後輩の好意は重すぎて

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12話

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 先ほどからぐったりして動く気力が全く湧かない。高典は椅子にすら座らず、床に体育座りでひたすら顔を埋めて動かなかった。

「高典先輩、どこか痛めました? 具合悪くなったんですか? それとも食事足りなくておなかすいたんですか?」

 おろおろとした声で周太が聞いてくるが、そもそも「おなかすいた」とは何だ、とひたすら賢者タイムのようなものが押し寄せていた高典は微妙な気持ちになりつつ顔を上げた。

「気が抜ける」
「生気を失いそうなんですか……っ? 大変じゃないですか……救急車呼びま……」
「いや、何でだよやめて。……お前がおなかすいたんですかとか言ってくるから気が抜けるっつったの!」
「ああ、なるほど。ではどこか痛めたわけでもないんですか?」
「心が痛い」
「え?」
「……ああもう。お前ね、ほんと最悪なんだよ! 普通さ、先輩のちんこ扱いたり咥えたりする? それもこんなとこで! だいたい俺のこと好きだからっていってもそれこそ普通、俺が嫌がったらやめない?」
「好きすぎて無理です」
「俺も無理なんだよ……! わかる? 男に興味ないのに男に咥えられて射精思いきりしちゃった俺の気持ち、わかる?」
「気持ちよかった、とかですか?」
「違う!」

 気持ちはよかったけれども……! そうじゃない……!

「……はぁ。お前だって一応男に興味、ないんだろ? そう言ってたよな?」
「ないですね。それに今は高典先輩以外は女性にだって興味ないです」
「いやその情報いらない……とにかく、そんな興味ない男にちんこ扱かれたり咥えられたりしてみろよ」
「相手殺しますね」
「だろ? なのにお前は俺にそれをやらかしてんだよ!」
「でも俺と高典先輩は違いますよ」
「何がどう違うのか四百字以内で簡潔に説明して」
「そんなにいりませんよ。説明するほどもないです。これから愛し合い恋人同士になるからですよ」
「……、……お前は変態なだけじゃなく妄想癖まであるの?」

 ますます微妙な気持ちになり、目を白黒させながら聞けば「俺は変態ではないですし妄想癖もないです。何なら俺のクラスメイトやルームメイトに聞いてくれてもいいですよ」と真顔で答えられた。

「……聞かないんだよ」

 ほんと何だろう。すごく、調子が狂う。

 少し遠い目になりながら思う。頭のよさそうな美形がチャラついた様子もなくいちいち真面目に文句や質問に対し返してくるのはいいが、どうにもことごとく、ずれている。

「お前ね、現に妄想半端なかっただろが」
「妄想? 俺は妄想などした覚えも言った覚えもないですよ。当然、妄想ではないです。現実に起こることを口にしただけです」
「いやもう怖い。ほんと怖いからお前……!」
「とりあえず高典先輩。照れているのもいいですが……」
「照れてないんだよ……!」
「? とりあえずズボン汚れちゃいますし、痛めておられないなら一旦立ってください。椅子に座りましょうよ」
「何よりすでにお前に汚されたんだけど」
「大丈夫、貞操は守られてますよ、俺が相手だから」
「あああもう……!」

 とはいえ確かにいつまでもこんなところで、それも床に座り込んでいられない。昼休みにも終わりはあるし周太のことで授業をさぼる羽目になるのも何となく忌々しい。高典はため息をつきながら渋々立ち上がった。その際に少し膝がカクンと抜けそうになったのはずっと体育座りをしていたからだと思いたい。それはそれで軟弱すぎるが、フェラチオされたせいでそうなったと思うよりは百倍マシだろう。

「大丈夫ですか?」

 その言葉を聞いてふと何かが頭によぎった気がしたが、一瞬だったしよくわからない。
 咄嗟に支えてこようとしてくる周太は確かに礼儀正しそうだし相変わらずイケメンだが、ふらついた原因がそもそも周太のやらかしてきたとんでもない行為だけに高典はじろりと睨みながら差し出してきた手を払いのけた。

「触んな」
「素っ気ない素振りを見せてくる高典先輩もまた素敵です」
「頼むから息荒げるのやめて……」

 口元をひきつらせながら周太との距離を開けた。

「あ、高典先輩。ズボンのチャックまだ開いたままですよ」

 その際にふと目線がそこへいったのか、周太がさらりと言ってくる。高典はいたたまれない気持ちになって慌ててチャックを上げるが、普通いたたまれない気持ちになるのは自分ではなく周太のほうではないだろうかとまた微妙になる。

「……つかお前にされてショックすぎたからか覚えてないんだけど、俺が出したものどうしたんだよ……」

 もし床にでもこぼしてたら最悪すぎる。換気は周太がすでにしていたようだがと高典はちらりと辺りの床に目をやった。

「全部取りこぼすことなく飲み干しましたけど」

 それが何か、といった勢いで当たり前のように返ってきた。

「は……? 飲んだの? 精液を? お前ほんと……」
「高典先輩のならおかわり余裕ですが」
「二度と飲めるなんて思うなよ……!」

 動揺したせいで変な言い方になってしまった。だが周太は微笑みはしても笑うことなく頷いて「高典先輩の貴重な精液ですもんね。もちろん気軽に味わっては失礼だなと思っています」とまた見当違いなことを言ってきた。
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