子猫のような君が愛しくて……

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6話

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 ボールに水菜とツナとを入れ、ほんの少しの醤油にレモン汁、オリーブオイル、挽いた黒コショウを加えて混ぜていると貴が帰ってきた。実央はシンクにボールを置くと玄関まで駆け出していく。

「おかえり、貴くん」
「ただいま、みぃ」

 穏やかで優しげな笑みを浮かべている貴に近づいて見上げると、貴は手を伸ばして喉を撫でてきた。くすぐったくて変な声が出そうになり、実央はむしろムッとした顔を向けた。

「猫じゃねえし」
「でも実家で飼ってた子を思い出して。ノエミさんも俺が外から帰ってくるといつも玄関まで走ってきてゴロゴロ喉、鳴らしてたから」
「俺は鳴らしてねえよ」

 鳴らせるのなら多分鳴っていたのだろうけれども。

「何か作ってたの?」
「水菜」
「そっか。美味しそうだね。じゃあ後は鶏肉でも焼こうか」

 水菜、と答えただけでわかったのかわかっていないのか、ニコニコと貴が言いながらネクタイを緩めている。貴のそんなスーツ姿は朝も見ているどころか毎日見ているが、それでもやっぱり相変わらず恰好がよくて実央はドキドキした。

「先にシャワー浴びるだろ? 俺、鶏肉焼いておく」

 ここへ来た当初は料理など何もできなかった。母親に「ちょっとはできるようにしておきなさい」と言われていたが、やる気が起きなくてそのままだった。だがずっと貴に作ってもらうのがあまりにも申し訳なくて、実央は貴に教えてもらいながら最近ようやく多少はできるようになった気がしている。鶏肉だって焼ける。

「ん、それもいいけど……」

 いいけど、と言いながら貴は実央に近づいて額にキスをしてきた。ふわりと香る、香水か何かと貴のほんの少し汗ばんでいるであろう貴自身の香りが混じり合って何とも言えないいい匂いがした。

「な、何?」
「みぃ、もうお風呂入った?」
「まだ」
「じゃあ一緒に入ろ。出てから一緒に焼けばいいよ」
「い、一緒に?」

 毎日ではないが、貴と一緒に風呂に入るのは別に初めてではない。だが毎回恥ずかしい。ベッドの上でもっと恥ずかしいこともしたり見られたりしているというのに、自分でも何故風呂が恥ずかしいのかわからないが、多分プライベートな部分だからかもしれない。銭湯なら平気かもしれないが、こういった風呂は基本一人で入るイメージが実央にはある。トイレも同じだ。公共のトイレでの小便は平気だが、絶対何があっても個室のトイレでの小便は貴に見られたくない。

「まだ恥ずかしいの?」
「煩い」

 ムッとしたように眉を潜ませて見上げるとギュッと抱きしめられた。いい匂いと密着具合に発情してしまいそうだ。

「かわいいなあ。いいよ、ずっと恥ずかしがってて。そんなみぃを見るの、俺が堪らないから」
「変態……」
「変態は酷いな。みぃがかわいいからだよ。ほら、入ろ」
「は、入るなんて言ってない」
「ダメ?」

 ネクタイを解いて乱れたシャツの、目を見張るような美形イケメンにすがるように言われ、駄目だと言える人がいるだろうか。いや、いるはずがない。

「別に、そんなに言うなら……」
「ありがとう、みぃ。大好きだよ」
「そんなの、俺のがだし」

 風呂場ではもちろんイチャイチャした。シャワーだけのつもりで湯を入れてなかったバスタブに湯を張りながら頭や体を洗い合い、流してから全然まだまだ湯が溜まっていないバスタブに向き合って入り、実央は貴の上に乗るような形で抱き合った。何度もキスを繰り返し、ゆっくりと溜まっていく湯を感じながら触れ合った。十分に湯が溜まる前に温まり過ぎて、結局逆上せる前にすぐ風呂から出てまともに体を拭けていないままベッドで絡み合った。
 ようやく鶏肉を焼いたのはずいぶん後になってからだが、二人とも腹が空いていたのであっという間に平らげた。

「……眠い」

 食器の後片付けは任せてと言ってくれた貴にありがたく任せ、ごろごろとソファーに転がっていると眠くなってきた。家事を終えてコーヒーを淹れてきた貴に呟く。

「もうベッドに入っておいで。ご飯食べるまえに散々イチャイチャしちゃったから疲れちゃったんだろね」

 貴は優しく実央の額にかかる髪を撫で上げながら言ってきた。

「んー……でも俺、今日こそ……決めたこと、あった」
「ん? 何かな?」
「俺のお尻、たくさん弄って欲しい」
「え?」

 何だろうと顔を寄せてきていた貴が笑顔のまま戸惑っている。それもそうかもしれない。以前にいざ本番をしようと実央の尻を解そうとした時点で、到底入るはずがないとなってそれ以来前を愛撫するだけだった。

「たくさん、弄って」

 実央はもう一度繰り返す。

「でも……」
「だってこのままだったらずっと俺、貴くんと最後までできない。そんなの嫌だからな?」
「それは俺もそうだけど……でも俺はみぃを傷つけてまでしたくはないよ」
「だからなの! すぐには無理でも、毎日弄ってもらってたらきっと慣れてく気がする」
「慣れてって、いくらなんでも限界があるでしょ」
「俺の尻なら絶対貴くんの、受け止められる!」

 まだ少し眠いため、目をしょぼつかせながらも断言すると、困惑していた貴がまた笑みを浮かべてきた。

「男らしいね、みぃ。これ以上惚れるとこないくらいいっぱい惚れてるのにさらに惚れそう。わかったよ。できるかどうかはわからないけど、ゆっくり前に進んでいこうか」

 笑顔でそう言ってきた貴に、実央こそこれ以上ないくらい好きなのにそれを突破しそうなくらい胸が高鳴った。

「うん」

 貴みたいな風に笑うのは得意じゃないが笑みを浮かべて頷き、実央は両手を伸ばした。

「もう。ほんとかわいすぎて俺、昇天しそう」
 コーヒーを置いて実央を抱きとめると、貴はそのまま横抱きに抱えてベッドルームまで向かってくれた。
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