恋愛ゲームは続行中

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 幸いというのだろうか、真っ先に気づいてきそうな女子たちからはあり得ないことかもしれないが昌史の「好き」オーラは気づかれていない。特に美恵はBL脳が過ぎてむしろ現実にあり得るわけがないと無意識に思っているのかもしれない。
 あと元々昌史は智也に対し、好意的な態度だったのもあるだろうか。智也にしれみれば普段あまり接することのないタイプだっただけに、後輩ながらによくわからないやつとは思っていたので少し申し訳ない気もするが。
 ただこの「元々好意的な態度」だが、本当に実際好意的だったようだ。この間昌史本人から聞いたが、実は中学生の頃から智也のことを知っていて好きだったらしい。

「え? 俺、お前のこと知らなかったけど……」
「学年違ったし、俺、当時全然話しかけられなくて」

 確かに中学生くらいだと、学年が違えば気軽に話しかけるのも難しかっただろう。

「それもあって余計、俺の気持ち言っちゃった今は後悔ないようたくさん話しかけたりしたくて」

 昌史は少しだけ照れくさそうに、笑いながら言ってきた。

 そんな昔から……。

 驚いたが、やはり嫌悪感などはなく、どちらかと言えば嬉しいと思えた。

 でも嬉しいってのはあれだ、人から好意向けられるのって嬉しいことだしな。

 そんな風に考えたりしていたある日の昼休み、中庭のベンチへ向かっていた智也は、そこに昌史がいることに気づいた。一人ではなく、見かけたことはあるものの名前も知らない男女と楽しげに何やら話している。
 気持ちを口にしてから、智也相手に時折ほんのり重い感情を見せてくるし、嫉妬もしてくるものの、基本的に明るくて親しみやすそうな昌史だ。しかも見た目がかなりいい。当然ながら友人はたくさんいるだろうし、何なら昌史に思いを寄せている人もたくさんいそうだ。わかりきったことじゃないかと思う反面、なぜかモヤモヤする。昌史のことがどうみても恋愛として好きそうな子と二人きりでいたというのならまだしも、友人に対してまでモヤモヤする意味がわからない。

 友だちいないほうが問題ありだろが。っていうかまだしもって何だよまだしもって……第一誰が辻村くんを好きでも、辻村くんが誰と一緒でも別にいいだろが……。

 とりあえず邪魔したら悪いなと、そちらへ向かっていた足を止め、他のところへ行こうとしていると、つい昌史と目が合ってしまった。そのままなかったことにして立ち去ろうとすると、昌史は「篠原先輩!」と駆け寄ってくる。

「友だちといたんじゃ……」
「え? ああはい。でも篠原先輩見つけて飛んできました。今からメシですか? 俺も一緒に食べていい?」
「友だちと食べなくていいのか?」
「はい。俺、先輩と食べたいし」
「そ、そう」

 自分を見つけて飛んできた、自分と食べたい、などと言われて急激にこみ上げてくる嬉しさに、もはや認めざるを得ない。人からの好意は嬉しいものだしなどとごまかしても無駄だった。ただ、さすがに勢いよく「俺もお前が」とは言えなかった。せめていったん寝かせたいというか、落ち着いてもう少し考えたい。
 とはいえ意識したとたん、目の前で嬉しそうに「昨日家帰る途中、散歩中の犬と目が合ってかわいかった」などと話す昌史がかわいくてならない。意識してなかった頃でさえ、だんだん話すようになってからは「このチャラそうなイケメンが案外真面目……」などと比較的好意的に見ていたというのにと微妙な気持ちにさえなる。

 犬と目が合ってかわいい? かわいいのはお前だろ……誰もがうらやみそうなイケメンのくせに何それ。っていうかお前だってわんこだろが。

 それこそ目が合って嬉しそうに駆けつけてきた昌史を思う。そして淡々とした風を装いつつ「かわいいかわいい」などとひたすら思っている自分にますます微妙な気持ちになった。
 家に帰ると制作中のゲームを立ち上げた。もはやテストプレイも終わっていて調整段階ではあるが、智也はそのままキャラクター選択画面を開いた。そして昌史そっくりなイアンを選ぶ。
 前回はノーマルエンドだったため、選択肢を変えて進めていった。すると前回よりさらに甘い言葉をイアンは囁いてくるようになった。好感度が上がるにつれ、ますます接し方も囁き方も甘くなる。
 実際は伸行が手掛けることなかったキャラクター、アンディのほうがギャップ込みで甘いのかもしれない。だが確かにギャップはわかったものの、甘くて居たたまれないと智也が思うのはイアンだった。
 とはいえ二度目のプレイで気づいたが、性格はさほど似ていないのかもしれない。イアンは王道の王子系男子に思える。顔の雰囲気は似ているものの、その辺が異なる。確かに昌史は一見王子系っぽいが、知れば知るほど犬っぽい気がする。
 ふと、とある選択肢を選ぶと、イアンが嬉しそうに笑った。イアンの告白を受け入れるシーンだ。

 あ、でもこの表情は辻村くんっぽい。

 そうしている内に、一回目では見られなかったキスシーンに入った。昌史に似ているイアンが智也に似ている主人公とキスしている。

 ……破壊力……!

 智也は上向きの顔を両手で覆った。昌史がカフェでキスしてきたことも思い出し、結局智也はそのスチルつきシーンを直視できなかった。

 寝かせたい? 落ち着いてもう少し考えたい? 一人でこうしていると「だいぶ好きじゃないか」としかもう考えられないじゃないか……!

 自分はチョロいのだろうかと微妙な気持ちになる。好きと言われたから好きになったのだろうか。それともそれは関係なくいずれ好きだと思っていたのだろうか。そもそも同性だというのにそこは大丈夫なのだろうか。
 何とか冷静になってそう考えてみるものの「でも好きは好きだ」で終わってしまう。
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