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2話
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普通に考えておかしいなと気づくべきだった。祐理はいいやつだが軽薄なタイプではないのもあって、そもそも本人自体もどこかの女子と知り合う機会などそういえばないはずだ。
だが高典も隣の席のやつほどではなくても飢えていたのだろうか。そうだとしたら少し自分に微妙な気持ちになるが、あまり深く考えずに即「女の子を紹介してもらえる」と思い込んでしまっていた。普通に考えて学校の敷地内にある、自販機のある屋根付きベンチで待ち合わせだという時点でおかしいと気づかなかった自分が後で思うと普通に理解できない。
「え、紹介って……」
先に着いて少しそわそわとした気持ちで待っていた高典の元へやってきたのは祐理とそしてもう一人、どう見ても男だった。とても綺麗で整った顔立ちをしてはいるし背も少なくとも高典や祐理より高くはなさそうだが、どう逆立ちしても女には見えない。髪型も長めとはいえ女のヘアスタイルではない。どちらかと言えばチャラそうにも見える確実に男のヘアスタイルだ。というか高典たちとネクタイの色は違うものの同じ制服を着ている。おもわず辺りをきょろきょろと見てしまった高典に、祐理は淡々とした調子で「この子な」と言ってきた。
「ああ、はい」
内心「何の紹介なんだよ」となりながら思わず他人行儀に頷いていると見知らぬ男は「俺、周太って言います!」と何故か顔を赤らめながらはきはき名乗ってきた。
「シュート?」
ボールを?
その時は予想外すぎて少々混乱気味の高典が呟けばぶんぶんと頭を振ってきた。
「しゅーたです。こゆき、しゅーた。小雪周太です。どうぞよろしくお願いします」
「選挙?」
「じゃないです」
「何だそのやり取り」
祐理が苦笑しながら呟いてきた。ようやく少しハッとなり、ベンチに座っていた高典は祐理を見上げた。
「というかこの状況が何」
「この後輩がお前に紹介して欲しいっていうから」
「後輩? 何の?」
「何の、か。元々俺のルームメイトがさ、中学の時部活やってた時の後輩で、気づけば俺も顔見知りになって」
思わず何のと聞いていたとはいえ、実際のところは何の後輩だろうがどうでもよかった。
「それはどうでもいいけど」
「聞かれたから答えたのに」
「それはごめん。でもそれより、紹介ってのが、何?」
「あの! 俺、あなたとお知り合いになりたくて。だから長郷先輩に頼みました」
祐理が答える前に周太が顔を赤くしながら言ってきた。高典は怪訝な顔を周太に向ける。
「何で知り合いになりたいんだ? 俺、お前と接点なんかあったっけ」
「そ……」
「俺、そろそろ行くわ。別の友だちと共闘する約束してんだよ。あとはお二人で」
周太が答えようとしたところで今度は祐理が携帯電話を見ながら口をはさんできた。
「え、ちょ、待っ」
あとはお二人でと言われても、何が何だか過ぎてお二人でどうしろと、としか思えないし置いて行かれるのは困る。別に人見知りをするタイプではないし、何故か目をキラキラさせてこちらを見てくる見知らぬ後輩には疑問しかないもののおそらく危険人物というわけでもなさそうなので二人になってもまずいわけではないのだが、意味がわからなすぎて困る。
だが高典が慌てて立ち上がろうとしたところですでに祐理は「じゃ」と行ってしまった。共闘と言っていたので祐理が今やっているアプリゲームのことだろう。予定があるのに引き留めるほど困惑してはいないし仕方ないか、と高典はため息をついて立ち上がった状態のまま周太を改めて見た。
立つとわかるが多分高典より五センチくらいは低いだろうか。スタイルがよさそうなのでベンチに座っていた時はそこまで身長に差があるように感じなかった。あとやたら顔がいいなとは思うが、その顔を今も赤らめながら目を輝かせ高典を見てくるのはやめて欲しいと思う。
「何?」
「え?」
「何でそんな顔で見てくんの? あと本当に何故俺とお知り合いになりたいの? こっちは全く心当たりがないんだけど」
「あ、その、実は……実は俺! 先輩を好きになっちゃいまして! だからその、お知り合いになりたすぎたし赤くなっちゃうしキラキラした気持ちで見ちゃうし今も興奮冷めやらないです」
「待って突っ込みどころしかないんだけど……?」
何言ってんの、とドン引きした気持ちを隠すこともなく真顔で周太を見た。そんな高典に対しても「突っ込むだなんてそんな……! ああでも俺、先輩になら突っ込まれてもいけそうです。基本は突っ込みたい派だと思いますけど」などとわけのわからないことを嬉しそうに言ってくる。
「どこへいけそうって……っ? つかお知り合いってそういう……お尻合いかよ……! いやいや拍手やめて。別にお前を楽しませようと言ったんじゃないし俺としてはドン引きだよ」
実際キラキラした表情で拍手してくる周太を睨むも、やはり動じた様子はない。
「あの、さ。好きになってくれるのはありがたいことだろうけど、俺、男に興味ないから悪いけど……」
「大丈夫です、俺も基本男に興味ないです。一緒ですね」
「いや知らねえよ……! じゃなくてじゃあ何で俺?」
「それは……」
周太が言いかけた時に何かが周太から何枚かが落ちた。
写真……?
つい条件反射的に反応してそれらを拾うとそこには学食で何かを食べているところや移動教室へ向かっているところなど間違いなくここ数日の高典がいた。
「っお、おま、おま、え……っ?」
「あ、すみません、落としちゃうなんて。さっきまで一人で長郷先輩待ってる時、緊張と興奮を和らげるためにひたすら見てたからだな……。あ、これ特に綺麗に撮れているでしょう? スマホだけに留めておくの勿体なさ過ぎてプリントアウトしたんですよね」
周太は相変わらず嬉しそうににっこりと高典を見てきた。
だが高典も隣の席のやつほどではなくても飢えていたのだろうか。そうだとしたら少し自分に微妙な気持ちになるが、あまり深く考えずに即「女の子を紹介してもらえる」と思い込んでしまっていた。普通に考えて学校の敷地内にある、自販機のある屋根付きベンチで待ち合わせだという時点でおかしいと気づかなかった自分が後で思うと普通に理解できない。
「え、紹介って……」
先に着いて少しそわそわとした気持ちで待っていた高典の元へやってきたのは祐理とそしてもう一人、どう見ても男だった。とても綺麗で整った顔立ちをしてはいるし背も少なくとも高典や祐理より高くはなさそうだが、どう逆立ちしても女には見えない。髪型も長めとはいえ女のヘアスタイルではない。どちらかと言えばチャラそうにも見える確実に男のヘアスタイルだ。というか高典たちとネクタイの色は違うものの同じ制服を着ている。おもわず辺りをきょろきょろと見てしまった高典に、祐理は淡々とした調子で「この子な」と言ってきた。
「ああ、はい」
内心「何の紹介なんだよ」となりながら思わず他人行儀に頷いていると見知らぬ男は「俺、周太って言います!」と何故か顔を赤らめながらはきはき名乗ってきた。
「シュート?」
ボールを?
その時は予想外すぎて少々混乱気味の高典が呟けばぶんぶんと頭を振ってきた。
「しゅーたです。こゆき、しゅーた。小雪周太です。どうぞよろしくお願いします」
「選挙?」
「じゃないです」
「何だそのやり取り」
祐理が苦笑しながら呟いてきた。ようやく少しハッとなり、ベンチに座っていた高典は祐理を見上げた。
「というかこの状況が何」
「この後輩がお前に紹介して欲しいっていうから」
「後輩? 何の?」
「何の、か。元々俺のルームメイトがさ、中学の時部活やってた時の後輩で、気づけば俺も顔見知りになって」
思わず何のと聞いていたとはいえ、実際のところは何の後輩だろうがどうでもよかった。
「それはどうでもいいけど」
「聞かれたから答えたのに」
「それはごめん。でもそれより、紹介ってのが、何?」
「あの! 俺、あなたとお知り合いになりたくて。だから長郷先輩に頼みました」
祐理が答える前に周太が顔を赤くしながら言ってきた。高典は怪訝な顔を周太に向ける。
「何で知り合いになりたいんだ? 俺、お前と接点なんかあったっけ」
「そ……」
「俺、そろそろ行くわ。別の友だちと共闘する約束してんだよ。あとはお二人で」
周太が答えようとしたところで今度は祐理が携帯電話を見ながら口をはさんできた。
「え、ちょ、待っ」
あとはお二人でと言われても、何が何だか過ぎてお二人でどうしろと、としか思えないし置いて行かれるのは困る。別に人見知りをするタイプではないし、何故か目をキラキラさせてこちらを見てくる見知らぬ後輩には疑問しかないもののおそらく危険人物というわけでもなさそうなので二人になってもまずいわけではないのだが、意味がわからなすぎて困る。
だが高典が慌てて立ち上がろうとしたところですでに祐理は「じゃ」と行ってしまった。共闘と言っていたので祐理が今やっているアプリゲームのことだろう。予定があるのに引き留めるほど困惑してはいないし仕方ないか、と高典はため息をついて立ち上がった状態のまま周太を改めて見た。
立つとわかるが多分高典より五センチくらいは低いだろうか。スタイルがよさそうなのでベンチに座っていた時はそこまで身長に差があるように感じなかった。あとやたら顔がいいなとは思うが、その顔を今も赤らめながら目を輝かせ高典を見てくるのはやめて欲しいと思う。
「何?」
「え?」
「何でそんな顔で見てくんの? あと本当に何故俺とお知り合いになりたいの? こっちは全く心当たりがないんだけど」
「あ、その、実は……実は俺! 先輩を好きになっちゃいまして! だからその、お知り合いになりたすぎたし赤くなっちゃうしキラキラした気持ちで見ちゃうし今も興奮冷めやらないです」
「待って突っ込みどころしかないんだけど……?」
何言ってんの、とドン引きした気持ちを隠すこともなく真顔で周太を見た。そんな高典に対しても「突っ込むだなんてそんな……! ああでも俺、先輩になら突っ込まれてもいけそうです。基本は突っ込みたい派だと思いますけど」などとわけのわからないことを嬉しそうに言ってくる。
「どこへいけそうって……っ? つかお知り合いってそういう……お尻合いかよ……! いやいや拍手やめて。別にお前を楽しませようと言ったんじゃないし俺としてはドン引きだよ」
実際キラキラした表情で拍手してくる周太を睨むも、やはり動じた様子はない。
「あの、さ。好きになってくれるのはありがたいことだろうけど、俺、男に興味ないから悪いけど……」
「大丈夫です、俺も基本男に興味ないです。一緒ですね」
「いや知らねえよ……! じゃなくてじゃあ何で俺?」
「それは……」
周太が言いかけた時に何かが周太から何枚かが落ちた。
写真……?
つい条件反射的に反応してそれらを拾うとそこには学食で何かを食べているところや移動教室へ向かっているところなど間違いなくここ数日の高典がいた。
「っお、おま、おま、え……っ?」
「あ、すみません、落としちゃうなんて。さっきまで一人で長郷先輩待ってる時、緊張と興奮を和らげるためにひたすら見てたからだな……。あ、これ特に綺麗に撮れているでしょう? スマホだけに留めておくの勿体なさ過ぎてプリントアウトしたんですよね」
周太は相変わらず嬉しそうににっこりと高典を見てきた。
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