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31話
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ある意味梓のことで学校を休むことになったとも言えるが、灯は戸惑っていた。休んだ翌日に学校へ行けば、早速柊に腕をつかまれて廊下の端まで連れていかれ、「梓に何かされたとかで休んだんじゃないだろうな」と真剣な顔で聞かれる。
「え……」
昨日は大人しく家で休んでいると柊から「大丈夫なのか」と連絡が入っていたが「大丈夫だよ」と返すと特にそれ以上突っ込んではこなかった。
「嫌なこととか変なこととか無理やりなんかされたとかじゃないだろーな?」
「っちょ、あの……」
思わず顔が熱くなる。別に嫌なことは何もされていない。だが灯としては反応に困る。
変なことというか無理やりというか、何というか。
梓に好きだと言われてキスされたことがまた頭に過り、どんどん顔が熱くなっていく。
「何っだよその顔っ? っちょ、おま、マジ何かされ……っ」
その顔と言われても灯は今自分がどんな顔をしているかわからない。ただ少なくともこれほど顔が熱いなら赤くはなっているのだろうなと思う。半面、柊は青くなりながら何とも微妙な顔で灯にかぶりついてきた。とてつもなく顔が近くて、ついまた梓にキスされたことを鮮明に思い出した。
「ちょ、顔が近い……! あと嫌なこととか変なことされて休んだとか、そういうんじゃないから……!」
必死になって灯が言えば、近いと言われたからか柊が慌てて灯から離れ、何故か顔を逸らしてくる。
「シュウ? ごめん、嫌な言い方になった?」
「……いや、違う。あれだ、後遺症みたいなもん……」
「何の……?」
「気にすんな。とりあえず、嫌なことはされてねーんだな?」
「う、うん」
柊がまた目を合わせてきて再確認してきた。また少し顔が熱くなるが頷くと微妙な顔をされた。
「……まぁ、いい」
「何かよくわからないけど心配してくれたってこと、なん、だよな? お母さんやアズさんに連絡とってくれたりとかも……ほんと沢山ありがとう、シュウ」
「あず……? つか別に礼とかいらねーぞ。……その、それで梓とは何だ、その、仲直りみたいなのはしたのか?」
何故か柊が言いにくそうにしているため、もしかして梓から告白のことやキスのことを聞かされているのだろうかと灯はまた顔が熱くなった。だがすぐに「いや、それだと先ほどのような心配や今のような質問はしないか」と思い直す。
「……アズさんからは何も聞いてない?」
「あいつ? 聞いてねーよ。つか一昨日は顔合わせてねーし、昨日も朝飯の時くらいしか見てねーし今朝は会ってもねーよ」
「そうなの?」
「昨日は夜、バイトだったっぽい」
「あ、ああそうか。俺、昨日もバイト休んだから……迷惑かけちゃったかな、アズさんだけじゃなく皆に……」
それを思うと落ち込みそうになる。
「ま、待て。んなわけねーだろ! 仕方ないことだし、つか普段お前が頑張ってんのきっと皆知ってるだろし……ってゆーか質問に質問で返してくんな」
「っありがとう、シュウ。あとごめん……。その、仲直り……みたいなのは、うん、した、と思う」
「……」
何となく言いにくいと思っていると、柊が黙ったままジッと見てくる。何だろうと思い、灯も見返すとため息つかれた。
「え、何」
「いや。そんだけ?」
「っえ?」
それだけ、とは。やはり何か聞いて知っているのだろうかとまた過ったが、柊を見ているとどうにもそういう風にも思えない。
これは報告すべきなのだろうか。こういった経験が圧倒的に少なすぎて、灯としてはどうすればいいのかわからない。だが柊は灯の親友であり、それも梓の弟だ。黙っているよりは言うべきなのだろうかという気がしてきた。梓がまだ何も柊に言っていないのは顔をちゃんと合わせていないからだろう。
だがもし梓がキスをしたことなどを柊に言っていたらと想像してみると、とてつもなく落ち着かない。嫌な気分というわけではないのだが、落ち着かない。やはり言うものではないのだろうか。いやでも心配してくれている柊を思えばちゃんとあったことを言うべきなのだろうか。
「おい、何でそんな混乱したような顔してんだよ……」
ぐるぐる考えていると柊が微妙な顔を向けてきた。
「いや、何か色々考えて……」
「考える?」
いつも本当に心配してくれている柊だ。そして何だかんだ言って梓のことが多分大好きな柊だ。ここはやはり報告しておこう、と正解がわからないまま灯は一旦閉じた口を開いた。
「あの、俺、アズさんにキスされ――」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ? あんのクッソ野郎……やっぱ何もしてねーわけねぇ……っ……いや最初に心配してたやつよりはマシ……? いやでもクソ、手ぇ早すぎかよ……?」
言いかけると途中で柊が叫んできた。そのせいで途中から何を言っていたのかよくわからないまま灯は二歩程後退さり、言わないほうがよかったのだろうかと心臓をドキドキさせる。それに気づいた柊が何とも言えないような表情で「あ、いや……デカイ声出して悪い」と謝ってきた。
「それは別にいいよ……驚いたけど……。あの、さ……シュウ」
「ん? 何?」
呼びかけると柊が食い気味で反応してきた。ここへ連れて来られてからどうにも柊の様子が変な気がすると思いつつ灯は続けた。
「俺、こういうのよくわからなくて……でもアズさんは何も悪くないからな? アズさんと喧嘩とか……」
「……喧嘩、しねーから……多分?」
「多分って何!」
「それはどうでもいーから。とりあえずお前はされて、どーだったんだよ。……その、キス……」
言いにくそうに言われ、言いにくいならいっそ聞かないでと灯はひたすら思った。この会話は続けないといけないのだろうか。
「……その、さ……、とりあえず寒いし、その、教室へ戻らないか?」
校内とはいえ、さすがに廊下は暖かくない。……という理由を見つけた。
「そ、そうだな。そもそもお前、昨日休んでたしな……悪かった」
「ううん! あの、な。……何かよくわからないけど心配してくれてありがとう、シュウ」
それに関しては本当に嬉しく思い、笑いかけると柊がまた何とも言えないような表情をしてきた。
「え……」
昨日は大人しく家で休んでいると柊から「大丈夫なのか」と連絡が入っていたが「大丈夫だよ」と返すと特にそれ以上突っ込んではこなかった。
「嫌なこととか変なこととか無理やりなんかされたとかじゃないだろーな?」
「っちょ、あの……」
思わず顔が熱くなる。別に嫌なことは何もされていない。だが灯としては反応に困る。
変なことというか無理やりというか、何というか。
梓に好きだと言われてキスされたことがまた頭に過り、どんどん顔が熱くなっていく。
「何っだよその顔っ? っちょ、おま、マジ何かされ……っ」
その顔と言われても灯は今自分がどんな顔をしているかわからない。ただ少なくともこれほど顔が熱いなら赤くはなっているのだろうなと思う。半面、柊は青くなりながら何とも微妙な顔で灯にかぶりついてきた。とてつもなく顔が近くて、ついまた梓にキスされたことを鮮明に思い出した。
「ちょ、顔が近い……! あと嫌なこととか変なことされて休んだとか、そういうんじゃないから……!」
必死になって灯が言えば、近いと言われたからか柊が慌てて灯から離れ、何故か顔を逸らしてくる。
「シュウ? ごめん、嫌な言い方になった?」
「……いや、違う。あれだ、後遺症みたいなもん……」
「何の……?」
「気にすんな。とりあえず、嫌なことはされてねーんだな?」
「う、うん」
柊がまた目を合わせてきて再確認してきた。また少し顔が熱くなるが頷くと微妙な顔をされた。
「……まぁ、いい」
「何かよくわからないけど心配してくれたってこと、なん、だよな? お母さんやアズさんに連絡とってくれたりとかも……ほんと沢山ありがとう、シュウ」
「あず……? つか別に礼とかいらねーぞ。……その、それで梓とは何だ、その、仲直りみたいなのはしたのか?」
何故か柊が言いにくそうにしているため、もしかして梓から告白のことやキスのことを聞かされているのだろうかと灯はまた顔が熱くなった。だがすぐに「いや、それだと先ほどのような心配や今のような質問はしないか」と思い直す。
「……アズさんからは何も聞いてない?」
「あいつ? 聞いてねーよ。つか一昨日は顔合わせてねーし、昨日も朝飯の時くらいしか見てねーし今朝は会ってもねーよ」
「そうなの?」
「昨日は夜、バイトだったっぽい」
「あ、ああそうか。俺、昨日もバイト休んだから……迷惑かけちゃったかな、アズさんだけじゃなく皆に……」
それを思うと落ち込みそうになる。
「ま、待て。んなわけねーだろ! 仕方ないことだし、つか普段お前が頑張ってんのきっと皆知ってるだろし……ってゆーか質問に質問で返してくんな」
「っありがとう、シュウ。あとごめん……。その、仲直り……みたいなのは、うん、した、と思う」
「……」
何となく言いにくいと思っていると、柊が黙ったままジッと見てくる。何だろうと思い、灯も見返すとため息つかれた。
「え、何」
「いや。そんだけ?」
「っえ?」
それだけ、とは。やはり何か聞いて知っているのだろうかとまた過ったが、柊を見ているとどうにもそういう風にも思えない。
これは報告すべきなのだろうか。こういった経験が圧倒的に少なすぎて、灯としてはどうすればいいのかわからない。だが柊は灯の親友であり、それも梓の弟だ。黙っているよりは言うべきなのだろうかという気がしてきた。梓がまだ何も柊に言っていないのは顔をちゃんと合わせていないからだろう。
だがもし梓がキスをしたことなどを柊に言っていたらと想像してみると、とてつもなく落ち着かない。嫌な気分というわけではないのだが、落ち着かない。やはり言うものではないのだろうか。いやでも心配してくれている柊を思えばちゃんとあったことを言うべきなのだろうか。
「おい、何でそんな混乱したような顔してんだよ……」
ぐるぐる考えていると柊が微妙な顔を向けてきた。
「いや、何か色々考えて……」
「考える?」
いつも本当に心配してくれている柊だ。そして何だかんだ言って梓のことが多分大好きな柊だ。ここはやはり報告しておこう、と正解がわからないまま灯は一旦閉じた口を開いた。
「あの、俺、アズさんにキスされ――」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ? あんのクッソ野郎……やっぱ何もしてねーわけねぇ……っ……いや最初に心配してたやつよりはマシ……? いやでもクソ、手ぇ早すぎかよ……?」
言いかけると途中で柊が叫んできた。そのせいで途中から何を言っていたのかよくわからないまま灯は二歩程後退さり、言わないほうがよかったのだろうかと心臓をドキドキさせる。それに気づいた柊が何とも言えないような表情で「あ、いや……デカイ声出して悪い」と謝ってきた。
「それは別にいいよ……驚いたけど……。あの、さ……シュウ」
「ん? 何?」
呼びかけると柊が食い気味で反応してきた。ここへ連れて来られてからどうにも柊の様子が変な気がすると思いつつ灯は続けた。
「俺、こういうのよくわからなくて……でもアズさんは何も悪くないからな? アズさんと喧嘩とか……」
「……喧嘩、しねーから……多分?」
「多分って何!」
「それはどうでもいーから。とりあえずお前はされて、どーだったんだよ。……その、キス……」
言いにくそうに言われ、言いにくいならいっそ聞かないでと灯はひたすら思った。この会話は続けないといけないのだろうか。
「……その、さ……、とりあえず寒いし、その、教室へ戻らないか?」
校内とはいえ、さすがに廊下は暖かくない。……という理由を見つけた。
「そ、そうだな。そもそもお前、昨日休んでたしな……悪かった」
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