ニコラシカ

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12話

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 このところ、授業に空きができたりもあって学校でもなんだかんだで郭夜と一緒に過ごすことが多かった。外だからか普段の郭夜は今までと特に変わらない。好きだと言われたりキスをしてきた郭夜がもしくは幻だったのだろうかとさえ思いそうだ。

 抜いたってのだって時間経っても思い出さねーし。

 男同士というものが理解できないし、郭夜をそういう対象に見られない。それは今でも変わらないはずなのに、やはりどうしても気になるからだろうか、ふとそういったことを思い出したり考えたりしているせいでどんどん違和感というかあり得ないことだという感覚が薄くなっている気がする。
 好きだと言われた当初に「抜き合った」などと言われたら卒倒していたかもしれないというのに、今では頭をひねりながら「思い出せねーな」と考えるくらいだ。
 郭夜は好きだと言い、心置きなく好き勝手すると朝哉に宣言してきても、無理やりとんでもないことはしてこない。だからだろうか。今でももちろん付き合うつもりはないし、変なことをしたいと思う訳でもないが、キスや抜き合うくらいなら大したことないような気、すらしてきそうだ。

「お前さー、好き勝手するっつー割には俺に変なこと、別にしてこねーよな」

 またそっちで食わせてと郭夜の家に押しかけた時に言うと、とてつもなく微妙な顔をされた。

「なんだよ」
「お前は俺を変質者かなにかだと思ってんのか?」

 ドアを開けて「厚かましい」と呟きながらも部屋に入れてくれた後で冷蔵庫の中身を見ていた郭夜はため息を吐きながら卵とほうれん草を表に出しつつそんな顔を向けてくる。

「え? 別に思ってねーよ。思ってたら来ねーよ?」
「思ってなくても度々食費浮かそうとしてくんな」
「えー。だってこの時期すげー金欠になんだもん。ちゃんとその代わり俺が作ってんじゃん。材料費の代わりにほら、労力?」

 ニッコリと言うと舌打ちされた。本当に、自分のことが好きなのかと疑問が生じる瞬間だ。

「変質者とか思ってたらそもそもここに来ねーし、まず友だちやってねーよ」
「じゃあなんでそういう質問してくるんだよ」

 呆れたように言いながら郭夜が近づいてきた。

「ちなみにあんま食材ないかも。明日バイト代入るからいいものの、ほんっとお前」
「そー言うなよー。つか、お前が言ったんだろ、好き勝手するって」

 朝哉の近くに座ってきた郭夜にヘラリと笑いかけると、生ぬるい顔で見られた。

「好き勝手するって言ってもあからさまに犯罪めいたこと、する訳ないだろ。お前、人をなんだと思ってんだよ。つか同性が好きなヤツは無差別に無茶苦茶するとでも思ってんのか」

 そう言われて「確かに」と朝哉も納得する。

「いや、別に無茶苦茶するとまでは思ってなかったけど……でもなんだろ、相手が女の子じゃねー分、ちょっとは無茶しそうなイメージはある、かも?」
「なんだよそれ。というか、していいってことか?」
「ち、ちげーよ……!」

 引いたように答えると、郭夜がため息をついてきた。

「男女で考えてみろよ。もし口で好きなようにするっつっても普通なら、強姦まがいのこと、するやついると思うか?」

 先ほどと同じようなことを噛み砕いてもう一度言ってくる郭夜に、朝哉は密かに微笑む。
 基本的にいつも冷たいし素っ気ない。下手をしたら手が飛んでくる。そんな郭夜だけれども、微妙な顔をしつつもこうしてちゃんと朝哉がわかるように何度でも説明してくれる。そういうところは好きだなと思う。
 思うけれども人として好きなだけで別に恋愛感情を抱いている訳ではない、と朝哉は心の中で否定した。

「そう言われたらねーなって思うけど、でも俺そこまで思ってた訳じゃねーもん」
「ふーん? じゃあ、どこまでを思ってたんだ?」
「え?」
「そこまで、じゃないんだろ。じゃあ、どこまで?」

 郭夜が少し嘲笑するような表情で朝哉を見てきた。その言葉に朝哉は口元を引きつらせる。

「そういうつもりで言ったんじゃねーよ!」

 否定するも、郭夜は少し笑みを浮かべたままさらに近づいてきた。

「ちょ、ま、待て、なに……」
「なにって、朝哉に言われたことだし、せっかくだから好きにしようかなって」

 滅多にニッコリと笑わないくせにこういう時だけ思わず見入るような笑みを見せながら、郭夜が顔を近づけてきた。

 いやいやなに言ってんのっ?

 そう思いつつもその顔に見入っていたからだろうか、それともなんらかの慣れだろうか。気づけば簡単にキスされている自分がいる。朝哉には記憶が無いが、そもそもキスを初めてしたのは自分かららしいので思い切り否定できないとかなのだろうか。
 正直、郭夜はキスが上手い。モテてそうだもんなと思うと羨ましい反面腹立たしくもあるが、そのせいでついうっかりそのキスに流されている自分がいるくらいはわかっている。
 今もキスがどんどんと深くなっていっているというのに押し返すことすらできずにあろうことか自分の分身が反応しかけていて、朝哉は自分に対して微妙になる。

 別にキスくらいならやっぱいいんじゃねーの?

 あろうことかそんな風にまで内心考えている。こうして友だちとして仲良くしていられるなら、キスくらい問題ないような気がする。慣れのせいだろうか、気持ち悪いというよりは気持ちがいいものだしますます問題ないような気がしてくる。
 ただ心の奥で、そんな風に簡単に考えるなんてむしろ郭夜に対して酷いんじゃないのかと思う自分もいる。とはいえここで思い切り否定しても郭夜に悲しい思いをさせるだけのような気もする。
 結局のところ、どうするのがいいのかよくわからなくなり、気づけば反応しかけていた分身までいいように甚振られていた。

「っちょ、待て待て待て、おま、これは、ちょ……、俺、素面だし……!」

 唇を離して慌てて抗議するも「じゃあなんで反応してるんだよ」と至極当たり前なことを言われてなんとなく死にたい、と朝哉は微妙になった。だがハッとなり首を振る。

「いやいや、そんなもん、触られたらおっきくすんの、普通だろ……! 健全な男なら普通なの……!」

 ムキになって言い返すと、むしろ鼻で笑われた。

「……お前、ほんっと俺のこと好きなの?」

 思わず声にして聞くとだが郭夜がじっと見てくる。

「俺は基本的に付き合っている相手以外特に友だちとキスなんて女相手だって絶対に考えられないし、そもそも気軽な付き合いができない。お前も知ってるだろが。そんな俺が冗談でお前にこんなこと、すると思ってんのか?」
「思、わねー……っけ、ど……ちょ、マジやばいから……」

 淡々と言いながらも郭夜は手を動かしてくる。その動きが的確で、朝哉は軽率に快楽を覚えてしまう。

 いやいや俺、なんなの、なに感じてんのっ?

 そう思いながらも反応してしまうものを止めることができない。

 あーもー、あーもー!

 朝哉はぎゅっと目を閉じた後に開くと、郭夜の腕をつかんだ。

「やめろってこと?」

 郭夜はじっと朝哉を見ながら聞いてくる。

 ここまで反応してやめられるなら、多分俺はもっと色々なことを成し遂げていたような気がする。

 そんな見当違いなことを思いながら、朝哉は下唇を一旦きゅっと噛み締めた。

「いや……、ごめ、やめんのムリ……。でもお前にされるだけってのも、なんかヤだ……せめて俺に、させて……」

 なんとか絞り出すように朝哉が言うと、郭夜が驚いたような顔をしてきた。ポカンとして、手も止まっている。
 そんな郭夜が珍しいので余裕があったら面白いなと思えたかもしれないが、今の朝哉は余裕なんて少しもなかった。手が止まっているのをいいことに自分のものから郭夜の手を退けた。そして逆に郭夜のそこに手をかける。

「って、お前デカくしてねーじゃん……!」

 ズボンの上からとはいえ自分なら今頃馬鹿みたいに主張しているだろうし実際している。だが郭夜のそこはもしかしたら少しは反応しているのかもしれないが、全然硬くなっていなかった。

「いや、だって別に触ってもないし……」
「ええ? だってちゅーしただろ? お前、ほんっと俺のこと好きなの?」

 一瞬どっちが好きなのかわからない気分になりそうで、朝哉は思わずそんなことを言っていた。
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