14 / 20
14話
しおりを挟む
着替える前にふと携帯を見れば、音路が何か送ってきていることに気づく。とてつもなく微妙な顔で通知を見ていると佑二が「おかしな顔してどうした」と覗き込んできた。
「おかしな顔とか失礼」
「じゃあ俺もかわいい顔、とか言えばいい?」
「言ったら殴る」
「何でだよ」
「いいから向こう行ってろ。着替えんだよ」
「何だよー」
佑二を追いやると、実央は実際着替え出した。白い道着だ。体育の選択授業で実央は空手を選択している。大学生になってまで体育があるとは思っていなかった。人気あるものはすぐに埋まるが、空手は人気があまりないのか楽に取れた。まだ柔道のほうが人気があるようだ。佑二が言うには「柔道は高校の授業でもあるけど空手は元々やってねーとわかんねーだろ」らしい。最近は中学で空手が授業にある学校というのも聞いたりするが実央のところでも高校で柔道を習うくらいだった。だが確かに実央は子どもの頃からやっていたのもあってこうして選択している。とはいえ緑帯になった頃くらいからあまり通わなくなり、今はもうやっていない。嫌になったとかではないが当時は受験や貴のことでいっぱいになったからだろうか。
授業は立ち方から学ぶが、実央のように経験者は違う練習をする。ちなみに一番最初に教えてもらう結び立ちや八字立ちでは、つま先を外側へ向けて重心は体の中心になるよう立つ。これは空手をしなくても日常生活でも心がけておいて損はないと実央は思っている。自然と姿勢はよくなるし体にもいい。女性ならダイエットにも向いている。
授業ではノンコンタクト空手をやっているようだ。伝統空手と言われている直接打撃を避けた寸止め空手だ。実央が習いに行っていた空手は極真空手から広まったフルコンタクト空手だったので少々勝手は違う。
授業を終えてまた着替えていると、一緒に授業を受けていた他の男子から「何であんなに足上がんの」と言われた。壁に片手の平だけでささえて反対側の手で同じ側の上げた足先を持つY字バランスや上段蹴りの練習でのことを言っているのだろう。
「何でって言われても」
「ピキってなんねーの?」
「まあ」
「すげーな。今ここでもっかいやってよ」
「やだよ」
「頼むよ、見たい。つか上段蹴りとか俺よくわかんねーんだわ」
「……はぁ。じゃあゆっくりやるから」
右手をこめかみあたりに当て、軸足のかかとを180度回転させつま先を後ろへ向けて片足で立ち、上げた蹴り足の右足は一旦曲げてかかとを尻につけるようにしてから思い切り足首を伸ばして上げる。その際は体幹で蹴り足を支えている。それからまた同じ軌道で足を引きつけ母指球を軸に戻す。
「わかった?」
「お前がやってんの見ると簡単そうに見えんだけどな」
「股関節鍛えろ」
「無理」
「じゃあ諦めろ」
「ええ」
着替え終えてから実央は食堂へ向かった。体育の後はどうしたって腹が減る。その際に渋々携帯を見た。無視したままでいようかと思ったが、それでしつこく送られてきても困るなと思ったのだ。
『ネロくんだよ、覚えてる?』
初っ端からうざい。
微妙な顔をして、既読無視しようかと思っていると『既読スルーだめ』と送られてきた。やはりうざい。
『せっかく気持ちのいいエッチ教えてあげようと思ったのに』
こいつ昼間っから何言ってんだ?
そう思いながらも無視できなくなったのは欲望盛りの性少年だから仕方がない。ふと気になって実央は『やっぱ尻の穴鍛えて柔らかくしてからするもんなの』とストレートに聞いてみた。佑二には聞けないことも、この阿保みたいなチャラそうなバイ男なら聞ける気がした。
『そりゃ柔らかいほうがいいけど鍛えるって何』
『うるせぇ。聞いたこと答えて』
『実央くん、SNSのが偉そうで笑えた。まあ鍛えられんならそのほうが楽なんじゃない。知らないけど』
知らねえのかよ……。
『体柔らかいほうがいいとか、そういうのないの?』
『柔らかいほうが楽しいよね』
『あんた何言ってんの?』
『実央くんこそ何言ってんだかって感じだけど。実央くんは体、柔らかいの?』
『空手やってたから多分。足もめっちゃ上がるし股関節とか柔らかいと思う』
『何それエッチだな。やっぱ一回やってみたいなあ』
『もう絶対連絡してくんな』
携帯電話の画面に思い切りムッとした顔をして、実央は鞄の中にしまった。画面の向こうで楽しげに笑っている音路の顔が浮かぶ。何度か通知音が聞こえてきたが無視をした。後でそっと見ると『貴くんが実央くんかわいいあまり大事にしてるって感じでしょ』『慣らしてくのはいいことだと思うよ』『貴くんに任せたらいいんじゃない』『やったら教えてね。その時こそ気持ちいいやりかた教えたげるよ。あと俺とする気になっても教えて』などと来ていた。
隠していて後でバレた時のことを思うと絶対耐えられないと思った実央は夜、貴が帰ってきてから正直に打ち明けて携帯電話でのメッセージを見せた。
「みぃは偉いね、正直に言ってくれて嬉しいしかわいい」
そう言って褒めてくれた貴だが、その後ベッドでは「でも少しお仕置きね」と笑顔で言われ、何度も絶頂させられて死にそうになった。
「おかしな顔とか失礼」
「じゃあ俺もかわいい顔、とか言えばいい?」
「言ったら殴る」
「何でだよ」
「いいから向こう行ってろ。着替えんだよ」
「何だよー」
佑二を追いやると、実央は実際着替え出した。白い道着だ。体育の選択授業で実央は空手を選択している。大学生になってまで体育があるとは思っていなかった。人気あるものはすぐに埋まるが、空手は人気があまりないのか楽に取れた。まだ柔道のほうが人気があるようだ。佑二が言うには「柔道は高校の授業でもあるけど空手は元々やってねーとわかんねーだろ」らしい。最近は中学で空手が授業にある学校というのも聞いたりするが実央のところでも高校で柔道を習うくらいだった。だが確かに実央は子どもの頃からやっていたのもあってこうして選択している。とはいえ緑帯になった頃くらいからあまり通わなくなり、今はもうやっていない。嫌になったとかではないが当時は受験や貴のことでいっぱいになったからだろうか。
授業は立ち方から学ぶが、実央のように経験者は違う練習をする。ちなみに一番最初に教えてもらう結び立ちや八字立ちでは、つま先を外側へ向けて重心は体の中心になるよう立つ。これは空手をしなくても日常生活でも心がけておいて損はないと実央は思っている。自然と姿勢はよくなるし体にもいい。女性ならダイエットにも向いている。
授業ではノンコンタクト空手をやっているようだ。伝統空手と言われている直接打撃を避けた寸止め空手だ。実央が習いに行っていた空手は極真空手から広まったフルコンタクト空手だったので少々勝手は違う。
授業を終えてまた着替えていると、一緒に授業を受けていた他の男子から「何であんなに足上がんの」と言われた。壁に片手の平だけでささえて反対側の手で同じ側の上げた足先を持つY字バランスや上段蹴りの練習でのことを言っているのだろう。
「何でって言われても」
「ピキってなんねーの?」
「まあ」
「すげーな。今ここでもっかいやってよ」
「やだよ」
「頼むよ、見たい。つか上段蹴りとか俺よくわかんねーんだわ」
「……はぁ。じゃあゆっくりやるから」
右手をこめかみあたりに当て、軸足のかかとを180度回転させつま先を後ろへ向けて片足で立ち、上げた蹴り足の右足は一旦曲げてかかとを尻につけるようにしてから思い切り足首を伸ばして上げる。その際は体幹で蹴り足を支えている。それからまた同じ軌道で足を引きつけ母指球を軸に戻す。
「わかった?」
「お前がやってんの見ると簡単そうに見えんだけどな」
「股関節鍛えろ」
「無理」
「じゃあ諦めろ」
「ええ」
着替え終えてから実央は食堂へ向かった。体育の後はどうしたって腹が減る。その際に渋々携帯を見た。無視したままでいようかと思ったが、それでしつこく送られてきても困るなと思ったのだ。
『ネロくんだよ、覚えてる?』
初っ端からうざい。
微妙な顔をして、既読無視しようかと思っていると『既読スルーだめ』と送られてきた。やはりうざい。
『せっかく気持ちのいいエッチ教えてあげようと思ったのに』
こいつ昼間っから何言ってんだ?
そう思いながらも無視できなくなったのは欲望盛りの性少年だから仕方がない。ふと気になって実央は『やっぱ尻の穴鍛えて柔らかくしてからするもんなの』とストレートに聞いてみた。佑二には聞けないことも、この阿保みたいなチャラそうなバイ男なら聞ける気がした。
『そりゃ柔らかいほうがいいけど鍛えるって何』
『うるせぇ。聞いたこと答えて』
『実央くん、SNSのが偉そうで笑えた。まあ鍛えられんならそのほうが楽なんじゃない。知らないけど』
知らねえのかよ……。
『体柔らかいほうがいいとか、そういうのないの?』
『柔らかいほうが楽しいよね』
『あんた何言ってんの?』
『実央くんこそ何言ってんだかって感じだけど。実央くんは体、柔らかいの?』
『空手やってたから多分。足もめっちゃ上がるし股関節とか柔らかいと思う』
『何それエッチだな。やっぱ一回やってみたいなあ』
『もう絶対連絡してくんな』
携帯電話の画面に思い切りムッとした顔をして、実央は鞄の中にしまった。画面の向こうで楽しげに笑っている音路の顔が浮かぶ。何度か通知音が聞こえてきたが無視をした。後でそっと見ると『貴くんが実央くんかわいいあまり大事にしてるって感じでしょ』『慣らしてくのはいいことだと思うよ』『貴くんに任せたらいいんじゃない』『やったら教えてね。その時こそ気持ちいいやりかた教えたげるよ。あと俺とする気になっても教えて』などと来ていた。
隠していて後でバレた時のことを思うと絶対耐えられないと思った実央は夜、貴が帰ってきてから正直に打ち明けて携帯電話でのメッセージを見せた。
「みぃは偉いね、正直に言ってくれて嬉しいしかわいい」
そう言って褒めてくれた貴だが、その後ベッドでは「でも少しお仕置きね」と笑顔で言われ、何度も絶頂させられて死にそうになった。
0
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
雪色のラブレター
hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。
そばにいられればいい。
想いは口にすることなく消えるはずだった。
高校卒業まであと三か月。
幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。
そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。
そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。
翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
【完結】トラウマ眼鏡系男子は幼馴染み王子に恋をする
獏乃みゆ
BL
黒髪メガネの地味な男子高校生・青山優李(あおやま ゆうり)。
小学生の頃、外見を理由にいじめられた彼は、顔を隠すように黒縁メガネをかけるようになった。
そんな優李を救ってくれたのは、幼馴染の遠野悠斗(とおの はると)。
優李は彼に恋をした。けれど、悠斗は同性で、その上誰もが振り返るほどの美貌の持ち主――手の届かない存在だった。
それでも傍にいたいと願う優李は自分の想いを絶対に隠し通そうと心に誓う。
一方、悠斗も密やかな想いをを秘めたまま優李を見つめ続ける。
一見穏やかな日常の裏で、二人の想いは静かにすれ違い始める。
やがて優李の前に、過去の“痛み”が再び姿を現す。
友情と恋の境界で揺れる二人が、すれ違いの果てに見つける答えとは。
――トラウマを抱えた少年と、彼を救った“王子”の救済と成長の物語。
─────────
両片想い幼馴染男子高校生の物語です。
個人的に、癖のあるキャラクターが好きなので、二人とも読み始めと印象が変化します。ご注意ください。
※主人公はメガネキャラですが、純粋に視力が悪くてメガネ着用というわけではないので、メガネ属性好きで読み始められる方はご注意ください。
※悠斗くん、穏やかで優しげな王子様キャラですが、途中で印象が変わる場合がありますので、キラキラ王子様がお好きな方はご注意ください。
─────
※ムーンライトノベルズにて連載していたものを加筆修正したものになります。
部分的に表現などが異なりますが、大筋のストーリーに変更はありません。
おそらく、より読みやすくなっているかと思います。
隣の番は、俺だけを見ている
雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。
ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。
執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。
【キャラクター設定】
■主人公(受け)
名前:湊(みなと)
属性:Ω(オメガ)
年齢:17歳
性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。
特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。
■相手(攻め)
名前:律(りつ)
属性:α(アルファ)
年齢:18歳
性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。
特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる