君の風を

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7話

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 冬休みが終わると三学期はあっという間だった。学期の中でも一番短いのと休みが多いからかもしれない。
 三年は受験や何やらで、部活の先輩も顔を見かけることすら少なくなっていき、気づけば卒業していた。その間に一年、二年は予選を勝ち抜いて地区大会に進出し、全国選抜の大会に出場が決定した。春休みにその大会は開催され、瑠衣を含め多くの部員が好成績を収めた。残念ながら団体戦では準決勝も逃したが、個人戦では瑠衣、碧、大胡ともに準決勝までは残った。
 三年生になると、瑠衣は碧とクラスが離れたものの今度は大胡だけでなく七瀬とも同じクラスとなった。それを知った途端緊張したが、ふたを開けると何のことはない、今までと全く変わらない毎日だった。同じクラスであっても七瀬とは全く接点がない。大胡いわく「黒王子と光王子が同じクラスとか、盆と正月が一緒に来たよりすごいって女子が言ってた」らしいが、嬉しいどころか土下座してでもやめて欲しいと瑠衣はそっと思っていた。
 新学期に入って少し経ったある日、部活は休みだったので瑠衣はさっさと帰ろうとしていた。七瀬は当然ながら大胡とも、家からの最寄り駅が同じであっても一緒の登下校などしていない。もし電車などでばったり会えば一緒に行動するかもしれないが、わざわざ合わせることもない。今も大胡は先に帰ったかどこかへ遊びに行ったかで見かけない。ただ瑠衣が家に置いたままの、次に練習試合を行ういくつかの学校とのスケジュールについて、話がしたいからと今日は夕方くらいに電話がかかってくる予定ではある。それもあって担任の教師が呼び止めてきて「頼みがある」と言ってきた時は少々面倒だなと思った。

「俺、部活のことでちょっと夕方予定があるんですけど」
「ああ、大丈夫だ。時間がかかることじゃないし、生駒が帰る時にちょっと寄ってくれたらいいだけだから」
「寄る?」
「うん。明日までに提出してもらう進路についてのプリントな、五十島がまだ提出してきてないんだ。というか多分受け取ってもない。昨日、今日とあいつ学校来てないからな。ったく。三年にもなってサボるとかいい度胸だ」

 そういえば以前、七瀬の成績について少し気がかりだったことを瑠衣は思い出した。

「先生……もしかして五十島って今までもサボってばかりで成績とかまずいことになってる、とか?」
「ん? お前かなり近所なんだろ? だからこれも頼もうと思ってたのにもしかしてあまり親しくないとかか」
「え? ああいえ、そういうわけでは……」

 実際今は親しくないのだが。

「成績について詳しいことは言えないけどな、あいつちょくちょくサボるくせに成績はいいぞ。だからあまり煩く言われてなかったのかもだけど、俺は違うからな」

 ぐっと手を握りしめて言う担任のことはどうでもいいが、瑠衣は少しホッとした。

 そうか。ちゃんと勉強、してるのかな。

 瑠衣が気にすることでも何でもないのかもしれないが、やはり気になってしまう。

「とりあえず喧嘩してるとかじゃないんだろ? あいつポストに入れても絶対見ないだろから、生駒、悪いけどこれ、あいつに直接渡してくれ。そんで明日は絶対これ持って登校しろって言ってきてくれ」
「はぁ」

 困惑しつつも、また話せるかもしれないチャンスかもと瑠衣は教師からプリントを受け取った。
 その後とても近所である七瀬の家の前まで来ると、瑠衣は少し緊張した。だが意を決してインターホンを押す。少し待っても反応がないため、もう一度押してみた。やはり反応がない。七瀬の両親は共働きなので家に誰もいない可能性はかなり高い。
 携帯にかければ、と思ったが、瑠衣は七瀬の番号を知らなかった。中学の時に使っていたものは既に解約されていたことだけは知っている。
 かといってポストに入れて帰ることもできない。教師に言われたからというのもあるが、明日までに提出しなければならないプリントなので瑠衣としても無責任なことはしたくなかった。
 どうしようか、時間を改めてまた来るかと少々途方に暮れていると背後から「瑠衣くん?」と声をかけられた。振り返れば七瀬の弟が近づいてきていた。
 七瀬との付き合いが中学までなのもあって、弟の博太(ひろた)と会うのも当然中学以来だ。当時博太はまだ小学生だった。今の博太はあの頃の七瀬そっくりだと瑠衣は思わず微笑む。

「久しぶり、博太」
「瑠衣くん、どうしたの? 兄ちゃんに用?」
「うん。でも留守みたいだな」
「うーん、多分兄ちゃん部屋にいるよ。勝手に入っていいよ。俺、これから友だちと約束あるから悪いけど着替えてすぐ出るし」
「そ、そうか。ありがとう。そうさせてもらうよ」

 玄関に入ったものの、ずっと突っ立っているのも微妙なので瑠衣は博太がいいと言ったしと、七瀬の部屋へ向かった。
 久しぶりに家へ上がるが、中の雰囲気は昔とあまり変わっていなかった。匂いも五十島家というイメージのままだしインテリアも大して変わっていない。懐かしくて少々ほっこりとしながら部屋の前まで来ると、中からは話し声と時折笑い声が聞こえてきた。七瀬のではない。おそらくまた誰か女子の声だろう。お邪魔だったなと少々気まずく思いながらも手にしているプリントを見て瑠衣はため息をついた。七瀬と話せたらと淡い期待を抱いていたが、とにかく渡すだけ渡したら今日はさっさと帰ろうと部屋のドアをノックした。すると「誰」と低いくぐもった声が聞こえてきた。「俺だよ瑠衣だよ」と気軽に答えることもできず口ごもっているとドアが開いた。
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