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12話
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どうやら一人以外は貴も知り合いらしい。彼らに幼馴染だと紹介してくれた。こういう時に実央はいつも少々複雑な気持ちになる。
男同士だから当たり前のように恋人だと紹介されないことはわかっている。そういったマイノリティに対しての受け止め方は人それぞれだと実央は思っているし、自分の考えを押し付けたいとは思わない。反対に押し付けられたくもない。実央も本来は同性愛者ではなく異性愛者だけに余計そう思うのかもしれない。とにかく誰かを攻撃するのでない限り、どう思うかはその人の自由だ。要は男同士であることに対して不愉快に思う人も中にはいるということだ。だから無難な表現をするに越したことはない。
それでもやっぱり本音だけを言えば貴の恋人として紹介されたいなと思ってしまう。あと、こういう時に男女の付き合いだったら楽だったんだろうかな、とも。
とはいえどれも思っても仕方ないことだ。実央は少し人見知りしつつ「初めまして」と、多少小声にはなったが何とか挨拶した。
貴も知らない様子の後の一人は前浜 音路(まえはま ねろ)という名前らしい。実央はあまり名前を覚えるのが得意ではないが、さすがに変わった名前なので記憶に残った。その音路が途中、実央に話しかけてきた。
「宮野くんと歳、離れてそうだけどいくつ?」
「え? あ、十九」
「ああ、だからお酒、飲んでないんだ」
「うん」
何気に貴を見れば他の二人と話している。どうやら仕事関連が似ているのか同じなのか、何やら実央のわからないことでどうこう言っているようだ。
「宮野くんが気になる?」
「そ、りゃ俺の知り合い、貴くんだけだから」
「ああ、そうか。そうだよね。でも今から知り合いになれば問題なくない?」
「え?」
音路は首を傾げながら「ね?」と笑いかけてくる。悪い人ではなさそうだが、何だか独特な雰囲気のある人だなと実央はそっと思った。
「ま、ぁ」
何が問題なくないのかわからないし、貴からは「佐武とか佐武の友人たちとあんまり仲良く話しちゃ駄目」と言われている。できればあまり話したくないが、貴の友人兼同僚である恵吾の知人に対してあまりどうかと思えるような態度を取るわけにもいかない。困惑しつつ、実央は渋々そっと頷いた。
「戸惑ってる感じ、かわいいね」
ニコリと笑みを見せてきながら言われ、あまりどうかと思えるような態度を取る訳にもいかないと思ったはずの実央はだがじろりと音路を睨んだ。
「あれ? かわいいって言われるの、嫌?」
「嬉しいわけねーじゃん」
「そう? いいことじゃない」
「……何で」
「だって見た目や中身を評価しての言葉じゃない。何が駄目?」
評価?
「……馬鹿にしてる感じある」
「まさか。いや、まあ中にはそういう人もいるのかもだけど、普通は褒め言葉だよ」
「ほんと?」
「うん」
実際大人であろう、大人っぽい雰囲気の人にさらりと言われるとそんな気がしてきた。確かにあえて口にされる場合よく女から言われる気がするのだが、相手を見ていると悪気はなさそうに見える。かわいいイコールがどういう感情で口にしているのかも人それぞれといったところなのだろうか。
……少なくとも貴くんは本当に俺をかわいいって思ってくれてて愛しいって感じ、すごく出してくれるもんな……だから俺も貴くんに言われるのは好き。貴くんが好きだからってのもあるけど……。
「だからかわいいって俺が言ったらそのまま褒め言葉として受け止めて欲しいな」
「……うん。……ありがとう」
一応礼を言えば、音路はさらにニコニコと笑顔を見せてきた。
「ほんとかわいい。ね、……えっと、岬くんだっけ」
「うん」
「俺ともっと仲よくしてくれるかな」
テーブルに片手で頬杖をつきながら微笑んでくる音路を、実央は怪訝な顔で見た。多分少なくとも貴と年齢は近いだろう。ということは実央と六歳前後離れているはずだ。そんな年下の学生と何故仲よくしたいと思えるのか不思議でならない。
「……ま、え浜さんは」
「ネロ」
「え?」
「ネロって呼んで」
いや、無理じゃね?
実央はますます怪訝な、というより微妙な顔になる。何故六歳前後上であろう、元々知り合いでもない人を名前で、しかも呼び捨てできると思えるのか。
「どうかした?」
「……名前呼び捨てとか無理っす」
「何で?」
「何でって……」
「名前が嬉しいな」
「……じゃあ、ネロさんで」
「せめてくんがいい」
意外に煩いな。
「ネロくん」
「うん」
「……。……その、えっとネロくんは俺よりだいぶ上だろ。なのに何で仲よくなりてーの? 俺学生だし話だって多分合わねーでしょ」
「だって岬くんかわいいから」
「は?」
「それに今こうして普通に喋ってるじゃない。別に話、合わなくないでしょ」
「いや……」
反論しかけると「宮野くんとはただの幼馴染じゃないよね」と言われた。思わず目を見開きながら音路を見ると「目、おっこちそうだね」と笑われる。
「な、に言って、んのか」
「……ああ、大丈夫。安心して」
音路は実央に近づくと耳打ちしてきた。
「俺、バイだからそういうの、むしろ平気というか、歓迎なくらいだからね」
男同士だから当たり前のように恋人だと紹介されないことはわかっている。そういったマイノリティに対しての受け止め方は人それぞれだと実央は思っているし、自分の考えを押し付けたいとは思わない。反対に押し付けられたくもない。実央も本来は同性愛者ではなく異性愛者だけに余計そう思うのかもしれない。とにかく誰かを攻撃するのでない限り、どう思うかはその人の自由だ。要は男同士であることに対して不愉快に思う人も中にはいるということだ。だから無難な表現をするに越したことはない。
それでもやっぱり本音だけを言えば貴の恋人として紹介されたいなと思ってしまう。あと、こういう時に男女の付き合いだったら楽だったんだろうかな、とも。
とはいえどれも思っても仕方ないことだ。実央は少し人見知りしつつ「初めまして」と、多少小声にはなったが何とか挨拶した。
貴も知らない様子の後の一人は前浜 音路(まえはま ねろ)という名前らしい。実央はあまり名前を覚えるのが得意ではないが、さすがに変わった名前なので記憶に残った。その音路が途中、実央に話しかけてきた。
「宮野くんと歳、離れてそうだけどいくつ?」
「え? あ、十九」
「ああ、だからお酒、飲んでないんだ」
「うん」
何気に貴を見れば他の二人と話している。どうやら仕事関連が似ているのか同じなのか、何やら実央のわからないことでどうこう言っているようだ。
「宮野くんが気になる?」
「そ、りゃ俺の知り合い、貴くんだけだから」
「ああ、そうか。そうだよね。でも今から知り合いになれば問題なくない?」
「え?」
音路は首を傾げながら「ね?」と笑いかけてくる。悪い人ではなさそうだが、何だか独特な雰囲気のある人だなと実央はそっと思った。
「ま、ぁ」
何が問題なくないのかわからないし、貴からは「佐武とか佐武の友人たちとあんまり仲良く話しちゃ駄目」と言われている。できればあまり話したくないが、貴の友人兼同僚である恵吾の知人に対してあまりどうかと思えるような態度を取るわけにもいかない。困惑しつつ、実央は渋々そっと頷いた。
「戸惑ってる感じ、かわいいね」
ニコリと笑みを見せてきながら言われ、あまりどうかと思えるような態度を取る訳にもいかないと思ったはずの実央はだがじろりと音路を睨んだ。
「あれ? かわいいって言われるの、嫌?」
「嬉しいわけねーじゃん」
「そう? いいことじゃない」
「……何で」
「だって見た目や中身を評価しての言葉じゃない。何が駄目?」
評価?
「……馬鹿にしてる感じある」
「まさか。いや、まあ中にはそういう人もいるのかもだけど、普通は褒め言葉だよ」
「ほんと?」
「うん」
実際大人であろう、大人っぽい雰囲気の人にさらりと言われるとそんな気がしてきた。確かにあえて口にされる場合よく女から言われる気がするのだが、相手を見ていると悪気はなさそうに見える。かわいいイコールがどういう感情で口にしているのかも人それぞれといったところなのだろうか。
……少なくとも貴くんは本当に俺をかわいいって思ってくれてて愛しいって感じ、すごく出してくれるもんな……だから俺も貴くんに言われるのは好き。貴くんが好きだからってのもあるけど……。
「だからかわいいって俺が言ったらそのまま褒め言葉として受け止めて欲しいな」
「……うん。……ありがとう」
一応礼を言えば、音路はさらにニコニコと笑顔を見せてきた。
「ほんとかわいい。ね、……えっと、岬くんだっけ」
「うん」
「俺ともっと仲よくしてくれるかな」
テーブルに片手で頬杖をつきながら微笑んでくる音路を、実央は怪訝な顔で見た。多分少なくとも貴と年齢は近いだろう。ということは実央と六歳前後離れているはずだ。そんな年下の学生と何故仲よくしたいと思えるのか不思議でならない。
「……ま、え浜さんは」
「ネロ」
「え?」
「ネロって呼んで」
いや、無理じゃね?
実央はますます怪訝な、というより微妙な顔になる。何故六歳前後上であろう、元々知り合いでもない人を名前で、しかも呼び捨てできると思えるのか。
「どうかした?」
「……名前呼び捨てとか無理っす」
「何で?」
「何でって……」
「名前が嬉しいな」
「……じゃあ、ネロさんで」
「せめてくんがいい」
意外に煩いな。
「ネロくん」
「うん」
「……。……その、えっとネロくんは俺よりだいぶ上だろ。なのに何で仲よくなりてーの? 俺学生だし話だって多分合わねーでしょ」
「だって岬くんかわいいから」
「は?」
「それに今こうして普通に喋ってるじゃない。別に話、合わなくないでしょ」
「いや……」
反論しかけると「宮野くんとはただの幼馴染じゃないよね」と言われた。思わず目を見開きながら音路を見ると「目、おっこちそうだね」と笑われる。
「な、に言って、んのか」
「……ああ、大丈夫。安心して」
音路は実央に近づくと耳打ちしてきた。
「俺、バイだからそういうの、むしろ平気というか、歓迎なくらいだからね」
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