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11話
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「見た顔だなって思った」
ニヤニヤしているとしか思えない恵吾が貴たちに近づいてくる。
「何でこんなとこにいるんだ」
今すぐ帰れと言いたいところを堪え、貴が聞けば「近くに家具量販店あんだろ。でっかい。そこ行ってたんだけど」と言いながら肩に下げているキャリーバッグを見せてきた。確かにそこのロゴマークが持ち手の部分に入っている。
「なるほどな。じゃあ、また月曜に」
頷くと貴はそのまま実央の肩を抱いて踵を返そうとした。
「おいおい、すぐ踵返そうとするな。素っ気なさ過ぎない?」
「別にお互い用はないだろ」
「お前にばったり会った途端、俺には新たな用が発生したけど」
「俺にはない。じゃあな」
実央は「誰?」と聞きたそうな顔をしたまま黙っている。ごめんね後で説明するからねと心の中で思いながら貴はそのまま歩こうとした。だが「まあ待て」と恵吾に肩をつかまれる。
「離せ」
「まぁまぁ。で、お隣にいるのが噂の岬くんかなー。初めまして岬くん。隣の失礼極まりない男が紹介してくれないから自分で言うけど俺、宮野の同僚兼友だちの佐武って言うんだ。名前は恵吾ね。けーごくんって呼んでくれてもいいよ」
「け……?」
「みぃ、いいんだよ無視して。というか無視するといいよ」
「え?」
「おいおい、友だちに対してつれなさ過ぎじゃない? 岬くん、噂通りかわいいね。そりゃ宮野もかわいいかわいい煩いわけだ」
「え、貴くん、俺のことかわいいって言ってくれてるんですか」
「そりゃあもう」
「ちょっと黙ってて佐武」
「いやー。ねえ岬くん、今日は宮野とどこか行く予定だった?」
「え? いや別に」
「行く予定だったよ。めちゃくちゃ予定あるから」
「え?」
先ほどから実央の戸惑いが半端ない。改めて心の中でごめんねと思いつつも、前から会わせろと煩かった恵吾に会わせる気などさらさらなかったために今すぐ立ち去りたかった。
恵吾が実央にちょっかいをかけると本気で思っているわけではないし、貴も恵吾のことを友だちだと間違いなく思ってはいるが、現に今も迷惑なので仕方ない。
「はい、嘘ー。もー聞いた? 岬くん。この人、君が大事すぎて友だちの俺にすらこれっぽっちも関わらせたくないとか思ってんだよ? 独占欲ひどすぎじゃない?」
「え、そうなの? 貴くんが俺に? ほんと?」
「ほんとほんと。他にも職場での宮野のこととか知りたくない?」
「知りたい」
「だよねー。この後友人何人かと飲みに行く予定なんだ。一緒に行こうよ」
「おい、佐武!」
「行、きたいけど俺、まだお酒飲めない」
「そっかぁ。まだ未成年だったね。ほんとかわいいねー。大丈夫、ソフトドリンクもあるし未成年立ち入り禁止って店じゃないよ。楽しいよ、行こうよ」
「……貴くん」
実央がかわいい目でじっと貴を見上げてくる。そんな実央に抗えるのなら今朝だって欲望に負けずにとっとと食事をして外出していたし、そうしていたら恵吾に会うこともなかっただろう。
「そんな顔で見てこないで。わかったから。……行けばいいんだろ、佐武」
「そうこなくちゃ」
恵吾がニッコリと微笑んできた。真面目そうな、淡泊そうな顔をしているわりに貴に対してはたまにたちが悪いこの友人を、貴は呆れたように見る。
「今から向かおうよ」
「お前、荷物重くないの」
「何で? 宮野が持ってくれるのか?」
「違うよ何でだよ。邪魔だろ。一旦帰れば」
そうしたらそのまま帰ってやろうと思い、貴が提案するも「そうはいくかよ。買ったの、ちょっとした収納グッズとかだけだし余裕だから問題ない」と返ってきた。
「岬くんはお昼、たくさん食べた?」
「昼っつかブランチ食べました」
「だったら昼には早い時間にってことだよね。そこの店で酒を飲まない分、がっつり食べるといいよ。さあ、行こう」
ため息をついていると実央が気がかりそうに見上げてきた。それはそうだろう。いまいち知らない人に対して貴は微妙な態度を取っているしで、どうしていいかわからないに決まっている。
「大丈夫だよ、みぃ。別に俺もあいつを嫌ってないし本当に友人だ。ただ友人であっても大事なみぃを下手に会わせたくなかっただけ」
「……ほんとに独占欲?」
はぁ、かわいい。
内心で思い切り噛みしめながら、まだ少し気がかりそうに見上げてくる実央を心の中で抱きしめた。
「うん。嫌?」
「ううん。すげぇ嬉しい」
「そっか。じゃあ俺も遠慮なく言うけど、佐武とか佐武の友人たちとあんまり仲よく話しちゃ駄目だからね」
「うん。でも貴くんの話は聞きたい」
「はは、大した話なんてないと思うよ」
「でも聞きたい」
手を繋ぎそうな近さで歩きながら話していると「俺がいてもイチャイチャするのね。別にいいけどもうちょっと早く歩いてよー」と恵吾が笑いながら振り返ってきた。
飲みに行くからと電車に乗って目的の場所へ向かった。家を出たのは昼過ぎだったが気づけばもう夕方で、店はそれでもまだ少し空いていたが恵吾の友人たちはもうすでに来ているようだった。三人の内二人は貴も知り合いで「久しぶり」だのなんだのと話しつつ渋々実央のことも紹介する。実央が嫌がらないよう、紹介する機会がある場合は「幼馴染」と言うようにしているが、本当なら「俺の恋人」と紹介したかった。
ニヤニヤしているとしか思えない恵吾が貴たちに近づいてくる。
「何でこんなとこにいるんだ」
今すぐ帰れと言いたいところを堪え、貴が聞けば「近くに家具量販店あんだろ。でっかい。そこ行ってたんだけど」と言いながら肩に下げているキャリーバッグを見せてきた。確かにそこのロゴマークが持ち手の部分に入っている。
「なるほどな。じゃあ、また月曜に」
頷くと貴はそのまま実央の肩を抱いて踵を返そうとした。
「おいおい、すぐ踵返そうとするな。素っ気なさ過ぎない?」
「別にお互い用はないだろ」
「お前にばったり会った途端、俺には新たな用が発生したけど」
「俺にはない。じゃあな」
実央は「誰?」と聞きたそうな顔をしたまま黙っている。ごめんね後で説明するからねと心の中で思いながら貴はそのまま歩こうとした。だが「まあ待て」と恵吾に肩をつかまれる。
「離せ」
「まぁまぁ。で、お隣にいるのが噂の岬くんかなー。初めまして岬くん。隣の失礼極まりない男が紹介してくれないから自分で言うけど俺、宮野の同僚兼友だちの佐武って言うんだ。名前は恵吾ね。けーごくんって呼んでくれてもいいよ」
「け……?」
「みぃ、いいんだよ無視して。というか無視するといいよ」
「え?」
「おいおい、友だちに対してつれなさ過ぎじゃない? 岬くん、噂通りかわいいね。そりゃ宮野もかわいいかわいい煩いわけだ」
「え、貴くん、俺のことかわいいって言ってくれてるんですか」
「そりゃあもう」
「ちょっと黙ってて佐武」
「いやー。ねえ岬くん、今日は宮野とどこか行く予定だった?」
「え? いや別に」
「行く予定だったよ。めちゃくちゃ予定あるから」
「え?」
先ほどから実央の戸惑いが半端ない。改めて心の中でごめんねと思いつつも、前から会わせろと煩かった恵吾に会わせる気などさらさらなかったために今すぐ立ち去りたかった。
恵吾が実央にちょっかいをかけると本気で思っているわけではないし、貴も恵吾のことを友だちだと間違いなく思ってはいるが、現に今も迷惑なので仕方ない。
「はい、嘘ー。もー聞いた? 岬くん。この人、君が大事すぎて友だちの俺にすらこれっぽっちも関わらせたくないとか思ってんだよ? 独占欲ひどすぎじゃない?」
「え、そうなの? 貴くんが俺に? ほんと?」
「ほんとほんと。他にも職場での宮野のこととか知りたくない?」
「知りたい」
「だよねー。この後友人何人かと飲みに行く予定なんだ。一緒に行こうよ」
「おい、佐武!」
「行、きたいけど俺、まだお酒飲めない」
「そっかぁ。まだ未成年だったね。ほんとかわいいねー。大丈夫、ソフトドリンクもあるし未成年立ち入り禁止って店じゃないよ。楽しいよ、行こうよ」
「……貴くん」
実央がかわいい目でじっと貴を見上げてくる。そんな実央に抗えるのなら今朝だって欲望に負けずにとっとと食事をして外出していたし、そうしていたら恵吾に会うこともなかっただろう。
「そんな顔で見てこないで。わかったから。……行けばいいんだろ、佐武」
「そうこなくちゃ」
恵吾がニッコリと微笑んできた。真面目そうな、淡泊そうな顔をしているわりに貴に対してはたまにたちが悪いこの友人を、貴は呆れたように見る。
「今から向かおうよ」
「お前、荷物重くないの」
「何で? 宮野が持ってくれるのか?」
「違うよ何でだよ。邪魔だろ。一旦帰れば」
そうしたらそのまま帰ってやろうと思い、貴が提案するも「そうはいくかよ。買ったの、ちょっとした収納グッズとかだけだし余裕だから問題ない」と返ってきた。
「岬くんはお昼、たくさん食べた?」
「昼っつかブランチ食べました」
「だったら昼には早い時間にってことだよね。そこの店で酒を飲まない分、がっつり食べるといいよ。さあ、行こう」
ため息をついていると実央が気がかりそうに見上げてきた。それはそうだろう。いまいち知らない人に対して貴は微妙な態度を取っているしで、どうしていいかわからないに決まっている。
「大丈夫だよ、みぃ。別に俺もあいつを嫌ってないし本当に友人だ。ただ友人であっても大事なみぃを下手に会わせたくなかっただけ」
「……ほんとに独占欲?」
はぁ、かわいい。
内心で思い切り噛みしめながら、まだ少し気がかりそうに見上げてくる実央を心の中で抱きしめた。
「うん。嫌?」
「ううん。すげぇ嬉しい」
「そっか。じゃあ俺も遠慮なく言うけど、佐武とか佐武の友人たちとあんまり仲よく話しちゃ駄目だからね」
「うん。でも貴くんの話は聞きたい」
「はは、大した話なんてないと思うよ」
「でも聞きたい」
手を繋ぎそうな近さで歩きながら話していると「俺がいてもイチャイチャするのね。別にいいけどもうちょっと早く歩いてよー」と恵吾が笑いながら振り返ってきた。
飲みに行くからと電車に乗って目的の場所へ向かった。家を出たのは昼過ぎだったが気づけばもう夕方で、店はそれでもまだ少し空いていたが恵吾の友人たちはもうすでに来ているようだった。三人の内二人は貴も知り合いで「久しぶり」だのなんだのと話しつつ渋々実央のことも紹介する。実央が嫌がらないよう、紹介する機会がある場合は「幼馴染」と言うようにしているが、本当なら「俺の恋人」と紹介したかった。
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