」
「それとこれとは別だよ。確かにお前は仕事が出来る。商売についてはあまり知らないけど、俺の家の農作業を手伝ってくれる時も手際、いいしな。頭はいいんだと思う。頭は、な」
ため息を吐きながら言うことではないとサファルは思う。
「含みしか感じられないんだけど」
「俺も困ってるんだ」
「何にだよ」
「お前の色々に」
「?」
ルーカスはたまによく分からない。ただ、あまり聞き返すといつも本当に困った顔をしてくる。大好きなルーカスを困らせるのは本意ではないため、サファルはそのまま流すことにした。
「あ、カジャック!」
それに待ち合わせていた場所に着くと、既にカジャックが来ていた。姿を見つけたとたんにサファルの中はカジャックで一杯になり、余計によく分からない警戒心云々の件は自分の中から流れていった。
「よし、だったらここの二階で部屋借り──」
「ブルーノ。そこは俺の席だ」
いつの間にか戻ってきていたルーカスが穏やかな声で、だがきっぱりと言ってくる。サファルが「戻ってきた」と笑みをルーカスに向けている横でブルーノは何故か複雑そうな顔になった。
「な、なんだよルーカス……いたのか」
「ああ。悪いな」
「いや……、……じゃーな、サファル」
「え? ああ、うん……?」
ブルーノが慌てふためいた様子で去っていくのをサファルはポカンと見送った。
「何だ、あいつ。教えてくれるんじゃないのかよ。つか別にいればいいのに。あとルーカスも席くらい。こっちに座ればいいんじゃ……?」
首を小さく振り、ため息を吐きながら座ったルーカスはサファルをじっと見てきた。
「お前なぁ……」
「何?」
「ブルーノにはもっと警戒しろよ」
「警戒? 何で。くだらない冗談言うからか?」
「冗談?」
「この間なんか、俺に対して女にしてやろうかとか言ってきてさ。あいつ馬鹿だろ」
ちなみに同じような発言なのにアルゴの台詞はかなり怖かった。意味が違うのもあるしアルゴ自体が畏怖の塊だったのもあるが、あれは本気で性別を変えられると感じたからだ。ブルーノからはくだらないセクハラめいた冗談といった感じで、真に迫った様子はなかった。
「馬鹿はお前だよ……」
お前だと言いながら、ルーカスは本当に馬鹿を見ているかのように呆れた顔を見せてきた。
「何でそんな顔して馬鹿って言われなきゃなんだよ。つか、道具は頼めたのか?」
「だから……っ、……全く……ああ、明日持っていく。ついでにお前のも何か頼もうか?」
「俺はいい。ありがとう。カジャックがさぁ、刃物研ぐくらいなら出来るんだよ。だから俺の矢じりもたまに研いでもらってるんだ。凄くない? あの人何でも出来るんだよ。凄くない?」
「……ああ、凄いな。そういえば俺、あの人に手合わせしようって言ったんだけど、よく考えなくてもどうやって連絡取ればいいか分からなくてな。お前、聞いておいてもらえるか? リゼいなくて俺だけなら森の中でも大丈夫だし」
「うん、分かった。俺も参加していい?」
「昼寝の友にでもするのか?」
「何でだよ! 剣は駄目でも体術ならわりと出来るの知ってるだろ」
「わりと、な。というよりお前、話逸らしてくるなよ」
「何のことだよ」
「ブルーノ」
「え、別に逸らしてないけど。もう終わった話じゃないの。だいたいルーカスだって話広げてきただろ」
「つい、な。とにかく、ブルーノには気をつけろ」
「前も他のやつがそんなこと言ってたな」
「で、お前は前も言われてたのに相変わらず警戒心なしってことか。馬鹿って言われても仕方がないだろ」
「何で今日はそんな辛辣なんだよルーカス」
「お前にあまりにも警戒心が無さすぎてな……」
警戒心? とサファルは首を傾げた。
アルゴにはもしかしたら警戒心も漏れていたかもしれないが、ブルーノは友だちだ。何をそんなに警戒しろと言うのか。結局よく分からないままだった。
後日、カジャックの了解を得てサファルとルーカスは森の中でカジャックと待ち合わせをすることになった。リゼは羨ましがっていたが、森の中ということで素直について行かないことを了承していた。サファルとリゼの両親も魔物に襲われて亡くなっている。そのため普段からサファルのこともやたらと心配する分、自分も無茶なことはしない。
「リゼはサファルと違って偉いよな。賢い」
森へ向かう途中、ルーカスがそんなことを言ってくる。
「そりゃ間違ってないけど……」
「普段もしっかりしてるからなぁ、リゼは」
色々と耳が痛い、上にとても含みも感じる。ただあえて気にせず、リゼを優先させることにした。
「だよな。リゼ、俺に似て可愛いし、俺に似ずしっかりしてるしでいい奥さんになると思わないか?」
「そうだな」
「……それだけ?」
「え?」
「……ううん。いい奥さんになるよな。でもだからこそ余計、その辺のやつらにリゼはやれない」
「だな」
「……。なぁ」
「何だ?」
「例えば、な。ルーカスはリゼ、どう思う?」
「しっかりしてて可愛い俺の」
「うんうん!」
「妹みたいな感じかなぁ」
「……っく」
「? お前のこともな」
「え?」
「お前のことも俺は幼馴染の親友ってだけじゃなく可愛い弟みたいに思ってるよ」
「うん……それは俺も」
改めて言われ、サファルは嬉しく思う。笑みを浮かべルーカスを見上げた。
「だからほんとにお前はどうしようもないなって思ったりする」
「……。ルーカスまだ何か根に持ってんの」
「俺が? お前の何に根を持つんだよ」
「言い方間違えた」
「何とだよ」
「警戒心云々っての、言ってんだろ」
「へえ、偉いじゃないか、サファル。覚えてるなんて」
ははは、と笑ってくるルーカスをサファルはじろりと見上げる。
「また馬鹿にしてるだろ……こんなに商売上手な俺つかまえて」
「それとこれとは別だよ。確かにお前は仕事が出来る。商売についてはあまり知らないけど、俺の家の農作業を手伝ってくれる時も手際、いいしな。頭はいいんだと思う。頭は、な」
ため息を吐きながら言うことではないとサファルは思う。
「含みしか感じられないんだけど」
「俺も困ってるんだ」
「何にだよ」
「お前の色々に」
「?」
ルーカスはたまによく分からない。ただ、あまり聞き返すといつも本当に困った顔をしてくる。大好きなルーカスを困らせるのは本意ではないため、サファルはそのまま流すことにした。
「あ、カジャック!」
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