転生少女は憧れの騎士として生きたい

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22話

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 独自で調べて男爵に疑いをかけたレナードたちはちょど救出に向かってくれていたらしい。フリーデは救出に来ていた騎士の数名に見つけてもらえ、すぐに保護されていたようだ。そしてフリーデの簡素でわかりやすい説明を聞いて即座にイーディスの元へも駆けつけてくれていた。その時点でイーディスは何度目かの剣を受けて気合いだけで立っていた。腕だけでなく足まで鉛になったようで、そのくせ痛くてたまらなく朦朧としながらもなんとか剣を受けては丸腰の方がフリーデの元へ向かおうとするのを阻止していた。
 だからだろうか、助けが来て男二人が捕まった途端、その場に崩れ落ち、意識を手放してしまった。
 イーディス救助のためと引退したボルまでもが来てくれていたらしく、屋敷にいた者はあっという間に全員捕まったらしい。
 フリーデの父親である男爵の呆気ない自白により、他の加担していた貴族たちもすぐに捕まった。王位継承権第一位の王子を暗殺しようとした罪の重さは計り知れなく、関係者は以前レナードがイーディスに話していた町の広場で処刑されたと聞いた。

「……フリーデはどうなったの?」

 その後熱を出してしまった上に情けなくも腕が上がらないほど手やあちこちを痛めてしまい、イーディスは数日寝込んでいた。その間何度もレナードが訪問してくれていたようだが、さすがに寝室に案内はできないとのことで渋々帰ることになり、花束や菓子だけが増えていった。ようやく起き上がれるようになり、今日はテラスにて腰かけた状態でイーディスは久しぶりにレナードに会っていた。

「フリーデは情状酌量の余地はあるものの、レリアードを誘拐したことに変わりはないからね……今も幽閉されている」
「やっぱり首、よね?」
「そうだね。優秀な人だったんだけど何もなかったことにはできないからね」
「幽閉は処罰をどうするか決めかねているから……よね? 身柄、私が預かっては駄目かな」
「……王や大臣に話してみよう」
「ありがとう、レナード」
「うん。……イーディス。改めて君がなんとか無事でよかった」
「レナード……」
「大切な存在が二人も危険なことになって、生きた心地がしなかった」

 意識を手放したイーディスを、駆けつけたレナードが抱えて運んでくれたのだと後でランスから聞いた。男爵の口を割らせるための鞭打ちも、あの優しいレナードが率先して行ったとも聞いた。ランス曰く「あれほど呆気ない自白は今までなかったんじゃないかな」らしい。

「……ごめんね、心配かけて」
「謝らないで。イーディスは悪くない。それどころか、大切なレリアードを守ってくれて、こちらこそ本当にありがとう。既に何度もお礼を言ってるけど、何度だって言いたい。君には愛情だけじゃなく感謝もいくらしてもし足りないよ」
「……うん」
「助かってよかった。それにこうして起き上がれるようになってよかった。……でもね、イーディス。君はとても元気がないように思う。ショックとかもそりゃもちろんあるだろうけど……どうしたのか今度でいいから僕に聞かせて欲しい。ああでも今はとりあえず、この美味しいケーキを沢山食べて? 君の大好きなお茶も用意させたんだ」
「……うん、ありがとう、レナード。頂くね」

 心配しつつも無理やり聞き出す訳でもないレナードにイーディスは笑いかけた。多分家族も気づいているのだろう。普段からイーディスには何だかんだで甘い皆がますます過保護に甘やかしてくれることを思い、イーディスは申し訳なく思いつつもありがたくてさらに微笑んだ。
 転生前はほぼ寝たきりだったため、沢山の本を読んだ。ゲームも楽しんだ。物語が好きで、その中でもファンタジーの世界が特に好きで、何より騎士という存在が大好きだった。誰かを守れるカッコいい騎士。
 だから現世で転生前のことを思い出した時、イーディスは女でありながらも、このまるで憧れのファンタジーのような世界と、そして騎士の家系に生まれたことが嬉しかった。
 神様のご褒美かとさえ思っていた。
 だが実戦を経験して、イーディスは転生前の憧れだった騎士という夢を捨て、過去を忘れて侯爵令嬢らしく生きるべきなのだろうかと悩んでいた。
 後日、ずいぶん体的には復活したイーディスはレナードと一緒にあの美しい泉まで馬で駆けていた。

「とても気晴らしになったかも。ありがとうレナード」

 イーディスを気遣いつつも乗馬という方法で気晴らしをしてくれるレナードに感謝しながらイーディスは笑いかけた。二人して泉の側に腰かける。

「そっか。よかった。ねえ見てイーディス。今日の泉は一段と美しいよ」

 まるで君のようだと続けてこようとしたレナードに「私の瞳は緑だし、どちらかと言えばあなたのようよ」と言い返してやった。

「えぇ……じゃ、じゃあまるで君が身につけているピアスのようだにしよう」
「ふふ、家宝を褒めてくれてありがとう」
「……うーん、でもなんか違う」
「あらそう? じゃあまるで僕がプレゼントしたサテンのリボンのようだ、はどう?」
「それじゃあ僕がプレゼントしたものはとても素晴らしいだろう、と自慢してるみたいじゃないか。それにどんどん趣旨がずれてる……!」
「あはは」
「でもそのリボン、とても似合ってる。いつもつけてくれてありがとう」

 嬉しそうに、そして優しく微笑んでくるレナードにイーディスは少々調子が狂いかけた。

「レナードのくせに」
「僕のくせにって、何……!」
「ふふ。……ねえ、レナード」
「……うん?」
「私、剣をね……やめようかなって思ってる。それでね、これからちゃんとした令嬢になろうかなって」

 そう、令嬢こそなろうと思ってなれるものではない。それも侯爵令嬢だ。すごいことだ。どうせなら誰もが見惚れるような素晴らしい侯爵令嬢を目指すのもいいのではないだろうか。既にもう成人してしまってはいるが、それこそ前世で考えると十六歳などまだまだこれから伸びしろしかない。女らしく振舞うのは苦手だったが、自分の姉という、淑女の見本のような最高のお手本がそばにいるのできっと大丈夫だ。
 うんうん、と自分に言い聞かせるように頷いていると、レナードが戸惑ったように「何故?」と聞いてきた。
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