ラインの向こう側

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20話 ※(終)

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 まさか自分がつい今朝まで自分の生徒だった相手の口の中で達するとは、と衛二はとてつもなく居たたまれない思いに駆られた。

「わ、悪い……、た、確かポケットティッシュ持ってたから、それにぺってし――」
「え、もう飲んだけど」

 吐き出すように言いかけたところで、生智はポカンとした様子で衛二を見てきた。

「は?」
「記念だしそりゃ飲むだろ」
「何の記念……っ? だ、大丈夫か……?」
「そりゃ大丈夫に決まってるだろ。自分のせーえきに毒でも入ってるとか思ってんの」
「そういう意味じゃ……」
「つか、今、ぺってしろって言いかけた」

 生智がニッコリと衛二を見てくる。それがどうしたのかと怪訝な顔で衛二は見返した。

「何それかわいい。衛二、大人のくせになんだよ、ほんとやべーわ」

 嬉しそうに言ってくる生智の方が衛二からしたらかわいく思えた。少し胸がきゅっとなる。
 思わず微笑むと、生智がまた体を起こしていた衛二を押し倒してきた。

「せ、い条……?」
「わかってる? 俺、まだ拷問状態なんだって」

 かわいらしく笑っていたはずの生智が、顔をまた赤らめ、息を荒げてきた。

「我慢し過ぎた。ごめん、優しくするつもりだったけど、できるか自信、ない……」

 ズボンをずらし、荒い息で避妊具を付けていた生智は、ローションをその高ぶって思い切り上に向いている自身へ垂らすと手で少し擦っている。かなり高ぶったそれを目の当たりにすると同時にくちゅくちゅと音が聞こえてきて、達して収まったはずの衛二の奥がズクリと疼いた。
 そのローションを生智はまた衛二の中に今度は直接注入してくる。

「エロ……、なんか溢れ出てきた……」
「お、前な……」
「入れる、な?」

 囁いたかと思うと、生智は衛二の片足の膝裏をつかみ、思い切り掲げるようにしてきた。そして空いた手で自分のものをつかみ、衛二の中にゆっくりと埋めてくる。

「は、ぁ……っ」

 先ほど散々指で慣らされていたはずのそこは、だがまだそれを受け入れるのには慣れておらず、あまりの圧迫感に息が詰まった。
 痛みは初めて無理やりされた時に比べるとかなりましではあるが、それでも引き攣れ裂かれるような痛みが走る。

「ごめん、衛二……痛い? ごめんな? でも止められ、ねぇ……っ」

 はぁ、っと熱い息を吐きながら、生智が苦しげに言ってくる。衛二は何とか笑みを浮かべた。

「だい、じょうぶだ。あまり激しくは、無理だけど、なるべく優しくしながらだったら、続けて、いい……」
「っく」

 衛二の中で何故か生智のものがさらに大きくなるのがわかった。息を飲んだ後、できる限り深く息を吐く。

「ん、中、気持ちいい……、ほんとヤバイ……好き、好きだよ……」

 生智はまるでうわごとのように呟きながら、一旦奥までゆっくり進めてきた後にゆるゆると律動を始めた。たっぷりとローションを含まされていたせいで、生智が動くたびにじゅぷじゅぷと卑猥な音が聞こえてくる。
 痛みが少しずつ慣れてくると、今度は微かだがじんわりとした疼きへと変わってきた。

「は、ん……、んぁ……っ」
「エロいよ……かわいくてエロくて、俺、どーしたら、も、マジ無理。先生……先生っ」

 名前で呼んでいたはずなのに、夢中になっているからかいつの間にか途中からは慣れた「先生」に変わっていた。行為中に「先生」と呼ばれることの背徳感と淫靡さに、衛二はむしろますます自分の中の疼きが酷くなる。

「っん、んん、っぁ、あ……は、ぁっ」

 おまけに先ほど探り当てられた弱い部分を擦るようにして何度も突き上げられ、とうとうはっきりとした快楽を感じた。

「好きだよ、めちゃくちゃ好き。大事にする。先生、衛二、もう全部、俺の……っ」

 生智は夢中になり、激しさを増してきた。だが衛二もその激しさに合わせ、体の全てが反応していく。

「正条……、正条……、ぁ、ああっ、あっ」
「名前、名前呼んで……っ」
「い、ち……、生智……っ、も、だ、め……っ」
「衛二……っ」

 ビクン、と激しい痙攣にも似た刺激が衛二の中を駆け抜けた。頭の中に閃光が走る。堪えられず思い切り二度目の射精をしていると、衛二の中で生智が戦慄くのを感じた。その後、生智がぎゅっと衛二を抱きしめてくる。
 自分の中で生智が達したのだと思うと前とは違い、何故か泣きたいほどの切なさと甘さを感じ、そして愛おしさに顔は自然と綻んだ。



 衛二が待ち合わせ場所に向かうといつものように既に生智が先に来ていて、何かを飲んでいる。苦手な飲み物がないと前に言っていたように、生智はいつも気まぐれにその時の気分で選んでいるようで、毎回飲んでいるものは違う。コーヒー一つとっても、ほろ苦いエスプレッソのブラックから、衛二からすれば歯が抜け落ちそうなほど甘い生クリームまみれのラテまで様々だ。
 今日は何を飲んでいるのだろうなと思いながら近づこうとすると、その前に生智が高校三年生の時にクラスメイトだった、恐らく生智とかなり仲がいい将が現れ、生智に気づいた。
 もちろん衛二も副担任を当時していたからよく知っている。
 衛二と生智が付き合っていることは多くの者が知らないだろう。基一に関しては、いつから気づいていたのか知らないが御膳立てまでされたくらいだ。当然知っており、今でも時折からかわれる。
 ただ、将も知っているらしい。昔からの親友であり、将には知ってもらいたかったという生智に文句はない。ないが、どうにも顔を合わせ辛いのは仕方がない。
 今も衛二はそばまで来ていたが、二人ともが衛二に気づいていないのをいいことに近くのソファー慌てて座り、様子を窺った。

「いっちゃんじゃねーの。久しぶり! 今度遊ぼーよ」
「たも。相変わらずチャラそうだな」
「一言余計なんだよ……! いっちゃんは髪も黒くなってなんつーか、ムカつくけどカッコよくなったな」
「何でムカつくんだよ」

 二人が話している声が聞こえてきて、まるでこっそり盗み聞きしている状態となってしまった。かといって今さら出にくいため、衛二は身じろぎすらせず留まる。はたから見たらかなり不審者だろう。

「かわいい子も綺麗な子もいっちゃんに目がいくだろ。肝心のいっちゃんは女に興味ねぇってのに。勿体ない話過ぎてさー」
「んだそれ。つか別に女に興味ない訳じゃない」
「あれ? マジ? 英賀谷と別れたの?」
「はぁ? んな訳ねーだろ、あんな何もかも最高の人、絶対別れねーっつの。女を鑑賞するにはいいってだけ。別に俺、男が好きな訳じゃねー」
「うわー……」

 うわーという将の声に、衛二も同意しかない。よくもまあ相変わらず恥ずかしげもなく言い放つ、と衛二は自分の顔がとてつもなく熱くなるのを感じた。

「まあ、観賞にはいいよな。特に巨乳なら尚よし」
「お前の彼女、デカイもんな……」
「何その微妙な顔。いっちゃんだってデカイ方がいいだろ?」
「俺? 俺は貧乳でいい」
「ええっ? 何で。見て楽しむだけじゃなくあの感触とか思えばデカイ方がいいじゃん」

 何の話をこんなカフェでしているんだ、と衛二は微妙な顔になる。すると生智も呆れたように「こんなとこで何の話してんだよ」と言い出した。お? と衛二が感心しかけるとだがその後にろくでもないことを言いだす。

「ねぇほうがいいぞ。筋肉に引き締まってすべすべしてんのに、すげぇ敏感でさ、無駄なもんがない分、何つーか余計エロ――」
「ほんっとに何の話をしてるんだ……!」

 気づけば思わず立ち上がり、二人の前で突っ込んでいた。二人はポカンとした顔で衛二を見てくる。しまった、と思ったが後の祭りだった。
 将はおろおろとした後に「あ、えっと、じゃあいっちゃん、また連絡する! えっと、英賀谷先生、ま、またね!」と一応断りを入れてから立ち去っていった。生智はポカンとした後でニヤリと笑ってくる。

「品行方正な先生が立ち聞き?」
「た、たまたまだ! というかなんで俺がバツの悪い思いしなくちゃなんだ。普通この場合恥じ入るのはお前だろ……」
「え? 俺? 別に恥ずかしいこと何も言ってないけど」

 生智は演技でも何でもなく、きょとんとしている。

「全く……正条、お前なー」
「つか、今日はさっぱりブラックレギュラーかなって思って飲んでたら、実は甘いもんの気分だったみたい。口の中にげぇ」
「じゃあ頼みなおせば……」
「映画、行く約束だったけど諦めてよ衛二」
「は?」
「衛二で口直し、したい。甘いやつ、衛二で味わわせて」

 周りに聞こえないよう、そっと生智は衛二の耳元で囁いてきた。
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