後輩の好意は重すぎて

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20話(終)※

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「ごめん。疲れてるんだと思う。寝るわ」
「そっか。じゃあ邪魔しないよう、俺、彼氏のとこ行ってくるね」
「うん……。……なあ」
「何?」

 突っ伏していた顔を上げると雄士はすでに立ち上がって部屋を出ようとしていた。どれだけ会いに行きたいんだと高典は苦笑する。

「下麥はその、ゲイ、なの?」
「今さら? うーん、どうだろうな。そうかもしれないとも思ってるけど、あまり女の子と接する機会ないからわからないってのもあるかなあ。とりあえず彼氏以外で今のところときめいたりその気になったりはしてないかな」
「そ、っか。ごめん、失礼なことだったり嫌な気持ちになるようなことだったらほんとごめん」
「何でそんなこと聞いてくんのかよくわからないけど、平向は最初から俺に対して何の隔たりもなく変に意識することもなく接してくれてるし、全然嫌じゃないよ。……それに俺は彼氏のこと、男だから好きとかそんな風に思ったことはないかな。あの人だから好きなんだよ。これで何かわかる?」
「いや、ああ、うん、えっと、その、ありがとう」
「じゃあ、行ってくるね。おやすみ」

 その後高典は実際すぐに眠ったようだ。元々何かあると眠れないといったタイプではない。
 夢の中で高典はあの場にいた。今にもホームから落ちそうになっていて心臓が芯から冷えた。だがそんな高典をぐっとつかみ、引っ張ってくれる人がいる。

「……あ、っぶなかったぁ」

 これは夢だと変に自覚したのはあの時心臓が凍り付きそうなほど動揺してまともに聞こえず見えずだったはずなのに、今の高典は心臓が冷たくなりふわふわしているものの妙に冷静だからだ。

「あの、大丈夫ですか」

 うろ覚えの記憶ではとても心配そうな声がした気がしていたが、夢の中ではその人の声は何だか温かだった。見れば高典の心臓を溶かしてくる太陽みたいな笑顔で周太が覗き込んでいた。見ず知らずの人が助けてくれたのも感動ものだったが、こうして高典を認識している状態での周太が助けてくれたことも同じくらい嬉しいと思えた。

 ああ、くそ。
 助けてくれた人に情が湧くんじゃなくて助けた相手に湧くって?
 だったら俺のこのわけのわからないふわふわもやもやとした感情は何。ただでさえ最近こいつの変態具合にさえ慣れてきていていつもそばにいるのが驚くことにそして認めたくないことにわりと普通になってきていた上で今さらそんなこと知らされて、俺はどうしたらいいんだよ。

 ホームの周りはいつの間にか誰もいない。冷たく感じていた心臓は気づけば温かくなり、穏やかな心音が自分でも聞こえるくらい落ち着いていた。

「高典先輩。もう大丈夫ですよ」

 ニコニコとした周太が優しく抱きしめてきたおかげで、なおさらホッとする。無事だったんだ、死ななくてよかったんだと実感するだけでなく、生きている嬉しさがこみ上げてきて高典はぎゅっと周太を抱きしめ返した。

「抱きしめてくれるなんて。嬉しいです。好き、好き……高典先輩大好き」

 何だよこれ。何か俺、今すごい泣きそうなんだけど。
 助けてくれた人に情が湧くんじゃなくて助けた相手に湧くって?
 誰だよそんなこと言ったの。じゃあ今の俺のこのこみ上げてくる感情はほんと、何。

「小雪……、こゆ……、……周太。しゅーた……俺、生きてる。こんなに生きてるって感じたこと、ない。俺、生きてる」
「はい。先輩は生きておられます。……ねえ、先輩。もっと生きてるって実感しませんか?」
「うん、したい……」
「俺も、したいです」

 ホームにいたはずが、いつの間にか高典は裸でベッドに横たわっていた。そんな高典を周太は愛しげに触れ、そしてキスしてくる。

 俺は一体何て夢を見てるんだよ?

 自分に引きつつも、今この行為をやめたくはなかった。ふわふわもやもやとしたよくわからない気持ちが何となくはっきりしそうで、そしてその上心底生きている実感がしていた。夢だし、いいかと高典も積極的に周太に触れ、キスを返す。

「ん、ん……っ」
「は……、よかった、ちゃんと高典先輩も気持ちいいんですね」
「うん、気持ちいい……。あ、あ……っ」

 高典のものを咥えてしゃぶりながら、周太は後ろの穴をゆっくり指で解してくる。夢のくせにこんな行為よく想像できるなと思うし、最初は夢のくせに違和感すらあって妙にリアルだなと思ったがすぐにどうでもよくなった。もっとしたい、して欲しいと思う。

「あ……、イきそ……」
「かわいい……イってください。高典先輩のは精液すら全部俺のものでもあるんで、いくらでも飲んであげますから」
「ん、んんっ」

 びくびくと体が震えた。本当に射精しているみたいだと思い、びっくりして思いきり目を開けたと同時に実際夢を見ていたのだと実感しつつ目を覚ました。そして射精した後のだるさとともに人の気配を感じる。見れば周太が息を乱しながら熱のこもった目で高典を見ている。

「もう堪えられません。いれますね」
「……え? え? は……、え、ちょ、待っ、ん、あっ、い、痛っ」
「ごめんなさい。たくさん解したつもりですが、初めてですもんね……痛いですよね……ごめんなさい。でも俺、やめられません。がんばってゆっくり動きますので」
「いや、えっ? ちょ、何で……っん、あっ、あっ、痛、っん、っん、ああ、あっ」

 大混乱だった。だが引きつれるような痛さと圧迫感に高典は混乱に浸る余裕もない。おまけにゆっくりと動かれるうちにぬぐいようのない感覚がじわじわと高典の中に生まれてくる。一旦萎えていた自分のものが激しく主張してくることで多分周太にもバレバレだろうと思われた。

「や、め……っ」
「気持ちいいね……大丈夫、大丈夫ですよ、大丈夫……それに気持ちいいね? 高典先輩……ひどいことはしませんから、ほら、ね、気持ち、いい……」

 周太がなだめるように言いながら優しくゆっくり動き、そして硬くなった高典のものを手で扱いてきた。

「っあ、あっ、あっ」

 二度めの射精の時、周太も高典の中で射精してきた。



「だって同意だったんですもん!」

 ようやく一旦心を落ち着けた後、周太を殴って問いただせばまずそう言い返してきた。

「同意? 俺がお前のちんこをケツで受け止める同意をいつしたよ! 寝込み襲ってきた言い訳するな」
「高典先輩の様子がやっぱり心配だったから部屋に来てみたら眠っておられるようで、ホッとしてとりあえず先輩の匂いを満喫してから帰ろうと……」
「何でお前は何か喋るたびに残念で引くことしか言わないの? 鍵は? 匂い満喫? ほんとお前は……」
「? で、帰ろうとしたら高典先輩が嬉しそうに俺を抱きしめてきたんですよ」
「嘘つくな」
「本当ですって! 好きだって言ったら先輩、嬉しそうに『俺生きてる』みたいなこと言ってきて。もっと実感しませんかって聞いたら『したい』って! 前に言いましたよ俺。同意の元でないとしないって。ちゃんとお互い欲しくて堪らない状況でしたいって」

 ああそして今の説明、俺も心当たりしかないわ……。

 高典は頭を抱えた。もちろん現実だと思っていなかった。夢だった。だがもう取り返しがつかない。絶対、間違いなくこの変態は調子に乗ってこれからますます彼氏面して絡んでくるだろうし、隙あらば押し倒してこようとする未来しか見えない。

 ああもう……!

 やってしまった、とますます頭を抱える。だがやらかしたとしか思えないというのに不思議なくらい、後悔する気持ちが一向に高典の中で発生してこなかった。
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