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Infinity編
20話(終)
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結局、貫士に聞いても糠に釘だった。どうにも噛み合わない。その後も何だかんだで押し倒され、また散々堪能されただけのような気がする。
後日、寛人は細かい説明を省きつつ何とか基希に聞いた。
「カンジがそうだとかは知らないけど、そういえばヨーロッパの方って言葉じゃなく空気で感じ取る人多いらしいね」
「は……」
「ほら、日本だとまず告白してオーケー貰ってつき合う、みたいな流れあるだろ」
「あ、あ」
「向こうでは告白って特にないらしいよ。気が合ったりして出かけたりキスしたりセックスしたり、みたいな過程でつき合ってるって感じるんだろうね」
「そんな適当でわかりにくい……」
「まぁでも、自由に恋愛を楽しむって感じじゃないのかな。日本は形式ばってるとこあるし」
貫士が言っても全然わからないことも、基希が言えばするりと入ってくる。
「そんなもんか……」
「ゴンは特にその辺お堅そうだから余計ピンとこないのかもね」
ふふ、と笑われて寛人は口をへの字にする。
「……あいつがいい加減過ぎるだけだろ」
「それは否定しないけど。でもお前とそういう関係になってからカンジ、他の誰かともそんな関係築いてた?」
基希に聞いてはいるものの、貫士からされたことをこと細かく告げたわけではない。だが何故かことごとくバレている気、しかしない。
「そ、そういう……っ? 何言っ……どんな関係にもなってねぇ……! ま、ぁ……確かに浮気そかそーゆーのはしてねぇ、んじゃねーの」
「浮気、ね」
ニコニコ言われ、確かに言い方を間違えたと寛人は焦った。どうにも居たたまれない。
「とはいえカンジが自分本位なやつなのは間違いないしね。嫌なことあればいつでも俺に言ってきて」
「日々嫌なことだらけだけど……」
「はは。あ、ねぇ、とっておきのカンジの弱み、二つ教えてあげるよ」
基希が寛人を抱き寄せるようにして耳元で話しかけていると「スイ、てめーいい根性してんじゃねーか」という声がした。
「お前が俺の大事なゴン取るから仕返しだよ」
「ざけんな。ただでさえお前らいつも無駄に親密だし近ぇんだよ、離れろや」
何言っているのだと寛人は内心唖然とした。それは貫士と基希のことではないのか。いや、今ではこの二人に何の関係もないとは知っているが。
ただ、改めて基希はすごいと思った。優しいし今でも性格もいいと寛人は思っているが、大した弱みでもないのに上手く貫士を転がしていたわけだ。寛人には一生真似できそうにない。
「おい、お前らさっき何話してたんだよ」
「うるせぇ、お前には関係ねーよ」
「あ? 関係ねーわけねーだろーが」
その後、基希がいなくなりたまたま二人だけなのをいいことに、面倒そうに言った後貫士は寛人を強引に引き寄せ、足が立たなくなりそうな濃いキスしてきた。
「ほら、めちゃくちゃ関係あんだろが」
「ほんっと最悪だなてめぇ……!」
夜、また勝手に寛人の家に押しかけてきた貫士に、寛人は改めて聞いた。
「……お前、いつからそういうつもりで俺に接してたんだよ」
「あ? 狙ってたんは結構前からだけど? まぁ、そうだな、そういうつもりってのは前に勉強教えた時、初めてちゃんとキスしただろ。あん時からだけど」
全然話が噛み合わなかったはずだったが、初めて意志疎通できたような気がした。
っていうか、あん時かよ……!
そう言われてみれば、それまではからかってきたりしても今ほどよく話すこともなかった。それこそ仕事の演出でないキスやらそれ以上のことも、されるようになったのはそれ以来のような気がする。
「つか、俺の意思と気持ちは……っ?」
「あ? 何言ってんだてめ。あれ以来あからさまに俺のこと、意識してただろか」
「し、してねぇ!」
「どう見ても俺のこと、好きでしかねーよーな態度や反応しときながら何言ってんだ? バァカ」
「今もめちゃくちゃ腹立たしいとしか思えねーわ……!」
「おーおー。ほんとお前、素直じゃねーよな。そんな煽るよーな顔しときながらよ?」
人を小馬鹿にするような笑みを浮かべ、貫士が引き寄せてきた。やめろと押し退けようとしてもやはりびくともしない。日中にされたキスよりもさらに濃い深いキスされ、結局抗うこともできずにそのまま、体も深く繋がることになった。
回数を重ねるごとにおかしくなりそうなほどの快楽を覚えさせられたが、充足感すらそこにあることは未だに認めたくない。
というか、寛人が貫士をどう思ってるかなどと深く考えるつもりないし、ましてや貫士に言いたくない。
少なくともこいつの口からはっきり「つき合ってください」と言わせるまではな!
ドラマの世界だけだろ、と言った貫士の口からどうあっても言わせてやらないと気が済まない。寛人は硬く拳を握りしめた。
「ふざけんな、てめー、この俺にインスタントラーメンなんか食わせる気かよ」
普段忙しいため、外食をバンドメンバーとすることはあっても、二人で一緒に家で食べることはない。
珍しくオフが重なった日、まさかと思ったがやはり前日の夜からやって来た貫士は、翌日の昼前にようやく起きたとたんにとてつもなく嫌そうに言ってきた。
「るせーな。文句言うなら食うな。それしか今、家にねーよ」
「は? てめ、肉になりやすいとか言いながらこんなもん買ってんじゃねーよ」
「普段は外食か、違うもん買いに行ってるわ! てめーのせいで朝から買いに行く暇もなかったんだろが」
寝起きにまたさんざんいいようにされた寛人が睨みつけると、しれっとした顔で「俺ん家へ来いや。んで作れ」と服を着ている。
「何でだよ」
「てめーのふざけた冷蔵庫と違って俺んとこは野菜だって入ってんだよ、バァカ」
「……そーかよ。……、……じゃあそれでうまいもん、俺に作ってくれ、よ……」
「……てめ、誰だ……、……あー、クソ、仕方ねーな。てめー、料理できなさそーだもんな。っち。そしたらさっさと行くぞ」
唖然としたかと思うと変な表情になった後、貫士は歩き出した。
意外にチョロい……?
お願いするのに少々苦労しつつも内心同じく唖然としながら、寛人は大人しく貫士の家へ向かった。
貫士はデザートまで用意してきた。そういえば普段もよく甘いものを食べている。こういうところもフランスでの影響なのだろうか。
料理は美味かった。
「カンジの弱みだけどさ、一つは頼られると弱いとこ、あるんだよね。偉そうにしてるだけあるというか。好きな相手だとなおさらじゃないかな」
おかしそうに言っていた基希を思い出す。もう一つは本当に弱点というか、辛いもの、要は香辛料などが苦手らしい。これは今のところ寛人には上手く使いこなせそうにないが、いつか利用させてもらおうとは思っている。実際料理に使うなり、ばらすぞなどと脅すなり。それを想像するだけでもそれなりに楽しい。
「食ったらベッド行くぞ。せっかくオフなんだからな。今日は一日だらけて寝るか、ひたすらやるからな」
「は? ざけんな無理……」
「俺がするっつったらすんだよ」
「っおいっ」
上手く使えるようになるかは疑問だが。
後日、寛人は細かい説明を省きつつ何とか基希に聞いた。
「カンジがそうだとかは知らないけど、そういえばヨーロッパの方って言葉じゃなく空気で感じ取る人多いらしいね」
「は……」
「ほら、日本だとまず告白してオーケー貰ってつき合う、みたいな流れあるだろ」
「あ、あ」
「向こうでは告白って特にないらしいよ。気が合ったりして出かけたりキスしたりセックスしたり、みたいな過程でつき合ってるって感じるんだろうね」
「そんな適当でわかりにくい……」
「まぁでも、自由に恋愛を楽しむって感じじゃないのかな。日本は形式ばってるとこあるし」
貫士が言っても全然わからないことも、基希が言えばするりと入ってくる。
「そんなもんか……」
「ゴンは特にその辺お堅そうだから余計ピンとこないのかもね」
ふふ、と笑われて寛人は口をへの字にする。
「……あいつがいい加減過ぎるだけだろ」
「それは否定しないけど。でもお前とそういう関係になってからカンジ、他の誰かともそんな関係築いてた?」
基希に聞いてはいるものの、貫士からされたことをこと細かく告げたわけではない。だが何故かことごとくバレている気、しかしない。
「そ、そういう……っ? 何言っ……どんな関係にもなってねぇ……! ま、ぁ……確かに浮気そかそーゆーのはしてねぇ、んじゃねーの」
「浮気、ね」
ニコニコ言われ、確かに言い方を間違えたと寛人は焦った。どうにも居たたまれない。
「とはいえカンジが自分本位なやつなのは間違いないしね。嫌なことあればいつでも俺に言ってきて」
「日々嫌なことだらけだけど……」
「はは。あ、ねぇ、とっておきのカンジの弱み、二つ教えてあげるよ」
基希が寛人を抱き寄せるようにして耳元で話しかけていると「スイ、てめーいい根性してんじゃねーか」という声がした。
「お前が俺の大事なゴン取るから仕返しだよ」
「ざけんな。ただでさえお前らいつも無駄に親密だし近ぇんだよ、離れろや」
何言っているのだと寛人は内心唖然とした。それは貫士と基希のことではないのか。いや、今ではこの二人に何の関係もないとは知っているが。
ただ、改めて基希はすごいと思った。優しいし今でも性格もいいと寛人は思っているが、大した弱みでもないのに上手く貫士を転がしていたわけだ。寛人には一生真似できそうにない。
「おい、お前らさっき何話してたんだよ」
「うるせぇ、お前には関係ねーよ」
「あ? 関係ねーわけねーだろーが」
その後、基希がいなくなりたまたま二人だけなのをいいことに、面倒そうに言った後貫士は寛人を強引に引き寄せ、足が立たなくなりそうな濃いキスしてきた。
「ほら、めちゃくちゃ関係あんだろが」
「ほんっと最悪だなてめぇ……!」
夜、また勝手に寛人の家に押しかけてきた貫士に、寛人は改めて聞いた。
「……お前、いつからそういうつもりで俺に接してたんだよ」
「あ? 狙ってたんは結構前からだけど? まぁ、そうだな、そういうつもりってのは前に勉強教えた時、初めてちゃんとキスしただろ。あん時からだけど」
全然話が噛み合わなかったはずだったが、初めて意志疎通できたような気がした。
っていうか、あん時かよ……!
そう言われてみれば、それまではからかってきたりしても今ほどよく話すこともなかった。それこそ仕事の演出でないキスやらそれ以上のことも、されるようになったのはそれ以来のような気がする。
「つか、俺の意思と気持ちは……っ?」
「あ? 何言ってんだてめ。あれ以来あからさまに俺のこと、意識してただろか」
「し、してねぇ!」
「どう見ても俺のこと、好きでしかねーよーな態度や反応しときながら何言ってんだ? バァカ」
「今もめちゃくちゃ腹立たしいとしか思えねーわ……!」
「おーおー。ほんとお前、素直じゃねーよな。そんな煽るよーな顔しときながらよ?」
人を小馬鹿にするような笑みを浮かべ、貫士が引き寄せてきた。やめろと押し退けようとしてもやはりびくともしない。日中にされたキスよりもさらに濃い深いキスされ、結局抗うこともできずにそのまま、体も深く繋がることになった。
回数を重ねるごとにおかしくなりそうなほどの快楽を覚えさせられたが、充足感すらそこにあることは未だに認めたくない。
というか、寛人が貫士をどう思ってるかなどと深く考えるつもりないし、ましてや貫士に言いたくない。
少なくともこいつの口からはっきり「つき合ってください」と言わせるまではな!
ドラマの世界だけだろ、と言った貫士の口からどうあっても言わせてやらないと気が済まない。寛人は硬く拳を握りしめた。
「ふざけんな、てめー、この俺にインスタントラーメンなんか食わせる気かよ」
普段忙しいため、外食をバンドメンバーとすることはあっても、二人で一緒に家で食べることはない。
珍しくオフが重なった日、まさかと思ったがやはり前日の夜からやって来た貫士は、翌日の昼前にようやく起きたとたんにとてつもなく嫌そうに言ってきた。
「るせーな。文句言うなら食うな。それしか今、家にねーよ」
「は? てめ、肉になりやすいとか言いながらこんなもん買ってんじゃねーよ」
「普段は外食か、違うもん買いに行ってるわ! てめーのせいで朝から買いに行く暇もなかったんだろが」
寝起きにまたさんざんいいようにされた寛人が睨みつけると、しれっとした顔で「俺ん家へ来いや。んで作れ」と服を着ている。
「何でだよ」
「てめーのふざけた冷蔵庫と違って俺んとこは野菜だって入ってんだよ、バァカ」
「……そーかよ。……、……じゃあそれでうまいもん、俺に作ってくれ、よ……」
「……てめ、誰だ……、……あー、クソ、仕方ねーな。てめー、料理できなさそーだもんな。っち。そしたらさっさと行くぞ」
唖然としたかと思うと変な表情になった後、貫士は歩き出した。
意外にチョロい……?
お願いするのに少々苦労しつつも内心同じく唖然としながら、寛人は大人しく貫士の家へ向かった。
貫士はデザートまで用意してきた。そういえば普段もよく甘いものを食べている。こういうところもフランスでの影響なのだろうか。
料理は美味かった。
「カンジの弱みだけどさ、一つは頼られると弱いとこ、あるんだよね。偉そうにしてるだけあるというか。好きな相手だとなおさらじゃないかな」
おかしそうに言っていた基希を思い出す。もう一つは本当に弱点というか、辛いもの、要は香辛料などが苦手らしい。これは今のところ寛人には上手く使いこなせそうにないが、いつか利用させてもらおうとは思っている。実際料理に使うなり、ばらすぞなどと脅すなり。それを想像するだけでもそれなりに楽しい。
「食ったらベッド行くぞ。せっかくオフなんだからな。今日は一日だらけて寝るか、ひたすらやるからな」
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