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今夜は眠れない3
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「お祝い、もう準備した?」
テラスで休憩していた時にそんな声が聞こえてきたかと思うと、ラルフがにこにことウィルフレッドに近づいてきた。
「ええ、まぁ……」
「何々? 何にすんの?」
おずおずと頷けば、ラルフは好奇心を隠すことなくウィルフレッドに迫るようにして聞いてくる。
「ここで言うんですか? 内緒のほうが楽しいのでは」
「お祝いの相手の姉上と義兄にはもちろん内緒だけど、俺にはいいじゃない。ね?」
「まぁ、そうですが……っていうか近いんでもう少し離れてください」
本当に近いため、呆れた顔でウィルフレッドは椅子に座ったまま目の前にあるラルフの顔を手でぐっと押し退けた。
「ひどくない? ウィル」
「兄上は油断すると変なことをしてくるから警戒してるだけです」
「それもひどくない?」
素直に離れ、傍の椅子に座るとラルフはニコニコとウィルフレッドを見てくる。
「ご自分の行動を省みてください」
「えー。でもウィル、別に嫌がってなかったのに」
「心から呆れてはいたでしょう。あと、今は俺には……レッドがいるので」
淡々と言いながら、途中から少々むずがゆさというか、ほんのり羞恥心が湧いてウィルフレッドは目を逸らしながら言ってのけた。その後にティーカップに残っていた茶を飲み干す。
「うわー、かわいい! けどムカつく! レッドムカつく!」
「はぁ? 何で兄上がレッドに対してムカつくんですか。レッドのこと、認めておられるんでしょう?」
「粒子くらいにはって言ったよ」
「……例え粒子程度にでも認めてくださってるんですよね? でしたらレッドに対して謂れのない感情をぶつけないでいただきたい」
「安心して、ムカつくけど別にいじめてないよ? むしろかわいがってる。こないだもさーレッドが騎士の仕事をしている時にさー、ちょっと提案したらメモまで取り出したんだよー。あいつもかわいいっちゃぁかわいいよね」
何だそれは、とウィルフレッドは怪訝な顔になる。その表情に気づいたのだろう。ラルフが楽しげにウィルフレッドの頬を痛みのない程度に軽くつまんできた。
「愛くるしい顔して。何か気になるー?」
「そういった顔はしていませんが、そうですね、気になります。あとかわいいって……レッドは兄上より二歳も上ですよ」
「でもほら、俺は王子だからいいの」
ニコニコさらりと言った後にラルフは続けてきた。
「かわいい相手を夜、眠れないほど濃厚に愛してあげる方法の何通りかをさ、こういうのもあるんだけどーって提案したんだけどね」
「何してんですか……羞恥心とか慎みとかそういうものを兄上はミジンコ程度も持ち合わせてないんですか?」
「うわぁ、すごい言われよう」
ウィルフレッドこそ、羞恥よりも呆れのほうが上回ってドン引きした顔でラルフを見る。そもそも余計なお世話だ。それこそレッドがその気になればウィルフレッドが「頼むから寝かせてくれ」と言いたくなるくらい体力馬鹿だし、ウィルフレッドも前世の記憶があるのでレッドさえよければどんなプレイだってレッドにしてあげられるだろう。
「って、レッドがメモ?」
「うん。だってほら、レッドって昔からウィルのこと好き過ぎて、他の相手とあまり経験なさそうじゃない? 器用だから何でもすぐ上手くこなすだろうけどさー。だからこういうのはどう、って持ちかけたらさぁ、いつもならほぼスルーしてくんのにあの無表情な顔のまま『それで?』とか言い出して。面白かった」
面白がってんじゃねえ、とウィルフレッドはラルフをじろりと睨む。そしてため息をつきながら立ち上がった。
「あれ、どこ行くの? もっと話そうよ。それとも町へ行く? だいたいまだお祝い何にするか聞いてないよ?」
「兄上が馬鹿なことばかり言ってくるので俺は避難します。剣の訓練もありますし」
「ええー。レッドをかわいがってるって話しただけなのに! でも訓練なら仕方ないなぁ。じゃあお別れに、ちょっとこっち来て」
「嫌です。兄上には警戒してるので」
「いいよー、じゃあ俺が行くもんね」
するりと立ち上がると、ラルフは足早に近づいてきてウィルフレッドを引き寄せてきた。身長差だけでなく体格差のせいもあり、ウィルフレッドは易々と引き寄せられる。
「ちょ、兄上」
「また一緒に遊ぼうね、かわいいウィル。よかったら俺が夜、寝かせないよーなこと、してあげるからね」
「いりません」
「冷たいなぁ」
ラルフは笑いながらさらに引き寄せ、抱えるようにしてウィルフレッドの額にキスをしてきた。
「兄う……」
「いい加減になさってください、ラルフ王子」
その瞬間、どこにいたのかレッドがウィルフレッドをラルフから引き離しながら抗議してきた。
「っちょ、レッド相変わらず突然の出没半端ない」
ラルフは申し訳なく思うどころかおかしげに笑っている。対するレッドは本気の警告をしたかのような顔をしていた。
「お前、ほんといつからいたんだよ……」
ラルフが立ち去った後、ウィルフレッドが呆れたように言えば「少し前です」とウィルフレッドの額をハンカチーフで拭いながらはっきり答えてこない。もしかしたら結構前からいたのかもしれない。
「……メモ」
「ゴホン。王子、いくら兄上でも嫌なら嫌とちゃんとおっしゃってもいいんですからね」
「俺が言えないとでも? あとさっきはひたすら呆れることが多々あってな。ほぼ兄上にだが、まあ、メモとか」
「……」
「色々興味あるのか? 何だったら俺が一人でするとこ見せつけるよりもすごいこと、してやろうか?」
「……、それは中々に魅力的な提案です、が、その辺はできれば俺に王子が委ねてくださるほうが、その……俺は好み、です」
いつも無表情なレッドが言いにくそうに口にしてきた。その様子が中々に愛しすぎて、ウィルフレッドはかなり機嫌がよくなる。
「わかった。でも俺だってお前にしてやりたいと思うことだってある。そういう時は一緒に楽しみたい」
「それは、もちろん、その、喜んで」
「よし。仕事はそろそろ、多少は落ち着いてきたんだろ?」
「ええ」
「じゃあ今晩も俺を寝かせない方向で」
「御意」
小さく笑う様子がまた愛しくて、ウィルフレッドはレッドに抱きついた。
テラスで休憩していた時にそんな声が聞こえてきたかと思うと、ラルフがにこにことウィルフレッドに近づいてきた。
「ええ、まぁ……」
「何々? 何にすんの?」
おずおずと頷けば、ラルフは好奇心を隠すことなくウィルフレッドに迫るようにして聞いてくる。
「ここで言うんですか? 内緒のほうが楽しいのでは」
「お祝いの相手の姉上と義兄にはもちろん内緒だけど、俺にはいいじゃない。ね?」
「まぁ、そうですが……っていうか近いんでもう少し離れてください」
本当に近いため、呆れた顔でウィルフレッドは椅子に座ったまま目の前にあるラルフの顔を手でぐっと押し退けた。
「ひどくない? ウィル」
「兄上は油断すると変なことをしてくるから警戒してるだけです」
「それもひどくない?」
素直に離れ、傍の椅子に座るとラルフはニコニコとウィルフレッドを見てくる。
「ご自分の行動を省みてください」
「えー。でもウィル、別に嫌がってなかったのに」
「心から呆れてはいたでしょう。あと、今は俺には……レッドがいるので」
淡々と言いながら、途中から少々むずがゆさというか、ほんのり羞恥心が湧いてウィルフレッドは目を逸らしながら言ってのけた。その後にティーカップに残っていた茶を飲み干す。
「うわー、かわいい! けどムカつく! レッドムカつく!」
「はぁ? 何で兄上がレッドに対してムカつくんですか。レッドのこと、認めておられるんでしょう?」
「粒子くらいにはって言ったよ」
「……例え粒子程度にでも認めてくださってるんですよね? でしたらレッドに対して謂れのない感情をぶつけないでいただきたい」
「安心して、ムカつくけど別にいじめてないよ? むしろかわいがってる。こないだもさーレッドが騎士の仕事をしている時にさー、ちょっと提案したらメモまで取り出したんだよー。あいつもかわいいっちゃぁかわいいよね」
何だそれは、とウィルフレッドは怪訝な顔になる。その表情に気づいたのだろう。ラルフが楽しげにウィルフレッドの頬を痛みのない程度に軽くつまんできた。
「愛くるしい顔して。何か気になるー?」
「そういった顔はしていませんが、そうですね、気になります。あとかわいいって……レッドは兄上より二歳も上ですよ」
「でもほら、俺は王子だからいいの」
ニコニコさらりと言った後にラルフは続けてきた。
「かわいい相手を夜、眠れないほど濃厚に愛してあげる方法の何通りかをさ、こういうのもあるんだけどーって提案したんだけどね」
「何してんですか……羞恥心とか慎みとかそういうものを兄上はミジンコ程度も持ち合わせてないんですか?」
「うわぁ、すごい言われよう」
ウィルフレッドこそ、羞恥よりも呆れのほうが上回ってドン引きした顔でラルフを見る。そもそも余計なお世話だ。それこそレッドがその気になればウィルフレッドが「頼むから寝かせてくれ」と言いたくなるくらい体力馬鹿だし、ウィルフレッドも前世の記憶があるのでレッドさえよければどんなプレイだってレッドにしてあげられるだろう。
「って、レッドがメモ?」
「うん。だってほら、レッドって昔からウィルのこと好き過ぎて、他の相手とあまり経験なさそうじゃない? 器用だから何でもすぐ上手くこなすだろうけどさー。だからこういうのはどう、って持ちかけたらさぁ、いつもならほぼスルーしてくんのにあの無表情な顔のまま『それで?』とか言い出して。面白かった」
面白がってんじゃねえ、とウィルフレッドはラルフをじろりと睨む。そしてため息をつきながら立ち上がった。
「あれ、どこ行くの? もっと話そうよ。それとも町へ行く? だいたいまだお祝い何にするか聞いてないよ?」
「兄上が馬鹿なことばかり言ってくるので俺は避難します。剣の訓練もありますし」
「ええー。レッドをかわいがってるって話しただけなのに! でも訓練なら仕方ないなぁ。じゃあお別れに、ちょっとこっち来て」
「嫌です。兄上には警戒してるので」
「いいよー、じゃあ俺が行くもんね」
するりと立ち上がると、ラルフは足早に近づいてきてウィルフレッドを引き寄せてきた。身長差だけでなく体格差のせいもあり、ウィルフレッドは易々と引き寄せられる。
「ちょ、兄上」
「また一緒に遊ぼうね、かわいいウィル。よかったら俺が夜、寝かせないよーなこと、してあげるからね」
「いりません」
「冷たいなぁ」
ラルフは笑いながらさらに引き寄せ、抱えるようにしてウィルフレッドの額にキスをしてきた。
「兄う……」
「いい加減になさってください、ラルフ王子」
その瞬間、どこにいたのかレッドがウィルフレッドをラルフから引き離しながら抗議してきた。
「っちょ、レッド相変わらず突然の出没半端ない」
ラルフは申し訳なく思うどころかおかしげに笑っている。対するレッドは本気の警告をしたかのような顔をしていた。
「お前、ほんといつからいたんだよ……」
ラルフが立ち去った後、ウィルフレッドが呆れたように言えば「少し前です」とウィルフレッドの額をハンカチーフで拭いながらはっきり答えてこない。もしかしたら結構前からいたのかもしれない。
「……メモ」
「ゴホン。王子、いくら兄上でも嫌なら嫌とちゃんとおっしゃってもいいんですからね」
「俺が言えないとでも? あとさっきはひたすら呆れることが多々あってな。ほぼ兄上にだが、まあ、メモとか」
「……」
「色々興味あるのか? 何だったら俺が一人でするとこ見せつけるよりもすごいこと、してやろうか?」
「……、それは中々に魅力的な提案です、が、その辺はできれば俺に王子が委ねてくださるほうが、その……俺は好み、です」
いつも無表情なレッドが言いにくそうに口にしてきた。その様子が中々に愛しすぎて、ウィルフレッドはかなり機嫌がよくなる。
「わかった。でも俺だってお前にしてやりたいと思うことだってある。そういう時は一緒に楽しみたい」
「それは、もちろん、その、喜んで」
「よし。仕事はそろそろ、多少は落ち着いてきたんだろ?」
「ええ」
「じゃあ今晩も俺を寝かせない方向で」
「御意」
小さく笑う様子がまた愛しくて、ウィルフレッドはレッドに抱きついた。
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そんなに言っていただけてこちらこそありがとうございます。
応援、嬉しいです。
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うふふ💕
待ちに待ったSS✨✨
ウィルーーー💕
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た、の、し、み!
fuuさん、ありがとうございます。
最終話でおっしゃってくださったように逃さずいてくださってとても嬉しいです。
ラブラブ、なのでしょうか(笑)
そう、かもしれません。多分?
楽しんでもらえると幸いです。
更新とてもとても嬉しいです!
一生懸命なウィルフレッドくんもブラコンなルイくんも可愛くて、日々の疲れが癒されました!!
喜んでいただけて嬉しいです。
それに感想もありがとうございます!
かいごさんに癒されていただけてよかったです。
よければあと3話お付き合いください。