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41話
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「俺の話に対してさらに問い詰めるんじゃなくて、わかった了解って言ってくれたとこ」
つき合うようになってからも相変わらずじわりと振り回されている感じしか葵はしないわけだが、奏真は奏真なりに一応頑張ってくれているのだろう。たまにこうして、思ったことや考えを口にはしてくれる。ただし、大抵何を言っているのか葵にはわからない。
「どういうとこだって?」
「……だから今言ったとこ」
「……いや……わかんねえよ……」
「……めんど……」
「口にしろとは言ったけどな? そういうのは別に口にしなくていーんだよ!」
「……あ、もうすぐしたらここでフードフェスある」
「いや聞けよっ?」
気づけば雑誌や携帯電話で食べ物のことやバンドのことなどをチェックしている奏真に突っ込む日々だ。それでもかわいくて仕方ないと思える自分が凄いと葵は微妙な気持ちで思う。あと、と内心ため息ついた。
「おい、次お前いつ実家行くんだよ」
「……決めてないけど」
「じゃあ来週末な! それなら俺も休み取れるから。もうしばらくしたらまた忙しくなんだよ俺。それまでに多少かた、つけさせろ」
「……多分無駄」
「はぁっ?」
葵は奏真を睨んだ。何を言っているかといえば、奏真の兄のことだ。
葵は今後もずっと芸術活動を続けていくつもりだ。だから世間に対して奏真とのことは永遠に隠し通す。ファンや自分のためでもあるし、奏真のためでもある。
ただ、できるのなら奏真とはずっと続けていきたい。未成年のガキが考えることと言われても仕方ないが、これでも真剣な気持ちを抱いている。
だからいずれは奏真の家族にだけは話したいとは思った。それが奏真との関係を世間に隠し通すというのに縛りつけることになる葵なりの誠実、のつもりだった。すでに一般社会人より稼ぎはある。あとはずっと奏真とのつき合いを続け、大人になったところで挨拶できればと目論んでいた。
そこまで詳しくではないが奏真にも自分の考えを話したところ、あっさりと「いいよ、親に言って」と返ってきた。
「はぁっ? おま、そりゃこの俺とつき合ってるってのは自慢にさえなる勢いだけどな、男なんだぞっ? 何簡単に……」
「……よく当然のように自慢になるって言えるね……」
「煩い、そこじゃねぇんだよ!」
「別に俺の親は気にしないと思う。跡継ぎは兄さんだし。むしろ俺に男だけど好きな人できたってだけで大喜びしてたし」
「って、すでに言ってんのかよっ?」
どこまでも予想外なやつ過ぎると葵は唖然とした顔を奏真へ向けた。
「あんただとは言ってないし、まだつき合ったとも言ってない。最初は兄さんに男を多分好きになったって言ったんだけど……兄さんはしばらく魂飛ばしてた」
「それ多分普通の反応だろ……」
「そうなの? そのあとしばらく説得され続けた……兄さんは大好きだけどあれはめんどうだった……」
「おい」
「……何」
「それ、俺にも言えよ」
「は?」
「……何でてめえの兄さんより俺は劣ってんだよ」
「何の話?」
「……大好きとか」
「ああ。でも兄さんとあんたは別だけど」
「そこじゃねぇんだよ……!」
大いに憤慨しながら、葵は奏真を押し倒した。
その後、奏真の実家へ遊びに行った。本当に奏真の親は喜んでいたようで、しかも相手が葵ということでむしろ安心していた。大手企業の社長と社長夫人だけあってか、芸能人に関してミーハーなところは全くなかったが、葵の活躍は知ってくれていた。
両親に歓迎され、幸先のいいつき合いだと葵が思っていると奏真の兄が帰ってきた。そして受けたことのないほどの拒絶を葵は受ける羽目になった。奏真が「……多分無駄」と言ったのはそれだ。
それから何度奏真兄に挑戦しようとしても会うことすら無下に断られるか、会えても断固たる拒絶を食らっている。親が呆れて諭す勢いだ。
両親に認められているだけでも、男同士ということを思えば十分過ぎるぐらいなのだが、葵としては兄を攻略しないことには納得できなかった。
「だいたい、元々は大人になってから言うつもりだったんだろ……だったら今はもういいんじゃ……?」
「俺のプライドが許さないんだよ!」
そう言い返せば、心底どうでもいいし面倒くさいといった顔で見られた。
「何だよ!」
「……だったら」
「あ?」
「プライドが許さないって言うなら兄さんに許してもらうまで俺に入れないくらい言えば」
「は、はぁぁぁっ? な、っつか、入れる言うな! せめて触れない、とか……クソ、恥じらいねえのかよ……っ?」
「……何であんたが赤くなんの」
「煩い!」
元々、手を出すのは早いタイプだった葵だが、さすがに奏真に対しては躊躇もあった。だが奏真のほうが何と言うか、意外にも前向きだった。
「やり方知らなかったから調べた」
「は?」
「出すとこに入れるとか、意味わからないけど……必要なら仕方ないからいいよ」
「はぁっ?」
こんなところまで振り回されるのかと、最初は思ったものだった。
つき合うようになってからも相変わらずじわりと振り回されている感じしか葵はしないわけだが、奏真は奏真なりに一応頑張ってくれているのだろう。たまにこうして、思ったことや考えを口にはしてくれる。ただし、大抵何を言っているのか葵にはわからない。
「どういうとこだって?」
「……だから今言ったとこ」
「……いや……わかんねえよ……」
「……めんど……」
「口にしろとは言ったけどな? そういうのは別に口にしなくていーんだよ!」
「……あ、もうすぐしたらここでフードフェスある」
「いや聞けよっ?」
気づけば雑誌や携帯電話で食べ物のことやバンドのことなどをチェックしている奏真に突っ込む日々だ。それでもかわいくて仕方ないと思える自分が凄いと葵は微妙な気持ちで思う。あと、と内心ため息ついた。
「おい、次お前いつ実家行くんだよ」
「……決めてないけど」
「じゃあ来週末な! それなら俺も休み取れるから。もうしばらくしたらまた忙しくなんだよ俺。それまでに多少かた、つけさせろ」
「……多分無駄」
「はぁっ?」
葵は奏真を睨んだ。何を言っているかといえば、奏真の兄のことだ。
葵は今後もずっと芸術活動を続けていくつもりだ。だから世間に対して奏真とのことは永遠に隠し通す。ファンや自分のためでもあるし、奏真のためでもある。
ただ、できるのなら奏真とはずっと続けていきたい。未成年のガキが考えることと言われても仕方ないが、これでも真剣な気持ちを抱いている。
だからいずれは奏真の家族にだけは話したいとは思った。それが奏真との関係を世間に隠し通すというのに縛りつけることになる葵なりの誠実、のつもりだった。すでに一般社会人より稼ぎはある。あとはずっと奏真とのつき合いを続け、大人になったところで挨拶できればと目論んでいた。
そこまで詳しくではないが奏真にも自分の考えを話したところ、あっさりと「いいよ、親に言って」と返ってきた。
「はぁっ? おま、そりゃこの俺とつき合ってるってのは自慢にさえなる勢いだけどな、男なんだぞっ? 何簡単に……」
「……よく当然のように自慢になるって言えるね……」
「煩い、そこじゃねぇんだよ!」
「別に俺の親は気にしないと思う。跡継ぎは兄さんだし。むしろ俺に男だけど好きな人できたってだけで大喜びしてたし」
「って、すでに言ってんのかよっ?」
どこまでも予想外なやつ過ぎると葵は唖然とした顔を奏真へ向けた。
「あんただとは言ってないし、まだつき合ったとも言ってない。最初は兄さんに男を多分好きになったって言ったんだけど……兄さんはしばらく魂飛ばしてた」
「それ多分普通の反応だろ……」
「そうなの? そのあとしばらく説得され続けた……兄さんは大好きだけどあれはめんどうだった……」
「おい」
「……何」
「それ、俺にも言えよ」
「は?」
「……何でてめえの兄さんより俺は劣ってんだよ」
「何の話?」
「……大好きとか」
「ああ。でも兄さんとあんたは別だけど」
「そこじゃねぇんだよ……!」
大いに憤慨しながら、葵は奏真を押し倒した。
その後、奏真の実家へ遊びに行った。本当に奏真の親は喜んでいたようで、しかも相手が葵ということでむしろ安心していた。大手企業の社長と社長夫人だけあってか、芸能人に関してミーハーなところは全くなかったが、葵の活躍は知ってくれていた。
両親に歓迎され、幸先のいいつき合いだと葵が思っていると奏真の兄が帰ってきた。そして受けたことのないほどの拒絶を葵は受ける羽目になった。奏真が「……多分無駄」と言ったのはそれだ。
それから何度奏真兄に挑戦しようとしても会うことすら無下に断られるか、会えても断固たる拒絶を食らっている。親が呆れて諭す勢いだ。
両親に認められているだけでも、男同士ということを思えば十分過ぎるぐらいなのだが、葵としては兄を攻略しないことには納得できなかった。
「だいたい、元々は大人になってから言うつもりだったんだろ……だったら今はもういいんじゃ……?」
「俺のプライドが許さないんだよ!」
そう言い返せば、心底どうでもいいし面倒くさいといった顔で見られた。
「何だよ!」
「……だったら」
「あ?」
「プライドが許さないって言うなら兄さんに許してもらうまで俺に入れないくらい言えば」
「は、はぁぁぁっ? な、っつか、入れる言うな! せめて触れない、とか……クソ、恥じらいねえのかよ……っ?」
「……何であんたが赤くなんの」
「煩い!」
元々、手を出すのは早いタイプだった葵だが、さすがに奏真に対しては躊躇もあった。だが奏真のほうが何と言うか、意外にも前向きだった。
「やり方知らなかったから調べた」
「は?」
「出すとこに入れるとか、意味わからないけど……必要なら仕方ないからいいよ」
「はぁっ?」
こんなところまで振り回されるのかと、最初は思ったものだった。
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