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今夜は眠れない1 ※
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最近のウィルフレッドは少々不機嫌だった。
「美味しい肉にありつけなかったんですか」
「……そんなことで不機嫌になるのはフェル、貴様だけだ」
ムスッとしながら言い返すとフェルは「ですがこの間、ウィルフレッド様は肉料理に対して誰が見ても不機嫌になっておられましたが」などとさらに言い返してくる。
「煩い。あれは肉にブルーベリーソースがかかっていたからだ! 何故あえてソースにブルーベリーを使う必要がある?」
「他にもクランベリーソースやリンゴンベリーソースなどもございますが」
「煩い。とにかくブルーベリーはスープやソースにするべきじゃない」
「しかし今、アイスクリームにかかっているブルーベリーソースは好んで食べておられますよね」
サイドテーブルに置いてある、少々溶けかかっているアイスクリームの皿をウィルフレッドはチラリと見た後でフェルを睨みつけた。
「……貴様の今晩の夕食はリンゴンベリーそのものだ。クライドにもしばらく肉を与えるなと言っておく」
「そんな……私が何をしたと」
「黙れ。大人しく別の部屋にでも行ってろ」
「クゥン」
いかつい顔をした頭を下げ、フェルが悲しげにウィルフレッドが座っている一人用ソファーの足元から立ち去っていった。その姿を見ると少しかわいそうな気もしなくもないが、どのみち最近フェルは調子に乗って肉を食べ過ぎているせいで、ジャガイモに細かく切り目を入れて焼いた料理「ハッセルバックポテト」よりも丸い。いくら魔獣だからといって、いやむしろ魔獣だからこそ、でっぷり太った挙句病気で倒れるなどといった情けない羽目に陥らせるわけにはいかない。
ため息をついてから、転がりそうな体ですごすごと立ち去って行ったフェルを見て「かわいそうでは」「食事制限ならいい方法が」などとフェルの肩を持ちそうなことを言ってきそうな声が聞こえてこないことにまた不機嫌になる。
最近、レッドがあまり側にいない。
いや、愛想をつかされたとか側近でなくなったとかではないし、時間があればむしろレッドは自分の時間を割いてまでウィルフレッドに付き添ってくる。それがわかっているからこそ「そもそも側近という仕事放棄をする気か」などと怒るわけにもいかない。いくら側近であり恋人であっても、ウィルフレッドが少々、いや結構わがままであってもそこまで理不尽なことを言うつもりはない。
姉であるアレクシアの結婚が決まり、日程が近づくと警備や演習などで優秀な騎士たちは皆忙しくなった。レッドもしかりだ。めでたいことだけにウィルフレッドも「俺を優先しろ」とも言えない。
おかげ様で大いに不満だった。
恋人という関係になってからまだそう時間を重ねたわけでなく、「デート」と言われる行事すら一度一緒に城下町へ行ったことくらいしかない。考え方によれば側近であるレッドとは一緒にいる機会も基本的に少なくないため、ある意味毎日がデートなのかもしれない。しかしそもそも誰かを好きになり、その相手にも好かれるという経験は前世を含めると何百年と生きてきて初めてのことだけに、できればまだしばらくは何を一緒にするにしても特別なことを経験したいと思ってしまう。
とはいえこんな考えはどうにも情けなく思えてしまうこともあり、ウィルフレッドはレッドを含め誰にも口にせず、さらに不満を溜めていた。
「……だいたい最近は夜だって一緒だが、一緒でも何もせず寝てしまう」
舌打ちをしながら独り言をつぶやくと、ウィルフレッドはハッとなった。
仕方がないことだとわかっていながら不機嫌な気持ちになるのは、もしかしたら欲求不満だからなのかもしれない。それを解消すれば不愉快なこのモヤモヤとした気持ちも晴れるのではないだろうか。
そうとわかれば、とソファーから立ち上がると、ウィルフレッドは服を脱ぎだした。
かつては童貞じゃなくなれば云々といった考えで誰でもいいから相手をと思ったりもしたが、今はベッドを共にするのはレッド以外考えられない。そうなると欲求不満を手っ取り早く解消するには自分でするしかない。
はっきり言って、ウィルフレッドは前世を含め一人でしたことはほぼない。前世では絶えず相手に困らなかったからだったし、今のウィルフレッドとして生を受けてからはむしろそういったことに飽き飽きしていたからだ。それもあり、するならやはりこういうことは服を脱ぐべきだろうという思い込みがあった。
「セックスをする時は大抵裸だしな。なら一人でする時も裸のほうがやりやすいだろう」
ソファーに座りなおすと、早速利き手で自分のものに触れたが、正直全然気持ちよくない。濡れていないからぬるぬるとしないせいでだろうかと思うが、そもそも気持ちよくないと先も濡れない。かといってローションは寝室にある。わざわざ取りにいくのも面倒くさい。
「……ああ、いいものがあった」
ニヤリと笑うと、ウィルフレッドはサイドテーブルにある小皿を手に取る。そしてほぼ溶けているアイスクリームを手にかけた。
「……っ」
一旦手の温度にさらされようが、冷たいものは冷たい。違う意味でぞくぞくとしながら、ウィルフレッドはぬるぬるとそこをアイスクリームまみれにした。最初は縮こまったかのようだったそこは、次第に熱を持ち出した。そうすると気持ちもだんだん盛り上がってくる。あえて考えようとしなくても、レッドとの行為を自然と思い出しながら、ウィルフレッドはますます手の動きを早めた。
「ん、ぁ……、あ、レッド……クソ、んん、レッド……」
一人用ソファーといえども小柄なせいですっぽりとそこに埋もれ、丸裸のウィルフレッドは目を閉じて必死にレッドの名前を呼んだ。あまり一人でしたことがなくとも問題ないようだった。レッドを思いながら、レッドの硬くて大きなあれが自分の中に入ってくるところを想像し「あ、ぁ……レッド、早く……!」と思わず乞いながら達しそうになっていると「早く、なんです」と少し掠れたような声が聞こえる。
「……っは?」
慌てて目を開け、辺りを見ると壁にもたれ腕組みをしてじっとウィルフレッドを見ているレッドに気づいた。その瞬間、手の中でびくびくと自分が思い切り達するのを感じた。
「美味しい肉にありつけなかったんですか」
「……そんなことで不機嫌になるのはフェル、貴様だけだ」
ムスッとしながら言い返すとフェルは「ですがこの間、ウィルフレッド様は肉料理に対して誰が見ても不機嫌になっておられましたが」などとさらに言い返してくる。
「煩い。あれは肉にブルーベリーソースがかかっていたからだ! 何故あえてソースにブルーベリーを使う必要がある?」
「他にもクランベリーソースやリンゴンベリーソースなどもございますが」
「煩い。とにかくブルーベリーはスープやソースにするべきじゃない」
「しかし今、アイスクリームにかかっているブルーベリーソースは好んで食べておられますよね」
サイドテーブルに置いてある、少々溶けかかっているアイスクリームの皿をウィルフレッドはチラリと見た後でフェルを睨みつけた。
「……貴様の今晩の夕食はリンゴンベリーそのものだ。クライドにもしばらく肉を与えるなと言っておく」
「そんな……私が何をしたと」
「黙れ。大人しく別の部屋にでも行ってろ」
「クゥン」
いかつい顔をした頭を下げ、フェルが悲しげにウィルフレッドが座っている一人用ソファーの足元から立ち去っていった。その姿を見ると少しかわいそうな気もしなくもないが、どのみち最近フェルは調子に乗って肉を食べ過ぎているせいで、ジャガイモに細かく切り目を入れて焼いた料理「ハッセルバックポテト」よりも丸い。いくら魔獣だからといって、いやむしろ魔獣だからこそ、でっぷり太った挙句病気で倒れるなどといった情けない羽目に陥らせるわけにはいかない。
ため息をついてから、転がりそうな体ですごすごと立ち去って行ったフェルを見て「かわいそうでは」「食事制限ならいい方法が」などとフェルの肩を持ちそうなことを言ってきそうな声が聞こえてこないことにまた不機嫌になる。
最近、レッドがあまり側にいない。
いや、愛想をつかされたとか側近でなくなったとかではないし、時間があればむしろレッドは自分の時間を割いてまでウィルフレッドに付き添ってくる。それがわかっているからこそ「そもそも側近という仕事放棄をする気か」などと怒るわけにもいかない。いくら側近であり恋人であっても、ウィルフレッドが少々、いや結構わがままであってもそこまで理不尽なことを言うつもりはない。
姉であるアレクシアの結婚が決まり、日程が近づくと警備や演習などで優秀な騎士たちは皆忙しくなった。レッドもしかりだ。めでたいことだけにウィルフレッドも「俺を優先しろ」とも言えない。
おかげ様で大いに不満だった。
恋人という関係になってからまだそう時間を重ねたわけでなく、「デート」と言われる行事すら一度一緒に城下町へ行ったことくらいしかない。考え方によれば側近であるレッドとは一緒にいる機会も基本的に少なくないため、ある意味毎日がデートなのかもしれない。しかしそもそも誰かを好きになり、その相手にも好かれるという経験は前世を含めると何百年と生きてきて初めてのことだけに、できればまだしばらくは何を一緒にするにしても特別なことを経験したいと思ってしまう。
とはいえこんな考えはどうにも情けなく思えてしまうこともあり、ウィルフレッドはレッドを含め誰にも口にせず、さらに不満を溜めていた。
「……だいたい最近は夜だって一緒だが、一緒でも何もせず寝てしまう」
舌打ちをしながら独り言をつぶやくと、ウィルフレッドはハッとなった。
仕方がないことだとわかっていながら不機嫌な気持ちになるのは、もしかしたら欲求不満だからなのかもしれない。それを解消すれば不愉快なこのモヤモヤとした気持ちも晴れるのではないだろうか。
そうとわかれば、とソファーから立ち上がると、ウィルフレッドは服を脱ぎだした。
かつては童貞じゃなくなれば云々といった考えで誰でもいいから相手をと思ったりもしたが、今はベッドを共にするのはレッド以外考えられない。そうなると欲求不満を手っ取り早く解消するには自分でするしかない。
はっきり言って、ウィルフレッドは前世を含め一人でしたことはほぼない。前世では絶えず相手に困らなかったからだったし、今のウィルフレッドとして生を受けてからはむしろそういったことに飽き飽きしていたからだ。それもあり、するならやはりこういうことは服を脱ぐべきだろうという思い込みがあった。
「セックスをする時は大抵裸だしな。なら一人でする時も裸のほうがやりやすいだろう」
ソファーに座りなおすと、早速利き手で自分のものに触れたが、正直全然気持ちよくない。濡れていないからぬるぬるとしないせいでだろうかと思うが、そもそも気持ちよくないと先も濡れない。かといってローションは寝室にある。わざわざ取りにいくのも面倒くさい。
「……ああ、いいものがあった」
ニヤリと笑うと、ウィルフレッドはサイドテーブルにある小皿を手に取る。そしてほぼ溶けているアイスクリームを手にかけた。
「……っ」
一旦手の温度にさらされようが、冷たいものは冷たい。違う意味でぞくぞくとしながら、ウィルフレッドはぬるぬるとそこをアイスクリームまみれにした。最初は縮こまったかのようだったそこは、次第に熱を持ち出した。そうすると気持ちもだんだん盛り上がってくる。あえて考えようとしなくても、レッドとの行為を自然と思い出しながら、ウィルフレッドはますます手の動きを早めた。
「ん、ぁ……、あ、レッド……クソ、んん、レッド……」
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