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25話
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そういえばしばらく見かけないなとふと気づいた時にはすでに夏休みに入っていた。ああ、だからだなとぼんやり納得していたところ、葵がコンサートか何かで全国を回っているのだと奏真は知った。ついでに面倒くさいながらに気になる誘いも受けた。
携帯電話でツアーに出ている旨簡単な説明があった上に「そこで出る弁当を食わせてやるから来い」とメッセージが来ていたのだ。丁度奏真たちの地元に数日来ることがあるらしく、奏真の都合はお構いなしに、いついつに来いとも書いてあった。
どのみちフードフェスタなどがなければ奏真に部活以外の用事は基本ない。ただ弁当は魅力的だが行くのが少々面倒だと思っていると、剛に「行ってこい」と諭された。
「何で」
「せっかく夏休みなんだからお前はもっと遊べばいいと思うんだ。実家にはまだ帰らないだろ?」
「休みはゆっくりするものだろ」
「一ヶ月以上もの間ずっとゆっくりする必要はないだろ……」
「……。ごうも行く?」
「俺はやめとく。招待されてない」
「別にいいんじゃないの」
「あれでも人気アーティストだし、芸能人だからな。チケットがんばって取ってる人たくさんいるだろうし。ましてやお前と一緒にとか、穂村が何て言うか……」
今までなら「何言うって何」と聞いていたであろう奏真もさすがに何故剛がそんなことを言うかくらいはわかる。
葵は好きだなどと言いつつどうやら奏真を物扱いでもしているのか、自分のものだと主張してきた。だから自分のものが他人と一緒なのが気にくわないとかそういうニュアンスを、剛は言ったのだろう。
剛には「自分のものだとわかれ」と言われたことを伝えてある。それを告げた時は驚かれるどころか「あー……」といった風にまるで知っていたかの様子を剛は見せてきた。
「ごうは知ってたの?」
「知ってるっていうか……まぁわかりやすかったし」
「そうなの?」
「まぁ、な。……で?」
「で?」
「そーまは何て答えたんだ?」
「無理って」
「……何か想像できるし、ちょっとだけ穂村がかわいそうになった……」
「何で。俺の、とか言われても」
「まぁそうなんだけどな。じゃあ向こうは何て?」
「……、……?」
「どうしたんだ?」
「……忘れた」
「え?」
「スペアリブの話になって」
「……何で?」
結局、返信せずにそのままにしていたら何度も通知が来て、それはそれで面倒だったので奏真も「わかった、行く」と葵に返した。
行くと返事したと奏真が告げると、行けと言ったくせに剛はため息ついてきた。
「何」
「別に穂村との仲を応援したいわけじゃないし、そうなったらそうなったでそーまの兄さんが煩そうだからほんと別につき合えとは思わないんだけどもな」
「……何の話?」
コンサートの話をしたつもりなのだがと奏真は首を傾げた。
「いや……。お前って食べ物と陸上と……せいぜい奏一朗さんくらいしか関心がないだろ」
「ごうも好きだけど」
「……ありがとうな。俺も好きだよ。だけど穂村の前では言うなよ。とりあえず例え性格に少々難があろうが同性だろうが、そーまに興味を持ってくれた相手だし……うん……」
「本当に何の話……?」
「……あれだよ、楽しんでこいってこと」
「……? うん、弁当ってどんなのだろうね」
「そうじゃない」
招待された当日、会場へ向かった奏真は言われていた時間通りに裏手へ回った。
「奏真くん、こっち」
どこから入ればいいのだろうと奏真が思っていると、見覚えある男性がそっと声をかけてきた。
「安里さん、こんにちは」
「久しぶりだね、元気だった?」
明らかに関係者用の出入口といったところから中へ入ると、葵のマネージャーは歩きながらにこやかに奏真を見てきた。
「はい」
「焔がそわそわしていたよ。無理を言ったのでないといいけども」
「大丈夫」
「それはよかった。とりあえず席は関係者席じゃなくて一般席を用意させてもらったんだ。焔たちの希望でね」
「何か違うの?」
「関係者席って周りから結構注目されることもあるんだよ。奏真くんが座っていたらファンの人たちから誰だろうって注目浴びるかもしれないからって配慮でね」
葵と配慮が結びつかなく、奏真は小さく首を傾げた。だが注目されるなんてごめん被りたいため、一般席でよかったとも思う。
そのまま客席へ連れていかれるのかと思っていると、楽屋の方へ奏真は案内されていた。弁当を先に貰えるのだろうかと期待してしまう。
「お邪魔します」
「わーっ、まーくん? 噂のまーくん来た!」
章生に続いて中へ入ると、見知らぬデカい男が奏真に抱きついてきた。
うざい。
即座にそう思ったものの、反応するのも面倒なのでじっとしていると葵がやってきてイライラした様子でその男を奏真から引き剥がしてくる。
「フウタ、てめ、ふざけんなよ……」
「何だよエンが中々見せてくれないからじゃん」
葵が睨みつけると、風太と呼ばれた男がムッと頬を膨らませている。奏真と年齢は近そうだが、奏真からすればいちいち仕草が子どもっぽいように思える。だがわざとらしい気もする。ただしそれに対して葵は全力で真に受けてそうだ。
「こいつは物じゃねえんだよ! 見せ物でもねぇ」
「……あ、でもあんたは俺のこと、物扱いしてただろ……俺のものって」
ぼんやりやり取りを見ていた奏真が口にすると、風太が爆笑している傍らで葵がとてつもなく微妙な顔で奏真を見てきた。
携帯電話でツアーに出ている旨簡単な説明があった上に「そこで出る弁当を食わせてやるから来い」とメッセージが来ていたのだ。丁度奏真たちの地元に数日来ることがあるらしく、奏真の都合はお構いなしに、いついつに来いとも書いてあった。
どのみちフードフェスタなどがなければ奏真に部活以外の用事は基本ない。ただ弁当は魅力的だが行くのが少々面倒だと思っていると、剛に「行ってこい」と諭された。
「何で」
「せっかく夏休みなんだからお前はもっと遊べばいいと思うんだ。実家にはまだ帰らないだろ?」
「休みはゆっくりするものだろ」
「一ヶ月以上もの間ずっとゆっくりする必要はないだろ……」
「……。ごうも行く?」
「俺はやめとく。招待されてない」
「別にいいんじゃないの」
「あれでも人気アーティストだし、芸能人だからな。チケットがんばって取ってる人たくさんいるだろうし。ましてやお前と一緒にとか、穂村が何て言うか……」
今までなら「何言うって何」と聞いていたであろう奏真もさすがに何故剛がそんなことを言うかくらいはわかる。
葵は好きだなどと言いつつどうやら奏真を物扱いでもしているのか、自分のものだと主張してきた。だから自分のものが他人と一緒なのが気にくわないとかそういうニュアンスを、剛は言ったのだろう。
剛には「自分のものだとわかれ」と言われたことを伝えてある。それを告げた時は驚かれるどころか「あー……」といった風にまるで知っていたかの様子を剛は見せてきた。
「ごうは知ってたの?」
「知ってるっていうか……まぁわかりやすかったし」
「そうなの?」
「まぁ、な。……で?」
「で?」
「そーまは何て答えたんだ?」
「無理って」
「……何か想像できるし、ちょっとだけ穂村がかわいそうになった……」
「何で。俺の、とか言われても」
「まぁそうなんだけどな。じゃあ向こうは何て?」
「……、……?」
「どうしたんだ?」
「……忘れた」
「え?」
「スペアリブの話になって」
「……何で?」
結局、返信せずにそのままにしていたら何度も通知が来て、それはそれで面倒だったので奏真も「わかった、行く」と葵に返した。
行くと返事したと奏真が告げると、行けと言ったくせに剛はため息ついてきた。
「何」
「別に穂村との仲を応援したいわけじゃないし、そうなったらそうなったでそーまの兄さんが煩そうだからほんと別につき合えとは思わないんだけどもな」
「……何の話?」
コンサートの話をしたつもりなのだがと奏真は首を傾げた。
「いや……。お前って食べ物と陸上と……せいぜい奏一朗さんくらいしか関心がないだろ」
「ごうも好きだけど」
「……ありがとうな。俺も好きだよ。だけど穂村の前では言うなよ。とりあえず例え性格に少々難があろうが同性だろうが、そーまに興味を持ってくれた相手だし……うん……」
「本当に何の話……?」
「……あれだよ、楽しんでこいってこと」
「……? うん、弁当ってどんなのだろうね」
「そうじゃない」
招待された当日、会場へ向かった奏真は言われていた時間通りに裏手へ回った。
「奏真くん、こっち」
どこから入ればいいのだろうと奏真が思っていると、見覚えある男性がそっと声をかけてきた。
「安里さん、こんにちは」
「久しぶりだね、元気だった?」
明らかに関係者用の出入口といったところから中へ入ると、葵のマネージャーは歩きながらにこやかに奏真を見てきた。
「はい」
「焔がそわそわしていたよ。無理を言ったのでないといいけども」
「大丈夫」
「それはよかった。とりあえず席は関係者席じゃなくて一般席を用意させてもらったんだ。焔たちの希望でね」
「何か違うの?」
「関係者席って周りから結構注目されることもあるんだよ。奏真くんが座っていたらファンの人たちから誰だろうって注目浴びるかもしれないからって配慮でね」
葵と配慮が結びつかなく、奏真は小さく首を傾げた。だが注目されるなんてごめん被りたいため、一般席でよかったとも思う。
そのまま客席へ連れていかれるのかと思っていると、楽屋の方へ奏真は案内されていた。弁当を先に貰えるのだろうかと期待してしまう。
「お邪魔します」
「わーっ、まーくん? 噂のまーくん来た!」
章生に続いて中へ入ると、見知らぬデカい男が奏真に抱きついてきた。
うざい。
即座にそう思ったものの、反応するのも面倒なのでじっとしていると葵がやってきてイライラした様子でその男を奏真から引き剥がしてくる。
「フウタ、てめ、ふざけんなよ……」
「何だよエンが中々見せてくれないからじゃん」
葵が睨みつけると、風太と呼ばれた男がムッと頬を膨らませている。奏真と年齢は近そうだが、奏真からすればいちいち仕草が子どもっぽいように思える。だがわざとらしい気もする。ただしそれに対して葵は全力で真に受けてそうだ。
「こいつは物じゃねえんだよ! 見せ物でもねぇ」
「……あ、でもあんたは俺のこと、物扱いしてただろ……俺のものって」
ぼんやりやり取りを見ていた奏真が口にすると、風太が爆笑している傍らで葵がとてつもなく微妙な顔で奏真を見てきた。
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