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51話
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「無防備?」
カジャックが聞き直すとルーカスは「そう」と困惑した顔で頷いた。
「無防備過ぎるんだ。出来ればカジャックからも言ってやって欲しい」
「言う、って……」
「サファルは確かに友だちや知り合いは多いし、基本的には皆もサファルのことを親しみやすい友だち、もしくは知り合いだと思ってるんだろうけど」
ルーカス曰く、サファルは何気にモテるのらしい。
特に男に。
「たまに女の子にも好かれてるけどね。サファル、明るくていいやつだから女だと純情そうな子かむしろ年上のお姉さんみたいなタイプに好かれやすいかも」
「へえ」
へえ、としか言いようがない。確かにいい気分という訳ではないが、自分の好きな相手が誰かから好ましいと思われることはカジャックからすればとてもいいことだと思える。もしかしたら、カジャックがそもそも小さな頃周りから恐れられ嫌われていたからそう思うのかもしれない。
「それはまあいいんだけど」
ルーカスとしてもそれはいいらしい。続きがあるのか、とカジャックはとりあえず黙って頷いた。
「男から好かれる場合がな、ちょっと心配で。大抵の男はサファルのことを友人として好きだと思うんじゃないかな。だけどなんだろうな、前に知り合いが言ってたけど別に一見色気もないし妙なフェロモンを出してる訳じゃないんだけど、妙に可愛らしく見えたり性的な魅力を感じてしまったりしやすいみたいなんだ」
「……」
今度はへえ、とも言い難い。とりあえず今もカジャックはただ頷いただけだった。
「小さな頃からずっと一緒だった俺でも確かに可愛いところはあると思う。何にでも懸命だし何より真っ直ぐだからな。人もいい」
「……ああ」
「まあ別に他の男女がサファルに対してどう思おうが、仕方がないというかそこは自由だとは俺も思ってる。ただ、男から好かれる場合に何が心配って、下手をするとサファルに無理やり何かをしようとする輩だっていると思うんだ。だというのにサファルは全然気にしない」
「気にしない?」
「俺や他の友人がサファルにもっと気を付けろと言ってもあいつは『友だちだから大丈夫』とか言って取り合わないんだ。もしくは自分はモテないからそういうことはあるはずないと思っている節がある」
ああ、とカジャックは納得した。この間カジャックがサファルに「あまり露出しないほうがいい」と言った時もサファルはあまり真剣に捉えていなかった。恐らくルーカスに対してもあんな感じの受け答えをしているのだろう。
確かに無防備が過ぎるのかもしれない。だがもしかしたら自分がそうである筈がないと思い込んでいるとあまり自分や自分の周りが見えないこともあるのかもしれない。
「……実際に誰かから何かされようとしていないからピンと来ていないだけではないのか?」
「それもあるか……いやでも実際何かされてもあいつは気づかないかもしれないんだ」
「?」
「この間も一応友人の一人にちょっかいをかけられ飲み屋の二階にある部屋へ誘われそうになってた」
「……は?」
どういう状況だろうと思っているとルーカスがその時の話を自分が把握しているだけだがと説明してくれた。
「……なるほど」
「ほんとあいつは困った……、ってカジャック。元々あまり甘いマスクというタイプじゃないんだろけど、今、更になんか、こう、目付きとか諸々パワーアップしてないか?」
ルーカスが少々苦笑しながら言ってくる。確かに今、カジャックは珍しく怒っている。だからルーカスが言うのも間違ってはいないだろう。元々悪い目つきはもしかしたら更に鋭くなってしまっているかもしれない。
とはいえこの怒りをルーカスにぶつけるのだけは違う。むしろルーカスはサファルを心配し守ろうとしてくれている。
「……すまない、ルーカス。今俺は少し怒っているかもしれない。それが顔に出てしまっているなら申し訳ない。だがお前には当たりたくない。それだけは分かってくれ」
「いや、別に気にするな。むしろ怒っていいと思うというか、出来ればサファルに対してその怒りをぶつけてくれないか。そうすればこいつも少しはましになるかもしれない。……まあ性格なのだろうからあくまでも、かもしれない、だが」
「……ありがとう。サファルにお前のような友人がいて良かった」
「俺こそありがとう。サファルが好きな相手があなたで良かったと思っているんだ。そして俺はカジャックの友人でもあるよ」
ルーカスは穏やかに微笑んできた。カジャックも小さく笑みを浮かべた。
感情を思い切り出すことはしたことがなく、中でも笑うという表現をどう出せばいいのかを未だにあまり分かっていない。ただ、今とても嬉しくて仕方がないと思っている。それをルーカスに伝えられないことがもどかしいとも思う。
「とても嬉しい」
こうして言葉にしても、自分の気持ちは全く伝えきれていないだろう。それでもルーカスは嬉しそうに笑ってきた。
「俺も、カジャックにそう言ってもらえて凄く嬉しいよ。さて、剣術の続きでもと思ったけど今日はもうやめにしようか」
「どうかしたのか?」
「いや。ここに気持ちよさそうに惰眠を貪ってるヤツがいる。カジャックならこいつくらい抱えて持って帰られるだろ。良かったらこってり絞ってやってくれ。リゼには泊まるって言っておく」
「……はは。分かった」
「打ち合いはまた改めてしよう。今日は楽しかった」
「俺もだ」
「この樹洞、利用させてもらうよ。俺も仕事があるから頻繁には来られないがまた連絡する」
「分かった。ルーカス、気を付けて帰れ」
「おう」
サファルを苦笑しながら見た後爽やかな笑みを浮かべ、ルーカスはそのまま立ち去っていった。
「……さて」
カジャックは立ち上がるとまだぐっすり眠っているサファルに近づいた。完全に眠ってしまっている分抱えるには重くなっているが、小柄な筈のカジャックは難なくサファルを抱え上げた。
「帰ったら仕置きだな」
眠って聞こえていないサファルに呟くと、カジャックもこの場を後にした。
カジャックが聞き直すとルーカスは「そう」と困惑した顔で頷いた。
「無防備過ぎるんだ。出来ればカジャックからも言ってやって欲しい」
「言う、って……」
「サファルは確かに友だちや知り合いは多いし、基本的には皆もサファルのことを親しみやすい友だち、もしくは知り合いだと思ってるんだろうけど」
ルーカス曰く、サファルは何気にモテるのらしい。
特に男に。
「たまに女の子にも好かれてるけどね。サファル、明るくていいやつだから女だと純情そうな子かむしろ年上のお姉さんみたいなタイプに好かれやすいかも」
「へえ」
へえ、としか言いようがない。確かにいい気分という訳ではないが、自分の好きな相手が誰かから好ましいと思われることはカジャックからすればとてもいいことだと思える。もしかしたら、カジャックがそもそも小さな頃周りから恐れられ嫌われていたからそう思うのかもしれない。
「それはまあいいんだけど」
ルーカスとしてもそれはいいらしい。続きがあるのか、とカジャックはとりあえず黙って頷いた。
「男から好かれる場合がな、ちょっと心配で。大抵の男はサファルのことを友人として好きだと思うんじゃないかな。だけどなんだろうな、前に知り合いが言ってたけど別に一見色気もないし妙なフェロモンを出してる訳じゃないんだけど、妙に可愛らしく見えたり性的な魅力を感じてしまったりしやすいみたいなんだ」
「……」
今度はへえ、とも言い難い。とりあえず今もカジャックはただ頷いただけだった。
「小さな頃からずっと一緒だった俺でも確かに可愛いところはあると思う。何にでも懸命だし何より真っ直ぐだからな。人もいい」
「……ああ」
「まあ別に他の男女がサファルに対してどう思おうが、仕方がないというかそこは自由だとは俺も思ってる。ただ、男から好かれる場合に何が心配って、下手をするとサファルに無理やり何かをしようとする輩だっていると思うんだ。だというのにサファルは全然気にしない」
「気にしない?」
「俺や他の友人がサファルにもっと気を付けろと言ってもあいつは『友だちだから大丈夫』とか言って取り合わないんだ。もしくは自分はモテないからそういうことはあるはずないと思っている節がある」
ああ、とカジャックは納得した。この間カジャックがサファルに「あまり露出しないほうがいい」と言った時もサファルはあまり真剣に捉えていなかった。恐らくルーカスに対してもあんな感じの受け答えをしているのだろう。
確かに無防備が過ぎるのかもしれない。だがもしかしたら自分がそうである筈がないと思い込んでいるとあまり自分や自分の周りが見えないこともあるのかもしれない。
「……実際に誰かから何かされようとしていないからピンと来ていないだけではないのか?」
「それもあるか……いやでも実際何かされてもあいつは気づかないかもしれないんだ」
「?」
「この間も一応友人の一人にちょっかいをかけられ飲み屋の二階にある部屋へ誘われそうになってた」
「……は?」
どういう状況だろうと思っているとルーカスがその時の話を自分が把握しているだけだがと説明してくれた。
「……なるほど」
「ほんとあいつは困った……、ってカジャック。元々あまり甘いマスクというタイプじゃないんだろけど、今、更になんか、こう、目付きとか諸々パワーアップしてないか?」
ルーカスが少々苦笑しながら言ってくる。確かに今、カジャックは珍しく怒っている。だからルーカスが言うのも間違ってはいないだろう。元々悪い目つきはもしかしたら更に鋭くなってしまっているかもしれない。
とはいえこの怒りをルーカスにぶつけるのだけは違う。むしろルーカスはサファルを心配し守ろうとしてくれている。
「……すまない、ルーカス。今俺は少し怒っているかもしれない。それが顔に出てしまっているなら申し訳ない。だがお前には当たりたくない。それだけは分かってくれ」
「いや、別に気にするな。むしろ怒っていいと思うというか、出来ればサファルに対してその怒りをぶつけてくれないか。そうすればこいつも少しはましになるかもしれない。……まあ性格なのだろうからあくまでも、かもしれない、だが」
「……ありがとう。サファルにお前のような友人がいて良かった」
「俺こそありがとう。サファルが好きな相手があなたで良かったと思っているんだ。そして俺はカジャックの友人でもあるよ」
ルーカスは穏やかに微笑んできた。カジャックも小さく笑みを浮かべた。
感情を思い切り出すことはしたことがなく、中でも笑うという表現をどう出せばいいのかを未だにあまり分かっていない。ただ、今とても嬉しくて仕方がないと思っている。それをルーカスに伝えられないことがもどかしいとも思う。
「とても嬉しい」
こうして言葉にしても、自分の気持ちは全く伝えきれていないだろう。それでもルーカスは嬉しそうに笑ってきた。
「俺も、カジャックにそう言ってもらえて凄く嬉しいよ。さて、剣術の続きでもと思ったけど今日はもうやめにしようか」
「どうかしたのか?」
「いや。ここに気持ちよさそうに惰眠を貪ってるヤツがいる。カジャックならこいつくらい抱えて持って帰られるだろ。良かったらこってり絞ってやってくれ。リゼには泊まるって言っておく」
「……はは。分かった」
「打ち合いはまた改めてしよう。今日は楽しかった」
「俺もだ」
「この樹洞、利用させてもらうよ。俺も仕事があるから頻繁には来られないがまた連絡する」
「分かった。ルーカス、気を付けて帰れ」
「おう」
サファルを苦笑しながら見た後爽やかな笑みを浮かべ、ルーカスはそのまま立ち去っていった。
「……さて」
カジャックは立ち上がるとまだぐっすり眠っているサファルに近づいた。完全に眠ってしまっている分抱えるには重くなっているが、小柄な筈のカジャックは難なくサファルを抱え上げた。
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眠って聞こえていないサファルに呟くと、カジャックもこの場を後にした。
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