虎と豹とキリン

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唖然とする虎 ※

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 苦しげな颯一に言われ、渉は固まった。
 確かにドラッグはセックスドラッグとも言われており、薬のせいで初めから興奮している状態とも言える。その上色々触れられたりしていれば普段そうでもなくとも感度が違うだろうし、性的興奮の具合は半端ないかもしれない。ましてや颯一は色々と経験もない。
 他の相手になら渉は「トイレ行って抜いてこい」と言うだろう。だが颯一に対しそっけないこと言えないだけでなく、颯一はこの間「自分で抜けない」と言っていたばかりだった。
 いや、多分やり方さえわかればできるだろうが、今この状態でどう教えたらいい、と?
 渉が抜いてやればいいのだろうが、颯一は男相手が嫌だと普段から言っている。もちろんいずれは渉を好きになってもらう予定ではあるが、今薬のせいで起こっているこの状態では、と躊躇しかない。
 渉は色々変わっていると言われてはいるが、元々古風な性格だ。好きな相手と結婚前になど、と考えるほどの。

「……つらい……渉……」

 だが真っ赤になって苦しげに言われ、どうしたらいいかさすがに困惑する。

「……そうちゃん……その……多分抜いたら楽になる……。えっとトイレ行ってくる、か? 俺それとも席を外そうか?」

 とりあえず薬の影響なのだとしたら、できないと言っていた颯一も切羽詰まってできるかもしれない。

「抜、く……? ああ、やっぱ、それ、しなきゃ、なの? 俺、できない……」
「い、今ならきっとできるよ。大丈夫……」
「だってできたことねぇも……渉、やって……」
「はっ? いや、えっと、だってほら、そうちゃん、キモいって……」
「だってつらいんだよ! 何かもうこんな保健室なのにまだ、すげぇ白い壁が綺麗に見える……し額縁の絵が……さっきからやたら飛び出して踊ってくる……しで、絶対俺、おかし……お願……も、苦し……」
「そうちゃん……」

 抜くくらいなら……抜くくらいならいいだろうか……?

 渉は本当に颯一を大切にしたいと思っている。だからこそ手を出そうとなど思ったことなかった。もちろんおかずには大いに利用させてはもらっているが。
 だが薬のせいでこうなっている颯一を抜いてやったとして、後で薬の抜けた颯一が後悔したらと思うと渉は逡巡した。

「頼むか、ら……っ! 抜くくらいは、友だちでも冗談で、するって言ってるヤツ、いた……、だから、渉、おね、が……っ、お前が、気持ち悪いかも、だけど、ほんっとつらい、マジ、で!」
「気持ち悪いわけないだろうっ? そうちゃん……わかった。……下、ちょっと、ごめん、ね」

 あまりに必死に懇願してくる颯一に抗えるはずなどなかった。先ほど履かせたズボンと下着をまたずらす。
 颯一のモノは確かに大きくなっていた。先ほどは過去を思い出して動揺していたから一旦おさまっていたのだろうと思われた。そのままおさまっていればいいのにと思いながら、渉はそれを優しく握る。手の人差し指と親指の輪っか部分がカリを通過するようにして上下させた。

「……ぁ、あ……」

 颯一の熱のこもった小さな喘ぎ声が渉の脳だけじゃなく下腹部を直撃してくる。

 この声聞いていたら絶対に自分を保てない。

 それを防ぐべく、渉は颯一の唇に自分の唇を押しあてた。キスをされたと言っていたし、丁度いい。消毒にもなると思いつつ、キスしながら手の動きを進めた。だがキスはあまり深いものを避ける。深くすればどう考えても自爆行為でしかない。

「……っん、んん……ぅ」

 既に十分硬くなっていた颯一のモノを握って刺激を与えると、その根元からドクンドクンと血液が上がってくるのが手に感じられた。堅い竿はとてつもなく熱く感じられる。
 さらに手を早く上下させ、亀頭の先が颯一のカウパーでぬるぬるとしてくると、指の輪っかはカリの部分からさらに狭め、亀頭の頂上までくるようにして手のひらで包み込む。その際に手首を動かして人差し指の柔らかい部分が尿道を擦るように刺激させた。
 ポイントを刺激させると袋の中の玉が上がるのがわかる。颯一のカリはもうパンパンになっていた。ゆっくり上下していた腹も、だんだん早くなっている。わかっていないながら颯一の腰が動いているのがかわいかった。
 キスを続けながら、もうすぐ達するなと渉は手の動きをますます速めた。今はとりあえず楽になってもらいたいため、焦らすなど考えられなかった。

「っぅん、んんんっ、んんっ」

 本当に普段抜かないのだろう。ドロリとした精液が薬のせいもあって勢いよく出てきたのを渉が見た時は、愛しさで一杯になった。おかげで堪えるのも必死だった。



 その後一之瀬を主犯とする一連の生徒は自主退学もしくは謹慎処分となった。
 通常停学や退学は学校側が教育委員会に書類を提出しなければならない。だが結局今回のことは内々で済ませることとなったようだ。自主退学なら本人の希望として報告は免れる。
 麻薬という理由を教育委員会に報告するとなると、警察沙汰は避けられない。だがどの生徒の家もそれなりに名のある家であり、色々とその辺は話し合いがなされたようだ。この間襲われていた生徒や颯一の尿までとって証拠も固めたはずなのにと渉的には理解し難いことではあるが、いわゆる大人の事情といったものには心底興味がなかったので何も口出しはしていない。
 渉の振るった暴力に関してはお咎めなしだった。一之瀬を含めた数名は少々通院する羽目になったらしいが、渉としてはやり足りないくらいだった。
 彼らが社会復帰できるよう願うなどといった天使のような広い心は渉自身持ち合わせていない。大人の事情はさておき、こうして将来への道の一つが断たれたのは大変嬉しく思うし今後社会へ出ても万が一どこかで見かけることがあるなら、特に一之瀬と蹴り倒した相手に関しては全力で幸せに関する全てを阻止したいと思っている。
 友悠はあの時颯一を一人にしてしまったのをとてつもなく後悔し、相当落ち込んでいたようだ。だが颯一の口から過去のトラウマを聞き、そして颯一が渉に言われたようにそんなに友悠が気にすると、自分も言われた通りさっさと帰らなかったことをずっと謝らないといけないからお互いもう何も気にしないことにしようと言われ、何とかようやく納得したらしい。
 ちなみにトラウマのことは、颯一が血に対して異常なほどの怯えを見せたり、高所恐怖症であることから何かあるのだろうなと思ってはいたらしい。
 とにかく無事だったことを本当に喜び、友悠が颯一をぎゅっと抱きしめたのをいつもの盗聴で知った渉は、だが今回だけはぐっと堪えて流すことにした。友悠が本当に颯一を心配し、好きな相手云々を抜きにしても友人として大切に思っているのはわかっている。
 また、好きだという気持ちを押し殺すのではなく友悠はそのまま風化させようと考えているのが何となくわかるので、とりあえずは何も言わない方向でいる。とはいえ好き云々関係なく自分の嫁である颯一に対して妙なことを少しでもした場合は当然指摘させてもらう。
 その颯一だが、過去を思い出した後もやはり高い所は苦手なようだ。

「こればっかは慣れだよな!」

 そう言って屋上へまた出向き、カタカタ震えながら青くなり腰を抜かしたようにへたりこむ颯一を、渉や友悠は何回かため息つきながら運び出し「いい加減諦めろ」と言い聞かせているところだ。だた血に関しては未だ名残はあるものの、ずいぶんマシにはなっている、かもしれない。多分。
 あの事件の後、教師に何があったか伝える際の颯一はまだどこか顔色も悪く、渉もかなり心配であった。しかし最近はようやく元気になってきた気がする。
 気がする、と言ったのにはわけがあった。事件も無事片づいたので、渉はまた頻繁に颯一のところへ会いに行くのだが、ここ数日どうにも颯一の様子がおかしいのだ。

「そうちゃん、具合悪いとかなのか?」
「別に悪くねえよ」
「でもなんとなく変だよ顔が」
「顔が変って言うなよ……! それに普通だってば!」

こうしてムキになって言い返してくるのは変わらないものの、どうにも違和感ある。

「でも。もしかして熱があるとかじゃないだろうな?」

 例えばそう言って渉が手を伸ばし、颯一の額に触れようとした瞬間、颯一は飛び退るようにして逃げる。確かに再会した当初はひたすら逃げられていたし、その後も何かあれば逃げたり殴ったりされてはいた。しかしそういうのと何となく少し違う気が渉はした。
 事件後に屋上でヘタれているのを何度か抱き上げて運んだ時は普通だった気がする。本当にここ数日からだった。
 今もまた、飛び退られた後、おまけに赤くなっている颯一を見て「まさか」と渉はハッとした。

 ようやく落ち着いたそうちゃんが、あの時保健室で俺にされたこと、改めて思い返して、とてつもなく嫌な思いをしている、とか……?

 だとしたら何てことだと渉は珍しく動揺した。なぜか友悠が微妙な顔で渉を見てくるが、それに関しては気づかなかった。
 とりあえずこのままはいけないと思い立つ。内容が内容なので、寮や教室ではなくどこか人のいないところで話し合う方がいいだろうかと考えていたら、颯一の方から声かけてきた。

「……渉。話あんだけど……どっか人いねぇとこで……」

 颯一から人のいないところと言ってくる時点で、やはり間違いないと渉は内心戦慄した。だがそんな動揺を何とか内面だけに抑えると「じゃあ保健室にしよう。先生に借りられるよう言うよ」とニッコリ言ってから心底後悔する。やはり動揺が拭えなかったようだ。

 墓穴じゃないか!

 この間のことがもし原因ならその場所でなどと、あり得ないだろう。そんな風に思っているも、颯一は特に気にした様子もなく「わかった」と頷いてきた。ほんのり唖然としつつもその放課後、保健教論に頼んで特別に保健室を使わせてもらった。

「そうちゃん……話というのは……」

 何となく切り出し難く感じた渉が言いかけると、しばらく逡巡していた颯一がキッと渉を見据えながら言ってきた。

「俺、あり得ないし心底キモいことにお前のこと、好きみたいだ……!」

 色々突っ込みどころさえ感じられる言葉を前提に言われた告白は、なかなか渉の脳に浸透してこなかった。あまりに男らしいきっぱりとした宣言の後、数秒遅れて真っ赤になりだした颯一を見て、渉もようやく言われたことを理解した。

「そうちゃ……」
「前からともとか他のヤツらには変に意識したり慣れたようでも違和感ばっかだったのに、お前にだけは何でかわかんねぇけどキモいキモいって思いながらもどんどん慣れてくし、違和感なくて変だとは思ってた。でも幼馴染だからだろうなって思ってた」

 それは確かに渉も感じていたし、むしろもう少し意識しないだろうかと、その扱いが微妙にすらなっていた。

「でも。過去のこと思い出して申し訳ないって気持ちの他に何ていうか、すげぇその……。それにいつだって何やかんやで安心できて……ああもう! 何て言っていいのかわかんねぇよ! もう言わなくていい? とりあえず好きだってわかったってこと!」

 え、そこは重要だし知りたいが……。

 そう思いながら、渉は嬉しさで一杯になった。

「そうちゃん! 嬉しいよ、俺!」

 だが次に颯一の口から出た言葉で、渉の脳内は色々理解不能でショートしかけた。

「ん。だからアレだ。そのアレ! 今ここでいい。俺をお前のもんに、しろ」
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