恋愛ゲームは続行中

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 結局再確認するだけだった自分の気持ちを完全に自覚すると、改めて昌史を見るたび「智也のことが大好きだ」と全く隠す気なさそうなほど全開な言動が、嬉しくてたまらなくなる。普段の智也なら引いてそうだというのに、好きな相手だと思うと、あからさまに向けられる好意がとてもたまらない。
 こういったことに多分淡泊気味であろう智也ですらそうなのだとしたら、あんなにあからさまに気持ちを出す昌史なら、どれだけ嬉しいと思うだろうか。

 うれションくらいしそうだよな。……犬じゃないけど。

 だから今すぐにでも、昌史を好きになってしまった智也の気持ちは伝えるべきなのだろう。普通に考えて当然の行為だと思われる。自分も伝えることで両思いになるし、恋人にもなれる。何よりあのゲームのように嬉しそうに笑う昌史が浮かぶ。
 しかし自覚してから何日も経っているが、いまだにできていなかった。

 あまりに恋愛能力低すぎだろ……。

 彼女がいたことあるとはいえ、小さい頃からの幼馴染が相手だった。はっきり言って慣れた相手というのだろうか。美賀以外には誰ともつき合ったことないどころか、昌史以外好きになったことないレベルのように思える。

 幼稚園の時、気になってる子いたけど……あれを初恋と呼ぶには気持ちが薄すぎる……。

 確かに気にはなっていた。何となく好みだな程度に。だが「なーちゃん」と呼んでいたことくらいしか覚えていない相手だけに、本当に好きだったとも思えない。どんな会話していたかどころではなく、話し方どころか顔も思い出せないし実際の名前すら記憶にない。
 その後も「かわいいな」と思った子くらいはいたものの、やはり恋の部類に含めるには気持ちが薄すぎる気がする。

 第一それなら外山先輩のことだって見た目かわいいって最初は思ったしな。最初はな、最初は。

 見た目はゆるふわしつつ、中身は男前すぎるくらい男前でサバサバした望美を思い、少々遠い目になった。
 二十歳にもなって情けないことだが、最低限の経験があるにも関わらず、やはり恋愛能力は底辺のように思える。よって、昌史にどう気持ちを伝えたらいいかがまずわからない。
 いや、考えるほどでもないのだろう。単に「俺も好きになった」と言えばいいのだろう。だが思うのと実際行動するのは全然違う。それにいつ何時伝えればいいかわからない。いつでも伝えればいいのかもしれないが、さすがに他に人がいるところでは嫌だ。同性だからというのは関係ない。昌史が例え女性だったとしても嫌だ。かといって昌史が一人の時ならいつでもいいというわけにもいかない。主に智也の心構えが。
 恋愛慣れしている人からすれば「何をつまらないことで悩んでいるのか」と呆れる案件かもしれない。片思いならまだしも、相手の気持ちがわかっていてなぜ言えないのか、と思われそうだ。だがわかる人にはわかるのではないだろうか。そういうことではないのだと。
 いっそ誰かに相談するのも手かもしれないが、案外相談する相手がいない。一番親しいかもしれない亮人はそもそも自分の関心あること以外はだいたいどうでもいいため「普通に告白すれば」で終わりそうだ。そもそも亮人も恋愛能力はあまり高そうに見えない。見た目はそこそこよさそうだが、本人が何よりそういったことに興味なさそうすぎる。
 他の友人には、そもそも相手が昌史であること自体言いたくない。弱い人間かもしれないが、昌史のように全開な言動はできそうにない。昌史のことを伏せて話せばいいのだろうが、それはそれでうまく言えそうな気がしない。智也はコミュ障ではないが、口がうまいわけでもない。
 何なら誰よりも同性愛に理解ありそうな美恵や望美にすら、知られたくないと智也は思っている。

 特にBL脳すぎる太田先輩にはな……。

 何だかんだ言って二人ともいい先輩ではあるし、親身になってくれるかもしれない。だがその後で智也と昌史を見るたびに邪な目で見られてはたまったものではない。
 情けないことにいつ、どのように伝えればと何日も悩んだ挙句、酒に頼ろうと決めた。
 ただこれは全くもって完璧ではなかった。なぜならそもそも昌史はまだ飲めない年齢だし、智也は実際のところいくら飲んでも多少気持ちがハイにはなるものの酔わない。

 これじゃあ酒に頼るってより、ただの食事会だろ……。

 浮かんだ時はいい案のように思えたものの、結局穴だらけの案だった。酒の勢いに任せた行動がそもそもお互い取れないのでは、頼る意味ない。それでもやってみるに越したことはないと今日こそ飲みに、というか食事に誘おうと思いつつも、そういうこともあってなかなかタイミングが計れないまま学校を後にすることになった。これでは意味ない。何やっているのかと自分を問い詰めたい。
 だが大学の門を出たところに昌史がいた。

「辻村くん……」
「あの、もし都合よければ今から食べに行きませんか。おいしい酒と料理の店、知ってるんで」

 え、願ったりかなったりなんだが。

 そわっとしつつ、智也は一呼吸置いた。でないと被り気味に「何があっても行く」と答えそうだった。

「おいしい酒って、酒の味、わかんの?」
「あは、そこは噂を耳にしただけなんで、よければ先輩が確認してください」
「了解。行く」
「ほんと? やった!」
「ちょうど話したいこと、あったしな」

 多少心の重荷が軽くなった気がしてうんうんと頷いていると、昌史が悲しげな顔をしてきたように見えた。
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