たまらなく甘いキミ

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 それ以来、旭日とはちょくちょく顔を合わせているし、一緒に昼ご飯を食べたりお茶を飲んだりしている。先輩、後輩だけに講義が重なることは全くないというのに、ばったり会うのが立て続けすぎて、偶然がすごい。

「偶然なわけないだろ」

 拓と会っている時に何気に言えば、即否定された。

「でも、じゃあ何でだよ」
「そいつがお前に会いに来てるからだろ」
「……いや、それはない」
「何で」
「だって考えてもみろよ。俺、いっこ下だぞ。おまけに何も秀でてるものない、平凡な男子学生なんだけど。会いに来る必要ある?」
「自分分析がしっかりしてんな」
「うるせえ。自分で言うのはいいけど人に言われると、こういうのはムカつくもんなんだよ。とにかく、結崎さんがわざわざ俺に会うためにやって来る理由、ないだろ」

 一瞬、結弦が触れた手を舐めていた気がしたことを思い出す。しかも結弦はその時気づかなかったが、少しだけ怪我していて出血していた。それを指摘してきた拓に「前も手のひら怪我したんだよな」と言われて、結びついていなかった似た状況を実感したことも思い出す。

 ……まさか似た状況……二度あることは三度あるって言うし……?

「ゲイ、とか」

 いや、少なくともそれはお前では?

「それはお前では?」

 考えていることが思わずそのまま口に出てしまった。

「は? 俺、ゲイじゃないけど。男に興味ないって言ったと思うけど」

 拓の言葉に、元々言うつもりなかったがこの際だから言ってしまおうと結弦は続けた。

「ゲイじゃない人が何で俺の、平気で扱くの。まあ、お前フォークだしこの際、俺の味わいたいからだと百歩どころか千歩譲って考えたとしても」
「そんなに譲ってくれなくていいぞ」
「うるさい。考えたとしてもだな、何でお前まで立つの。おまけに俺で抜くの」

 この間初めて太もも使って動かれて以来、すでに三回は似たようなことをされている。結弦もはっきり拒否すればいいものを、何だかんだでいつも流されてしまっている自覚はある。
 快楽に弱いのか、必要とされると弱いのか、意思が弱いのか。それとも全部か。

 ……全部かな……そう思いたくはねえけど……。

「そりゃ、なるだろ」
「いや、だから何で」
「っていうか今その話じゃなくて、その男について話してんだよ」
「結崎さん? 別に偶然がすごいって話しただけで、もう話し終えてるけど」

 ことわざはあくまでもことわざで、さすがに二度、三度と立て続いてたまるか。

「お前にわざわざ会いに来る理由云々って話だっただろ」
「いやだから、わざわざ会いにくる理由……うん、まさか、だし……とにかく理由がないってことで終わったんじゃ? ああ、そんでお前がゲイじゃねって話になったんだったな」
「なってない。……お前さ。それこそ何でそんな無防備なの」

 無防備?

 何に対して、何が無防備だというのかさっぱりわからないという気持ちが思い切り顔に出ていたようだ。

「意味わからんって顔すんな」
「だってわからねえだろが。無防備って、何に?」
「その何とか崎に対してもそうだし」
「結崎さんな。結崎さんに対して何をどう防備すんだよ」

 ……フォークかもしれない、とかか? それを警戒しろって言ってんのか?

「狙われてるかもとか思わないの」

 やっぱりフォークかもしれないってこいつも思ってんのか?

「思って、なかった、けど……わかったよ。気をつければいいんだろ」
「ん? 珍しく素直だな」
「俺はいつだって素直だわ。にしても実はフォークってわりといるかもしれないってことだよな」
「……? 何の話だ」
「は? 何のって……今その話してたんじゃないのか?」
「あ?」
「あ、じゃねえ。結崎さんがフォークかもしれないから気をつけろって話だろ?」

 何言ってんだという顔で結弦が拓を見れば、拓も何言ってんだという顔してきた。しかもご丁寧に少しの間の後、片手で目のあたりを覆っている。唖然とした上に呆れている様子までプラスされた気分だ。

「何だよ」
「……珍しく素直かと思ったら全然わかってない」
「はぁ? 何がわかってないって?」
「……もういい」
「何だよ!」
「フォークかもしれない、でもいいってこと。とりあえず会うな」
「でもいいって何。それに会うなって言われても。別に俺が会いに行ってるわけじゃない。偶然会うっつっただろ」
「偶然じゃないって俺は言った。あと、見かけたら逃げろ。フォークかもしれないんだろ」
「そ、……逃げる、のはでもあからさま過ぎない?」
「食われてもいいの?」
「よくねえよ。でも」
「でもじゃない。とにかく、会うな」

 これは何なのか。もしかして自分の獲物が取られるのではといった獣的発想だろうか。フォークはあくまでもフォークであって獣っぽいといった報告は聞いたことないが、食べることに関するだけにもしかしたらそういう野性的な感覚もあるのかもしれない。

「自分の獲物……食料が取られるかもしれない的な?」
「……お前ほんと俺のこと何だと思ってんの?」
「違うのかよ?」
「……はぁ。もういい」
「またそれかよ」
「それでいい。取られるかもだから、近寄るな。会うな。逃げろ。オーケィ?」

 オーケィ、じゃねえわ。

 そう思いつつも、面倒な気分もあって「わかった、わかった」と結弦はとりあえず頷いておいた。
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