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16話
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他に理由? と高典は少し眉を寄せながら周太を見た。
「他に理由って、何。ケントくんに付き合ってたから顔を見せなかった以外にもあるってこと?」
「そう、というかそもそも剣斗に付き合った理由が高典先輩がらみと言いますか」
「俺? 俺、ケントくん知らないけど」
「それは知ってます。あとほんと何で剣斗だけ名前で呼ぶんですか。俺も呼んでください」
「いいから話せ小雪」
「うう。えっと、剣斗に恋人ができればあいつの性格からして絶対しょっちゅう相手に会いに行くと思うんですよね」
「はぁ」
それはとてもどうでもいい情報だがと思ってつい気の抜けた相槌を打ってしまったが、一応どこかで自分に繋がるのだろうと高典は無言で先を促した。
「そうしたら留守が増えるじゃないですか。特に合コンとかで知り合った相手なら他校の子になるし。剣斗だったら外出届出してでも会いに行くだろうし何なら帰ってこなくていいし」
「お前、ケントくん嫌いなの……?」
「まさか。煩いしちょいちょいうざいですが好きですよ。いいやつですし」
では何故、と微妙な顔をしていると「そういえば俺が合コン行くの、高典先輩は嫌じゃないんですか」と聞かれた。
「は? 何で俺が嫌がるんだよ」
「やきもちとか」
「……根本的なことを理解してないようだけど、俺はお前のこと、好きでも何でもないからな? そこ、まず理解して」
「照れ屋さんなのは理解してます」
「何も理解してないからね?」
「俺は高典先輩がいるのに合コンとか行くの、嫌だったんですが目的のためにはと踏ん張りました」
とりあえずよほどの目的があるのだろう。ただそれが多分自分に絡むのだと思うと少なくともろくでもない目的なのだろうなと高典はそっと思った。
話を聞くため階段を使っていたが、気づけばもう自分の部屋の前まで来ている。自分に絡むらしい話をこんな人目に付くところで立ち話するのに少々抵抗がある上に、周太とは「付き合っている」というレッテルを貼られてしまっている高典としては、周太といるところをあまり見られたくない。間違った情報がまたしめやかな振りして大いに広がってしまう。
ジュース買いに行く時は下麥いたし、あいつにならまあ最悪聞かれてもいいか。
「……とてつもなく嫌だけど、立ち話するよりはマシだから……入って」
「俺、苦虫を噛み潰したような顔って初めて見た気がします」
「煩い。いいからさっさと入る」
「はい」
先に高典が入り、ニコニコしながら周太も後に続いてきた。
「おかえり……って何でそんなことになってんの? ジュース暴発したの?」
「……まあ、ちょっと。おい、話の途中で悪いけどこのままはさすがに嫌だからさ、とりあえず俺シャワー浴びて着替えてくる。お前は待ってて。下麥には変なことするなよ」
「変? よくわかりませんが俺がちょっかいかけるのは高典先輩だけですよ」
「そういうのほんといらないので。下麥、こいつのことは無視してていいから」
「ええ?」
少しぽかんとしている雄士に「ほんと無視でいいから」ともう一度だけ言うと高典はベッドの隣にあるクローゼットからシャツなどを取り出すと奥の洗面所のドアを開けて風呂へ向かった。
いくら変態で迷惑でしかない相手でも自分の都合で待たせるのは落ち着かないため、とりあえず急いでシャワーを浴びて着替える。髪を乾かすのも惜しんでタオルで拭きながら「悪い、待たせたな」とドアを開けるとそこには周太だけが高典のベッドに浅くちょこんと腰かけている。
「し、下麥は?」
「俺を無視はちょっとねとか言ってたらどうやら彼氏さんから連絡来たみたいで。いい人ですね、ゆっくりしていってって言ってくれました」
しもむぎぃ……!
そういえばまだ周太がとても避けたいヤバい存在だと説明していなかったと高典はぐっと唇を噛みしめた。
「高典先輩のお風呂上り……」
「ハァハァするのやめろ……あと身の危険しか感じないので聞いてた話はまた今度続きを聞かせてもらうよ、なのでごめん、待ってもらっててほんと申し訳ないけど、出てって」
口元を引きつらせながら少し後退っていると周太が息を乱しつつ立ち上がってきた。怖さしかない。
「ほんと、ちょ、こっち来ないでくれない? ね、聞いてる?」
周太が近づけば近づくほどじりじり後退していたがドアにぶつかった。ここに閉じこもれたらと思ったが、洗面所と風呂場のドアには鍵がない。
そうだ、トイレ! トイレなら確か鍵ついてた……!
手を背後に回しドアをなんとか開けようとしていると周太につかまれた。万事休すだと変な声が出そうになる。
「高典先輩? どうしたんです? とりあえず汚れたシャツ、渡してください」
「え? あ、ああ、そ、それか」
間違いなく今度こそ犯されると思ったことが勘違いだとわかり、高典は自分にもドン引きした。慌てて身をひるがえして普通に洗面所のドアを開け、中に入る。動揺していたので「クリーニングはいい」と断っていたはずだが素直にランドリーバスケットに入れたままだったシャツを取り出して周太に手渡した。
「……高典先輩が着ていたシャツ……」
「っちょ、顔埋めんな! 今すぐ返して!」
「嫌ですよ。俺の責任なんですから、ちゃんとクリーニングに出して綺麗にします。もしそれでもシミが取れなければ弁償しますし」
「こんなシャツごときでそこまでいらないから!」
「いらないならもらってもいいですか? ちゃんと新しいシャツ買いますから」
「よくないんだよ……! 何に使う気だよ……!」
「他に理由って、何。ケントくんに付き合ってたから顔を見せなかった以外にもあるってこと?」
「そう、というかそもそも剣斗に付き合った理由が高典先輩がらみと言いますか」
「俺? 俺、ケントくん知らないけど」
「それは知ってます。あとほんと何で剣斗だけ名前で呼ぶんですか。俺も呼んでください」
「いいから話せ小雪」
「うう。えっと、剣斗に恋人ができればあいつの性格からして絶対しょっちゅう相手に会いに行くと思うんですよね」
「はぁ」
それはとてもどうでもいい情報だがと思ってつい気の抜けた相槌を打ってしまったが、一応どこかで自分に繋がるのだろうと高典は無言で先を促した。
「そうしたら留守が増えるじゃないですか。特に合コンとかで知り合った相手なら他校の子になるし。剣斗だったら外出届出してでも会いに行くだろうし何なら帰ってこなくていいし」
「お前、ケントくん嫌いなの……?」
「まさか。煩いしちょいちょいうざいですが好きですよ。いいやつですし」
では何故、と微妙な顔をしていると「そういえば俺が合コン行くの、高典先輩は嫌じゃないんですか」と聞かれた。
「は? 何で俺が嫌がるんだよ」
「やきもちとか」
「……根本的なことを理解してないようだけど、俺はお前のこと、好きでも何でもないからな? そこ、まず理解して」
「照れ屋さんなのは理解してます」
「何も理解してないからね?」
「俺は高典先輩がいるのに合コンとか行くの、嫌だったんですが目的のためにはと踏ん張りました」
とりあえずよほどの目的があるのだろう。ただそれが多分自分に絡むのだと思うと少なくともろくでもない目的なのだろうなと高典はそっと思った。
話を聞くため階段を使っていたが、気づけばもう自分の部屋の前まで来ている。自分に絡むらしい話をこんな人目に付くところで立ち話するのに少々抵抗がある上に、周太とは「付き合っている」というレッテルを貼られてしまっている高典としては、周太といるところをあまり見られたくない。間違った情報がまたしめやかな振りして大いに広がってしまう。
ジュース買いに行く時は下麥いたし、あいつにならまあ最悪聞かれてもいいか。
「……とてつもなく嫌だけど、立ち話するよりはマシだから……入って」
「俺、苦虫を噛み潰したような顔って初めて見た気がします」
「煩い。いいからさっさと入る」
「はい」
先に高典が入り、ニコニコしながら周太も後に続いてきた。
「おかえり……って何でそんなことになってんの? ジュース暴発したの?」
「……まあ、ちょっと。おい、話の途中で悪いけどこのままはさすがに嫌だからさ、とりあえず俺シャワー浴びて着替えてくる。お前は待ってて。下麥には変なことするなよ」
「変? よくわかりませんが俺がちょっかいかけるのは高典先輩だけですよ」
「そういうのほんといらないので。下麥、こいつのことは無視してていいから」
「ええ?」
少しぽかんとしている雄士に「ほんと無視でいいから」ともう一度だけ言うと高典はベッドの隣にあるクローゼットからシャツなどを取り出すと奥の洗面所のドアを開けて風呂へ向かった。
いくら変態で迷惑でしかない相手でも自分の都合で待たせるのは落ち着かないため、とりあえず急いでシャワーを浴びて着替える。髪を乾かすのも惜しんでタオルで拭きながら「悪い、待たせたな」とドアを開けるとそこには周太だけが高典のベッドに浅くちょこんと腰かけている。
「し、下麥は?」
「俺を無視はちょっとねとか言ってたらどうやら彼氏さんから連絡来たみたいで。いい人ですね、ゆっくりしていってって言ってくれました」
しもむぎぃ……!
そういえばまだ周太がとても避けたいヤバい存在だと説明していなかったと高典はぐっと唇を噛みしめた。
「高典先輩のお風呂上り……」
「ハァハァするのやめろ……あと身の危険しか感じないので聞いてた話はまた今度続きを聞かせてもらうよ、なのでごめん、待ってもらっててほんと申し訳ないけど、出てって」
口元を引きつらせながら少し後退っていると周太が息を乱しつつ立ち上がってきた。怖さしかない。
「ほんと、ちょ、こっち来ないでくれない? ね、聞いてる?」
周太が近づけば近づくほどじりじり後退していたがドアにぶつかった。ここに閉じこもれたらと思ったが、洗面所と風呂場のドアには鍵がない。
そうだ、トイレ! トイレなら確か鍵ついてた……!
手を背後に回しドアをなんとか開けようとしていると周太につかまれた。万事休すだと変な声が出そうになる。
「高典先輩? どうしたんです? とりあえず汚れたシャツ、渡してください」
「え? あ、ああ、そ、それか」
間違いなく今度こそ犯されると思ったことが勘違いだとわかり、高典は自分にもドン引きした。慌てて身をひるがえして普通に洗面所のドアを開け、中に入る。動揺していたので「クリーニングはいい」と断っていたはずだが素直にランドリーバスケットに入れたままだったシャツを取り出して周太に手渡した。
「……高典先輩が着ていたシャツ……」
「っちょ、顔埋めんな! 今すぐ返して!」
「嫌ですよ。俺の責任なんですから、ちゃんとクリーニングに出して綺麗にします。もしそれでもシミが取れなければ弁償しますし」
「こんなシャツごときでそこまでいらないから!」
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