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87話
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外は酷い有り様だった。あちらこちらで建物は壊れ、燃えた跡ばかりの状態になっている。
サファルはどうやら一晩中ある意味ぐっすりだったようだ。その間、カジャックがずっと看ていてくれた。そしてそんなカジャックを気遣い、リゼとルーカスは他の皆にはサファルの意識がないので近づかないよう言ってくれていたらしい。もちろんサファルを思ってというのもあるが、人を苦手とするカジャックに周りが無遠慮に近寄らないようという配慮が大きいだろう。それを思うと大変ありがたいし、さすがリゼとルーカスだと思う。
──でも、せめてもう少し放置してくれてたら……!
心配してくれているのは嬉しいしありがたいが、カジャックともう少し甘い時間を過ごしたかったサファルは内心、勝手なわがままと承知で落胆していた。
「サファル! もう大丈夫なのか」
「よかった……! 目が覚めたんだね」
サファルの姿に気づいた村の皆が駆け寄ってくる。
「うん……ほんと、心配ありがと」
とはいえ、何だかんだ言いつつも結局はリゼたちや村の皆の暖かい気持ちにサファルはじんわりとしている。村の皆はサファルの魔法を見ていたらしい。だが、あまりに膨大な魔力を目の当たりにして驚きつつも感謝こそすれ、誰も怯えたり引いたりする者はいなかったとサファルは先ほどリゼたちに聞いていた。
それを聞いた時、サファルはとても嬉しく思うと同時に、カジャックはどう思ったのだろうと少し気になった。ただ、そっと窺ったつもりだったがカジャックは気づいてか、小さく笑みを浮かべながらサファルの頭を優しくぽんと撫でてきただけだった。
村の皆だが、しばらくサファルの状態などを聞いてきたが、一通り話が済むと「で、あのエルフは何だったんだい」「小柄な人はほんとに彼氏?」「どこでの知り合い?」などと一斉に聞いてくる。確かに後で説明するとは口にしたけども、とサファルは微妙な顔を皆に向けた。
「……町で知り合ったんだよ」
皆には申し訳ないとも思うが、森の中に住んでいるんだとは言わないほうがいい気がした。カジャックはサファルのために村にまで来てくれたが、やはり人は避けたいようだ。今もサファルに付き添って出ては来ず、ルーカスの家でルーカスに建物の修理に関する提案などをしている。
「──で、カジャックの親代わりみたいな人かな、アルゴさんは」
カジャックの過去に関しては省略し、簡単に本当のことを一部だけ話した。
「なるほどな」
「じゃあこの村に住んだりは……」
その言葉にはサファルも「俺としても住んでくれたら嬉しいけど」と思うが、まずあり得ないことは分かっている。
「しないと思うよ」
「そっかぁ……」
「いい人だよな」
「サファルもだけど、あの人らのおかげで村、守られたよなあ」
皆、がっかりとしたり感謝している。カジャックに「見て、あんたの顔や魔力を見ても、この村の皆は誰も怖がったりしてないよ、すごく好意的だよ」と言いたい。その反面「カジャックは俺のなんだから」といった気持ちも湧いてしまって、サファルは自分に呆れた。カジャックならきっと村でも受け入れられるだろうしモテるに違いないとは前から思っていたが、実際やはりそうだと分かると、どうやらかなりやきもちの類いや独占欲がもやもやと自分の中に渦巻くようだ。
──俺、小さいなぁ。
カジャックなら、サファルにとっていいことなら何だって喜んでくれそうだろうにと、少し情けなく思った。
その後、サファルの魔力のことも聞かれたが、これに関してはサファルも答えようがなかった。
「俺もよく分からなくて……」
「サファルは魔力、今まで全くなかったもんなぁ」
「あ! あれじゃねぇか。神の思し召しってやつ」
「なるほどねぇ」
「それだ」
「神の祝福だろ?」
「単に奇跡ってやつじゃねーの」
「でもまあ、おかげで皆救われたんだから神様ってやつの力じゃないのかねぇ」
「だな、神様ってやつのおかげだな」
サファルも他人事ではないが、しょせん片鱗の村での神の存在はこんなものだ。多分いるだろうがよく分かっていない、よく分からないけど多分いる、といったところか。
でもまぁ、いいや。神様のおかげってやつで。
そう思いつつサファルは軽口を叩いた。
「俺のおかげじゃなくて神様のおかげなの」
「ははは。ちゃんとサファルのおかげだと思ってるさ」
「ほんとかぁ?」
サファルが皆とわいわい話していると、そこに村長が近づいてきた。見れば何人もの兵らしき人たちと一緒のようだ。
……わ。あれ、竜馬ってやつだ……すごい……。
サファルだけでなく、村の誰もが初めて見たであろうと思われる。トカゲを巨大にしたような生き物に乗っている人たちをぽかんと見ていると、ようやく誰かがぽつりと喋った。
「もしかしてクエンティから来た……」
それをきっかけに、皆いつもの調子を取り戻す。
「竜馬すげぇ」
「あれ、相当速いらしいな」
「ありがてぇけど、もう片付きましたぜ」
「このまま村の復興手伝ってくれるっつーなら歓迎だけどな」
何人かが話し始めるが、村長が暗に静かにするよう手を上げてきた。
「先ほど王国から駆けつけてくださった皆様には、私から状況などを説明させてもらっていた」
そう言った後、村長はサファルを見てくる。
「サファル……」
「何?」
「王国の遣いの方から話があるそうだ」
「え」
サファルがぽかんとしていると、一人の男が近づいてきた。騎士や魔術師といった格好と違い、身分は高そうだが至ってシンプルな格好をしている。カジャックと年齢は近そうだった。
「君がサファルですか。今回はよくやってくれました。話によると、今まで君は魔法はからきしだったようですが、何故か急に凄い魔力によってとんでもない魔法が使えた、とか。どうでしょうか、その辺の理由解明も含めて、王国で魔法の訓練をしてみませんか」
「凄いじゃないかサファル!」
相手の言葉に、周りがどっと盛り上がる。
確かに凄いことだとサファルもいまいちついていけていない頭で思った。昔、王国へ剣士として迎えられたルーカスのことを思い出す。あの時はルーカスに憧れたし、とても羨ましく思った。
サファルは相手に微笑んだ。
サファルはどうやら一晩中ある意味ぐっすりだったようだ。その間、カジャックがずっと看ていてくれた。そしてそんなカジャックを気遣い、リゼとルーカスは他の皆にはサファルの意識がないので近づかないよう言ってくれていたらしい。もちろんサファルを思ってというのもあるが、人を苦手とするカジャックに周りが無遠慮に近寄らないようという配慮が大きいだろう。それを思うと大変ありがたいし、さすがリゼとルーカスだと思う。
──でも、せめてもう少し放置してくれてたら……!
心配してくれているのは嬉しいしありがたいが、カジャックともう少し甘い時間を過ごしたかったサファルは内心、勝手なわがままと承知で落胆していた。
「サファル! もう大丈夫なのか」
「よかった……! 目が覚めたんだね」
サファルの姿に気づいた村の皆が駆け寄ってくる。
「うん……ほんと、心配ありがと」
とはいえ、何だかんだ言いつつも結局はリゼたちや村の皆の暖かい気持ちにサファルはじんわりとしている。村の皆はサファルの魔法を見ていたらしい。だが、あまりに膨大な魔力を目の当たりにして驚きつつも感謝こそすれ、誰も怯えたり引いたりする者はいなかったとサファルは先ほどリゼたちに聞いていた。
それを聞いた時、サファルはとても嬉しく思うと同時に、カジャックはどう思ったのだろうと少し気になった。ただ、そっと窺ったつもりだったがカジャックは気づいてか、小さく笑みを浮かべながらサファルの頭を優しくぽんと撫でてきただけだった。
村の皆だが、しばらくサファルの状態などを聞いてきたが、一通り話が済むと「で、あのエルフは何だったんだい」「小柄な人はほんとに彼氏?」「どこでの知り合い?」などと一斉に聞いてくる。確かに後で説明するとは口にしたけども、とサファルは微妙な顔を皆に向けた。
「……町で知り合ったんだよ」
皆には申し訳ないとも思うが、森の中に住んでいるんだとは言わないほうがいい気がした。カジャックはサファルのために村にまで来てくれたが、やはり人は避けたいようだ。今もサファルに付き添って出ては来ず、ルーカスの家でルーカスに建物の修理に関する提案などをしている。
「──で、カジャックの親代わりみたいな人かな、アルゴさんは」
カジャックの過去に関しては省略し、簡単に本当のことを一部だけ話した。
「なるほどな」
「じゃあこの村に住んだりは……」
その言葉にはサファルも「俺としても住んでくれたら嬉しいけど」と思うが、まずあり得ないことは分かっている。
「しないと思うよ」
「そっかぁ……」
「いい人だよな」
「サファルもだけど、あの人らのおかげで村、守られたよなあ」
皆、がっかりとしたり感謝している。カジャックに「見て、あんたの顔や魔力を見ても、この村の皆は誰も怖がったりしてないよ、すごく好意的だよ」と言いたい。その反面「カジャックは俺のなんだから」といった気持ちも湧いてしまって、サファルは自分に呆れた。カジャックならきっと村でも受け入れられるだろうしモテるに違いないとは前から思っていたが、実際やはりそうだと分かると、どうやらかなりやきもちの類いや独占欲がもやもやと自分の中に渦巻くようだ。
──俺、小さいなぁ。
カジャックなら、サファルにとっていいことなら何だって喜んでくれそうだろうにと、少し情けなく思った。
その後、サファルの魔力のことも聞かれたが、これに関してはサファルも答えようがなかった。
「俺もよく分からなくて……」
「サファルは魔力、今まで全くなかったもんなぁ」
「あ! あれじゃねぇか。神の思し召しってやつ」
「なるほどねぇ」
「それだ」
「神の祝福だろ?」
「単に奇跡ってやつじゃねーの」
「でもまあ、おかげで皆救われたんだから神様ってやつの力じゃないのかねぇ」
「だな、神様ってやつのおかげだな」
サファルも他人事ではないが、しょせん片鱗の村での神の存在はこんなものだ。多分いるだろうがよく分かっていない、よく分からないけど多分いる、といったところか。
でもまぁ、いいや。神様のおかげってやつで。
そう思いつつサファルは軽口を叩いた。
「俺のおかげじゃなくて神様のおかげなの」
「ははは。ちゃんとサファルのおかげだと思ってるさ」
「ほんとかぁ?」
サファルが皆とわいわい話していると、そこに村長が近づいてきた。見れば何人もの兵らしき人たちと一緒のようだ。
……わ。あれ、竜馬ってやつだ……すごい……。
サファルだけでなく、村の誰もが初めて見たであろうと思われる。トカゲを巨大にしたような生き物に乗っている人たちをぽかんと見ていると、ようやく誰かがぽつりと喋った。
「もしかしてクエンティから来た……」
それをきっかけに、皆いつもの調子を取り戻す。
「竜馬すげぇ」
「あれ、相当速いらしいな」
「ありがてぇけど、もう片付きましたぜ」
「このまま村の復興手伝ってくれるっつーなら歓迎だけどな」
何人かが話し始めるが、村長が暗に静かにするよう手を上げてきた。
「先ほど王国から駆けつけてくださった皆様には、私から状況などを説明させてもらっていた」
そう言った後、村長はサファルを見てくる。
「サファル……」
「何?」
「王国の遣いの方から話があるそうだ」
「え」
サファルがぽかんとしていると、一人の男が近づいてきた。騎士や魔術師といった格好と違い、身分は高そうだが至ってシンプルな格好をしている。カジャックと年齢は近そうだった。
「君がサファルですか。今回はよくやってくれました。話によると、今まで君は魔法はからきしだったようですが、何故か急に凄い魔力によってとんでもない魔法が使えた、とか。どうでしょうか、その辺の理由解明も含めて、王国で魔法の訓練をしてみませんか」
「凄いじゃないかサファル!」
相手の言葉に、周りがどっと盛り上がる。
確かに凄いことだとサファルもいまいちついていけていない頭で思った。昔、王国へ剣士として迎えられたルーカスのことを思い出す。あの時はルーカスに憧れたし、とても羨ましく思った。
サファルは相手に微笑んだ。
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